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十七話・復讐のグラマーサイズブラ1
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(この物語はフィクションであり、実在する人物ㆍ団体とは関係ありません)
十七話・復讐のグラマーサイズブラ1
「はぁ? 黒田が結婚?」
白石桃は周囲に気遣うことなく大きな声を出す。
「声がデカい」
同僚の亜寿沙は少しは恥じらえよ! という目を相手に向ける。なんせここは午後7って盛り上がり時の居酒屋、周囲には大勢の人がいる。いくら酒を飲んでいるとはいえ、大声で目立つというのはダサい、格好悪い、若い女のする事じゃないと亜寿沙は思う。
「いや、だって……」
桃は拗ねる女子中学生みたいなオーラを浮かべながら、白い箱に手をかけ取り出した一本を咥える。そいつの先を小さな火で燃やし吸い込み吐き出すと、オラオラ! 的なノリで不平不満というのをぶちまけた。
「あいつブスじゃんよ。ま、まぁ……性格は悪くないと思うけど、見た目ブスな女がどうしてわたしより先に結婚できるわけ?」
それはもうひどい言い草である。女の味方は女であるが、女の忌むべき敵もまた女だという事実が具現化されているようだ。
「ブスは言い過ぎでしょう。ブスっぽくかわいい、略してブスカワと言ってあげないと」
「亜寿沙、そんな言い方で自分だけ正義の味方を気取るつもり?」
「いや、だって……人として胸が痛むっていうか……」
「ふん、なにがブスカワ。あいつなんて……あの黒田なんて……」
くぅ! っと悔しそうな顔を浮かべた桃、何も持たない左手をギュッと握りしめ立派なテーブルを軽くゴンゴンどつきながらつぶやく。
「く、黒田なんて……乳のデカさしか取り柄がない。た、たしかにすごい美爆乳と見えてうらやましいけど、それしか取り柄がない黒田はただのミルクタンクでしょう」
桃が怒りに震えハァハァと息を切らすのは大げさに見える。でも実際にはムリもないアクションだった。ランジェリーショップ「谷間のつぶやきはバラ色」 という店で働いているのが桃であり亜寿沙であり黒田未黎だったりする。いずれも23歳というお年頃であり、相思相愛の彼氏が出来たら狂ったようにセックスしたいと心が疼く頃合い。
その3人の中で一番豊満でやわらかい弾力に満ちた乳房の持ち主が未黎。デブではないがむっちりグラマーというよく出来た女子であり、そこに対して抱く桃の嫉妬というのはすさまじいモノがあった。
「ねぇ、桃……」
「なに?」
「あんた確かDカップじゃなかった?」
「バスト86cmだけど?」
「それで嫉妬する? わたしなんかBカップでバスト82cmしかないんだけど」
「する、大いに、はげしく、燃え盛るほどに嫉妬するね」
桃曰く、3人の中で総合して地味で目立たないのは亜寿沙。地味こそ無難という考えに乗っとるのであれば、Bカップも上出来。つまり亜寿沙は地味な平和主義者としてスポットライトを浴びる資格なしとなる。
「だけどわたし、この桃はちがうよ。わたしは美人だしね、はっきりとかわいいからね。スタイルだっていいんだ。でも、でもね、おっぱいの大きさっていうのは身長とか体型によってインパクトが変わる。Dカップだよ? 美人でかわいくてDカップなんだよ? これって女神でしょう? 100年に一人の逸材でしょう だけど悲しい事にわたしの場合はCカップくらいに見えてしまう。だからいつも損をさせられる。大した巨乳じゃないって過小評価されてしまうんだ。この悲しみ、この苛立ち、このフラストレーション、それらからすれば黒田……あの爆乳をわたしが許せるわけないでしょう! あいつこそ平和をグチャグチャにかき混ぜる革命主義者みたいなもんでしょう!」
思わず興奮度が上がってしまい、ドン! とテーブルをつよく叩いてしまう。だから周りの人間が一斉に目を向ける。
「あ、あは……」
周囲に対しごめんなさいと笑って謝る亜寿沙、前を向き直るとたしかに黒田はちょっと卑怯な女だよねと同調する。
「だって黒田ってブスカワであってマジブスではない。しかもあれ、デブじゃなくムッチリでふっくらグラマーっておいしい話を与えられ過ぎ。それに関してはたしかにわたしも、あんまり悪くは言いたくないけど時々は腹が立つ」
「亜寿沙、黒田って……あれバスト何cm? ブラのサイズとか知ってる?」
「い、いや聞いた事ない。っていうか黒田だったらきっと透かして教えてくれない気がする」
「くっそ……あのホルスタインめ……ブスのくせに恵まれた美爆乳とかムッチリグラマーとか、絶対いい気になっているよ。表向きはおっとりやさしい女子だけど、心の中では自分こそが選ばれし天使って錯覚を抱いているよ」
話はどんどん盛り上がった。しかもあまり精神衛生によろしくない色合いで燃え上がっていく。ここで桃は重要な事を思い出す。未黎の乳に気を取られ嫉妬ばかりしていたが、そもそも未黎はいったい誰と結婚するのかと亜寿沙に尋ねる。
「風の流れで聞いたところによると、1年前の合コンで知り合った男らしい」
「1年前の合コン?」
「ほら、わたしらも参加したじゃん」
「あ、あのとき? ウソでしょう、あのホルスタイン、あのときはテレて恥ずかしがって、結局相手を得られないってオチだったじゃん」
「でも実は性格が良くてやさしいおっぱい星人と付き合うって話になっていたらしいよ」
「ふざけんなよ……黒田……」
桃はピンク色にかがやくお猪口に入っているきれいな日本酒をグッと呑んでから怪獣みたいに怒りを吐き出す。
「性格のいいおっぱい星人? つまり黒田みたいな女が好きで、やさしくて思いやりがあって、そして黒田の豊満なおっぱいに甘えるのが大好きで、爆乳女子の心をくすぐって永遠に幸せだと女に感じさせる男だってこと? なにそれ、一番ぜいたくな話じゃん。ムカつく、マジでムカつく、なんで黒田ばっかり……」
もはや桃と亜寿沙のテーブルは陰険なフンイキに包まれつつあった。負の連鎖という表現すらそこに交じりつつある。だからして亜寿沙はそろそろ黒田の話は止めようと思う。しかし桃はそれを許さない。
「もしさぁ、人を一人殺しても罪にならないんだったら、わたしは明日にでも黒田を殺したいね」
「桃、言っている事が過激」
「ねぇ、亜寿沙……どうやったら黒田を完全犯罪で殺せると思う?」
「いやいや桃、もう話がほんとうに怖いって」
「殺すのがダメだと言うなら、じゃぁどうすれば黒田は撃沈すると思う?」
「そりゃぁ決まってる」
「なに、言いなさい」
「性格がよくてやさしいおっぱい星人なんて激レアだからね、そういう彼氏が死んだりしたら黒田は立ち直れないんじゃないか」
「あん?」
ここで桃の脳内にある電球がピカ! っと光った。要するにとってもいい事を思いついたのである。桃に言わせれば天才のひらめきというモノ。
「そうかそうか、そうだよね、うん……いま亜寿沙はとってもいい事を言ったよ」
えへへと突然に笑いだす桃、今まで見せていた怒りの炎が一瞬で消えた。でもおちついた平和主義者というよりは、よろしくない心を隠す危険因子のように見えなくもない。
「桃、あんた何か変なこと考えてない?」
「いやだなぁ亜寿沙、美人でかわいくて性格がよくてDカップってわたしが変な事なんて考えるわけないじゃん。ま、黒田みたいなミルク製造機は放っておこう。今宵は2人でたのしく過ごそう」
こうして2人のテーブルはおだやかになり、ギャーギャー騒いで目立つ事もなくなった。もっとも見た目通り落ち着いているのは亜寿沙だけであって、桃の方はいったい何を内に隠しているかとってもあやしいモノだった。
十七話・復讐のグラマーサイズブラ1
「はぁ? 黒田が結婚?」
白石桃は周囲に気遣うことなく大きな声を出す。
「声がデカい」
同僚の亜寿沙は少しは恥じらえよ! という目を相手に向ける。なんせここは午後7って盛り上がり時の居酒屋、周囲には大勢の人がいる。いくら酒を飲んでいるとはいえ、大声で目立つというのはダサい、格好悪い、若い女のする事じゃないと亜寿沙は思う。
「いや、だって……」
桃は拗ねる女子中学生みたいなオーラを浮かべながら、白い箱に手をかけ取り出した一本を咥える。そいつの先を小さな火で燃やし吸い込み吐き出すと、オラオラ! 的なノリで不平不満というのをぶちまけた。
「あいつブスじゃんよ。ま、まぁ……性格は悪くないと思うけど、見た目ブスな女がどうしてわたしより先に結婚できるわけ?」
それはもうひどい言い草である。女の味方は女であるが、女の忌むべき敵もまた女だという事実が具現化されているようだ。
「ブスは言い過ぎでしょう。ブスっぽくかわいい、略してブスカワと言ってあげないと」
「亜寿沙、そんな言い方で自分だけ正義の味方を気取るつもり?」
「いや、だって……人として胸が痛むっていうか……」
「ふん、なにがブスカワ。あいつなんて……あの黒田なんて……」
くぅ! っと悔しそうな顔を浮かべた桃、何も持たない左手をギュッと握りしめ立派なテーブルを軽くゴンゴンどつきながらつぶやく。
「く、黒田なんて……乳のデカさしか取り柄がない。た、たしかにすごい美爆乳と見えてうらやましいけど、それしか取り柄がない黒田はただのミルクタンクでしょう」
桃が怒りに震えハァハァと息を切らすのは大げさに見える。でも実際にはムリもないアクションだった。ランジェリーショップ「谷間のつぶやきはバラ色」 という店で働いているのが桃であり亜寿沙であり黒田未黎だったりする。いずれも23歳というお年頃であり、相思相愛の彼氏が出来たら狂ったようにセックスしたいと心が疼く頃合い。
その3人の中で一番豊満でやわらかい弾力に満ちた乳房の持ち主が未黎。デブではないがむっちりグラマーというよく出来た女子であり、そこに対して抱く桃の嫉妬というのはすさまじいモノがあった。
「ねぇ、桃……」
「なに?」
「あんた確かDカップじゃなかった?」
「バスト86cmだけど?」
「それで嫉妬する? わたしなんかBカップでバスト82cmしかないんだけど」
「する、大いに、はげしく、燃え盛るほどに嫉妬するね」
桃曰く、3人の中で総合して地味で目立たないのは亜寿沙。地味こそ無難という考えに乗っとるのであれば、Bカップも上出来。つまり亜寿沙は地味な平和主義者としてスポットライトを浴びる資格なしとなる。
「だけどわたし、この桃はちがうよ。わたしは美人だしね、はっきりとかわいいからね。スタイルだっていいんだ。でも、でもね、おっぱいの大きさっていうのは身長とか体型によってインパクトが変わる。Dカップだよ? 美人でかわいくてDカップなんだよ? これって女神でしょう? 100年に一人の逸材でしょう だけど悲しい事にわたしの場合はCカップくらいに見えてしまう。だからいつも損をさせられる。大した巨乳じゃないって過小評価されてしまうんだ。この悲しみ、この苛立ち、このフラストレーション、それらからすれば黒田……あの爆乳をわたしが許せるわけないでしょう! あいつこそ平和をグチャグチャにかき混ぜる革命主義者みたいなもんでしょう!」
思わず興奮度が上がってしまい、ドン! とテーブルをつよく叩いてしまう。だから周りの人間が一斉に目を向ける。
「あ、あは……」
周囲に対しごめんなさいと笑って謝る亜寿沙、前を向き直るとたしかに黒田はちょっと卑怯な女だよねと同調する。
「だって黒田ってブスカワであってマジブスではない。しかもあれ、デブじゃなくムッチリでふっくらグラマーっておいしい話を与えられ過ぎ。それに関してはたしかにわたしも、あんまり悪くは言いたくないけど時々は腹が立つ」
「亜寿沙、黒田って……あれバスト何cm? ブラのサイズとか知ってる?」
「い、いや聞いた事ない。っていうか黒田だったらきっと透かして教えてくれない気がする」
「くっそ……あのホルスタインめ……ブスのくせに恵まれた美爆乳とかムッチリグラマーとか、絶対いい気になっているよ。表向きはおっとりやさしい女子だけど、心の中では自分こそが選ばれし天使って錯覚を抱いているよ」
話はどんどん盛り上がった。しかもあまり精神衛生によろしくない色合いで燃え上がっていく。ここで桃は重要な事を思い出す。未黎の乳に気を取られ嫉妬ばかりしていたが、そもそも未黎はいったい誰と結婚するのかと亜寿沙に尋ねる。
「風の流れで聞いたところによると、1年前の合コンで知り合った男らしい」
「1年前の合コン?」
「ほら、わたしらも参加したじゃん」
「あ、あのとき? ウソでしょう、あのホルスタイン、あのときはテレて恥ずかしがって、結局相手を得られないってオチだったじゃん」
「でも実は性格が良くてやさしいおっぱい星人と付き合うって話になっていたらしいよ」
「ふざけんなよ……黒田……」
桃はピンク色にかがやくお猪口に入っているきれいな日本酒をグッと呑んでから怪獣みたいに怒りを吐き出す。
「性格のいいおっぱい星人? つまり黒田みたいな女が好きで、やさしくて思いやりがあって、そして黒田の豊満なおっぱいに甘えるのが大好きで、爆乳女子の心をくすぐって永遠に幸せだと女に感じさせる男だってこと? なにそれ、一番ぜいたくな話じゃん。ムカつく、マジでムカつく、なんで黒田ばっかり……」
もはや桃と亜寿沙のテーブルは陰険なフンイキに包まれつつあった。負の連鎖という表現すらそこに交じりつつある。だからして亜寿沙はそろそろ黒田の話は止めようと思う。しかし桃はそれを許さない。
「もしさぁ、人を一人殺しても罪にならないんだったら、わたしは明日にでも黒田を殺したいね」
「桃、言っている事が過激」
「ねぇ、亜寿沙……どうやったら黒田を完全犯罪で殺せると思う?」
「いやいや桃、もう話がほんとうに怖いって」
「殺すのがダメだと言うなら、じゃぁどうすれば黒田は撃沈すると思う?」
「そりゃぁ決まってる」
「なに、言いなさい」
「性格がよくてやさしいおっぱい星人なんて激レアだからね、そういう彼氏が死んだりしたら黒田は立ち直れないんじゃないか」
「あん?」
ここで桃の脳内にある電球がピカ! っと光った。要するにとってもいい事を思いついたのである。桃に言わせれば天才のひらめきというモノ。
「そうかそうか、そうだよね、うん……いま亜寿沙はとってもいい事を言ったよ」
えへへと突然に笑いだす桃、今まで見せていた怒りの炎が一瞬で消えた。でもおちついた平和主義者というよりは、よろしくない心を隠す危険因子のように見えなくもない。
「桃、あんた何か変なこと考えてない?」
「いやだなぁ亜寿沙、美人でかわいくて性格がよくてDカップってわたしが変な事なんて考えるわけないじゃん。ま、黒田みたいなミルク製造機は放っておこう。今宵は2人でたのしく過ごそう」
こうして2人のテーブルはおだやかになり、ギャーギャー騒いで目立つ事もなくなった。もっとも見た目通り落ち着いているのは亜寿沙だけであって、桃の方はいったい何を内に隠しているかとってもあやしいモノだった。
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