息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

jun( ̄▽ ̄)ノ

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220・自分VS自分9

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220・自分VS自分9

 
「乙女T(トリプル)スパーク!」 

 閻美が叫ぶと同時に、体から分厚い光線が出る。本人およびかすみと団子って3人の勢いと熱が混ざっているせいなのか、その色はピンクではなくトマトレッドになっている。

「んぅ!」
 
 ググっと気合を入れて体を震わせる閻美、今度は手応えがある! と感じた。実際トマトレッド色な光線は氷に当たるとその威力をすぐに発揮して見せたのである。

「おぉ、氷が大汗っていうか本泣き」

 かすみが興奮するのもムリはない。先は表面をちょっと溶かすくらいしかできなかったが、今度はすぐさま分厚い氷をごっそり本気で泣かし溶かす。

「こ、これってイケるんじゃないの?」

 全身に力を込める団子は大いに期待した。これなら氷を溶かせるという期待感は、その豊満な胸のふくらみ内からこぼれそうになる。

「マジか?」

 ブラック息吹、氷の溶け具合を見てちょっと焦る。グングンと溶けて面積を狭めていくつめたい枠内から、閉じ込められている息吹の体が出てくるのはもうすぐという流れを歓迎はできない。

「そんなにプライドが大事かよ、閻美」

 ブラック息吹は必死になって、汗を流し始めている閻美をののしり始める。プライドがクソに高い女だから、あおって怒りの先が歪めてやればいいだろうと考えての事。

「う、うるさい......だまれ......」

 ののしる相手に言い返す閻美がだんだん疲れ始めている。3人で輪を作ったら、しかもその内の一人である団子はふつうの人間で特殊能力なしだから、年齢もパワーも一番上って閻美がしんどい役になるのは避けられない。本人もそれを承知している。

「なぁ閻美、そんなにがんばって何を得ようって言うんだよ。プライドなんか守ってなんになるんだよ」

「だまれ、だまれ......」

「汗びっしょりだな。そうまでしてプライドのためにがんばってもなぁ、閻美は処女なんだよなぁ。いくらいい女でも爆乳でもプライドが高すぎて男に相手された事がないんだよなぁ」

 閻美、ブラック息吹の言う事は気にしまいと思っていたが、どうしても気になってしまう。だからタダでさえしんどい役ゆえの負担が急激に上昇するのだ
った。

「ハァハァ......」

 閻美の息切れと同時に光線のパワーが落ちる。

「閻美さん、もっとエネルギー、もっとパワー。なんならわたしがその役をやるから」

 かすみは光線ぶっ放しって役を引き受けると言った。実際、氷の溶け具合はすばらしいのだ。もうすぐで息吹の体が出てくる。あともう少し、あともう少しなのだ。

「ぅ......く......」

 ここで大量の汗を流す閻美の目がうつろになってしまう。光線がピタッと止まり、それと同時に閻美のひざが雨降りの地面に落ちる。

「ハァハァハァ......」

 はげしく乱れる呼吸を整え、最後のひと踏ん張り! と思い立ち上がろうとするが、体が重い。立て! という脳の命令を受け付けず、休みたい! というワガママモードに入ってしまっている。

「ハァハァ......あと、あと何分残っているんだ?」

 閻美、両手を水浸しなコンクリートにつけて尋ねる。するとブラック息吹はにんまりして閻美の前にかがみ込む。

「あと5分くらいだ」

「5分......ハァハァ......」

「もうやめろよ、閻美。後2、3分でその体力が回復してフルパワーで息吹を救出するとか、そんな都合のよい物語はムリだって。汗びっしょり、雨に濡れてびっしょり、それって美人で爆乳っていい女が台無しだぜ。おまえみたいなすばらしい女は、白いベッドで愛し合う方がずっといいと思うぞ。だからおれと行こうぜ、ラブホテルのベッドにさ」

 ブラック息吹が哀れなモノをやさしく見るって目つきになって、片手を閻美の前に差し出す。

「誰がおまえなんかとラブホに行くか......」

「強情だなぁ、まぁ、後でたっぷり昇天させてやるんだけどな」

 立ち上がるブラック息吹、後およそ5分を絶望色で過ごしやがれ! と大きな声で笑う。

 だがそのときだった、ふっとまた別の女が現われる。ピンク色の傘をさし、ピンクのパーカーを着崩し、白いタンクトップのすごい豊満なふくらみを淑やかっぽくあざとく見せつけ、つかみどろのない感じの笑顔が似合う女。

「やっほーって......これどういう状況?」

 サキュバス、ずいぶんにぎやかな屋上にある光景を理解出来ない。だからまずは両膝と両手を地面につけている閻美の前にかがみ、どうしたの? と問いかける。

「あ、あぁ......メス犬か」

「閻美さぁ、いきなりそんな表現はよくないよぉ。おぉ、サキュバスか! って言いなさいよね。そんなだから閻美はモテないんじゃないの?」

「う、うるさい」

「で、どういう話が産み落とした状況なのよ、これは」

「あの氷をよく見ろ」

「氷?」
 
 言われてクッと顔を向けると、やけにデカい氷が溶けている最中みたいな無様をさらしている。だが何よりおどろくは、その内側に息吹の姿があるってことだった。

「うん?」

 サキュバス、すぐさま立ち上がって顔の向きを変える。そしてブラック息吹とご対面。

「よぉ、サキュバス。おまえがいたってすっかり忘れていた。なんでおまえみたいなベリーナイスな女を忘れるんだろう、おれってダメな男だ」

 ブラック息吹、おまえがいるなら他の女はもう要らないと言いたげな目でサキュバスに歩み寄る。

「息吹......じゃぁないよね? 似て非なる存在だよね?」

 サキュバスはそう言いながら、相手が触れるか触れないかって絶妙な距離感を持って動かす手を見る。それは自分の爆乳ってふくらみを触りたいと訴えており、明らかに普段の息吹らしからぬという動き。

「おれは息吹が内面に抱えていた欲求不満の具現化だ。なんせあの氷の中にいるやつはいい格好ばかりしやがる。それまで散々女を泣かせたから、もうそういう事はしないとかプライドの高さをウリにして生きる。でもそれでいて内心はさみしいとか思ったりするんだからマヌケだよな。おれみたいに女とやってやりまくりたい! って正直な方がグレイトだよな? サキュバスならわかってくれるだろう?」

 ブラック息吹、サキュバスならすぐさま同意してくれて、すてきねぇと言ってくれて、そのままラブホに直行って流れを勝手に信じる。そしてこの爆乳女とベッドで過ごせるなら、他の女や氷の息吹なんぞ知ったこっちゃないと見捨てるつもりでいる。

「自分で言う?」

 サキュバスはブラック息吹を見て残念な人だねぇとつぶやく目を向けてから続ける。

「さみしいと正直に認めるのはまぁいいとして、女とやりたいってあからさまな男がグレイトっていうのはちょっと痛いねぇ。なんでかわかる?」

「なんでだ?」

「どういう男であれ、結局は女が認めてくれないとダメなんだよ。残念だよねぇ、男は損だよねぇ、でも事実としてさ、どういう男であれ女に気に入られたらグッドであり、そうでなきゃ用無しのクズなんだよ」

「く......」

「息吹の持っている欲求不満の具現化とか言ったよね? でもさぁ、ドストレートになるとダメだね。だってあんたからは、本物息吹が持っているちょっと悪いゆえにかわいいというのが感じられない。ただひたすら真っ直ぐの動物的本能の持ち主と言うだけ。気の毒だけどそれって一番女にモテないんだわ。このわたしみたい、男とセックスするのが大好きって女から見ても魅力は薄いなぁって話なんだよ」

 サキュバス、ズケズケと言われて逆にショックを受けているってブラック息吹を無視し、まずは汗を流しているかすみに近づき、その頬に両手をあてる。

「子ども巨乳、あんたも閻美といっしょにがんばっていたんだ?」

「子ども巨乳って言わないでください」

「あぁん......かわいい、そろそろわたしとセックスしない? そういう気にならない?」

「なんで女のわたしがサキュバスとセックスしなきゃいけないんですか」

「あたらしい扉を開いてみようよ」

「イヤです!」

「ったく子どものくせに閉鎖的なんだから」

 こんな会話したサキュバス、次は団子の前に立って見つめる。とてもやさしい目つきで右手を動かすと、ドキッとした相手の胸、谷間の辺りに手の平を当ててホメる。

「団子も協力したんだ? ふつうの人間だけど、何もしないでいるのは耐えられない、わたしも力になりたいって考え? いいね、そういうの悪くないよ。だからわたしも力を貸してあげる。息吹を氷から救出するために」

 言い終えたサキュバス、閻美に立て! と根性アニメみたいな口調を投げかける。

「わたしも息吹を助けるために協力してあげる。こんな事はめったにないんだから感謝しなさいよ、ほら、早く立って!」

 クタクタになりかけていた閻美だが、残っていた力が最後の馬力として回転し始める。
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