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優子がついに初ビキニ! 3

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優子がついに初ビキニ! 3

 あっという間に時計はグルグル回り、気がつくと土曜日になっていた。真治にとっては指折り数えて待つ本番の一歩手前だが、序章という段階もまた捨てがたい魅力を持つ。

 学校が終わる。一度帰宅してチャチャっと昼ご飯を済ませる。それが終わったら、優子と2人でお目当ての店に足を運ぶ。それは駅前モールの中にあって、名前を「乙女のため息島」という。

「ほんとうに入る根性あるの?」

 優子は店の前で真治に聞いた。ここはアクセサリーやらグッズやらも置いてあるが、服も下着も水着もありすべて女向け。そんな女の島に男子が入れるか? と問う。

「は、入る……」

 ややドキドキしつつも真治はきっぱり。なら行こうかと優子は歩き出した。幸い今は時間的に人が少なめ。姉弟で入っていてもあまり目立たないで済むと思いながら歩く。

「えっと水着は……」

 言いながらフッと振り返ると、真治が真後ろにいない。かなり離れたところで立ち止まり演技している。誰かを待っているみたいなそぶりをかましつつ、離れた所にある下着コーナーを見つめる。ここは豊満サイズの下着もそろえてあるので、おっぱい星人の真治が見つめてみたくなるのはムリもない事としか言えないのだった。

「ったく……おっぱい星人め!」

 なぜか優子の方が顔を赤くし、真治の手をつかんで引っ張る。バカとか、姉に恥をかかせるなとかブツブツ。

「真治はわたしの横から離れるな」

「わかったよ……」

「あと、あんまりキョロキョロしない」

「わかりました」

 こんな風にして水着コーナーに到着。おぉ! とビキニの並びを赤い顔で見ながら、同時にとなりにいる姉の胸も同時進行のようにチラチラ見る真治。ファンタスティック感が熱くなってくる。

「で、わたしにどういう色が似合うとか言ってみ。ヘボい事しか言えなかったらすぐ用無し。あ、語る時は声のボリュームを下げるように」

 となりの優子に言われた真治、ここはとっても重要なところだと気合を入れる。ひとつグーッと深呼吸してからクッソ真面目に語りだす。

「まず一色でいえば、よろしくないのは赤」

「え、なんで? 赤がダメな理由は?」

「赤は情熱の色とか勝負カラーとか言われるけど、まろやかな愛しさが削られてダメだよ。せっかく魅力的な巨乳さんでも、赤って色のきつさの方ばかりが立ってしまう。それに……」

「それに?」

「赤色って女の人が思うほど男には受けないっていうか」

 語り始め、真治はちょっと緊張していた。だがそれを聞いた優子は大いに驚かされる。2つ下の弟の語りがとても深い事に衝撃を受ける。

「じゃぁ、ピンクは?」

「意外と一色だとダサいかも。下着だったらいいとは思うけど」

「黒とかは?」

「それはほら、いくら巨乳っておっぱいが大きくても、お姉ちゃんにはまだ色気がないから合わない。止めた方がいいよ」

「悪かったな、色気のない巨乳で」

「今はそんなつまらない話をしている場合じゃない」

「ん……く……だったら何が似合うと?」

「お姉ちゃんがふつうの三角ビキニやるんだったら……」

「声がデカい、ボリューム下げろ!」

「お姉ちゃんだったら、グレーとかライトブルーとか意表ついてカーキとか、あるいは……」

「パープルとかは?」

「お姉ちゃんはおっぱい大きいけれど色気がないからイマイチかも。それだったらいっそ色気は低いけど健康体巨乳ってアピールができるイエローとかがいいんじゃないかと」

 優子は真治の、それこそ巨乳の魅力を知り尽くした一流の評論家みたいってオーラにすこぶる感心させられていた。弟が何を言おうと結局は自分で選べばいいと思っていたのに、いまは真治の意見が何より重要という気にさせられてしまっている。

「他には?」

「えっとたとえば二色とかだったら……」

「だったら?」

「片方がパープル、もう片方がグリーンとかいうのはいいかも。色気が足りないお姉ちゃんががんばっている! という姿になれるという気がする」

「イチイチ色気がないとか言うな」

「あるいは、あそこの水玉シリーズとかいいじゃん。白にピンクの水玉とか、黄色に白の水玉とか、そこらはお姉ちゃんに合うと思う」

「ほ、他には?」

「えっとたとえば、ブルーにグラデーションでウォーターメロンが混ざっているようなやつとか、赤っぽいピンクにファジーネーブルってグラデーションとか、そこらはお姉ちゃんにもイケるという気が」

 真治のアドバイスはあまりにもばっちりだった。確かに自分に似合いそうと思うものを突き刺さるように言われるのだから、優子の乙女心はもう真ん中ばかり射抜かれる的みたいなモノ。

「真治……なんでそんなに詳しいの?」

 優子はぐぅーっと声のボリュームを下げてつぶやく。まるで初恋女子みたいにほんのり顔を赤くしている。

「そ、それはその……ぼくがいつだって一生懸命生きているから」

 真治はそう言って少し心構えた。バカじゃないの? って姉が突っ込んでくると思われたからだ。しかし優子は特に何も突っ込まなかった。そして納得したように首を縦に軽く振ってから、後は自分で選ぶと言う。

「真治は店の外で待っていて」

 そっけない口調。あぁ、やっぱり女ってドライな生き物という感じ。

「わかった」

 真治が仕方なく店の外へ向かおうとしたら、優子がちょっとテレたような声で言った。

「真治……その……ありがとう、参考になった」

 おぉ、姉がかわいい! なんて感じが漂うと、なんか言いたくなった。でもなんとなく尊いフンイキを大事にしたいと思ったから、真治は何もわずそのまま店の外へと出て行った。
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