異世界でドラゴン女子たちと仲良くしてみます

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第四・ドラゴン女子・パネトーネ参上2

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第四・ドラゴン女子・パネトーネ参上2


「ここが女子力の実が埋まっている畑かぁ」

 目的地にたどり着いた悠、広大な畑を見て異国臭ってモノを吸い込んで吐いたら、女子力の実とはどういうモノ? とスフレに尋ねてみる。

「スイカってあるでしょう? あれよりもうちょい大きいくらいモノ。ただ地中から思いっきり栄養を吸いまくって生命力は宇宙レベルなので、ほとんど世話をしなくてもいいんだ。ここの畑の持ち主だって朝方に必要な分を収穫したら、後は寝てればいいって感じかな。実際一回成ると長らくカタチや味を保ってくれるから、一回ですべてを収穫ってしんどい労働をしなくてもいいんだよ。あと言うなればスイカよりははるかにお腹に溜まる重たい食べ物だって言えるね。だからドラゴンであっても、この畑にあるすべての実を一度に食べつくすっていうのはできない」

 スフレのやや長い説明を聞いた悠、よくわからないがすごいって事だけはわかると思った。そしてドラゴンに必要以上に取られないよう警戒し、取られ過ぎと思ったら戦うのだと心しておく。

「あ、来た」

 言ったスフレが指さす方に目をやれば一体のドラゴンがやってくる姿あり。スフレに言わせると女子力の実を抱える畑はたくさんあるが、ここで成っているのは特に質がよいのだとかなんとか。

「じゃぁ、ちょっと隠れて」

 畑近くにあるぼろっちい小屋の影に身をひそめた2人が見守っていると、一匹のドラゴンが畑というフィールドに到着。バサバサと翼を動かし空中に停止する巨大ドラゴンのサマはファンタジー色の現実というモノ。それ悠の目には絵本の一部が現実に貼り付けられたように映る。

「さて、今日も女子力の実を食べて女を磨きまっしょい!」

 見た目に反するようなかわいい声を出すドラゴンは二足歩行のカタチで宙に浮かび、伸ばした方足を畑にグイっと突っ込み女子力の実を引っ張り出す。巨大にして神秘的な生物であるのだが、うれしそうにウマウマ食事する姿はご愛敬にしか見えない。

「今日は一段と旨いねぇ。これ以上魅力的な女になったらどうしようって思っちゃうよ。うふふ」

 3つくらい食べて食事の後を散らかしたドラゴンは、いったいどこで手に入れるのかはわからないが、首にかけた超デカいポシェットに女子力の実を入れ始めた。毎回ここに来るのは面倒だと鼻歌交じり。

「はい、取りすぎだね。じゃぁ、ひとまずわたしが行ってくるよ」

 スフレはもし何かあったらヘルプしてと悠に伝えてから、その姿をモノ影から陽の当たる場所に出し叫ぶ。
「こらぁ、ドラゴン、それ欲張りすぎ!」

 威勢のいい声は通りがよかった。だからえっほえっほと楽しそうにしていたドラゴンの動きがピタッと止まり、叫び主の方へ向き直ってから大きな声で言った。

「あぁ、おまえはスフレ! 義に反する腐れな女!」

 ドラゴンは畑という領域外へ移動すると、シュワ! っと高速移動してからスフレの前に着地。

「えっと、そっちは誰だっけ?」

 スフレが困った顔を浮かべてつぶやくとドラゴンは怒り交えた声で吠える。

「わたしはパネトーネ。おまえの顔は知っているが、これまでは問題がなかったのでどうでもよかった。実際人間姿になったらわたしの方がおまえよりかわいいし巨乳具合も上だから嫉妬するような必要なんてないから」

「いや、そうじゃなくて……なんで義に反する腐れな女なのかなって」

「もう忘れたのか? スフレって記憶力がない? わたしは昨日友人から聞かせてもらった。スフレはドラゴンのシッポを必要以上に切ったあげく、男とかいう得体の知れない助っ人を使って過剰な暴力を働いたと」

「いや、過剰暴力は言い過ぎ……」

「だまれ! 友人の仇、スフレ、覚悟!」

「まったく……ドラゴンって根に持つんだから……」

 白いパーカーの背中より剣をつかみ取るスフレ、着物地ロングスカートの下半身をグッと落とし身構えた。

「食らえ、女子力ファイヤー」

 かなり怒っているらしいドラゴンの口から赤い炎が噴き出される。

「なんの女子力ウインド」

 スフレが豪快に剣を下から上に斜め切りすると、発生した風が向かってきた炎とぶつかり相殺と化す。

「こらスフレ、女子力とか技の名前を真似るな!」

「いいじゃん……つい張り合ってみたくなっただけなんだから」

 こういうやり取りを隠れ見ながら悠は思った。けっこう平和という仲がいいような気がすると。

「なんか出ていかなくてもいいような気が……」

 スフレがピンチになるならすぐ出て行こうとキモチを固めているが、そのキモチがプリンみたいに柔くなりそうな悠だった。
 だがここでちょっとスフレピンチな展開が生じた。パネトーネがギリギリっと怖い顔になり、それと目を合わせた瞬間……突然にスフレはビリビリっと電流にしばられ身動きが取れなくなる。

「え、え?」

 ドキッとして焦るパネトーネだが身固まりを解除できない。

「あーはははは。女子力の実を食べた直後は女子力パワーが跳ねあがる。スフレとちがって魅力的なわたしの女子力は誰も無視できない」

 勝ち誇った笑いを浮かべるパネトーネドラゴンが宙に舞い始める。バサバサっと翼を動かしずいぶん高くまで舞い上がると、なぜ動けない! と悶えるように束縛から逃れようとするスフレに向かい、クルっと背中を向けて急降下し始める。どうやら全体重をかけてスフレを適度につぶそうと思っているようだ。

「思い知れスフレ!」

 ギュィーンと背中を向けて落下するドラゴン。そのスピードはすさまじいモノがあったが、ひとりの女子を守るために全力ダッシュを始めていた。疾風のごとし悠はスフレをさっと抱き上げ、そのままドラゴンアタックを食らわないところまで逃げ切る。ドーン!!! それはそれはなかなかにすごい音が鳴り響いた。まともに下敷きされていたら危なかったことは明らか。


「むふふ、わたしの女子力が勝った」

 パネトーネは勝ち誇りながら起き上がる。ところが見てみると穴が開いているだけでスフレの姿がない。

「うん? まさかつぶれてぐちゃぐちゃの液体になった? いやいやそこまではしていない。スフレ、どこに行った! 出てこい!」

 グワーッと吠えるドラゴンは怒りながら続けて言った。もし出てこなかったらこっちも義に反する行為に出るぞ! と。

「女子力の実をたっぷりもらうだけでは済まない。この畑の半分くらい燃やしてやるぞ。そうしたらそれ畑を守れなかったスフレのせい。畑の持ち主から石を投げられたりひどい事を言われたりして、女としてふつうに生きられない状況になるはず。それがイヤなら出てこいスフレ!」

 そんなドラゴンの声を小屋の影から聞いていた悠、今度はぼくが行くよと伝えた。スフレはまだ体がピリピリして動きづらいと言うのだから、悠が出向く以外に答えはない。致し方なくごめんね……と口にするスフレ。

「ドラゴン!」

「ん?」

「今度はこのぼくが相手になろう」
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