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3Dプリンターでお姉ちゃんをつくるぜ!

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 3Dプリンターでお姉ちゃんをつくるぜ!


「きょうはめっちゃくちゃスゴいのを見せてやるよん♪」

 友人に浮かぶ宇宙を制覇したみたいなご機嫌ぶり。

「それはたのしみだねぇ」

 そんな相づちを打って、真治は重の家に上がらせてもらった。聞くところによると本日はハッピーデーらしい。両親のみならず、あのうざったい兄貴まで帰りが遅い。3人だけの用事とかいうやつであり、重にしてみればめったにない極楽モード。

 真治が玄関にカバンを置いて上がると、早く来い来い! と手招き。重からは愉快なジェットコースターみたいなノリが溢れ出ている。

「本日思いっきり自慢したいのがこれなんだ」

 ハハハ! と正義の味方を演じるかのように笑う重。応接間とかいう場所で、買ったばかりホヤホヤの一品をひけらかす。それはやけにでっかいマシーン。

「なにそれ?」

 真治がキョトンとすると、重だけがますます高揚していく。

「聞いておどろけ3Dプリンターだ」

 いぇい! とクソデカい機械の前でVサインをやってみせた。ところが真治の反応は今一つ。

「3Dプリンターがどうしたっていうのさ」

 冷静、やる気なし、感激する気なし、そんな態度を見せられたらチッ! っと舌打ちする。真治はノリが悪いなぁと呆れてから先に結論を言った。

「これでお姉ちゃんをつくるんだ! これで巨乳な女の子をゲットするんだ!」

 言い放たれた壮大な野望。それはおっぱい星人ならビリビリっと来るモノがあった。でもそれでも真治はまだ勢いにノレない。

「3Dプリンターで人間を作るとかいっても……どうせ粘土細工みたいなモノじゃないの? そんなのお姉ちゃんは見たくない。そんな巨乳いらない」

 これで話は終わったと思えばちがう。重はフフフと待ち構えていたように笑った。そうしてどこからともなくスゴいモノを取り出す。それを応接間中央にあるテーブル上へ置いた。

「な、なにそれ……」

 ドキッとして後座さりする真治がいた。

「なにって3Dプリンターで試しづくりしたモノ。実験でおれの手を複製してみたんだ。すごいだろう? 本物にしか見えないだろう? これを道端に捨てたら大騒ぎになるぞ。バラバラ死体だ! とか言ってパトカーも来るだろうな」

「たしかに見た目はすごい。で、でもさぁ……いくら見た目がすごくても、所詮はつくりものだろう? そんなのは別に……」

 ドキドキモードに突入しそうで出来ない真治。すると触ってみろと言われた。だからまったく期待なんかせず、あ~あとか言いながら触れてみた。

「は?」

 触った瞬間に真治の表情が激変! それは明らかに人の手だ。すぐさま左手で重の手を触り、右手で3Dハンドを触る。

「こ、これって……体温以外は同じじゃんか」

「そうだろう? すごいだろう? 言っとくけどな、作りたての時は温かいんだ。それだったらカンペキに人の手。それでお姉ちゃんを作ったら……それはもう……」

 くふふ♪ と心底うれしそうな顔をする重。一方の真治はふくざつなキブンにさせられる。同じ男子としては重の考えは理解できる。でも自分の姉を作られるとかいうと、おっぱい星人にもある良心ってやつがズキズキっと痛む。

「真治、スマホの中に家族写真はあるよな?」

「あるよ」

「お姉ちゃんが写っているやつは?」

「あるよ。全身がちゃんと写ってる」

「おっしゃぁ!!!!!」

 全身から炎みたいなオーラを出し、両手をにぎって天井を見上げる。そのオーバーアクションは別名情熱。誰にも止められない、誰にも譲れない、そんな熱意が紅い炎と化す。

 重は真治からスマホをうばいとって、まずはデスクトップにとUSBで接続。するとディスプレイって領域には取り込みデーターが映る。

「周りの景色とかいらないからな、お姉ちゃんだけなぞるんだ」

 説明しながら作業する手際の良さ。真治から優子の身長を聞くとそれを入力した。あとは問題がないらしい。優子のバスト具合などは自動でがっちり読み込むという。

「しかも画像から察して、もっとも適合するであろう触り心地を自動でつくってくれるんだ」

「すご……まるで神さまみたいな機械だね」

「いよいよ作成、ポチッとな!」

 かけごえと同時にマウスをクリックする。すると少し遅れてから3Dプリンターが動き出した。ウィーン! と神の声を発しながら、おどろくべきスピードで優子のコピーが作られていく。

「う、うわ……」

 見ていた真治は仰天。ほんもの優子と見分けがつかない。それが軽快な速度で出来上がっていく。まるで天国の工場を見学しているみたいだった。

ーチーン!ー

 あっという間にコピー優子が完成した。出来たばかりなので、ホヤホヤと湯気を立てている。。これはもうクローン人間と表現するべきグレード。優子本人が見たら卒倒することはまちがいない。

「お、お姉ちゃん……」

 たまらず近付こうとすると、パッと重に行く手を阻まれた。両腕を水平に広げる重は、真後ろにある優子を守る騎士のよう。

「おれが先に触るんだ!」

 男らしい声が発せられた。その堂々たるサマを見せつけられては仕方ない。なんかイヤだなぁと思いながらも、真治は少しだまる事にした。

「うふ、うふ、お姉ちゃーん♪」

 コピーと向き合う重。なんせ信じられないほどの代物だから、ホンモノとイチャラブしているようにしか見えない。そのあげく触り心地まで同じとかいうなら、それはもう具現化された夢。

「お、おぉ……この揉み応え! こ、こんなキモチイイ手触りがこの世にあるなんて!」

 真っ赤な顔をしながら、コピーの胸のふくらみを揉みまくる。なんて豊かさ、たっぷんたっぷんとやわらかい弾力に満ち溢れたその揉み応えは、この宇宙で一番のキモチよさかもしれない。

「うほうほ、お姉ちゃーん!」

 あまりにも嬉しくて大コーフン! 正面からコピー優子の胸に抱きついた。ムニュ! っと来る場所に顔を押しつけ、よろしくお願いします! とばかり甘えまくる。

「くぅ……」

 真治は見ていて納得できなかった。そこまでやるか! というのが半分。自分の姉がいたぶられているみたいで腹が立つ。そしてもう半分というのは、その行為は弟である自分が先にやるべきだと言いたくなる。

「いつまでやってんだよ。代われよ橘高」

 ガマンできずに動いた真治。

「今いいところなんだよジャマするな!」

 2人は応接間でギャーギャー言い合う。するとどうだろう、突然に応接間のドアが開いたりするではないか。

「おらぁ! テメェら何を騒いでやがる!」

 なんと! いきなり猛が姿を現したではないか。なんでも予定変更とかで、急に帰ってきたという。重と真治の2人にしてみれば、そりゃぁないよ神さま! という展開。

「騒ぐなら外で……」

 言いかけて猛がドキッとする。なんと応接間の中には中野優子がいるではないか。思わず顔がデレっとしかける。

「そ、それってコピーか?」

「ぅ……うん……」

「まったくおまえはロクな事を考えないなぁ」

 呆れながら優子のコピーに近づいた。そうしてあまりのクオリティーに息を呑む。しかし所詮は粘土細工だろうと3Dプリンターをバカにした。弟とちがってこういうモノには興味がなかったのだ。しかしそこはやはり男。興味はないがコピー優子の胸に手が伸びる。

「あん?」

 ボワン! と来た揉み応え。めっちゃ豊かでめっちゃキモチイイ弾力。思わず何回も何回も揉みまくってしまう。揉みながら思わずうっとりしかけてしまう。

「仕方ない、これはおれがもらっていくぜ」

 めずらしく顔を赤くしながら、猛はコピー優子を抱きかかえようとした。

「それはダメだ、絶対認めない!」

 こちらもめずらしく素直に応じない弟。いつもは兄に逆らえないが、こればっかりは引き下がれない。すると真治もそこに割って入る。

「ぼくは中野優子の弟だから、コピーはぼくがもらうべきだと思う」
 
 こうして3人はハデに奪い合いを開始。近所だの騒音だの気にしている場合ではない。とにかく優子のコピーを手に入れたい。それさえあれば……それさえあれば……と思うから絶対ゆずろうとはしないのだった。

「こらぁ! 何やってんの!」

 しばらくして橘高家の母がドアを開けた。猛より少し遅れて帰ってきたのだ。彼女が見たのは、ひっくり返ったように散らかった応接間。そしてバラバラになったコピー。見方によっては絶叫してもおかしくない光景。

 結局コピー優子は回収されたあげく捨てられてしまった。そして3Dプリンターは使用禁止となり封印されてしまったのである。
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