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なぐさめて欲しい小恋ちゃんと巨乳女子になった真治2
しおりを挟む「ふわぁ……」
いま、学校へ向かう途中において中くらいのアクビをこしらえたのは小恋である。
「小恋、寝不足?」
となりを歩く友人に気遣われると少しうれしい。なぜなら最近の小恋はあきらかに欲求不満だった。世間でいうところの承認欲求に飢えまくっていた。
「魔法少女やるのも大変だよね。まぁ、でも応援してるからさ、がんばってよ」
小恋を気遣う友人のこのセリフ、これがちょっとしたミソ。なぜなら小恋はもうすでに魔法少女だと世間にバレている。ふつうなら大騒ぎとかチヤホヤされてアイドルになるとか起こりそうなモノだが、そんなことはなかったのである。
みんなおどろくのは最初だけ。そのあげく、魔法少女は世のために働いて当たり前と思うようになって感謝しない。だから最近、もっと感謝されたいなぁと思う小恋だった。
「キャー」
ここで突然に女性の叫び声が発生。立ち止まった2人が声した方に目を向けると、どうやら女性が後ろから来た男にバッグをひったくられたらしい。
「小恋、魔法処女の出番だよ、がんばって!」
友人はファイト! と応援するが、行って当たり前、おまえはみんなのために頑張るのが当然という感じが小恋を萎えさせる。
面倒くさいし……放っておこう! と小恋は言えるなら言いたかった。でも正義の味方だって正体がバレたあげく、がんばってね! とエール送られるようになったいま、小恋の私事は強制される仕事になっていた。
「では行ってくる!」
表向きは元気いっぱいに小恋はダッシュ開始。女性からバッグを奪いとって逃亡中の男を追いかけ始める。
「女の敵、卑劣な犯行、そういうのは許さない」
ギュイーン! っと走りながら加速する体からはピンク色のエフェクトが発生している。そして両足が地面から離れ、空飛ぶ戦士となって犯罪者に迫る。
「あ、やべぇ……魔法少女とかいうガキだ……うぜぇ……ガキの正義とかマジでうぜぇ」
男、後方からすごい勢いで迫ってくる存在をちらっと見て焦る。だったらバッグを返して許しを乞うか? と思ったりした。だが走りながらバッグの中を見たら現金がいっぱい!
「逃げる、逃げ切る、この金はおれのモノだ!」
この世は正義よりも金だ、金こそはすべてに勝る! という思いに自分を傾けた。だから男は道がたくさんあって迷宮みたいな裏通りへと逃げ込む。
「ん?」
小恋、スタっと着地して両足を地面につけた。狭い道が何本もあって直線が少ない。つまりレースで言うと最高速度で追いかけるのが困難だというところ。
(ケッ、なにが魔法少女だ。そういうのはガキが寝ている間に見る夢シアターって話で十分なんだよ)
逃げ切れると思った男、ざまーみやがれ! と笑いながら心の中で魔法少女を罵倒する。
逃げられた……というオチで終わらせようかな……と小恋は一瞬思った。今日はキモチが上がったり下がったりで安定しない日だから、正義もたまには失敗する……で終わらせようかと思った。
「なにやっているのよ魔法少女」
ここで見知らぬ他人たちから叱咤激励が飛んできた。
「飛べるくせに走るだけの犯人を捕らえられないなんて役立たずもいいところ、恥ずかしくないの?」
「役に立たない魔法少女なんて、味気ない掛けソバみたいなものね。そんなの誰も求めていないのよ」
周りから来る正義への罵り。魔法少女は誰にも感謝されず、でもみんなのために頑張るのが正しいというせつない理論の擦り付け。それが小恋のキモチを萎えさせるというのに、行動力の源にもなるというきびしい現実。
「くぅ!」
小恋は正義のために舞う、空高く舞い上がっていく。そしてもうそろそろだいじょうぶかな? と思っているのであろう男の姿を上空から見探す。
「誰も感謝してくれない……やって当たり前とか思われて、あげくしっかりしろとか言われて……これだったら悪の方がたのしそう。町とかなんでも壊す方に回りたいかも」
小恋、へし折られた心を持って地上を見つめていたが、お目当ての犯人を発見した。すると今度は正義だって怒るんだぞ! という感情が温度を上げる。
「おまえみたいなのがいるから魔法少女が迷惑するんだ。おまえみたいなのはいなければいいのに!」
言いながら小恋が右手を少し上げると、ブーンっと電圧をイメージさせるような音が鳴る。
「魔法少女から逃げられると思うべからず!」
叫んだ小恋、うりゃぁ! と剛速球を投げるみたいに腕を振り下ろした。するとピンク色の……おそらくは怒りというのを電圧バリバリなビームに変換させたのであろう技が犯人に向かって飛んでいく。
「え?」
逃げられると余裕かましていた男、突然ブーンってうなるような音がして両足首が熱いと感じて目を向ける。
「なんだこれ……」
つぶやいた次の瞬間、グワっと引っ張られ体のバランスが崩れ、そのまま上空に引き上げられる。
「おらぁ! 人様から奪ったバッグを返せ」
グイグイっと電圧ビームの糸を手繰り寄せる小恋、素直にバッグを返したらとりあえず無事に地上へ下ろすくらいはしてやると逆さづりの犯人に言う。
(く……せっかく盗ったのに、バッグの中には金がいっぱいあるのに、これを手放すなんて)
男、危機的な状況にかかわらず金に執着する。そしてここでひとつ思った。
(この魔法少女……小学1年か2年ってところか?)
空中に制止している魔法少女を見て、モロにガキだよなぁ、ガキだったら甘い事を言えばコロっとひっくり返るんじゃねぇの? とか目論む。
「なぁ、魔法少女……」
「なに?」
「見逃してくれたら……この金のいくらかはおまえにくれてやってもいいぞ」
「はぁ?」
「金がああればなんでもできるし買える。おまえだて……なんかしら欲しいだろう、おもちゃか人形か、そういうのが」
これで釣れたら愉快痛快! とか男は思ったが、さすがにそんなわけはなかった。
「ふざけんなよ、正義を甘く見るなよ!」
元より感情不安定な小恋がよりいっそう乱れていく。ピンク色のオーラが真っ赤に変わっていくかもしれない。
「あ、悪かった、いまのなし、じゃぁこういうのはどうだ?」
男、急に色っぽい目つきを小恋に向ける。よく見ると……おまえってかわいいなと、今度は色落とし作戦に出る。
「そりゃまぁ……」
ポッと顔を赤くする小恋がいた。それを見た男、イケる、このガキはこのやり方で落とせる! と勢いづく。
「なんならよぉ魔法少女……おれ……おまえと付き合ってやってもいいぜ?」
男は年齢21歳なので自信があった。お兄さん……と惚れられるだろうと勝手に思い込んでいた。しかしそれもまた無理というオチを向ける。
「おぇぇぇ……キモ……」
小恋の反応に逆に男の方が傷ついた。だから腹が立ち、こうなったらガキは侮辱して泣かしてやるしかないとする。
「おい、魔法少女」
「うるさいな、早くバッグを返して」
「おまえ……スカートで魔法少女活動って正気かよ。だって下のパンツ、見えているぞ」
「えぇ?」
「しかも白いパンツかよ、だっせぇ……まぁ、ガキにはそれがお似合いなんだろうけどな」
この流れは男の思惑とは全然ちがう展開を誘った。火に油を注ぐというそれそのものだった。
「おのれ……乙女に恥をかかせた罪、痛みで償わせてくれる。覚悟しろ!」
小恋の怒り爆発! 空中で勢いよくグルグルっと回りだす。すると男は逆さづり状態でバカ丸出しみたいに回されてしまう。
「うわぁぁぁ……」
「悪が栄えた試しはない!」
高速回転しながら小恋がビームの線を切った。すると男の体は勢いよく飛んでいき、とある2階建て住宅のカベに激突した。でもそれは小恋のお情けによるモノだった。あまり高い所に放り投げると死ぬだろうし、真正面からカベに激しく当たるのも危ない。だから偶然ではないのだ、男がカベに背中を当てて痛いと思うくらいで済んだというのは。
「あ……」
これはさすがにたまらん! というわけで男の手からバッグが落ちる。
「おっと!」
小恋、男はどうでもいいけれどバッグは救出しなきゃ! とナイスキャッチをして着地。
「はい」
小恋、バッグを持ち主に返して一件落着! としたいところだった。だがそういう風にならないのが今どきの現実。
「どうもありがとう」
バッグの持ち主はお礼を言ってくれた。それで終わればキモチいいのに、他人たる外野からは次のような声が聞こえたりもした。
「魔法少女ってけっこう暴力的よね」
「ほんとう、もっと平和的に解決出来ないのかなぁ」
「犯人がちょっとかわいそう」
「誰も痛めつけずに取られたモノを回収できなきゃ一人前じゃないよね」
こういう声が魔法少女にとってはストレスの要因。しかも正義のために仕事たから遅れたというのに、遅刻したことを担任の先生から怒られたりもする。
(やだぁ……もうやだぁ……魔法少女なんかやりたくない)
小恋は学校が始まってからひたすら憂鬱になった。そして想い人である中野真治になぐさめて欲しいと甘えたい願望が沸き上がってしまう。
(真ちゃん……)
小恋としてはこう思う……真治にやさしい事を言ってもらって、がんばる小恋が好きだよとか言ってもらって、真正面からギュウっと抱きしめてくれたらうれしいなぁとか。
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