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香苗、巨乳になるためがんばります4
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香苗、巨乳になるためがんばります4
午後3時20分、帰宅し自部屋でおやつを食べ終えた。そんな香苗が立ち上がり、やるか! と声を出す。何かといえば宿題でありやる気満々。
「ダメだよ香苗、ド腐れタイムを取らないと」
早速という感じでミルフィーユがツッコミを入れた。
「えぇ……別にゴロゴロする気ないんだけど……」
せっかくのテンションが下がりかける香苗だった。ド腐れタイムとは、意図してやや多めに取るダラダラ時間のこと。特に食った後すぐテキパキ動くのは禁物というもの。
ミルフィーユによれば完全自堕落になればただのブタになってしまう。だけどスマートな健康体は乳の育成にはあまりよくない。ほどよくダラけて丸みという輪郭をゲットする。それが乳の発育スイッチを押すことになる。
「ったく……元気いっぱいなのにダラダラしなきゃいけないなんて」
やりたくもないのにベッドでゴロ寝する香苗。これ絶対にまちがっていると思うのだった。だからこんな事をしなくてもたっぷり恵まれている優子がうらやましいとこぼすのだった。
「ねぇ、ミルフィーユ、優子って小6でEカップなんだよ。あんた負けてるよねぇ」
「ぅ……く……」
「もっと楽して巨乳になれる方法はないの?」
ついに香苗が努力放棄をチラつかせる。
「あるにはあるけど……」
意外な声がミルフィーユから出た。それを聞いたら香苗が体を起こし、ボールを追いかける犬みたいに興奮するのは当然。枕元に置いていたキーホルダーを手に取ると、それはどうすればいいの? と、ハァハァ息を切らす。
「だ、だけど香苗……100%成功するって話でもないよ?」
「いいから早く教えろつーんだよ」
興奮の激しい香苗は狂犬モードが発動しそうな感じだ。そこでミルフィーユは言った、優子の髪の毛を一本もらってくるようにと。
「髪の毛?」
「優子の髪の毛一本あれば話を進められる」
「じゃぁ明日に髪の毛もらうから、明日の夜に教えてくれるんだね?」
「もちろん」
「よっしゃぁ!」
こうして香苗は目をギラギラさせ、夜もまともに寝つけないほどハッスルし、そのまんまの勢いで朝を迎え、学校に到着したらすぐ優子に近寄った。
「あ、優子ストップ。後ろにホコリがついてる」
親切心を装い、立ち止まり身を任せた優子の後頭部に手を伸ばす。そうしてムリヤリ優子の髪の毛を一本引き抜いた。
「あぅ、なに今の!」
「ごめん、ちょっと乱暴だったね」
ハハハハと一方的に笑い一方的に話を終わらせる。そんな小賢しい戦法を用いるのも巨乳になるため。奪い取った髪の毛は大切にティッシュに包んで持ち帰る。学校が終わったらレーシングカーみたいなスピードで自宅へ飛んで帰った。
「さぁ、ミルフィーユ! 優子の髪の毛をもらってきたよ!」
もはや爆発寸前の香苗。
「わかったっすよ」
香苗部屋の床に腰を下ろすミルフィーユ。いったいどこから持ってきたのかわからないが、エンジェル絵柄のノートパソコンを置いている。いわゆるタッチパッドという場所に優子の髪の毛を置いたのだが、ピーピーって音が鳴った。
「うん?」
ドキドキワクワクしながら、ミルフィーユの隣からパソコン画面を覗き込む香苗。そこにはスキャン結果というのが表示されている。中野優子という女子が持って生まれた運命情報だ。
「これ、優子って女の子が持っている運命情報だよ」
「う、運命情報?」
「そ、DNAにはそういう情報が書き込まれてる。どういう人間になる? どういう女になる? って事が書かれているよ。でもそれだけじゃないの。いつ、どこで、なんのスイッチが押されると、どういう風になりやすいのかって、イフ(IF)を絡めた情報まで書かれている」
「イフ?」
「まぁまぁ、先に優子の情報話をするから」
キーボードをチャカチャカやったりするミルフィーユによると、優子の巨乳歴史がわかったという。それは高校1年でGカップになり、高校3年の頃にHカップ。そうして20歳の頃にはIカップ。Iカップ時のバストサイズは105cmくらいだとのこと。
「ゆ、優子って……優子って……」
言葉を失いそうになる香苗だったが、めげている場合じゃない! とばかりミルフィーユがたいせつな事を語った。それこそ香苗が巨乳になるための話と関係がある。
「優子はねぇ、フェロモンの分泌が高1くらいか増え始めるって人生がセットされてる。そのフェロモンを香苗が少し分けてもらえたら、香苗の乳は高い確率で大いなる成長を見せ始めるよ」
うむ! と腕組みをするミルフィーユ、この女神の説明によるとこういう事。優子という女子の愛情を少し多めに奪い取ることができたら、優子のフェロモンに入っている育乳エキスも奪えるという。香苗が巨乳になるためにはそれしかないという。
「でね、これは香苗の髪の毛から見る香苗の人生情報」
ミルフィーユは香苗の髪の毛から呼び出した情報画面を指差す。それによると高1から20歳までAカップとのこと。というよりそのまま死ぬまでノー変化。
「ちょっとそれひどくない?」
「そんなの知らないよ。こればっかりは誰のせいでもないんだからね」
「やだぁ……なんかもう生きているのがイヤになってきた」
「でも香苗、望みは高校3年間にあるんだよ」
ちょいと画面を変えたミルフィーユによると、香苗のフェロモン分泌量が増えるであろうは高校3年間。なぜ「あろう」という表現を交え方といえば、香苗はちょいとばかりプライドの高い女子高生になるとのこと。そのプライドがフェロモンの分泌量を下げる可能性があり、下げたとすれば女性ホルモンの放出量も悪影響を受けるらしい。
「だからね、高校3年間でフェロモンも女性ホルモンもドバドバ出すことが出来たら、香苗は18歳でDカップになるという、そういうイフ(IF)で人生を動かせばいいんだよ。もし成功したら成人式の日にFカップになるって物語まで描ける可能性もありだよ」
香苗はガーン! と大きなショックを受けた。小6だからむずかしい話はどうかと思っていたが、ここまでの説明すべてが余すところなく理解できた。
イフ(IF)の人生。そんなモノ狙ってできるのか? なんとなく疑わしい気がした。それと同時にイフ(IF)の歴史はウソや小賢しさがあるようにも思える。プライドが……なんて思ったりしてしまう。
「香苗の持って生まれた情報によると、優子みたいな女のフェロモンを吸収する能力はあるってさ。だから高校3年間うちの1年間でいい、優子と恋人みたいな関係になれたらいい。優子が持っている愛情を多めに傾けてもらうと、香苗はそれを利用して巨乳に近づいていける」
「だ、だけどミルフィーユ……」
グワーッと盛り上がりかけていた香苗が、ひとつ冷静になったような声を出す。ふぅ……っと深いためいきを吐いて問題点というのをつぶやく。
中野優子、小6でEカップなんて美巨乳の持ち主。あの女子は残念ながら同性愛ではない。お年頃にもなれば男子を意識するはずだから、女同士の乳繰り合いに引っ張り込むのは不可能。それが香苗の見解。
「あきらめたら終わりだよ、香苗」
「じゃぁどうすればいいの?」
「そこは自分の行動力あるのみだよ。香苗、巨乳になりたいなら優子を強引に誘わないとダメ。高校生になったら、優子のくちびるをムリヤリ奪ってベッドに押し倒すとか、それくらい勇気ある行動を取らなきゃダメなんだよ」
「そこまでしたらガチの同性愛なるじゃんか。わたし……一応男子と恋愛したいんだけど」
「だから香苗は試されている。優子の愛情を奪い、フェロモンも女性ホルモンもたっぷり刺激させてもらい、乳がいい感じで大きくなったら、優子を捨てちゃえばいいの」
「ちょっと、それって外道じゃん! なんでわたしが極悪非道にならなきゃいけないのよ」
「香苗、シアワセになるためには躊躇しちゃいけないんだよ。シアワセは得た者勝ち。この世の中において、他人を犠牲にしないでシアワセになった人間はひとりもいないんだからね」
ミルフィーユの話を聞いていたら、香苗の心臓が過去に覚えのない感じでドキドキする。ひどい話、人として腐りまくっている話、だけどもシアワセになるためなら……けっこう魅力的な話、夢と希望と極悪が混じった形容し難いキブンが胸に渦巻く。
「う……」
悩むぜ、めちゃくちゃ悩むぜ! という顔の香苗が急に体操を始めた。体でも動かさないと自己嫌悪に陥りそうだった。
しかし一方では……こんな風にも考えた。いまは小6で高校生になるまで4年くらいある。だったら考えは変わるかもしれない。シアワセになるためなら迷いを知らない女になっているかもしれない。それに優子だって早くから散々恵まれたのだから、ちょっとくらいは人の役に立つべきじゃないか……と。
「うりゃぁ!」
突然にベッド上の枕にパンチをかます香苗。ボコボコ殴って優しさを捨てようとしているように見える。そうして汗を流しながら、フフっと笑ってミルフィーユに言った。
「考えてみたらさ、なんで乳の話でこんな必死にならなきゃいけないのか疑問」
「巨乳になりたいんでしょう?」
「なんか意味あんの? ねぇ、巨乳になって何がどうなるっていうの?」
香苗は怖気づくミルフィーユにけっこう怖い顔で迫る。ゲスな人間になってまで乳を大きくしたって、それの何がシアワセなのかと、かっこういい結論に達したようだった。
「わたし勉強する、育乳体操とか今日はやらないよ」
キリ! っとした顔で勉強を始めた。なかなか凛々しい姿ではあった。でもベッドに腰掛け香苗の背中を見るミルフィーユには感じ取れた。香苗はいま勉強と言いながら己の心と戦っているように見える。まるで心の声が聞こえてきそうにすら見える。
ー香苗の心の声ー
(人として健全な人生を送るか、巨乳という望みを叶えるため優子を利用するか。そこまでして巨乳になりたいか? 一回の人生なのだから自分の思い通りに形成するべきじゃない? 胸が痛むのは人間らしくていい話。いやちがう! 胸が痛むのは弱い人間だから……つよい人間になれば……胸が痛んだりしないはず)
勉強とか言いながら雑念たっぷりであろう香苗の背中、それを見つめながらミルフィーユは心でつぶやいた。高校時代の香苗はどうなっているんだろうねぇ……と。
数年後に女子高生となる香苗、そのときどんな物語が描かれるのか……いまは誰にもわからない。今は表向き静かに時を刻んでいくだけ。
(どうなることやら……)
香苗を案じ心配する一方、盛り上がったらおもしろそう! と無責任にワクワクするミルフィーユがいた。一体どうなるのか、わかるのは数年後になってからである。
午後3時20分、帰宅し自部屋でおやつを食べ終えた。そんな香苗が立ち上がり、やるか! と声を出す。何かといえば宿題でありやる気満々。
「ダメだよ香苗、ド腐れタイムを取らないと」
早速という感じでミルフィーユがツッコミを入れた。
「えぇ……別にゴロゴロする気ないんだけど……」
せっかくのテンションが下がりかける香苗だった。ド腐れタイムとは、意図してやや多めに取るダラダラ時間のこと。特に食った後すぐテキパキ動くのは禁物というもの。
ミルフィーユによれば完全自堕落になればただのブタになってしまう。だけどスマートな健康体は乳の育成にはあまりよくない。ほどよくダラけて丸みという輪郭をゲットする。それが乳の発育スイッチを押すことになる。
「ったく……元気いっぱいなのにダラダラしなきゃいけないなんて」
やりたくもないのにベッドでゴロ寝する香苗。これ絶対にまちがっていると思うのだった。だからこんな事をしなくてもたっぷり恵まれている優子がうらやましいとこぼすのだった。
「ねぇ、ミルフィーユ、優子って小6でEカップなんだよ。あんた負けてるよねぇ」
「ぅ……く……」
「もっと楽して巨乳になれる方法はないの?」
ついに香苗が努力放棄をチラつかせる。
「あるにはあるけど……」
意外な声がミルフィーユから出た。それを聞いたら香苗が体を起こし、ボールを追いかける犬みたいに興奮するのは当然。枕元に置いていたキーホルダーを手に取ると、それはどうすればいいの? と、ハァハァ息を切らす。
「だ、だけど香苗……100%成功するって話でもないよ?」
「いいから早く教えろつーんだよ」
興奮の激しい香苗は狂犬モードが発動しそうな感じだ。そこでミルフィーユは言った、優子の髪の毛を一本もらってくるようにと。
「髪の毛?」
「優子の髪の毛一本あれば話を進められる」
「じゃぁ明日に髪の毛もらうから、明日の夜に教えてくれるんだね?」
「もちろん」
「よっしゃぁ!」
こうして香苗は目をギラギラさせ、夜もまともに寝つけないほどハッスルし、そのまんまの勢いで朝を迎え、学校に到着したらすぐ優子に近寄った。
「あ、優子ストップ。後ろにホコリがついてる」
親切心を装い、立ち止まり身を任せた優子の後頭部に手を伸ばす。そうしてムリヤリ優子の髪の毛を一本引き抜いた。
「あぅ、なに今の!」
「ごめん、ちょっと乱暴だったね」
ハハハハと一方的に笑い一方的に話を終わらせる。そんな小賢しい戦法を用いるのも巨乳になるため。奪い取った髪の毛は大切にティッシュに包んで持ち帰る。学校が終わったらレーシングカーみたいなスピードで自宅へ飛んで帰った。
「さぁ、ミルフィーユ! 優子の髪の毛をもらってきたよ!」
もはや爆発寸前の香苗。
「わかったっすよ」
香苗部屋の床に腰を下ろすミルフィーユ。いったいどこから持ってきたのかわからないが、エンジェル絵柄のノートパソコンを置いている。いわゆるタッチパッドという場所に優子の髪の毛を置いたのだが、ピーピーって音が鳴った。
「うん?」
ドキドキワクワクしながら、ミルフィーユの隣からパソコン画面を覗き込む香苗。そこにはスキャン結果というのが表示されている。中野優子という女子が持って生まれた運命情報だ。
「これ、優子って女の子が持っている運命情報だよ」
「う、運命情報?」
「そ、DNAにはそういう情報が書き込まれてる。どういう人間になる? どういう女になる? って事が書かれているよ。でもそれだけじゃないの。いつ、どこで、なんのスイッチが押されると、どういう風になりやすいのかって、イフ(IF)を絡めた情報まで書かれている」
「イフ?」
「まぁまぁ、先に優子の情報話をするから」
キーボードをチャカチャカやったりするミルフィーユによると、優子の巨乳歴史がわかったという。それは高校1年でGカップになり、高校3年の頃にHカップ。そうして20歳の頃にはIカップ。Iカップ時のバストサイズは105cmくらいだとのこと。
「ゆ、優子って……優子って……」
言葉を失いそうになる香苗だったが、めげている場合じゃない! とばかりミルフィーユがたいせつな事を語った。それこそ香苗が巨乳になるための話と関係がある。
「優子はねぇ、フェロモンの分泌が高1くらいか増え始めるって人生がセットされてる。そのフェロモンを香苗が少し分けてもらえたら、香苗の乳は高い確率で大いなる成長を見せ始めるよ」
うむ! と腕組みをするミルフィーユ、この女神の説明によるとこういう事。優子という女子の愛情を少し多めに奪い取ることができたら、優子のフェロモンに入っている育乳エキスも奪えるという。香苗が巨乳になるためにはそれしかないという。
「でね、これは香苗の髪の毛から見る香苗の人生情報」
ミルフィーユは香苗の髪の毛から呼び出した情報画面を指差す。それによると高1から20歳までAカップとのこと。というよりそのまま死ぬまでノー変化。
「ちょっとそれひどくない?」
「そんなの知らないよ。こればっかりは誰のせいでもないんだからね」
「やだぁ……なんかもう生きているのがイヤになってきた」
「でも香苗、望みは高校3年間にあるんだよ」
ちょいと画面を変えたミルフィーユによると、香苗のフェロモン分泌量が増えるであろうは高校3年間。なぜ「あろう」という表現を交え方といえば、香苗はちょいとばかりプライドの高い女子高生になるとのこと。そのプライドがフェロモンの分泌量を下げる可能性があり、下げたとすれば女性ホルモンの放出量も悪影響を受けるらしい。
「だからね、高校3年間でフェロモンも女性ホルモンもドバドバ出すことが出来たら、香苗は18歳でDカップになるという、そういうイフ(IF)で人生を動かせばいいんだよ。もし成功したら成人式の日にFカップになるって物語まで描ける可能性もありだよ」
香苗はガーン! と大きなショックを受けた。小6だからむずかしい話はどうかと思っていたが、ここまでの説明すべてが余すところなく理解できた。
イフ(IF)の人生。そんなモノ狙ってできるのか? なんとなく疑わしい気がした。それと同時にイフ(IF)の歴史はウソや小賢しさがあるようにも思える。プライドが……なんて思ったりしてしまう。
「香苗の持って生まれた情報によると、優子みたいな女のフェロモンを吸収する能力はあるってさ。だから高校3年間うちの1年間でいい、優子と恋人みたいな関係になれたらいい。優子が持っている愛情を多めに傾けてもらうと、香苗はそれを利用して巨乳に近づいていける」
「だ、だけどミルフィーユ……」
グワーッと盛り上がりかけていた香苗が、ひとつ冷静になったような声を出す。ふぅ……っと深いためいきを吐いて問題点というのをつぶやく。
中野優子、小6でEカップなんて美巨乳の持ち主。あの女子は残念ながら同性愛ではない。お年頃にもなれば男子を意識するはずだから、女同士の乳繰り合いに引っ張り込むのは不可能。それが香苗の見解。
「あきらめたら終わりだよ、香苗」
「じゃぁどうすればいいの?」
「そこは自分の行動力あるのみだよ。香苗、巨乳になりたいなら優子を強引に誘わないとダメ。高校生になったら、優子のくちびるをムリヤリ奪ってベッドに押し倒すとか、それくらい勇気ある行動を取らなきゃダメなんだよ」
「そこまでしたらガチの同性愛なるじゃんか。わたし……一応男子と恋愛したいんだけど」
「だから香苗は試されている。優子の愛情を奪い、フェロモンも女性ホルモンもたっぷり刺激させてもらい、乳がいい感じで大きくなったら、優子を捨てちゃえばいいの」
「ちょっと、それって外道じゃん! なんでわたしが極悪非道にならなきゃいけないのよ」
「香苗、シアワセになるためには躊躇しちゃいけないんだよ。シアワセは得た者勝ち。この世の中において、他人を犠牲にしないでシアワセになった人間はひとりもいないんだからね」
ミルフィーユの話を聞いていたら、香苗の心臓が過去に覚えのない感じでドキドキする。ひどい話、人として腐りまくっている話、だけどもシアワセになるためなら……けっこう魅力的な話、夢と希望と極悪が混じった形容し難いキブンが胸に渦巻く。
「う……」
悩むぜ、めちゃくちゃ悩むぜ! という顔の香苗が急に体操を始めた。体でも動かさないと自己嫌悪に陥りそうだった。
しかし一方では……こんな風にも考えた。いまは小6で高校生になるまで4年くらいある。だったら考えは変わるかもしれない。シアワセになるためなら迷いを知らない女になっているかもしれない。それに優子だって早くから散々恵まれたのだから、ちょっとくらいは人の役に立つべきじゃないか……と。
「うりゃぁ!」
突然にベッド上の枕にパンチをかます香苗。ボコボコ殴って優しさを捨てようとしているように見える。そうして汗を流しながら、フフっと笑ってミルフィーユに言った。
「考えてみたらさ、なんで乳の話でこんな必死にならなきゃいけないのか疑問」
「巨乳になりたいんでしょう?」
「なんか意味あんの? ねぇ、巨乳になって何がどうなるっていうの?」
香苗は怖気づくミルフィーユにけっこう怖い顔で迫る。ゲスな人間になってまで乳を大きくしたって、それの何がシアワセなのかと、かっこういい結論に達したようだった。
「わたし勉強する、育乳体操とか今日はやらないよ」
キリ! っとした顔で勉強を始めた。なかなか凛々しい姿ではあった。でもベッドに腰掛け香苗の背中を見るミルフィーユには感じ取れた。香苗はいま勉強と言いながら己の心と戦っているように見える。まるで心の声が聞こえてきそうにすら見える。
ー香苗の心の声ー
(人として健全な人生を送るか、巨乳という望みを叶えるため優子を利用するか。そこまでして巨乳になりたいか? 一回の人生なのだから自分の思い通りに形成するべきじゃない? 胸が痛むのは人間らしくていい話。いやちがう! 胸が痛むのは弱い人間だから……つよい人間になれば……胸が痛んだりしないはず)
勉強とか言いながら雑念たっぷりであろう香苗の背中、それを見つめながらミルフィーユは心でつぶやいた。高校時代の香苗はどうなっているんだろうねぇ……と。
数年後に女子高生となる香苗、そのときどんな物語が描かれるのか……いまは誰にもわからない。今は表向き静かに時を刻んでいくだけ。
(どうなることやら……)
香苗を案じ心配する一方、盛り上がったらおもしろそう! と無責任にワクワクするミルフィーユがいた。一体どうなるのか、わかるのは数年後になってからである。
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