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優子、萌えゲーにハマる(目指せななみのビキニ姿)6

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優子、萌えゲーにハマる(目指せななみのビキニ姿)6

「ふわぁ……」

 優子がアクビをしてしまった。学校が終わった午後2時40分の帰り道、人目がある場所でやるなんて乙女じゃないと思いつつ、早起きだとかゲームばっかりやっている疲れって事情が絡んでしんどい。

「優子、眠そうだね。夜更かしですか?」

 となりを歩く友人の香苗が横からちょっと覗き込むようにして茶化す。

「ん……ちょっとね、ゲームにハマっていて」

 言った優子、香苗に見つめられるとわかっていてもガマンできず、一応顔を横にそむけはしたがアクビをくり返す。

「優子がそこまでゲームハマりってめずらしい気がする」

「ん……んぅ……」

「どんなゲームやってんの?」

「え、それは……」

「あ、わかった! イケメンが出まくりの女向け萌えゲーだ。絶対にそう、優子って巨乳女子としての女子力が高いからさぁ、そういうゲームで心を解放ていると見た」

「ち、ちがう」

「あ、いまテレた、テレたよね、それってモロにストライクでしょう?」

「ちがうつーんだよ!」

「えぇ、じゃぁ何で顔が赤くなったりしたわけ?」

 優子、くり返されるアクビを隠すため手で口を覆いながら、やっているのは男子向けの萌えゲーだと説明。

「はぁ? 男子向けの萌えゲー? 女ばっかり出てくるわけ?」

「そうだね……」

「うっそ! 優子がそんなゲームやるなんて」

「わたしがやったらおかしいと?」

「いや……おかしくはないだろうけど、優子のキャラだったら、そういうゲームをやる男はバカとか冷たく言い放ちそうな気しかしない。だからめっちゃくちゃ意外」

「ま、まぁたしかにそうではあるんだけど……」

 優子はここで正直に言うかどうか一瞬悩んだ。巨乳女子である自分が、二次元の巨乳女子キャラを落とすためにがんばっていると言ったら、絶対何かしら突っ込みが来ると予想出来るから。しかしあえて正直に打ち明ける方を取ったのは、ただいま目標に向かってがんばっている自分を偽りたくなかったから。

「巨乳だからさ……」

「優子が?」

「いや、わたしじゃなくて本命キャラが」

「だから?」

「どうしてもデートで水着姿にさせたいと思ってがんばってる最中」

 香苗、思わずプッ! っとやりたくなった。リアル巨乳の優子が二次元の巨乳女子を水着姿にさせたくがんばるとか、なんかウケる! と言いたくなった。しかし優子から漂う目標達成のためにがんばって生きているという神々しいオーラには突っ込みが入れづらかった。しかしせっかくだからちょっとは言っておく。

「優子、それってあれじゃん」

「なに?」

「優子が、優子みたいな女が好きだと思って一生懸命になって、優子の巨乳や谷間をビキニ姿で拝みたいと思って努力する男子のキモチを優子自身が学んでいるって事だよね」

「あ、まぁ……そうなるのかな」

 いま、優子は眠気がつよくていつもらしい返しが順調にできなかった。いつもなら変な言い方をするな! と怒るところだから、よっぽどゲームにハマっているのだなと香苗はおどろかされる。

「優子さぁ、ひとつ言ってもいい?」

「なに?」

「眠いとかいうのは美容に悪いんだぞ? 優子みたいな色白でむっちりって健康ダイナマイトな巨乳女子でも注意しないといけないんだぞ?」

「わかってるけれど……でも……」

「でも?」

「目標を達成するって努力から逃げたくない。やり遂げたいんだ」

 なんだこれは、優子がかっこうよく見える! と香苗はさらにおどろかされた。でもって、優子がかっこうよく見えるのはあんまり愉快じゃないと思ったりもしたので、だったらこれはどうだとスマホを取り出して言ってみるのだった。

「優子、今どきはネットがあるじゃんか。そんな、ゲームに時間と健康を害されなくてもさ、見たい画像なんてネットで一発。なんならいま検索してあげるよ。そのゲームの名前は?」

 香苗、こうやって優子が見たいと思う画像を突き付ければ熱も冷めるだろうと考える。

「いや、いらない、それはしないから」

「なんでよ」

 ここで優子は立ち止まる。そして眠そうな顔ではあるが、そこに豊かな胸いっぱいの真剣さを込めて語りだす。

「ネットで検索して数秒で出現した画像を見たってダメなんだよ、なぜだかわかる?」

「い、いや……なんで?」

「同じ画像でもさ、一生懸命やって努力の末に勝ち取れば目に焼き付くよろこびや充実感は大きいと思う。何時間もかけて懸命にやって、それでたかが萌え画像かよ! って思ったとしても、努力した事実はあるわけで、それは必ず人を成長させる。だからいま、香苗に頼んで画像検索してもらって目にしたって、それは命を燃やした結果じゃない。便利という名の努力放棄であり、心を燃やさず笑いながら死んでいくだけって気がする。ダメなんだよ、それでは。だって命っていうのは使い燃やしてこそなんだから」

 太陽の光がそうさせるのか、それとも優子の内側からあふれる情熱が原因なのか、優子の姿がとてもかがやいてまぶしい。

「ゆ、優子……」

 たかがゲームでそんなに? と言えない香苗がいた。なぜならいま、明らかに人生と戦っているのは優子であり、スマホの便利さに逃げて命を燃やそうとしない自分は恥だという思いに巻かれるゆえ。

「優子……そのゲームの名前はなんていうの?」

「きみに刻まれる彼女の微笑みとピュアマインドってやつだけど?」

「そ、そう……わかった」

「じゃぁね」

 ふわぁとアクビをしながら去っていく優子だが、まちがいなく眠気が飛んだらまたゲームに燃えるだろうって思われた。いま、優子からは活用される生命力って表現がオーラとして浮かんでいる。

「わたしも……優子みたいに命を燃やしてみよう」

 香苗、家に帰ってカバンを置いたらブックオフやら何やらで優子がやっているのと同じゲームを中古で探してみようと決意。そして自分も優子みたいに目的を達成するために命を燃やし充実してみたいと欲するのだった。
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