異世界でドラゴン女子たちと仲良くしてみます

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第七・パネトーネとクラフティとスフレ

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第七・パネトーネとクラフティとスフレ


「さて、つぎはニンジンを切りますか」

 本日の午後5時という頃、スフレが夕飯のスープを作ろうとしていた時だった。家の中にピンポーンの音が鳴り響く。

「あぁもう、面倒くさい」

 ただいま悠はランニングに出かけているので、致し方ないとスフレは料理の手を止めた。そして鍋にかけている火を一度停止してから、ハイハイと言いながら玄関のドアを開ける。そして思わず声を出した。

「へ?」

 いきなり2人の美少女に出くわすとはまったく思っていなかったスフレ、いったいどちらさま? と聞く。

「え、もう忘れたの? スフレって記憶力欠陥症? わたしじゃん、パネトーネじゃん、しっかりしてよ」

 英国風メイド服の方がにぎやかエンジン始動という感じにしゃべりだす。それですぐスフレは片方を思い出す。しかしもう片方はまったくの初見ゆえ、こちらは? とパネトーネに正解を教えてくれと乞う。

「わたしはクラフティ、悠に会いたくてやってきた」

 パネトーネとちがいキリっとした感じの美女が自ら名前と目的を口にする。深紫のロングヘア―にグリーンアイが印象的であるが、黒字に赤交じりのくノ一ファッションという姿がより印象深く、胸のふくらみ具合はパネトーネに負けず劣らずのハイレベル。

「悠ならジョギング中だよ。まぁ、もうすぐ帰ってくると思うから、よかったらいっしょに晩ごはんでもやる?」

 せっかくだからと誘い2人を招くスフレだった。しかし内心、このドラゴン女子たちは悠に興味があるのだと思ったら、なぜか面白くないような気がしたりもする。

「で、悠になんの話があるの?」

 自分ひとりだけ蚊帳の外に放り出されるのはくやしいので、料理を再会しながら質問を投げかける。するとパネトーネがテーブル上のグラスにお茶を注ぎながら、期待感にまみれた声で説明。

「いやぁ、実はさぁ悠と親睦を深めたいと思ったわけだよ。そこでわたしは閃いたんだ。親しくなるにはいっしょにオフロがいいんじゃないかって。だから悠といっしょに温泉に行こうと考えた。そしたらクラフティがわたしもつれていけってうるさくてさぁ、だから3人で共ブロするつもり、えへえへえへ♪」

「お、オフロ?」

 トントンとやっていた手を止め、クイっとテーブルの方に顔を向けた。そしてすぐさま条件反射のように、それはダメ! と言う。

「お、オフロなんてダメだよ。なんかそれは……よくわからないのだけど、かんたんにやってはいけないという気がする。悠といっしょに暮らしているわたしだっていっしょにオフロなんてやっていないんだから」

 スフレはそう言いながらドラゴン女子の胸を見て密かに思う。この自分だってFカップって巨乳な部類なのに、どうしてドラゴン女子はそれ以上ばかりでてくるのだろうかと。

「あ、スフレ、もしかしてあれ?」

 パネトーネが胸の前で両手を合わせニヤニヤっといやらしくかわいい笑みを浮かべてつぶやく。

「わたしとクラフティが美形で巨乳だから嫉妬しちゃってる? だったらわたしたちってスフレに対してひどい事をしているって事? そうなの? そうなの?」

 それを聞いたスフレ、くぅ! っと声を漏らしワナワナ震えながらムカつくドラゴン女子に言い返す。

「べつに嫉妬なんかしてないつーんだよ。それにわたしだってFカップで巨乳だし、ドラゴンに妬く必要ないし」

「あ、スフレが哀しいつよがりしてる」

「むぅ!」

 パネトーネとスフレがはげしく言い争いをやりかねないと思われたところで横からクラフティが質問を挟んだ。スフレはどうして男と女のオフロをかんたんにやってはいけないように思うのか? と。

「いや、なんていうか、理由は説明できないんだけど、いきなりいっしょにオフロは女として軽率な行為だという気が」

「ふむ、パネトーネよりはまともに感じるスフレが言うのだから当たっているのかもしれない。わたしも軽率な女というのにはなりたくないからな」

「こらクラフティ、あんたどっちの味方してるのよ」

「わたしは悠に興味はあってもダサい女になりたくない」

 そう言ったクラフティ、オフロがダメなら……と言ってつまった。他に何があるだろうと思いつかない様子。

「だったらさぁ……」

 玉ねぎにニンジンにじゃがいもなどを鍋に入れ、味を調え終えたスフレは振り返ってひとつ提案した。

「みんなで泳ぎに行くとかどう? 水着なら裸じゃないから、それなら悪いことではないと思うんだ」

 水着? ここで2人のドラゴン女子がビビっと感じるように震えた。いっしょにオフロだから裸とばかり思っていたが、水着という考えていなかった言葉が意外とよさそうに思えたからだ。

「水着……なんだろう、水着姿を披露すると悠が喜んでくれるような気がする。よくわからないが絶対にそうだと言い切れるような気がする」

 3人の中では一番クールに見えるクラフティが頬を赤くしつぶやく。その表情は顔は今一番に女子力を発散させている人という風に見えた。

「よし、わかった、みんなで泳ぎに行こう。わたしはそこでビキニになる」

 パネトーネが魔性の音色で言ったら、残る2人はそのビキニという3文字を無視できないと反応する。

「ビキニ……なんだろう、それだと悠がものすごくよろこんでくれるような気がする。いや、女なのに見せなくてどうするんだ? という気さえする」

 クラフティがパネトーネとは対照的にひとりの世界に入ったような感じでデレデレって顔になる。

「わたしも行く、わたしもビキニになる」

 鍋の火を止め腕組み振り返ったスフレ、やや顔を赤らめつつ腕組みをし水着祭りへの参戦を意思表明。

「えぇ、スフレも来るの?」

「わたしが来たら何か問題でも?」

「止めときなよ、チンチクリンのくせに、ムリしてビキニなんかやるもんじゃないよ。色っぽい格好はわたしとスフレに任せておけばいいから」

「チンチクリンでもいいんだよ。なぜなら……」

「なぜなら? なに、言いなさいよ」

「もしかすると悠はチンチクリンの巨乳ってわたしを一番気に入るかもしれない」

「ぷっ! 犬も食わないような冗談はやめてよ」

「わかんないよ、パネトーネみたいなタイプが一番ババ引きかもしれないよ」

「なんですって!」

 こうしてスフレの家は久しぶりに過剰なまでに盛り上がりギャーギャーうるさくなる。それはランニングを終え汗まみれで戻ってきた悠の耳にも聞こえた。

「お客さんかな?」

 もうちょい時間をずらしてから入ろうかなと思ったが、悠がいない間にもう話は決められていた。今週の日曜日において4人で湖へ泳ぎに行くのだと。悠には参加するかしないかを選ぶような権利はなく、最大の主人公にしてわき役みたいな役回りが決定づけられていた。
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