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バカな思い込みは墓穴掘り(おっぱい星人のおバカさん)

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 バカな思い込みは墓穴掘り(おっぱい星人のおバカさん)


「ダメだ、ぜーんぜん気が乗らない」

 優子があきらめ正義って声を出す。うぐぐ! っと背伸びをしたら、帰ってすぐ机に座って夕飯まで勉強という発作的目標を消去。

「勉強はいつでもできるけど休憩はしたい時にしかできない」

 もう完全に言い訳しまくっていて、午後3時40分にダラけモードへの突入を決意。

「○○○でも借りるか」

 まだ帰宅していない弟の部屋に入ると、少年マンガ○○○のコミックを借りようと本棚の前に立つ。

「うん?」

 突然にピリッとする優子の感覚。それは女がケーサツ犬みたいな嗅覚を動かす時だった。

「どこかに隠してるな?」

 近くにエロコミックがあると感じとる優子、そのままググっとかがみ込む。真治というのはおっぱい星人であって、巨乳が登場するエロコミックをよく隠したりする。友だちから回してもらうとか以前言っていたが、それは男子という性別が生き抜く知恵みたいなモノ。

「エロコミックだったらこういう場所でしょう」

 一番下の段をギッと見つめる優子がいる。色白な手を伸ばしたところには、弟の教科書やらノートがきれいに立ち並んでいる。一見すると心うつくしい空間。

「あ、やっぱり! まったくおっぱい星人の考えることは……」

 するどい、あまりにするどい! 今すぐにでも女刑事になれそうな優子が手にしたのは表向き参考書とかいうやつ。でもそれはカバーだけであり、中身は巨乳女子が登場するエロコミック。

「考えが甘いんだよ」

 言うとカバーつけたままエロコミックを没収とした。でもすぐさま捨てる事は少ない。とりあえずどんなモノか目を通す主義だった。

「巨乳三昧ワールドとか冴えない名前、もうちょいセンスを磨けば?」

 自室に戻った優子が仰向けになり、没収したエロコミックのタイトルにツッコミを入れる。まるで学校の先生みたいに真剣な顔をつくる優子、まず絵に関してはふつうっぽいと思ったりする。表紙の女子が爆乳にしてブラジャー姿なので一般的な面白さは期待しない。けども女としてはちょっと興味があった。男向けのエロにおいて巨乳はどう描かれるのかと。

「は?」

 しばらくして優子が赤い顔で起き上がる。ガバっと勢いよく体を起こしたので、Tシャツの豊かでやわらかいふくらみ具合が弾む。

「こ、こいつがDカップ? おっぱい84cm?」

 たまらないぜ! とばかり素っ頓狂な声を出す優子だった。表紙の爆乳ブラジャー姿を見た時、ヒロインは推定Iカップとかバスト100cmとか信じて疑わなかった。この世をマジメにとらえる人そのものって感じだった。

「こんなDカップがいるわけないじゃん……このコミックの作者ってアタマがおかしいんじゃないの?」

 優子は開いたままのコミックを横に置くと、自分の手をTシャツのふくらみに当てた。そこは自分の体において一番やわらかく豊かな弾力という場所。その89cmのふくらみはEカップというブラ
に包まれ美形を保っている。

 しかるにしてコミックのヒロイン、どう考えても優子よりはるかな爆乳だろうに、優子より格下の巨乳だという。それは人生の勉強にゲロをまきちらしているような下品さを思わせた。

「これってマジメに考えたの? それともわざとやってんの?」

 とってもとってもクエスチョンって優子は思い悩んだ。そしてある事にハートブレイク的に言いたくなってしまう。

 こういうモノは巨乳とか豊かなおっぱいに愛情があるのか否か、そういう女を愛しているのか貶しているのかどっちか、愛情がないのなら巨乳など描く必要がどこにあるのだろうか? と。

「あ、急に思い出した……」

 ピカ! っと点灯した脳内電球。それなりに以前の出来事をひとつ思い返したのである。おっぱい星人である弟が姉に言ったのだ、怒られたらどうしようってキンチョーしながらとんでもない事を口にしたのだ。

「お姉ちゃんって、も、もしかしてFカップくらいあるの?」

 それは真治が小3の終わり頃で、優子は小5の終わり頃とかブラがDカップだったって時期の話である。

「こら、テレた顔して何を質問してんのよ!」

 そりゃ当然として怒る優子だった。うんぎゅー! っと弟の頬をつねり上げトチ狂ったアタマに喝を入れてやろうとした。

「ご、ごめんなさい……一回聞いてみたかっただけ」

 そういう健気な発言をされると立腹しても許すしかない姉だった。早くから胸が豊かにふくらむ巨乳女子という展開は、いっしょに暮らす2歳下の弟をドキドキさせるに十分。だからこれは背負うべき十字架みたいなモノと受け入れるしかない。

 しかし! 優子は真治に素朴な疑問をぶつけた。どこからFカップなんて言葉やサイズを引っ張り出したのかと。

 小3の妹ならまだしも弟がFカップなんてサイズを知っているのは問題。小5でDカップの姉を見て、Fカップくらい? なんて当たりに近いことを言った事実は見過ごせなかった。

「えっと……」

「なんか変なの見たりしてるんでしょう?」

「そ、そんなの見てないよ……」

「じゃぁなんでFカップとか言葉が出た?」

「そ、それはその……て、テレビ見てたらFカップとかいうアイドルが出ていたから。お姉ちゃんもそれくらいなのかなぁって」

 その時の真治はそう言った。なんとなくありえそうな話だと思ったから、すんなり信じるには十分だった。でも今はそうじゃなかったと知る。

「あぁ……そうか、あの頃からこういう巨乳エロコミックとか見ていたんだな」

 今頃になって小6の優子は気づくのだった。真治はおっぱい星人としての開眼が早かったのみならず、悪質な情報に脳を汚されてもいた事になる。

「まったく……だから男ってバカが多いのか……」

 プンプンな怒りにまみれる優子だったが、ここでひとついい事をひらめいた。そうして真治が帰宅したらデスクトップパソコンのある応接間に呼んだ。

「真治、これはなんでしょう?」

 言って没収したエロコミックを見せる。

「あぅ、そ、それは……マンガ……です」

 怒られるかな? ビンタされちゃうかな? なんてドキドキしていたら、返して欲しい? と質問される。返して欲しいと真治が訴えれば、問題に正解すればオーケーと言われた。

「問題?」

「では、ちょっと目を閉じて」

「え……」

「いいから! 早くしないとブツよ?」

「わかったよぉ……」

 素直に両目を閉じる真治。すると何やらカチャカチャって音が耳に入る。それはデスクトップPCのキーボードを叩いている音だ。一体何をやっているんだろうと思ったちょうどそのとき目を開けるよう指示される。

「これを見よ!」

 優子は下敷きを持っていてディスプレイの半分を隠している。隠されていない部分には女の顔から肩までが映っている。

「え……」

 なんとなくドキっとした真治は、画面の女は巨乳アイドルだなと思ったりする。顔がふっくらして豊かなおっぱいが当たり前って感が色濃い。そうして女の色白な肌は衣服に包まれておらず、肩には水着のストラップがある。

「では質問です」

「は、はい……」

「この女は何カップでしょうか?」

「え、えぇ? そんなのわかるわけない」

「近かったら当りにしてあげるよ。エロコミックのためにも言うだけ言ってみたら? それこそおっぱい星人の生きる道でしょう?」

 励ましてもらっている? 真治はそう思ったらちょっとうれしくなった。だからスーッと息を吸い込んで吐くときに言ってやった。

「Fカップ!」

 それは絶対に正解だと思った。1プラス1が3であるわけがないという風に真治は当たりを疑わない。

「ブッブー、ハズれ、はいおしまい! 巨乳エロコミックは没収」

 ケッ! ざまーみろ! という感じの優子。そうしたら真治は納得ができないわけで、ジャマな下敷きをどけてよと言う。下敷きが消えれば画面には豊満なビキニバストが映ると思うから。

「ならば見てみよ!」

 優子がパーっと下敷きをどけてみれば、真治はかなりのショックを受けてしまうのだった。

「あ、あれ……うそだぁ……」

 真治の目が見つめるディスプレイには、ふっくら女子の低ボリュームビキニ姿があった。顔だけ見たら巨乳! と期待させられるが、肝心の乳具合は詐欺師ですか? というほど弱い。

 優子は弟が帰ってくるまでに探していたのだ。何を? といえば、巨乳なようで巨乳じゃないアイドルという検索をしていたのだ。そうして発見したのがこのアイドルであり、バストは82cmのBカップだったりする。

「こういう顔の女はおっぱいが大きいと思い込むのが敗因だよ。まったくおっぱい星人はバカだね、情けないったらありゃしない」

 姉の冷ややかな目と突っ込みはキョーレツ。何も言い返せない真治が唇をかんだりしていると、その横をスーッと優子が通り過ぎる。そうして小さな声で一言つぶやく。

「真治、まずはバカなアタマを治さないとね」

 そうして姉が応接間から姿を消すと、実にさみしいフンイキが漂う。惨めなおっぱい星人の墓場というイメージすら浮かびそう。

「この顔で巨乳じゃないなんて……」

 コミックを失った真治はディスプレイに映る女を呪う。自分の未熟さを棚に上げて呪いまくった。おまえのせい、おまえなんか地獄に落ちてしまえ! と。
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