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大蛇VSカエル軍団2(優子を守れ)

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 大蛇VSカエル軍団2(優子を守れ)


 「優子、最近ちょっと顔色がわるくない?」

 きょうの朝に学校へ行く途中、優子は友人の香苗から言われた。

「そう?」

 ややしんどい気がするってことは表に出さず、ハハっと笑って見せる優子。でもその顔は、ちょいと病んでいるみたいでもあった。

「ここ最近へんな夢をいっぱい見るんだよ」

 ふぅっとためいきを落としながら優子は説明した。ここのところ夢の中がいつも白っぽくなる。赤い点が2つほどあるようにも思うが、白いうごめきが印象的。それが自分に絡んでくるみたいだと。

「なにそれ?」

 香苗はキョトンとしてしまった。なんじゃそれ? と思うだけで、何もアドバイスなんかできることがない。それでも一応は、なんか悩みがあったら言ってよと伝えることはしておいた。

 そして同日夜、真治が寝る前に姉の部屋を訪れる。コミックを借りたいとかいう理由だったが、そこで何気に言っている。

「最近のお姉ちゃんは顔色がわるくない?」

 せっかく心配してやってみても、眠そうな顔をする姉はとっても機嫌がわるい。

「うるさいな、はやく出て行ってよ」

 追い出されてしまった真治、姉部屋ドアの前でケッ! っと腹を立てる。性格ブス! 死んでしまえ! とか言ったら、飛び出してくる……と思ったけど、姉は全然相手にしてくれない。

「なんだろういったい……変なの」

 そう思って部屋にもどった。ちょこっとコミックを眺めて、そのあとは自然に眠りに突入。ぐぅぐぅとキモチよく眠るだけ。

ーそして数時間後ー

(んぅ……)

 何やら寝苦しくなって真治は目を覚ました。べつに怖い夢を見たわけではないが、それとなく神経がゾワゾワっとさせられ両目が開いた。

「あ~あ、夜中の1時半に目が覚めちゃった」

 損な人生を送っているなぁってキブンを噛みしめたとき、ふと両耳に不快な音が入ってきた。ズルズルっと引きずるような音。モノを引きずるというより、何かが「うんしょうんしょ!」と這いずるような音。しかもなかなかにスケールがデカい。

「え、なにこれ……」

 音に近づこうと思い窓際のカーテンを開けた。そこには色っぽい月に照らされた夜景が映る。寝静まった近所の家々が目に入る。でもひとつだけ思いっきりちがう所があった。

「う!」

 真治は見た! 青白く動く巨大なモノ。異様にデカくて長いモノが屋根を動いていて、それがとなりに部屋にニョロニョロっと入っていく。

「いぃ?」

 ザッツ・ショッキング! という映像だった。なんだ今のは……なんだ今のは……と、真治の心臓はバコバコ恐怖した。

「お、お姉ちゃん……」

 心配になったので部屋から出た。そうして姉ルームのドア前に立って、右手でコンコンをやろうとしたとき、そこで内側から声が聞こえてくる。

「ぁん……んうんぅ……」

 その声は真治をマジドキさせるモノだった。

「ハァハァ……んぅ……んんぅ」

 壮絶な苦痛に全力で悶えるような声。うっすら恐怖と不安が絡み合ったような音色。真治の背中にゾワっと鳥肌が立つ。

「お、お姉ちゃん?」

 ついさっき見た怖い絵を思い出して、それから漏れてくる悶えボイスを聞くと、めちゃくそヤバくない? と不安になってきた。

 ところが、思いっきりドアを叩こうとしたらビリっとして手が動かなくなった。いや、何か見えない力に制圧されているみたいだった。
 
「ぁ……んぅ……あぁん!!」

 聞こえてくる姉のすごい声を聞きながら何もできない真治だった。回れ右して自室に戻るのが精一杯だった。ガクガクふるえながら朝を待った。

 そして迎えた朝、真治は寝不足がたたって朝のスタートが遅れた。優子は一足先に学校へ言ってしまったから、辛抱強く放課後になるのを待つ。

ーキンコーン・カンコーンー

 真治はすべての授業が終わると、大急ぎで6年のクラスに走っていく。お目当ての教室前に立ったら、姉が出てくるのを待つ。

「優子、あれ弟じゃないの?」

 オール授業が終わったとき、香苗が窓の外を指さす。

「あ……」

 優子はちょっと顔を赤くした。周囲から仲良し姉弟とかヒソヒソやられるのが恥ずかしかったの。だから外に出たら、いきなり弟の頬をつねり上げる。

「いたたた……いきなりなんだよ」

「とつぜん何しに来たのよ」

「お姉ちゃん、いっしょに神社に行こう!」

「はぁ?」

 まったく思いもしない話の流れ。だから優子は弟の額に手をあてた。どこか悪くなった? とか心配するが、弟は本気だった。

「お姉ちゃんは魔物に取り憑かれているんだ!」

 周囲の目線を気にせず言い放つ。それは優子に恥ずかしいという思いを抱かせた。だから真治が言おうとした夜の光景なんか聞こうとはしない。

「マンガの読みすぎだよバカ」

 クルっと回転して立ち去ろうとする優子。このままでは姉を助けられない。なんとしてもつき合ってもわらなきゃいけない! そこで真治は赤い顔をして言う。

「お姉ちゃん、つき合ってくれなかったら、この場で言いふらす!」

「はい? 言いふらすって何?」

「ぼ、ぼくは知ってるんだ」

「だから何を?」

「お姉ちゃんのブラジャーが何カップか、ぼくは知っている!」

 けっこう大きな声で言うものだから、周りがピタッと静かになる。男子たちの多くはこんな風にヒソヒソやった。

ー中野がどのくらいの巨乳なのか、ぜひおしえて欲しいー

 これにはさすがの優子も根負け。仕方なく弟といっしょに下校することに同意した。でも神社に立ち寄ることには応じようとはしない。そして真治は必死に説得する。

「だから、お姉ちゃんは魔物に取り憑かれていると言ってるじゃん」

「魔物ってなによ、言ってみなさいよ」

「車ですら丸呑みできるような大蛇だよ」

「はぁ? どこからそんなのが出てくるのよ」

「だから話を聞いてよ、お願いだからさ」

 兄妹がヤイヤイ言い合っていると、ふと前方に誰かが倒れている。それは奇妙なインパクトがある人だった。白い着物やら数珠やらが、明らかに一般離れと目に映る。

「だいじょうぶですか?」

 真治は姉と言い合いを中断し、老婆に声をかける。

「足をくじいてしまって……家はすぐそこなのじゃが……」

 そう言ったうさんくさい老婆は、ずいぶんと立派な建物を指さした。そこには除霊の館という看板がかかっている。つまりこの老婆は除霊師だったのだ。

「このくらいの距離ならぼくがおぶってあげる」

 真治がボランティア活動に入った。その親切な姿勢は、となりを歩く優子にとって誇らしいモノだった。そうして館に到着して終わりかと思ったら、老婆が中で一服するようにと誘う。それだけならまだしも、予想外のことを優子に言った。

「あぁ、お嬢さん、あなた危険な感じがする。中にお入りなさい」

 除霊師は真治にたすけてもらったお礼をしてくれた。お茶とおかしをたっぷり差し出してくれただけでなく、優子を見てあげようという。

「ぜひ、よろしくおねがいします!」

 願ってもない展開と、真治は横から口をはさんだ。

「では!」

 神聖なる儀式がスタート。Eカップの胸をドキドキさせる優子、しばらくするとビックリするような事を言われてしまった。

「ヘビに愛されておる」

「は?」

「中野優子を愛したいと願っているヘビがいる。いまは近寄ってひそかに誘っておるが、きょう辺りに行動を起こすじゃろう。いよいよメイクラブする時じゃと。そうじゃ、ヘビが中野優子と体を交え愛し合おうとしておる!」

「えぇ……やだ……」

「もしメイクラブが成立すると、中野優子はめでたく身ごもってしまうのじゃ!」

「ガーン!」

 背筋が凍りつくほどホラーな話だった。でも優子は最近のことを思えば、除霊師の言うことを信じずにはいられない。そしてヘビとメイクラブはイヤだと思ったし、ぜったい身ごもりたくないとも思った。

「心配いらん。ワシに任せるんじゃ!」

 除霊師の老婆は立ちあがる。それから除霊用とかいうタバコを咥えた。それに火をつけるとスパスパと吸いまくり、優子と真治をゴホゴホさせる。

 すると小さな小瓶をとりだす。そこには少量の水があって、吸いまくっていたタバコの吸い殻を入れた。するとどうだ、中で水が汚くにごる。そんなモノを優子は手渡されるのだった。

「歩いているときはずっとポケットに入れておくのじゃ。寝るときは部屋に置いておく。こうすればヘビは近寄れない。ヘビにはすさまじいヤニのニオイが伝わっておるからな」

 老婆の話を聞いていて真治はホッとした。これで一安心と胸をなでおろす。ところが老婆は最後に、不安になることを言うのだった。

「中野優子の体が欲しいと、ヘビが異常に情熱を燃やせばたいへんな事が起こるかもしれない」

 こうして優子は除霊師の指示にしたがった。たいせつな小瓶をポケットに入れっぱなし。寝るときはちゃんと部屋に置いておく。

「ヘビとメイクラブとか絶対にイヤだから」

 そうして夜の眠りにつく優子。見た目イマイチな小瓶のおかげなのか、うなされることなくぐっすりと眠れた。それは久しぶりの快眠だった。

 でも……

 となり部屋の真治は夜中に震えていた。カーテンの隙間から夜の外を見ていたからだ。屋根の上にはどでかいヘビがいて、優子の部屋に入れないことに怒っている。なんと人語にて怒りをぶちまけている。

「優子……なぜわたしを拒む。今宵こそ愛し合おうと思っていたのに、おまえの谷間に思いをぶつけようと思ったのに、なぜ……なぜわたしの思いを拒むのだ!」
 
 ヘビはずいぶん長くがんばった。なんとしても入りたかったらしい。なんとしても優子を求めたかったらしい。それができなくてすさまじい怒りを立て続けた。夜の明かりに照らされたその姿は、とっても美しくてこわいモノ。カーテンの隙間から見る真治はひたすらガクガクふるえ続けた。


ーヘビの情熱はこれで収まるか? 怒涛の展開を見せる次回に続くー                              
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