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218・自分VS自分7

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218・自分VS自分7


「く......ぅ......」

 息吹、右手でギュッと揉み掴むモノの圧倒的ってキモチ良さは良しとしながら、左手でひとつでは到底太刀打ちできない団子ブラの背面ホックにはげしくイライラさせられる。

 団子が纏っているブラのホック、5段5つホック。それは女であれば片手でも外せるかもしれないが、男ではとても不可能という話。しかし右手をふくらみから離して背中に持ってくると、団子に逃げられるという流れは確実。

「くぅ......」

 いま、ブラック息吹は一瞬思った。手元にカッターとかハサミを持っていれば、このブラジャーを切って手っ取り早く済ませられるのに......と。

 するとどうだ、手っ取り早く済ませられないというイラ立ちに寄り添ったような展開が発生。

「え、団子さん?」

「団子......な、何をやっているんだ?」

 その2つの声は聞き覚えのあるモノ。なぜなら片方は閻美であり、もう一方はかすみだから。2人はブラック息吹が許せないと思い探していたときに遭遇し、おたがい同じか! ということで協力して探していたのだ。

「い、息吹......息吹が......」

 団子はトロっとした目を浮かべながら、閻美とかすみの2人に訴える。すると一瞬息吹の手が団子の体から離れてしまう。閻美にかすみが出てくるなんて、なんだこの展開は......とか思ったせいだ。

「スキあり!」

 これまで相手に押し込まれまくっていた団子、一瞬の隙ことチャンスを逃しはしない。たとえTシャツをまくり上げられ左右のブラってふくらみが外に出ていても関係ない。投げられる時に投げる! それこそがまさに柔道女の真骨頂。

「おらぁぁぁぁ、息吹ぃ!!!」

 団子の背負い投げがもう解除不能として進行している。

(し、しま......)

 息吹が青ざめるもすべては手遅れ。きれいに決まっていると同時にとてもスピーディーって、それらから逃げるなんて事は誰にもできない。

「あぅぅ!!」

 ズーン! と雨に濡れている路面に投げられた息吹がいる。もしこの場に実況があったら、そいつは大きな声でこう言うだろう。あぁ~っと決まった、これは痛い、息吹モロに決められてしまった、そのままあの世に逝きかねない衝撃を食らってしまったぞぉ! と。

「息吹!」

 激怒する団子、仰向けに倒れすぐには立ち上がれないって息吹の胸板をグッと踏みつける。

「団子さん」

「団子」

 かすみと閻美の2人が傘をさしてやってきた。そしてまだ立ち上がれない息吹を見て、ほんとうなら同情するところだが、ここまでの流れがすぐ理解できるので軽蔑の目線と声を向ける。

「息吹くんサイテー」

「息吹、いつからそんな最低な男になった。これはちょっと裁判にでもかけないといけない話だな」

 かすみと閻美の2人が言う中、忘れていた! とばかり慌ててTシャツを下しブラのふくらみを隠す団子、3人で息吹裁判をやろうと提案する。ここまで女心を踏みにじられてはおおらかに流すことはできないというのが団子の言い分であり、それにはさっくり閻美もかすみも同意。

「ふふふ」

 倒れていた息吹が笑いながら体を起こす。もちろん女3人はとてもきびしい目を向け、何がおかしい! と声をそろえる。

「たしかにおれは息吹なんだけどな、息吹の抱えている欲求不満という部分の具現化なんだよ。言うなれば中身が真っ黒ってことでブラック息吹とかいう感じのモノなんだよ」

「息吹くんが何の欲求不満を持っているというんですか?」

 かすみがさっそく噛みついた。それはきれいじゃない話はキライだ! というピュアな心に満ちた声色。そして閻美も団子にもそういう感じの目というのが浮かぶ。

「ったく、おまえら揃いもそろってガキかよ。世の中そんな単純じゃねぇんだよ。特に男はっていうのはな」

 立ち上がったブラック息吹は笑いながら3人の女に教えてやる。息吹、この男は女好きでぶっ飛んだ数の女とセックスしまくりのポイ捨てという人生をやったあげく、ホストとして客の女に刺された。ふつうなら話はそこで終わり。クソな野郎が自業自得で死んだとしか言い様がないだけ。

「しかし息吹は生き返った。そうしたら心を入れ替えるとかさ、以前の自分を悔いるとか恥じるとかさ、アホかよってくらい高い意識を持つようになった。おれは安っぽい意識とか話が嫌いだって、そういうのは一見すると立派に聞こえたり見えたりするよな? でも実際には小学生とか中学生みたいって話なんだよ。生前の悪童と大して変わらない幼稚って事なんだよ。表面が天使っぽいというだけで、中身はやっぱりガキなんだよ。正義の味方! みたいな感じのガキ。だからだ、息吹の心にはいつも燃えカスみたいなのがあって、たまには......以前みたいにかんたんな流れで女とセックスしたいとか思ったりするわけだ。そういうのが心の本音ってやつであり、それがこのおれ」

 長い語りをブラック息吹がやり終えたら、また女3人は口をそろえた。ほんとうの息吹はどこにいる? と。

「あぁ、ほんとうの息吹とかいうのは氷漬けにしてやった」

「こ、氷漬け?」

「高い意識だのプライドだの、そういう熱量で溶かしてみやがれ! と言ったが、まだ出て来ないって事は溶かせていないんだ。クク、しょせんはその程度なんだよ、プライドとかいうクソなものは」

 ブラック息吹、かったるいからこの場を立ち去ろうかと思ったが考えが変わった。

「氷漬けの息吹がいる場所に案内してやるからついて来い。そこでおまえら3人、痛い目に遭わせてやるぜ。そしてそれが終わったら、一人ずつ食う、絶対に食う。怖いか? だったら来なくてもいいけどどうするよ?」

 こう言われたら閻美とかすみは行くに決まっていると即答。特殊能力を持つ自分たちが真正面から戦って負けるわけがないと思うゆえ。

「わ、わたしも行きたい......」

 団子は柔道の鬼ではあるが特殊能力を持っていない。だから閻美やかすみのような動きは取れない。しかし自分だけ置いて行かれるのはガマンならないとして、閻美もしくはかすみのどちらかにおぶってくれと目で訴える。

「は、はぁ? なんでわたしが団子みたいな爆乳を背中におぶわないといけないんだ」

 閻美は露骨にイヤがった。自分は爆乳女であるからして、同じような女を背中におぶるなどまっぴらごめんだと拒絶反応がすごい。

「子ども巨乳、おまえがおぶってやれ」

 閻美に言われてかすみは慌てて拒否反応を浮かべようとする。しかしすでに後ろから団子がピタッと抱きついている。

「ぅ......」

 同じ女の熱とニオイ、そしてかすみがもつFカップってふくらみよりさらに豊満なモノがムニュっと背中に当たる。

「ありがとうかすみ、感謝!」

 まだかすみが同意したわけではないはずだが、最初にお礼を言って相手が断れないようにするなど、団子もなかなかやるなぁという話。

「わかりましたよ、もう」

 腹立たしさをエネルギーに! という風にして団子という女を背負う。こうして3人の女は氷漬けにされているという息吹と対面すべく、ブラック息吹の後についていくこととする。雨降りの中、建物の壁を走ったり、ビルからビルに飛び移ったりなどしながらお目当ての場所へ向かっていく。
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