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真治の幽体離脱

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 真治の幽体離脱


「じゃぁ、おやすみ」

 真治は居間でテレビを見ている家族3人に声をかけた。

「おやすみ。ちゃんとしっかり寝なさいよ」

 母にそんな声をかけられた風邪ひきの息子は、少しばかり鼻をグズグズさせて二階へと上がっていった。午後8時45分。今どきは小4の真治でも寝るには早い頃合い。事実として室内には本番になっていない夜って感が満ち溢れている。

「ちゃんと寝よう、グズっ……」

 弱気と素直さでつぶやきながら、パジャマに着替えたら室内の電気を消してから、グゥっとベッドに潜り込む。ふわぁっとアクビをひとつかましたら、素直に両目を閉じるのだった。

ーそれからしばらく後ー

(ぅ……んぅ)

 突然に真治は目が覚めた。眠ってからさほど時間は経っていないはず……と思ったが、時計を見る余裕がまったくない。

(ぅあぅ……)

 どういう事かわからないが体が重い。いや、変な苦しさでガッチガッチという方が的を得ていた。

(な、なにこれ……)

ードックン・ドックンー

 真剣にならざるを得ない怖さが真治を襲う。なぜってふつうの呼吸ができていないからだ。息ができない……いや呼吸していない気がする。死ぬ! と思いアップアップしながら、声も出せず絶叫レベルに怯える。

(え、え?)

 まともな呼吸ができず青ざめる真治は、体が引っ張られるような感じに見舞われた。

 ググっと脳が引っ張られるように感じる。それは寝ている体を引き起こすというより、存在の内面を引っ張り出そうって強引さ。仰向けに寝ている真治は、暗い天井方面へ引き寄せられると思う。

(死ぬ……)

 まさに本気であの世を想ったときだった! 突然に突き抜けたような感覚が発生。そのよくわからない勢いは脳を思いっきり震わせた。

 そして……真治は思いもしない展開へ突入。突然に視界がまったくの別角度とか別物になったのだ。

(……)

 3秒くらいボーッとした後、つぎに見える光景の変化に戸惑う。暗いながらも夜目で見る限りは自分の部屋だ。大きな窓がカーテンで覆われているとか、愛用の机があるとか、白い本棚があるとか、それは確かにマイルームの絵。

 ただし……明らかに高さがちがう。目線の位置が真治のモノを遥かに越えていた。いや父でもこの高さはムリだろう。なぜならいま真治は、天井にぴったり張り付くほどの位置から室内を見ているからだ。

(え……)

 不思議なことに真治は真下にあるベッドを見た。そこに自分がいるのかどうかは分からないくせして、ベッドを高い距離から見下ろしているという事実だけは、完全なモノとして受け取る。

(は……は?)

 先ほどまで残酷なモノだった苦しさがない。収まったというより解放されたような不思議さが体を包む。

(こ、これって……これって……)

 ユラユラっと軽い感じの中で真治は思う。幽体離脱って4文字を知らないから、タマシイが抜けた? という言い方で状況を飲み込む。

(う、動ける……)

 得体の知れない感じを持って、真治は確かに前に進んでいた。大きなカーテンに近づいていき、ちょいと目を斜め下に向ける。

(手がある)

 おのれの持ち物である右手にそう思ったら、そのままカーテンに触れてみようと伸ばす。

(あ、あれ……)

 常識という名にしたがった感覚がない。ほんとうならカーテンおよび後ろにある窓ガラスなどを感じるはずが、何もないようにスーッと手だけが前に進んでいった。

(え……)

 ドキン! と焦ったつぎの瞬間、真治はスーッと家の外へ出ていた。真っ暗で狭い室内にいたはずが、いきなり真っ暗でだだっ広い外界に登場。

(こ、これは……)

 閉まったままの窓、そうして屋根などに目を向けておどろく。明らかに自分は浮いていると確信せざるを得ない角度と高さの視点だ。

(うそ、ほんとうにタマシイが出ちゃったわけ?)

 フッと顔面を真上に上げてみたら、色っぽいまでに美しい月がある。それは別名をつけるなら高級メロンパンというところか。

(うん?)

 ふと自部屋のとなりにある空間の窓を見た。そこは姉の部屋であり、カーテンの向こうは白い光に包まれている。

(お姉ちゃん、まだ起きているのか)

 フーっと流れるようにして窓ガラスに近づく。カーテンというガードがあるので、それを無視して室内が見えるって事はなかった。でもそういう透視能力は必要ない。なぜなら物理の制約が真治には関係がないから。

(入った……)

 質素で機能的な真治部屋とちがい、女子力に満ちた姉の部屋がここにある。入れた……と真治が思ったら、急にドアが勢いよく開く。

(はぅんんぅ!!)

 いきなり主が登場したからたまらない。バッコーン! と自爆するほど驚かされてしまう。

「ふわぁ……わたしもそろそろ寝るか」

 クゥっとあくびを放つ姉は、真治にしてみれば目線がおかしい。見て見ぬふりというより、そこにいることを理解していないって毛色。

(え、ほんとうにわかんないの?)

 至近距離にて認識されない極上的な摩訶不思議。真治は主の後ろにぴったり張り付こうとか考える。しかし突然に、おそらくは赤い顔をして姉から少し離れる。それは怖いからというより、むしろうれしい驚きによるアクションだった。

「ふぅ……ねむい……」

 優子が両手をスカートのホックにかけた。正面からがっちり見つめられているとは想像もしていないようだ。

 クッとほのかに浮かぶスカート脱ぎ動作。ハラっと黒いモノが落ちると、上のTシャツによってパンツはほどよく隠れる。さりとて色白ムッチリな大根足は、近い距離で遠慮せずに見つめるとなかなか色っぽい!

(おぉ……)

 ひとまず通過儀礼的にカンゲキする真治だった。くつ下を脱ぐアクションがいいとか、きれいなムッチリ両足がいいとか思うのは事実。されども真治は筋金入りのおっぱい星人。何より見たいと望むのは下半身のスカート脱ぎではなく、上のTシャツ脱ぎに他ならない。

 ただいまの姉はめずらしく度ハデTシャツを着ている。白地に色んな色のペンキをぶっかけたような、軽くイッちゃってるぜ! 的なデザインだ。それは豊かなふくらみ具合の見栄えを下げるのみならず、下にあるブラジャーや谷間が透けて見えないという、巨乳女子が着るには欠点だらけの代物。

「さーてと」

 下半身は白いパンツだけになった優子が、いよいよって構えに入る。両腕をクロスさせTシャツの下方をつかむ。

(ドキドキ……ドキドキ……ドキドキ……)

 真治が必死になって目の前の光景を見入る。なんせ今はすごい至近距離。普段だったら思いっきり張り手されるくらいの近密。

「うっしょっと」

 優子が勢いよくTシャツをまくり上げた! ボワン! とE80のフルカップが、Tシャツに愛撫され揺れ動く。

(ベージュ色!)

 てっきりホワイトフルカップが出ると思っていたから、スワーっと色っぽいベージュ色のフルカップ見参は、真治にとってはうれしすぎる不意打ち。

「ふぅ……」
 
 Tシャツを両腕にかけたまま、上半身ブラ姿になった優子が息を吐く。デブではないがほどよいムッチリと色白、そこにクゥっと装着しているベージュ色のブラジャーはささやかようでありながら、けっこうまぶしくいい感じだ。そういう豊かなカップのふくらみ具合とやわらかい弾力の谷間を、真治はここぞとばかり接近して見入る。

(う、うわ……)

 真正面からこれだけ近づいて見つめると、優子の胸のふくらみがいかに豊かってカンペキに思い知らされる。

 ベージュ色の左右のふくらみ、ふっくらとした谷間、この距離で見つめていると……心がキュゥンと締め付けられ、すべてを捨てて甘えん坊に走りたくなってしまう。

(お姉ちゃん!)

 すぐ目の前にあるベージュブラのふくらみと谷間に、顔を押し付け抱きつこうとした。しかし、あぁ……無情! 優子の胸にある温かくてやわらかい弾力は何も得られない。そこをスーッと抜けていってしまう自分がいる。

(あぁもう……)
 
 あまりにも切ない感覚にイラ立つ。そんな真治が振り返ると、フンフン♪ って鼻歌をやる姉の両手が背中に回っているではないか。

(う、うわ……後ろから見ているのに、お姉ちゃんが色っぽく見える)

 色白ムッチリな巨乳女子の背中は、ブラの背面によって神々しさを醸し出す。そうして背中に両手を回すという、女子だけの悩め香しい営みが、例えようのないキブンをもたらす。

「ふぅ……」

 優子の声と同時にブラのホックが全部外れた。

(ドキドキ……ドキドキ……ドキドキ……)

 真治は男子として当然の興奮に包まれた。ここで冷静でいられるほど男は廃れていないと、健全な少年らしく爆発は5秒前! だ。

ーそのときー

(え、え……な……なに……)

 猛烈な勢いで体が引っ張られる。まるで凶悪な磁力を連想させられるほど、グイグイ背中を引っ張られる。

(く……ぁぅ)

 抵抗できなかった真治の体は、姉部のドアを抜けた。そうして廊下に出たと思ったら、隣室ことマイルームに引き寄せられる。

(こ、これって戻るってこと?)

 真治は必死になってイヤがった。せめて姉のおっぱいを見てからと、全力でお願いをする。でもどういうわけか抗うことができず、真治はすごい勢いで本体の中に引きずり込まれる。

「は……」

 パッと開いた両目、暗い部屋の天井を見つめている。

「あぅ……も、戻った?」

 ガバっと起き上がると、すべてがいつもどおりだった。目線の位置もそうだし、あらゆるモノに触れているって実感もそう。特別的な何かなんてどこにもなかった。

「ぅ……な、なんだこれ……」

 床に立ったまま股間に手を当てた。それは真っ赤な顔になるしかないほど濡れていた。おねしょとかそういうものではなく、タマシイが興奮していたことによる、それがもたらした勲章みたいなモノ。

「あぁもう……うまくいかないなぁ……」

 トイレに行きたいと思うから部屋から出た。するとパジャマ姿の姉も偶然部屋から出る。

「真治、だいじょうぶなの?」

 やさしく気遣ってくれるから、さっきのブラジャーシーンを思い返すと罪悪感をおぼえる。そこで真治は姉を先にトイレへ行かせると同時に、一言だけ伝えておいた。

「お姉ちゃん、ぼくさ……ベージュって色もすごくいいと思う」

 それを聞いた姉は、なにそれ? と首をかしげたが、まぁいいかと気にせず階段を降りていった。
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