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十八話・自殺した女の子が誘ってくる2
しおりを挟む(この物語はフィクションであり、実在する人物ㆍ団体とは関係ありません)
十八話・自殺した女の子が誘ってくる2
「き、き、木村……さん?」
雨竜、両足をガクガク震わせながらも落ち着こうとしながら声を出した。
「空野くん、迎えに来たよ」
下にいる千依がそう言った。でもその声にはなんというか女子のかわいさもなければ、人としての温もりめいた感情もないように思えた。だからなのか知恵のすさまじく青白い顔というのが無表情に見えると、雨竜は前例のない怖さにごくりとひとつ飲んでしまう。
「む、迎え?」
「そう、いっしょに行こう。来てくれるよね?」
「い、行くって、どこに? そ、それにその……木村さん……」
「なぁに?」
「じ、じ、自殺したんじゃ……」
「うん、したよ」
ここで千依が階段を上がり始めた。それを見て怖いと思うのは本能レベル。だから雨竜は好きだった女の子が近づこうとしているのに、後ずさりを始める。
「空野くん、お願い、逃げないで……いっしょに行きたいから」
「ど、どこに行くって……」
「あの世。空野くんなら来てくれると思っているよ」
「な、なんで?」
「だって……天野くん、わたしを好いてくれている。でしょう?」
ここで雨竜は激しくびっくりした。なぜってあっという間に千依が2段下に到達していたからだ。そして間近に見るその血色のない顔は、千依であって千依でないような、もっといえば生きている者と相容れないようなモノ。
「いっしょに行こう」
知恵が手を伸ばした。それは見覚えのある色白でやわらかそうな手ではない。つめたく血の流れを失った色合いに染まっている。
「い、いや、ぼく……」
校舎内はありえないほど静か。外がうるさいから余計に沼に沈んだような静けさが印象的。そこでいま雨竜は千依に誘われている。
「手を取って、そしたら空野くんも死ねる」
言った千依がグッと背を伸ばそうとした時だった、あまりの怖さに耐えられないと雨竜が動く。それは生まれてから現在に至るまでにおいてやった事がない無我夢中だった。何も見えない。何も聞こえない。自分がどこをどう進んだか記憶にない。まるで光の中に入って自意識を失ったかのように動いただけ。
「ハァハァハァ……」
いったいどれだけの学校の中を走り回ったのだろうか。顔どころか体中が汗にまみれており、尋常ではない息切れがめまいすら引き起こしそう。
ぜーぜーと息を切らす雨竜はいま3年生がいる校舎の1階にいる。もちろんその校舎も空っぽで誰もいないから、噴水のある中庭につながる出入り口に立って外を見れば、自分ひとりしかないうす暗い世界の恐怖に心臓がおびえる。
「ハッ!」
ザーザーとつめたくはげしい雨が槍のように落ちる中、噴水の前に千依が立っている。うすぐらい背景にかなしい雨音、そして死んだはずの千依が立っていると、もう絶叫したり気絶たりって可能性が出てくる。だがあまりにも走り回ってクタクタなので、雨竜は外にいて濡れている千依を見ながら動けない。
「き、木村さん……」
「なに?」
「ほ、ほんとうに……死んだ? っていうか……自殺した?」
「うん、昨日の夜っていうか今日の午前っていうか、そういう時間帯に飛び降り自殺しちゃった」
「なんで、そんな事を……」
「色々とつらかったから。経済的な事情で大学にも行けないしね。高卒だと将来も明るいモノじゃない。そう考えていたらいっそ死んじゃえってなったわけ」
「ウソだろう、木村さんみたいな人がそんなかんたんに……」
「でもね……正直に言うとものすごく後悔しているの」
「後悔って……死んでから言うなんて……」
「死ぬ寸前……怖かった。あの一瞬、すさまじい恐怖だったよ。自分が叩きつけられぐちゃぐちゃになるという、あの壮絶なまぶしさはまさに死の直前。だけど死んであの世に逝かなきゃってなったとき、なんで自殺したんだろうって悲しくなったんだ」
「おかしいだろう、だってそれは死ぬ前に考えなきゃいけなかったんだ。ぼくは木村さんならそうする人だと思いたいよ……もう死んだとしても」
「そうか、そういう風に見てくれていたのか……だったらもうちょいがんばればよかったのかな」
千依は大雨が降る外の中でしゃべっているのだが、不思議と雨竜にはよく声が聞こえた。でもそれをうれしい事だと思えないのも雨竜にとってはっ実だった。
「わたしね、死んだはいいけど死ぬんじゃなかったと後悔しているわけ。だからせめてさみしさを紛らわすために誰かを連れていきたい。けど……両親とか妹はさすがに心が痛む。連れていきたい友だちはいない。だからきみなんだよ、空野くん」
「なんでぼく……」
「だって空野くんはいつもわたしを見てた。わたしはおっぱい96cmとかブラがGカップとか爆乳だけど、でも空野くんはそういう特徴以外でも、すべてにおいてわたしが好みだと思ってくれていたはず。そういうのがすごく伝わっていたんだ」
「だったらその……死ぬ前に言ってくれたらいいじゃんか。なんで死んでから言うんだよ、そんなのってひどいよ」
「ごめんね……そうするべきだったよね。どうもその、死のうと思ったら視野が狭くなっちゃうんだ。もっと大きな目で物事を見てから死ぬべきだったね」
「ぼ、ぼくは……死にたくない……」
「わたしのこと……キライ?」
「好きだよ、そう思って見てた。今だってしゃべっているのが生きている木村さんだったらどんなにうれしいだろう。でも死んでしまったら……」
「だいじょうぶ、安心して」
「安心?」
「痛くも怖くもない、スーッと楽に死なせてあげるから」
「そ、そんな……」
「死んでくれた空野くんとは夫婦になるよ。このおっぱいで空野くんを抱いてあげる。好きなだけあまえてくれていいよ。パイズリだって空野くんが求める限り何回でもやってあげる」
「だから、そういうのは生きている間に言って欲しかったよ」
「空野くん、わたしね、あなたと結ばれたいからがんばってこの格好をしているんだよ。そこをわかって欲しいな」
「ど、どういう意味?」
「わたしは飛び降り自殺をしてぐちゃぐちゃになったんだよ、ぐちゃぐちゃにね」
「ぐ、ぐちゃぐちゃ……」
「そう、こんな風に」
千依が言った瞬間、突然に立っていた少女の体が崩れ落ちた。そして目にする雨竜から絶叫する力すら奪い去った。ドロドロの液体。グチャっと壊れた顔面。吹きこぼれた脳みそ。赤色に黄色やらみどりなどが混じったような液体の海。あまりの激烈に飛び出しこぼれた眼球。それはまるで洗車でつぶされてしまった人体を思わせるようなひどいありさま。
「く……」
雨竜、ゆっくりうつむくと……こらえきれないとばかり両目から涙を流し始めた。それは生きている者の証として熱い。
「泣いてくれる、やっぱり空野くんはやさしい」
千依に言われて涙まみれの雨竜が顔を上げると、青白い幽霊になった千依の姿が先と同じ位置に立っている。
「くぅ……バッカじゃねぇの」
雨竜は大量の涙を流し顔面いっぱいに泣きながら声を震わせ、右手の甲で鼻をすする。そして怒りを交えて言い放つ。
「飛び降りなんかして……ぐちゃぐちゃになって、そこまでやっておきながら後悔しているって、そして自分に思いを寄せていた男子を連れて行こうって、そんなの自分勝手過ぎるだろう。そんな姿を見せられて、木村さんといっしょになれるなら死ぬ! とか言うわけがないだろう。ふざけんな。おれは死なない、絶対に死なない。死ぬかよ、死ぬもんかよ、おれは、おれは、お、お、おまえなんかキライだ」
「空野くん、わたしといっしょになりたくない? ずっといっしょでたのしく、わたしの胸に甘えてセックスしてパイズリして……とかやりたくない?」
「だまれ、だまれ、だまれ、だまれ!! お、おれ、おれが好きだったのはそんな木村千依じゃない。それが死んだっていうならもう終わったんだ。おまえなんかおれが好きだった木村さんじゃない」
雨竜が泣く。もはや目の前が見えなくなるほどの涙を流す。だが千依はどうあっても雨竜を連れていきたいようだ。
「お願い、いっしょに来て。そうでないとわたし……死んでも死にきれない」
死んでから後悔する女子がゆっくりと動き始める。目に涙浮かべている雨竜に向かって接近する。
「知るか、ばかやろう、誰が死ぬもんか、死ぬか、死ぬか、死んでたまるか、おまえなんか大嫌いだ!」
雨竜は泣き叫びながらまた走り出した。だだっ広い外に逃げるべきだったのかもしれないが、また校舎の中に戻り階段を上がり全速力で逃げていく。
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