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216・自分VS自分5

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216・自分VS自分5

 
「ん……」

 ただいま御手洗団子がとある建物の前に立っている。それは雨宿りしているようにも見えなくもないし、誰かを待っているように見えなくもない、もしくは外にずらーっと並んでいるガチャをやっている女と見えなくもない。

 が、しかし……実際のところは○○書店という建物の中に入りたかった。いや、もっと細かいことを言えば中の4Fに入って最上階こと大人フロアに行きたいと思っていた。それは言うまでもなくさみしい女心って隙間を埋めるための、人には言えないアイテムを買うため。

(ん……)

 柔道で数多くの相手を投げまくってきた爆乳女子だというのに、恥じらいに豊満な胸をギュッと締め付けられなかなか店に入れないでいた。

(あ、あれ?)

 ここで団子はフッと予想もしない光景を目にした。

「ちょっと待てよ」

 雨の中、傘を持っている息吹が傘を持ってちょっと先行く女を追いかけている。

(え、あれって誰?)

 息吹が言い寄っている女にはまったく見覚えとか認識って言葉が湧かなかった。かといって親しい間柄みたいには見えない。それどころか痴話喧嘩みたいって安っぽい感じがあるように感じられる。

「ラブホに行くって言ったじゃねぇかよ」

「ラブホに行ってもいいかなとは言ったけど、行くとは断言していない」

「ふざけんなよ、ラブホに行くって話だからこそパフェをおごったんだろう」

「たかがパフェでケチくさい……」

「ひとつ6000円もするパフェを食っておいてケチくさいもクソもあるか」

「あんた見た目すごくモテそうな感じだけど、意外と底辺な男? 女がダメって言ったらダメなのよ」

「なんだと」

「ふん、男なんて……女の同意がなければ使い物にならない鍵を持ってさまようしかできない生物」

「く……」

 こんな会話が降り注ぐ雨音を潜り抜けるようにして団子の耳に入った。それはもうびっくりする以外にない内容だった。
 
 (へぇ?)
 
 一瞬、ほんとうに息吹? と疑って目をこすったものの、どの角度からどう見ようと息吹としか映らない。安っぽい話を嫌うとか、女に誘われてもかんたんには靡かない、それが団子の知る息吹という男。
 
「くっそ!」
 
 女に逃げられたからって大きな声で腹を立てる男というのは、傍から見るとみじめな事この上ない。
 
「息吹!」
 
 だまっていようかとも思っていたが、ついつい反射的に息吹の名前を口にする団子だった。
 
「うん?」

 息吹、ふっと○○書店の入り口に目を向ける。そうするとそこには、白無地のTシャツがすごい豊満! って目立つその上に、水色のロングシャツをはおり、下はややグリーンなジーンズって女がいる。

「あ!」

 途端に息吹の顔がニンマリとなる。まるで最愛の存在に出会えてうれしい! と無邪気によろこぶ少年みたいな顔だから、それを目にする団子の豊満な胸のふくらみはちょっとばっかりクゥっと刺激を食らう。

「団子、そうだよ、団子がいたんだよ」

 やってきた息吹、うれしそうな顔で傘をたたむ。

「わたしがいるって……どういうこと?」

 なんか息吹の感じがいつもとちがうと思いつつ、豊かな胸をドキドキさせられる団子。

「団子……」

 息吹は爆乳女子を店の側面に引っ張り込む。表通りからちょっと脇に入ったってところで人目に触れる度合いを減らせる。

「な、なに……」

 頬が赤らむ団子、なにこの感じ? と違和感とか覚えながらも妙な期待を持ってしまう。

「団子……おまえっていい女だよな」

「え、なに急に……どうしたの?」

「いい女だと言っているんだよ、ちがうのか?」

「ぅ……そ、そりゃぁ悪い女じゃないけれど」

「おれが言っているのは善悪とかそういう事じゃない。本質的にいい女だよなぁって言っているんだ。

 息吹が女心の隙間に入りたいと訴えるような目を浮かべると、ドキッとした団子は身固まりを起こしてしまう。

「団子……」

 息吹の手が団子のロングシャツ内部にあるTシャツ、ちょうどプクッとやわらかい谷間の辺りに向かう。でも触れるでありながら触れない。触れたいとしながら触れないせつなさが手の平からふくらみに見えない電気として向かっていく。

「団子、さみしいよぉ……さみしいんだよ」

「え、ど、どうしたの?」

「言葉通りだ。さみしくてたまらない。だから……」

「だ、だから?」

「団子のこの胸に抱かれたい……抱かれたいよぉ……ダメか?」

「きゅ、きゅ、急に何を……」

「魅力的な女が持っているオーラ、ニオイ、体温、質感、手触り、そういうのが欲しい。だっておれ一人ではさみしいだけで何も解決しない。受け止めてくれる女がいないと……さみしさなんて薄まりさえしないんだ」

 これはほんとうに息吹? と疑わざるを得ない団子。しかし息吹にしか見えない相手であることは否定出来ない。よってグイグイと引き込まれるように感じて目が意識が少しずつとろけそうになる。
「団子……」

「な……なに……」

「団子って爆乳だよな……触りたい……触ったらダメか?」

「ば、バカ……こんなところで……」

 後ずさりしかける団子だが、真後ろには建物のカベがある。だからギューッと押し込まれるような圧力に抵抗力がどんどん削がれていく。

「ぅ……」

 団子の顔面がルビーグレープフルーツのように赤くなった。なぜならやんわり攻め込んでくるような相手の手の平が谷間に当てられたからだ。

「ぅ……ん……」

 ビクン! となってしまう団子は、手の平がせつないエロスってエモーショナルな動きをするからだ。つまりふっくらとやわらかい谷間を何度も味わうように押したりするからだ。

「団子……お願いがある」

「お、ぅお願?」

「ラブホに行こう……団子の爆乳に甘えたい」

「そ、そんな事……いきなり言われても……」

「じゃぁ、ここでやろう、いいだろう?」

「や、やるって何を?」

「セックス。ここで愛し合おう、いいだろう?」

「どっちもダメ……っていうか、どうしたの息吹?」

 団子はブルブルっと震えながら、息吹がトチ狂った! と思う。そして、今の息吹だったらほんとうに変な行動を起こしそうで怖いとも思うのだった。
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