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54・売る側と買う側10
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54・売る側と買う側10
「何がなんでもこの目で確認する。殺すのはそれからでも遅くない」
鳥子はそんな物騒な事を言いながら、会社が終わると大急ぎも大急ぎで変装した。それは卓郎を尾行するためのモノであるからして、似合っていないとか不細工とか気にしている場合ではない。
「えっと、地味マスク……かわいいわたしには悪でしない黒縁メガネ、ダサいマフラーなどなど、ばっちり! これならどこの不細工? って感じだけど、アイテムを除けば元のかわいいわたし! だものね」
そんな格好になったらさっそく退社って卓郎の尾行を開始。鳥子としてはどうしても見てみたかったのである。かわいくて爆乳なんて女を非モテの卓郎がゲットできるモノなのか? それはほんとうなのか? と。
「もしかするとウソをついているかもね。本当はおぇぇ! って吐きそうになるようなブスかもしれない。それくらいのブスなら爆乳でも許せる。あるいはかわいいけど実は見栄っ張りな非巨乳とか。そうだよ、そうに決まっている。腹子がわたしをからうかためにウソを言ったんだ」
ひとりブツブツやりながら卓郎を追跡。すると〇〇書店というのが見えてきたところで、卓郎が急に右腕を上げて振り出した。それは後ろから見ている姿だが、よろこびの感情というのが露骨に出ている。
「ん?」
電柱の後ろに隠れると、ちょい顔を出して書店の方に目を向ける。そうすると伝えられている情報の女! というのが一人すぐ目に入る。
「あ、あの女?」
鳥子が見たのはちょい短めっぽいショートレイヤーのよく似合う女、色白ふっくらで22歳くらいに見える。ちょっとテレくさそうな顔をしながら卓郎に向かって手を振るとき、なんとも素朴なかわいさがたっぷり浮かぶ。上はネイビージャケットで下は無地の白Tシャツ、そしてカジュアルチェックの黒ロングスカートという格好であるが、靴? などと気にする余裕がなかった。なぜならネイビージャケットの下にあるTシャツのふくらみ具合を見てしまったら、もうそれしか目に入らない、それしか考えられない、まるで男みたいに。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
思わず大きな声をだしかけてしまった。なぜなら白いふくらみ具合の豊満でやわらかそうなフォルムは、同じ女の鳥子の感情をギュッとつねるように感じさせたから。下にある谷間や白いフルカップが透けて見えるというのも目にし、鳥子はワナワナ震えながらつぶやく。
「え、え……うそ……あれってバスト何cm? 90cmとかじゃないはず、もしかしたら100cmくらいかも。で、だったらブラって何カップ? まさか女神の到達点とか言われるIカップとかじゃ……名前は? 女、あんた乳が豊か過ぎでしょう! で、でも……きれいな美爆乳っぽいふくらみ具合とか、なんかムカつく、っていうか超ムカつく!」
うぁぁぁぁぁぁぁ! と叫びたいのをガマン。ガンガンと電柱に額をぶつけたくなったのもガマン。その代わり、握った右手で電柱を数回叩くくらいの事はした。
「じゃぁ、行きましょうか」
本屋の前でちょっと駄弁っていた卓郎が言う。そうして優子がうなづいたとき、後ろから通り過ぎようとした誰かにドンと押された。だから優子が思わずコケそうになる。
「きゃ!」
「あぶない!」
卓郎はとっさに男としてあるべき反応を見せる。いとしい人をコケさせてはいけないと、さっと正面に立ち受け止める。するとフワーっと優子からいいニオイが伝わる。そして卓郎の胸板に、ムニュっとすごい豊満でやわらかい弾力が当たってしまう。
(あぅ……)
すごい豊かさ、すごいやわらかい弾力、なんというキモチよさ! と思いかけたが、そういうのを横に蹴り飛ばす卓郎だった。
「ご、ごめんなさい……」
優子、顔を真っ赤にして卓郎から離れる。
「い、いえ……優子さんにケガがなくてよかった」
卓郎もちょっと顔を赤くしてアタマをかく。
「くぅ……」
2人のやり取りを見ていた鳥子、腹が立ってたまらない。すぐそこに路上駐車されている白い車に本気の飛び蹴りをかましたくなる。
「なにがキャ! とか、なにがあぶない! とか、ふざけんなつーんだよ。コケろつーんだよ、女! コケて顔面血だらけになれつーんだよ。っていうか卓郎もエロい。おまえしっかり揺れる乳を味わっただろう。それがあるから助けたんだろう、あぁ!」
鳥子は一人発狂していた。いや、ただ一人狂うだけでは目立つからスマホを耳に当て電話でケンカしているように見せかける。そういう演技も抜きで一人ギャーギャーやるとグリーンの救急車を呼ばれかねない。
「そう言えばさっき……優子さんにケガがなくてよかったとか言ってたような気が……だったらあの女の名前は優子? 優子……」
卓郎が恋しい感情から優子って心の中で何度もつぶやくのに対し、鳥子の場合は憎しみから何度も優子とこぼす。
「ふざけんなよ優子……おまえみたいな女は爆乳AVギャルでもやればいいんだよ。それをなに一般でかわいく振舞っているわけ? あざといんだよ、優子、おまえクソ豚!」
鳥子はひたすら2人を尾行した。2人がパスタ専門店に入って食事する間は外でひたらす待ち続け、また尾行を開始する。憎い……と思いながら尾行せずにいられない歯がゆさが鳥子を動かしている。
「あ、あの優子さん……」
「は、はい……」
「て、手をつなぐとか……やってみたいって言ったら怒ります?」
「手ですか? こんな感じで?」
優子がテレながらもサラっと卓郎の手を握る。すると卓郎は相手のやわらかくやさしい手にたまらずうっとりする。
「す、すごくキモチいい……」
卓郎のその声は隣の優子に聞こえたか聞こえなかったか微妙な感じがあった。しかしどうして、離れているはずの鳥子はしっかり聞き取った。どうやら怒りによって聴力が常人の何十倍も上がっているようだ、今の鳥子は。
そして卓郎と優子が喫茶店、恋人たちの見つめ合いカフェに入ったのを見ると、鳥子はすぐ近くのブックオフに突進。階段を上がって中に入ると、そのままわき目も振らずトイレに駆け込み、ミラーの前に立った。
「ふざけんなよ卓郎……なにがすごくキモチいい……だ。たかが優子の手を握ったくらいで夢見るような目をして……そんなに優子の手がキモチいいのかよ!」
鳥子、バンダナハンカチを取り出す鳥子、それを右手にグルグルっと巻くと、怒りの感情と共にグググっとつよくこぶしを握る。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
発狂の一撃! 鳥子の右ストレートが眼前のミラーにぶちかまされた。するとどうだ、ビキビキっと音が鳴った後、ミラーは粉々に砕けったではないか。今の鳥子なら右ストレート一発で野生のトラを殺せるかもしれない。
「こうなったら……殴るだけでは気が済まない。できれば使いたくないと思いながら、一応持ってきたこれを使うしかない」
鳥子、かなりデカいジャックナイフを取り出した。でっかい鏡を粉々にした右ストレートと極まりないジャックナイフ、この2つで優子というかわいく美爆乳の持ち主という女をあの世に送ろうと考える。
「優子、人の男を奪ったらどうなるか教えてあげるよ。卓郎はわたしの男なんだ、だから横取りしようとしたおまえはあの世に旅立つべきなんだ」
もはや優子に対する逆ギレとも言いがかりとも取れるようなつぶやきをかましたら、あの喫茶店に乗り込みさっそく優子の血染め送別会をやると意気込む。表向きは冷静に、胸の内には汚い爆弾を抱えながらトイレから出て歩き出す。そう、鳥子はほんとうにやる気でいる。
ウィーンと開いた自動扉を抜け外に出る。そして階段を駆け下りようとしたとき、下に立っていて自分を見上げる者が一人いると発見。それは気のせいでもなんでもなくたしかに自分を見ていて、しかも以前にあったような記憶がある。それが誰だったか? と考えるまでもなく、鳥子は思い出した名前を口の外に出す。
「息吹……」
「何がなんでもこの目で確認する。殺すのはそれからでも遅くない」
鳥子はそんな物騒な事を言いながら、会社が終わると大急ぎも大急ぎで変装した。それは卓郎を尾行するためのモノであるからして、似合っていないとか不細工とか気にしている場合ではない。
「えっと、地味マスク……かわいいわたしには悪でしない黒縁メガネ、ダサいマフラーなどなど、ばっちり! これならどこの不細工? って感じだけど、アイテムを除けば元のかわいいわたし! だものね」
そんな格好になったらさっそく退社って卓郎の尾行を開始。鳥子としてはどうしても見てみたかったのである。かわいくて爆乳なんて女を非モテの卓郎がゲットできるモノなのか? それはほんとうなのか? と。
「もしかするとウソをついているかもね。本当はおぇぇ! って吐きそうになるようなブスかもしれない。それくらいのブスなら爆乳でも許せる。あるいはかわいいけど実は見栄っ張りな非巨乳とか。そうだよ、そうに決まっている。腹子がわたしをからうかためにウソを言ったんだ」
ひとりブツブツやりながら卓郎を追跡。すると〇〇書店というのが見えてきたところで、卓郎が急に右腕を上げて振り出した。それは後ろから見ている姿だが、よろこびの感情というのが露骨に出ている。
「ん?」
電柱の後ろに隠れると、ちょい顔を出して書店の方に目を向ける。そうすると伝えられている情報の女! というのが一人すぐ目に入る。
「あ、あの女?」
鳥子が見たのはちょい短めっぽいショートレイヤーのよく似合う女、色白ふっくらで22歳くらいに見える。ちょっとテレくさそうな顔をしながら卓郎に向かって手を振るとき、なんとも素朴なかわいさがたっぷり浮かぶ。上はネイビージャケットで下は無地の白Tシャツ、そしてカジュアルチェックの黒ロングスカートという格好であるが、靴? などと気にする余裕がなかった。なぜならネイビージャケットの下にあるTシャツのふくらみ具合を見てしまったら、もうそれしか目に入らない、それしか考えられない、まるで男みたいに。
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ!」
思わず大きな声をだしかけてしまった。なぜなら白いふくらみ具合の豊満でやわらかそうなフォルムは、同じ女の鳥子の感情をギュッとつねるように感じさせたから。下にある谷間や白いフルカップが透けて見えるというのも目にし、鳥子はワナワナ震えながらつぶやく。
「え、え……うそ……あれってバスト何cm? 90cmとかじゃないはず、もしかしたら100cmくらいかも。で、だったらブラって何カップ? まさか女神の到達点とか言われるIカップとかじゃ……名前は? 女、あんた乳が豊か過ぎでしょう! で、でも……きれいな美爆乳っぽいふくらみ具合とか、なんかムカつく、っていうか超ムカつく!」
うぁぁぁぁぁぁぁ! と叫びたいのをガマン。ガンガンと電柱に額をぶつけたくなったのもガマン。その代わり、握った右手で電柱を数回叩くくらいの事はした。
「じゃぁ、行きましょうか」
本屋の前でちょっと駄弁っていた卓郎が言う。そうして優子がうなづいたとき、後ろから通り過ぎようとした誰かにドンと押された。だから優子が思わずコケそうになる。
「きゃ!」
「あぶない!」
卓郎はとっさに男としてあるべき反応を見せる。いとしい人をコケさせてはいけないと、さっと正面に立ち受け止める。するとフワーっと優子からいいニオイが伝わる。そして卓郎の胸板に、ムニュっとすごい豊満でやわらかい弾力が当たってしまう。
(あぅ……)
すごい豊かさ、すごいやわらかい弾力、なんというキモチよさ! と思いかけたが、そういうのを横に蹴り飛ばす卓郎だった。
「ご、ごめんなさい……」
優子、顔を真っ赤にして卓郎から離れる。
「い、いえ……優子さんにケガがなくてよかった」
卓郎もちょっと顔を赤くしてアタマをかく。
「くぅ……」
2人のやり取りを見ていた鳥子、腹が立ってたまらない。すぐそこに路上駐車されている白い車に本気の飛び蹴りをかましたくなる。
「なにがキャ! とか、なにがあぶない! とか、ふざけんなつーんだよ。コケろつーんだよ、女! コケて顔面血だらけになれつーんだよ。っていうか卓郎もエロい。おまえしっかり揺れる乳を味わっただろう。それがあるから助けたんだろう、あぁ!」
鳥子は一人発狂していた。いや、ただ一人狂うだけでは目立つからスマホを耳に当て電話でケンカしているように見せかける。そういう演技も抜きで一人ギャーギャーやるとグリーンの救急車を呼ばれかねない。
「そう言えばさっき……優子さんにケガがなくてよかったとか言ってたような気が……だったらあの女の名前は優子? 優子……」
卓郎が恋しい感情から優子って心の中で何度もつぶやくのに対し、鳥子の場合は憎しみから何度も優子とこぼす。
「ふざけんなよ優子……おまえみたいな女は爆乳AVギャルでもやればいいんだよ。それをなに一般でかわいく振舞っているわけ? あざといんだよ、優子、おまえクソ豚!」
鳥子はひたすら2人を尾行した。2人がパスタ専門店に入って食事する間は外でひたらす待ち続け、また尾行を開始する。憎い……と思いながら尾行せずにいられない歯がゆさが鳥子を動かしている。
「あ、あの優子さん……」
「は、はい……」
「て、手をつなぐとか……やってみたいって言ったら怒ります?」
「手ですか? こんな感じで?」
優子がテレながらもサラっと卓郎の手を握る。すると卓郎は相手のやわらかくやさしい手にたまらずうっとりする。
「す、すごくキモチいい……」
卓郎のその声は隣の優子に聞こえたか聞こえなかったか微妙な感じがあった。しかしどうして、離れているはずの鳥子はしっかり聞き取った。どうやら怒りによって聴力が常人の何十倍も上がっているようだ、今の鳥子は。
そして卓郎と優子が喫茶店、恋人たちの見つめ合いカフェに入ったのを見ると、鳥子はすぐ近くのブックオフに突進。階段を上がって中に入ると、そのままわき目も振らずトイレに駆け込み、ミラーの前に立った。
「ふざけんなよ卓郎……なにがすごくキモチいい……だ。たかが優子の手を握ったくらいで夢見るような目をして……そんなに優子の手がキモチいいのかよ!」
鳥子、バンダナハンカチを取り出す鳥子、それを右手にグルグルっと巻くと、怒りの感情と共にグググっとつよくこぶしを握る。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
発狂の一撃! 鳥子の右ストレートが眼前のミラーにぶちかまされた。するとどうだ、ビキビキっと音が鳴った後、ミラーは粉々に砕けったではないか。今の鳥子なら右ストレート一発で野生のトラを殺せるかもしれない。
「こうなったら……殴るだけでは気が済まない。できれば使いたくないと思いながら、一応持ってきたこれを使うしかない」
鳥子、かなりデカいジャックナイフを取り出した。でっかい鏡を粉々にした右ストレートと極まりないジャックナイフ、この2つで優子というかわいく美爆乳の持ち主という女をあの世に送ろうと考える。
「優子、人の男を奪ったらどうなるか教えてあげるよ。卓郎はわたしの男なんだ、だから横取りしようとしたおまえはあの世に旅立つべきなんだ」
もはや優子に対する逆ギレとも言いがかりとも取れるようなつぶやきをかましたら、あの喫茶店に乗り込みさっそく優子の血染め送別会をやると意気込む。表向きは冷静に、胸の内には汚い爆弾を抱えながらトイレから出て歩き出す。そう、鳥子はほんとうにやる気でいる。
ウィーンと開いた自動扉を抜け外に出る。そして階段を駆け下りようとしたとき、下に立っていて自分を見上げる者が一人いると発見。それは気のせいでもなんでもなくたしかに自分を見ていて、しかも以前にあったような記憶がある。それが誰だったか? と考えるまでもなく、鳥子は思い出した名前を口の外に出す。
「息吹……」
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