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第八・水着女子たちとハプニング2
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第八・水着女子たちとハプニング2
「お待たせ」
水着姿になった女子3人が、同じく囚人服丸出しな水着を纏う悠の前に一斉出現。それは贅沢すぎる魅惑のフルーツ盛りという見た目であり、悠は心においてマジにこう思ってしまうのだった。
(こんなステキな目の保養……命があるってすばらしいな……)
そんな風にデレデレしたい感じをグッとこらえる悠であるが、3人の女子はいずれも悠を見ながら何かを言われたいと期待している。そしてもっともじれったいのがニガテというパネトーネが一歩前に進む。
「いやぁ、わたしらしくないと思いつつ控えめな水着なんかしちゃって」
ニコっと満面の笑みを浮かべてそう言ったが、ピンク色のブラジリアンビキニというグラマーな姿と豊満でやわらかそうな谷間には絶賛アピール募集中という見えない声が発せられているようにしか見えない。
「すごく似合ってるよ。太陽から舞い降りてきた女の子って感じで」
悠はすごいふくらみ具合と吸い込まれそうな谷間ばかり見ないように注意しつつ、あまりにステキな目の保養をありがとうと思いながら賛辞を贈る。
「やだ、悠ったらわかりきったことを真顔で言うなんて」
パネトーネが悠に向かって抱きつきダッシュをやろうとしたら、その肩をグイっと横に押したのはクラフティ。白いブラタイプのビキニ姿はパネトーネと何ら変わらないすごいグラマーぶり。しかし少し控えめっぽい印象がクラフティの美少女ぶりとよく合って極上トロピカルジュースのようにまぶしい。
「悠……」
「な、なに……」
「そ、それが男というモノの体……」
「あ、あぁ……まぁね」
クラフティは自分のビキニ姿を見つめられ感じながらも、悠の体がいったいどうなっているのかという興味にも胸いっぱいにドキドキする。服の上からでもわかっていたが、水着になるとはっきり男には胸がないとか、腕や足が色白でも女子とは異質なパーツとしか見えないなどなど、男の体に触ってみたいという胸の内が赤らむ表情に浮かんでいる。
「おほん!」
クラフティと悠の無言見つめ合いが長いので、まだわたしがいるんですけど! と訴えるようにスフレが咳払いをひとつかます。だからふっと悠が目を向けると、そこにはグレーのビキニ姿でほんのり顔を赤らめ立っている巨乳女子の姿あり。
「ぁ、す、スフレ……かわいい。すごくよく似合っていて魅力的」
悠は太陽の光浴びるスフレのビキニ姿に一瞬トロっとした目を浮かべる。するとそれを見たパネトーネはだまっていられない。
「スフレ、あんた予想外に乳を隠し持っていたんだね。っていうかフェイク盛りしてない? ムリしなくてもいいんだよ?」
「フェイク盛りなんかするか! っていうか、わたしだってFカップで一応は巨乳だし」
「あぁん、Fカップなんて昔なつかしい響き。悠はわたしの方がいいよね? スフレよりわたしの谷間に吸い寄せられるよね?」
パネトーネ、悠の横に立って肩を叩く。するとなぜか悠の態勢がすべりグラっとしてしまう。
「ぁ……」
「え?」
焦りつつ動きを止められなかった悠、ドキッとしつつ受け止めようとしたスフレ、2人はまるで恋の磁石にからかわれるみたいになった。むにゅぅ! と悠の顔は豊かにしてやわらかい谷間に顔をうずめることになる。
「はんぅ!
びっくりして固まってしまうスフレ。
「ぅ……」
こ、これは……とか、早くどかなきゃ! とか思ったが、それよりなにより、なんてやわらかくてキモチいいんだろうと実に男らしく思ってしまう悠だった。
「ご、ごめんなさい」
悠が慌てて離れ背中を向ける。
「え、えっと……だ、だいじょうぶ……べ、べ、別に怒ってない」
スフレ左手を谷間に当てるといちごジャムも敵わないほど真っ赤になってドキドキを落ち着かせんと何度も呼吸する。
「悠、わたしのところに来て」
スフレの反応を見て自分もそうなりたいと思うパネトーネが両手を広げる。
「い、いや、そんな事しないから」
悠は女子たちに見られないよう、ものすごい速さでちょっと股間をモゾモゾ動かせ難儀を整えてから、さぁ泳ごう! とさわやかな笑顔で言ったりせねばならなかった。
そうして始まった泳ぎの時間。魔性みたく蒼いがこれといった問題があるわけではないって湖において4人でいっしょにスイスイ泳いだりビーチボールなどで遊んだりした。もし誰かがおぼれたりしたら、そのときはドラゴン女子がドラゴンになって救出する。その代わりドラゴン女子は普段より多めに女子力の実をスフレからもらう。
(さて、もうすぐ……)
こっそり隠れて4人を見る者が胸の内でつぶやく。つい先ほど湖に離したリヴァイアサンが出現するはずと息を飲む。そしてついにデカいハプニングが発生。ちょっと休憩しようかということになり、ビキニ姿の女子たちが湖から上がる。そして最後に悠も岸を目指してスイスイ泳いでいたのだが、急に女子たちがギャーギャー騒ぎわ出す姿と声を確認。
「悠、早く戻って!」
クラフティが大きな声で言ったと耳にした。だがそのつぎの瞬間に、自分後方でガボガボと不気味にして巨大な音がした事に悠の気は奪われる。
「な、なに?」
平泳ぎを一時停止した悠が浮かびながら振り返ると、何やら湖の中から浮かんできそうに思えた。それも小さい魚なんてチンケなモノではなく、人間よりずっとずっと大きいモノという予感がふつうに立つ。
―ズバーー
すさまじい音がしたと同時に、突き上げられた水の固まりが空へ向かって飛び上がっていく。
(ぁ……)
悠が目にしたのは異常過ぎて絶句する他ない光景。空を見上げる悠の視界を丸ごと多い隠すその巨大な魚はのんびり可愛いように見えなくもないが、いったいどういうモノかという情報が悠の脳内には刻まれていない。クジラでもなければサメでもシャチでもない。強引に言うならオフホワイトって色をした15m以上はあるであろう鯉。
「うそ! あんなの生息してたっけ?」
パネトーネが身震いして絶叫。
「悠!」
スフレが大声で叫んだ時、もはや逃げられない悠が巨大な魚に飲み込まれてしまった。信じられないほど大量の水と共に丸のみされたように見えた。
「クラフティ、悠が飲まれた! どうする? どうしたらいい?」
ひっくり返ったように慌てるパネトーネ、ドラゴンに戻ってあの魚を捕獲しようと言うがクラフティはダメだと却下。
「あんな巨大な魚、ドラゴン状態でも捕獲できない。いや、仮に出来たとしても……内側にいる悠をどうやって出すんだ? 外から腹を裂くとかダイナマイトで爆破するとか、いずれであれ内側の悠をバラバラにつぶしてしまう可能性がある」
「クラフティ、あんた大真面目な顔で怖いこと言わないで。あんたが言うとマジでめっちゃ怖いから」
「いや、でも……悠が助かる道はひとつしかない」
「なに、それはなに?」
「悠が自力で内から飛び出す。それ以外にない……」
「で、でも……悠って剣を持ってなかったよね?」
「う……」
女子たちが絶望する中、飲み込まれてしまった当の本人である悠は不思議な落ち着き状態に入っていた。信じられない大きさの怪魚に飲み込まれた。もはや人間は豆粒以下なので、魚の歯に食いつぶされる事なく中に入った。そして溺れるとアップアップしていたが、急に水がなくなりどこかわからない場所に置かれたモノとなっていた。そこでは呼吸ができるので、悠はひとまず死なずに済んでいるという状況を理解。
「だけど……真っ暗……何にも見えない」
そう、そのつぶやき通りおそろしいほど真っ暗で何も見えない。両目をしっかり開いても暗闇でしかない。足がつく下という方向以外は何もわからない宇宙空間にいると言ってもいい。
「これってずっとこのままだとやっぱり死ぬ……はず」
悠はまったく何も見えない冷たい真っ暗って中で、死ぬかもしれないと思ったらとてつもなく大きな恐怖に抱かれ青ざめる。一度死んでこの世界に来た自分が死ぬとすれば、そのときはもう完全に終了。最初の死は人を助けてのモノだったが、今のこの真っ暗でつめたい中死ぬというのはおそろしさがちがう。
「死ぬ……」
ドーン! と悠のキモチが海の底まで落ちていく。もし底に到着したら浮上したいという意識を失い、何もせずこのまま死ぬのを従順に待つだけとなるだろう。
「い、いやだ……死にたくない!」
グッと浮上したい願望が胸に沸く。そしてここで重要な事を思い出す。いまの自分は背中に剣をかけてはいないが、一度死んでこの世界に来たファンタジスタなのであると。だったら死の恐怖と戦うだけの力はあるはずと、沈んでいた心がグイグイ太陽方面へ向かい始める。
「死ぬもんか、死んでたまるか!」
何も見えない中、悠が両手をギュウっとつよくにぎる。そしておのれのエナジーをたましいのど真ん中に持っていき、生きたいという願望に自分の体温にすべて集中させる。そうすると体の内側に小さな火が生まれる。
「こんなところで死ぬもんかぁぁぁぁぁぁ」
悠が全身全霊で吠えると体内の炎が急速に大物へと成長。
「見えた!」
開いた両手の熱が明るさとなり、真っ暗な空間にオレンジ色をもたらす。ただただ真っ暗で何もないのだろうが、明るさが生じるだけでキモチが全然ちがう。神がかり的な絶望が極めて現実的な生のよろこびにつなげられると信じられる。
「まだダメ、もっともっと……」
手から浮かび上がる光球、悠はそこに自分のエナジーと生の感情をたっぷり詰め込む。大きさはあまり変わらないが高密度というモノへなっていく。それは角砂糖1個の大きさで何億トンって話と似たようなモノ。
「ぼくだって死にたくない、だから……許して欲しい」
悠、おそろしく巨大な怪魚に対して謝ると、その光球を真上に向かって投げ飛ばした。それは死にたくないという思いをギュウギュウに詰め込んだ一発。
―どっかーん!-
突然に湖から大爆発が吹き上がる。ドワーっと大量の水飛沫というだけでなく、巨大な肉片と水を赤く染める液体などなど、なかなかグロいモノが空高く舞い上がり、ドッチャーンとはげしい音を立て水面に落下。
「あ、あれって……」
スフレは湖を見ながらキュッと右手を握りしめる。
「さっきの怪魚? 爆発した?」
クラフティは心配でたまらないという顔でアタマをかく。
「爆発!? だったら悠はどうなるの?」
もうまったくおちつく事のできないパネトーネ。
「悠……」
3人の女子が悠の名前を同時につぶやいたので見事に重なる。するとそれが届いたというようなタイミングで、汚れている範囲から離れた位置に悠が水の下から顔を出した。
「ハァハァ……死ぬかと思った」
ウルトラダイナマイトな攻撃で生還した悠は、湖面から顔を出し何度も呼吸をくり返す。それから次に生きている世界がとても明るくステキだという事実にホッとする。あの宇宙空間を思わせる何も見えない暗闇から戻ってくると、光のありがたさに対する認識が変わると言ってもよい。
「悠!」
女子たちがみんな一斉に大声を出して手を振る。だから悠は力が抜けたと思いつつ、なんとあそこまではがんばってたどり着こうと泳ぎ始める。そしてそれを隠れたところで見ているモノがつぶやいた。
「リヴァイアサンを粉々にするなんて……やるな、悠」
「お待たせ」
水着姿になった女子3人が、同じく囚人服丸出しな水着を纏う悠の前に一斉出現。それは贅沢すぎる魅惑のフルーツ盛りという見た目であり、悠は心においてマジにこう思ってしまうのだった。
(こんなステキな目の保養……命があるってすばらしいな……)
そんな風にデレデレしたい感じをグッとこらえる悠であるが、3人の女子はいずれも悠を見ながら何かを言われたいと期待している。そしてもっともじれったいのがニガテというパネトーネが一歩前に進む。
「いやぁ、わたしらしくないと思いつつ控えめな水着なんかしちゃって」
ニコっと満面の笑みを浮かべてそう言ったが、ピンク色のブラジリアンビキニというグラマーな姿と豊満でやわらかそうな谷間には絶賛アピール募集中という見えない声が発せられているようにしか見えない。
「すごく似合ってるよ。太陽から舞い降りてきた女の子って感じで」
悠はすごいふくらみ具合と吸い込まれそうな谷間ばかり見ないように注意しつつ、あまりにステキな目の保養をありがとうと思いながら賛辞を贈る。
「やだ、悠ったらわかりきったことを真顔で言うなんて」
パネトーネが悠に向かって抱きつきダッシュをやろうとしたら、その肩をグイっと横に押したのはクラフティ。白いブラタイプのビキニ姿はパネトーネと何ら変わらないすごいグラマーぶり。しかし少し控えめっぽい印象がクラフティの美少女ぶりとよく合って極上トロピカルジュースのようにまぶしい。
「悠……」
「な、なに……」
「そ、それが男というモノの体……」
「あ、あぁ……まぁね」
クラフティは自分のビキニ姿を見つめられ感じながらも、悠の体がいったいどうなっているのかという興味にも胸いっぱいにドキドキする。服の上からでもわかっていたが、水着になるとはっきり男には胸がないとか、腕や足が色白でも女子とは異質なパーツとしか見えないなどなど、男の体に触ってみたいという胸の内が赤らむ表情に浮かんでいる。
「おほん!」
クラフティと悠の無言見つめ合いが長いので、まだわたしがいるんですけど! と訴えるようにスフレが咳払いをひとつかます。だからふっと悠が目を向けると、そこにはグレーのビキニ姿でほんのり顔を赤らめ立っている巨乳女子の姿あり。
「ぁ、す、スフレ……かわいい。すごくよく似合っていて魅力的」
悠は太陽の光浴びるスフレのビキニ姿に一瞬トロっとした目を浮かべる。するとそれを見たパネトーネはだまっていられない。
「スフレ、あんた予想外に乳を隠し持っていたんだね。っていうかフェイク盛りしてない? ムリしなくてもいいんだよ?」
「フェイク盛りなんかするか! っていうか、わたしだってFカップで一応は巨乳だし」
「あぁん、Fカップなんて昔なつかしい響き。悠はわたしの方がいいよね? スフレよりわたしの谷間に吸い寄せられるよね?」
パネトーネ、悠の横に立って肩を叩く。するとなぜか悠の態勢がすべりグラっとしてしまう。
「ぁ……」
「え?」
焦りつつ動きを止められなかった悠、ドキッとしつつ受け止めようとしたスフレ、2人はまるで恋の磁石にからかわれるみたいになった。むにゅぅ! と悠の顔は豊かにしてやわらかい谷間に顔をうずめることになる。
「はんぅ!
びっくりして固まってしまうスフレ。
「ぅ……」
こ、これは……とか、早くどかなきゃ! とか思ったが、それよりなにより、なんてやわらかくてキモチいいんだろうと実に男らしく思ってしまう悠だった。
「ご、ごめんなさい」
悠が慌てて離れ背中を向ける。
「え、えっと……だ、だいじょうぶ……べ、べ、別に怒ってない」
スフレ左手を谷間に当てるといちごジャムも敵わないほど真っ赤になってドキドキを落ち着かせんと何度も呼吸する。
「悠、わたしのところに来て」
スフレの反応を見て自分もそうなりたいと思うパネトーネが両手を広げる。
「い、いや、そんな事しないから」
悠は女子たちに見られないよう、ものすごい速さでちょっと股間をモゾモゾ動かせ難儀を整えてから、さぁ泳ごう! とさわやかな笑顔で言ったりせねばならなかった。
そうして始まった泳ぎの時間。魔性みたく蒼いがこれといった問題があるわけではないって湖において4人でいっしょにスイスイ泳いだりビーチボールなどで遊んだりした。もし誰かがおぼれたりしたら、そのときはドラゴン女子がドラゴンになって救出する。その代わりドラゴン女子は普段より多めに女子力の実をスフレからもらう。
(さて、もうすぐ……)
こっそり隠れて4人を見る者が胸の内でつぶやく。つい先ほど湖に離したリヴァイアサンが出現するはずと息を飲む。そしてついにデカいハプニングが発生。ちょっと休憩しようかということになり、ビキニ姿の女子たちが湖から上がる。そして最後に悠も岸を目指してスイスイ泳いでいたのだが、急に女子たちがギャーギャー騒ぎわ出す姿と声を確認。
「悠、早く戻って!」
クラフティが大きな声で言ったと耳にした。だがそのつぎの瞬間に、自分後方でガボガボと不気味にして巨大な音がした事に悠の気は奪われる。
「な、なに?」
平泳ぎを一時停止した悠が浮かびながら振り返ると、何やら湖の中から浮かんできそうに思えた。それも小さい魚なんてチンケなモノではなく、人間よりずっとずっと大きいモノという予感がふつうに立つ。
―ズバーー
すさまじい音がしたと同時に、突き上げられた水の固まりが空へ向かって飛び上がっていく。
(ぁ……)
悠が目にしたのは異常過ぎて絶句する他ない光景。空を見上げる悠の視界を丸ごと多い隠すその巨大な魚はのんびり可愛いように見えなくもないが、いったいどういうモノかという情報が悠の脳内には刻まれていない。クジラでもなければサメでもシャチでもない。強引に言うならオフホワイトって色をした15m以上はあるであろう鯉。
「うそ! あんなの生息してたっけ?」
パネトーネが身震いして絶叫。
「悠!」
スフレが大声で叫んだ時、もはや逃げられない悠が巨大な魚に飲み込まれてしまった。信じられないほど大量の水と共に丸のみされたように見えた。
「クラフティ、悠が飲まれた! どうする? どうしたらいい?」
ひっくり返ったように慌てるパネトーネ、ドラゴンに戻ってあの魚を捕獲しようと言うがクラフティはダメだと却下。
「あんな巨大な魚、ドラゴン状態でも捕獲できない。いや、仮に出来たとしても……内側にいる悠をどうやって出すんだ? 外から腹を裂くとかダイナマイトで爆破するとか、いずれであれ内側の悠をバラバラにつぶしてしまう可能性がある」
「クラフティ、あんた大真面目な顔で怖いこと言わないで。あんたが言うとマジでめっちゃ怖いから」
「いや、でも……悠が助かる道はひとつしかない」
「なに、それはなに?」
「悠が自力で内から飛び出す。それ以外にない……」
「で、でも……悠って剣を持ってなかったよね?」
「う……」
女子たちが絶望する中、飲み込まれてしまった当の本人である悠は不思議な落ち着き状態に入っていた。信じられない大きさの怪魚に飲み込まれた。もはや人間は豆粒以下なので、魚の歯に食いつぶされる事なく中に入った。そして溺れるとアップアップしていたが、急に水がなくなりどこかわからない場所に置かれたモノとなっていた。そこでは呼吸ができるので、悠はひとまず死なずに済んでいるという状況を理解。
「だけど……真っ暗……何にも見えない」
そう、そのつぶやき通りおそろしいほど真っ暗で何も見えない。両目をしっかり開いても暗闇でしかない。足がつく下という方向以外は何もわからない宇宙空間にいると言ってもいい。
「これってずっとこのままだとやっぱり死ぬ……はず」
悠はまったく何も見えない冷たい真っ暗って中で、死ぬかもしれないと思ったらとてつもなく大きな恐怖に抱かれ青ざめる。一度死んでこの世界に来た自分が死ぬとすれば、そのときはもう完全に終了。最初の死は人を助けてのモノだったが、今のこの真っ暗でつめたい中死ぬというのはおそろしさがちがう。
「死ぬ……」
ドーン! と悠のキモチが海の底まで落ちていく。もし底に到着したら浮上したいという意識を失い、何もせずこのまま死ぬのを従順に待つだけとなるだろう。
「い、いやだ……死にたくない!」
グッと浮上したい願望が胸に沸く。そしてここで重要な事を思い出す。いまの自分は背中に剣をかけてはいないが、一度死んでこの世界に来たファンタジスタなのであると。だったら死の恐怖と戦うだけの力はあるはずと、沈んでいた心がグイグイ太陽方面へ向かい始める。
「死ぬもんか、死んでたまるか!」
何も見えない中、悠が両手をギュウっとつよくにぎる。そしておのれのエナジーをたましいのど真ん中に持っていき、生きたいという願望に自分の体温にすべて集中させる。そうすると体の内側に小さな火が生まれる。
「こんなところで死ぬもんかぁぁぁぁぁぁ」
悠が全身全霊で吠えると体内の炎が急速に大物へと成長。
「見えた!」
開いた両手の熱が明るさとなり、真っ暗な空間にオレンジ色をもたらす。ただただ真っ暗で何もないのだろうが、明るさが生じるだけでキモチが全然ちがう。神がかり的な絶望が極めて現実的な生のよろこびにつなげられると信じられる。
「まだダメ、もっともっと……」
手から浮かび上がる光球、悠はそこに自分のエナジーと生の感情をたっぷり詰め込む。大きさはあまり変わらないが高密度というモノへなっていく。それは角砂糖1個の大きさで何億トンって話と似たようなモノ。
「ぼくだって死にたくない、だから……許して欲しい」
悠、おそろしく巨大な怪魚に対して謝ると、その光球を真上に向かって投げ飛ばした。それは死にたくないという思いをギュウギュウに詰め込んだ一発。
―どっかーん!-
突然に湖から大爆発が吹き上がる。ドワーっと大量の水飛沫というだけでなく、巨大な肉片と水を赤く染める液体などなど、なかなかグロいモノが空高く舞い上がり、ドッチャーンとはげしい音を立て水面に落下。
「あ、あれって……」
スフレは湖を見ながらキュッと右手を握りしめる。
「さっきの怪魚? 爆発した?」
クラフティは心配でたまらないという顔でアタマをかく。
「爆発!? だったら悠はどうなるの?」
もうまったくおちつく事のできないパネトーネ。
「悠……」
3人の女子が悠の名前を同時につぶやいたので見事に重なる。するとそれが届いたというようなタイミングで、汚れている範囲から離れた位置に悠が水の下から顔を出した。
「ハァハァ……死ぬかと思った」
ウルトラダイナマイトな攻撃で生還した悠は、湖面から顔を出し何度も呼吸をくり返す。それから次に生きている世界がとても明るくステキだという事実にホッとする。あの宇宙空間を思わせる何も見えない暗闇から戻ってくると、光のありがたさに対する認識が変わると言ってもよい。
「悠!」
女子たちがみんな一斉に大声を出して手を振る。だから悠は力が抜けたと思いつつ、なんとあそこまではがんばってたどり着こうと泳ぎ始める。そしてそれを隠れたところで見ているモノがつぶやいた。
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