息吹アシスタント(息吹という名の援護人)

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182・ホレた女のために戦え7

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182・ホレた女のために戦え7


 フフフっとゲス笑みを浮かべたエロ魔人、どこからともなく……今度は弓矢を取り出す。

「ま、心配するなグラディアートルよ。アタマを撃ち抜いてどうのってわけじゃない。一発刺さったらジ・エンドって殺傷力ってわけでもない。おまえが耐え忍んで立ち続けられるか、それを試す程度の痛みってことだ」

 言いながらエロ魔人は構える。そしてギリギリって攻撃間近という音を立たせる。

「ぅ……このグラディアートル、何をされようと絶対に倒れない」

 顔面から血を流すグラディアートル、今はまともな戦闘能力がない。だから持てる余力をすべてつぎ込み、おのれの言葉はウソではないという証明しようとする。

「では始めようか、グラディアートル」

 エロ魔人、言い終えるとすぐに光の矢を一本放つ。ヒュッと軽い音が生じたら、やんわり流れるようなスピードで危険物が飛んでいき、それはグラディアートルの胸板右側にブッ刺さる。

「く……ぅ、たかがこの程度」

 グラディアートルは顔に汗をかきながらも、大したダメージは受けていないと気合を入れる。するとどうだ、光の矢が体から押し出され地面にポトっと落下した。

「おぉ、ではガンガン行こう」

 エロ魔人、続けて新しい矢を放つ。しかしそれは飛ぶスピードが速いだけではなかった。グラディアートルが受けて立とうと気合を入れると、一本だったモノが突然に数本と増える。

(な……)

 ギョッとした次の瞬間、胴体のあちらこちらにブスブスっと光の矢達ちが突き刺さる。

「あう……ぅ……」

 全身に回るはげしい痛み。先の一本とちがい、耐え難い痛みが人の感覚すべてに襲い掛かる。

「く……」

 震えながら気合を入れたら、刺さっていた矢の数本が抜け落ちる。しかし軽い出血も生じ、グラディアートルの両目が回り足がガクっと落ちそうになってしまう。

「おっと、倒れるなよ。おまえは立ち続けるとか行ったんだからな。どんなに無様晒しても立ち続けなければいけない」

「ふん!」

 また放たれた矢、それが勢いよく飛び数本になってグラディアートルの体に情け容赦なく突き刺さる。

「あぅう……」

 今度は後ろに倒れそうになる。思わず両腕が動き、顔面は上を向き、両氏が立つ事を拒否しかける。しかし、ハァハァ息を切らしドロドロの汗を流しながらもグラディアートルは持ちこたえる。

「ったく、しぶとい……グラディアートルよぉ、おまえそこまでして閻美にホレてもらいたいか? おまえってつよい男なんだろう? それをこんな事に使っていいのかよ。女なんてたくさんいるじゃねぇか。まぁ、閻美みたいな美形にしてIカップの爆乳っていうのはレアだろうが、0ではないはず。探せばいい女で爆乳っていうのはいるはず。それを探せばいいだろう。閻美はこのおれに譲って、おまえは閻美には劣るけど仕方ない……というあきらめにふさわしい女とヤレばいいんだよ」

 言うエロ魔人、弓矢の遊びにも飽きてきたという顔になり、早く倒れろよと愛想が尽きたという感じを生々しく浮かべる。

「エロ魔人、貴様は真正のゲスだ……」

「なんだと」

「貴様からは……女性に真剣な想いを寄せたという経験がないように感じる。だからおまえに閻美殿という、誇りを持っている女性は似合わない。だからこのグラディアートル、何をされようと言われようと倒れたりはしない!」

「うぜぇ……」

 これだからバカの相手はイヤなんだよと言いたげな顔するエロ魔人、一本の矢をグラディアートルの右太ももに向かって放つ。それは猛烈なスピードで気前よくズブっと刺さり、尋常ではない痛みを男に与える。

「ぁ……くく……」

 ガクっとなるグラディアートル、倒れるモノかと踏ん張るがもはやまっすぐしっかり立つのは難しくなっていた。だから体がグラグラと揺れ、もの悲しい敗北はすぐそこにあるという空気にまかれている。

「女性に真剣な想いを寄せたことがないだって? あるつーんだよ、いつだって女と一発やりたいって、何より真剣に思っている、それが男ってもんだろう。それからするとグラディアートル、おまえはすこぶる情けない男だ。それがなぜか教えてやろう」

 震えるグラディアートルに接近し真正面に立つエロ魔人、倒れるモノかとがんばっている男を見ながらグッと右手をにぎると……それを思いっきり土手っ腹にぶち込んでやる。

 ズーン! それは実に重たくきびしい一撃だった。グラディアートルは表情を動かす事ができなくなり、苦しそうにピクピクって反応に陥る。だがそれでも倒れようとはしない。

「グラディアートルよぉ、おまえ筋肉ばかり鍛えて女と付き合うって積極性を磨かなかっただろう? だからおまえは、つよい男になっても中身が中学生みたいなレベルってことだ。で、おまえみたいなやつは自分のピュアを正義とする。男が本来持っている性欲をうす汚いと見る。でもよ、おまえも同じ男だろうが。閻美にホレて愛されたいと欲している時点で、おまえもおれとまったくの同類でゲスなんだよ、わかるか!」

 エロ魔人、怒りの一撃とも言うべき右ストレートを相手の顔面に火の玉みたいな勢いで撃ち込む。

「ぐ……ぅ……」

 ぐらーっと殴られた男の体がグラつく。しかし……まだ倒れない。それもう気力とかプライドという名前の化け物だ。だからエロ魔人はグラディアートルを散々に殴りながら言い続ける。

「グラディアートル! 閻美に好かれたいっていうのは、閻美みたいな爆乳とやりたいって事だろう、それはおれが抱く性欲と同じ低レベルって事だろう。自分だけいい格好してるんじゃねぇよ、筋肉ばっかり鍛えて女に疎いって自分を反省しろよ。そして早く倒れろってんだよ、この……クソ野郎が!」

 殴る、殴る、殴る、殴る、エロ魔人がグラディアートルを殴る。そして怒りの沸騰という一撃がボディーに放たれたとき、口から血を流すグラディアートルの表情が少し変化する。

「く……」

 それはとても腹立たしく……とてもくやしいと心で泣く事を受け入れてしまったという面。だからついに耐え切れずグワーっと後ろ向けに倒れていくとき、うっすらと流れ出る涙が風に乗ってしまう。

 ドーン! ついにグラディアートルが仰向けにぶっ倒れた。そして背中を地面に預けた瞬間、体力、気力ともに0となり、大げさに言えば指一本動かすのも大変な苦痛という状態になってしまう。

 やっと倒れやがったとため息を吐いたエロ魔人、立ち上がれない男に近づくと、その胸板をグッと踏みつけながら言い放つ。

「グラディアートル、くやしいか? 涙が止まらないか? 閻美にいい格好見せたかったのに残念だよなぁ。閻美にホレてもらうチャンスが消えたよなぁ。あ、もしかしてあれか? 気の毒って同情から恋愛に発展し、その流れによってあわよくばベッドで愛し合う関係になりたいとか密かに思うか? それでもいいけどよ、その前に閻美の爆乳はおれが食う。おまえは残り物にしゃぶりつくってオチなんだよ、わかったか!」

 勝ち誇るエロ魔人、悔し涙を浮かべながら動けない者の胸板をグリグリ踏み回しながら天に向かって言ってやる。

「勝者はすべてを得る。そして女は悪い男にホレる。そうだぞグラディアートル、女がやさしい男にホレるなんて夢を見たおまえがすべて悪い。それがこの醜態につながったんだ。いい勉強になっただろう? あーあははははは!」

 かくしてエロ魔人、これで心置きなくゆっくりと閻美の爆乳に甘え昇天する事ができるなぁとニヤニヤ。

 が、しかし! ここで突然にゆるい風が吹いたと同時に空気が揺れ、ふっと突然にひとりの見知らぬ男が出現した。まるで四次元から三次元に移動して姿を現わしたみたいな感じだった。
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