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十ニ話・時間よ止まれ1
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(この物語はフィクションであり、実在する人物ㆍ団体とは関係ありません)
十ニ話・時間よ止まれ1
「あ~あ……なんかいい事ってないかなぁ」
立憲がアクビをしながらぼやく。21歳の彼はたったいまアルバイトを終えたところだ。回転寿司って所で働いているが、最近ちょっと不愉快が増えている。彼は皿洗いみたいなバイトだけでよかったのに、店長によって厨房での労働を課された。おかげでやりたくもない仕込みだの料理をする羽目になった。いや……それだけならまだいい。厨房に入ると野村という29歳って年上の男がいて、とにかくうざいいのだった。彼は明らかに立憲を目の敵にしている。
「クソ、野村のやつ……一回でいいからぶっ殺してやりたい」
当然ながら立憲は野村が死ぬほど嫌いになったので、ストレスがたまる度合いはすさまじい。そこに来て最近は不運が続くときた。愛機ことパソコンがおかしくなったゆえ修理に出す。スマホは問題ないもののエロ動画ばかり見まくったせいで只今通信制限を食らっている。だからして今夜のペニスを満たすために、レンタルビデオ店なんてところに通って、巨乳とか爆乳のエロDVDを借りねばならなかったりする。そしてそれは小さいガラクタみたいなポータブルDVDプレーヤーで見なければならない。
「巨乳とか爆乳かぁ……こんなおっぱいに甘えてみたいなぁ。こういう女の子とか女性とデートしてセックスとかできたら、いったいどれだけハッピーなんだろう」
そんな事をつぶやきながら、「爆乳って女の子は嫌いですか?」というタイトルのエロDVDを借りた。
「帰ったらチンポ扱いてすっきりしたところで寝よう」
言いながら夜道を歩いていた時だった。ふとすぐそこにある公園に目を向けると、ちょっとばかり驚きで立ち止まる。昼ならまだしも夜の9時過ぎだ。そんな公園にまるで商売でもやっているようにいろんなモノを置き、それを仕切るように座る老婆の姿がある。
「日本昔ばなしだったら山姥確定ってところだな」
そんな事を口にして素通りするつもりだった。でもなぜか、自分でよくわからないとしながらも、きっと怖いモノ見たさとして公園に入っていった。
「いらっしゃい」
ある程度まで立憲がちかづいたところで、商売上手という感じで老婆が声をかけてくる。
「それらのモノってガラクタじゃなく売り物なの?」
言いながら並べられている品を見る。誰がどう見たってジャンク品みたいにしか思えないが、老婆に言わせるとすごい品ばかりなんだとか。
「どういう風にすごいのさ?」
言ってみろよ、聞いてやるからさ! という顔を老婆に見せる。すると彼女は古風なストップウオッチを手にし、とんでもない事を言ってのける。
「これで時間が止められるよ」
「へ?」
「今なら1万円で売ろう」
「時間が止められるだって?」
あんまりにもすごい事を真顔で言われると、しかも相手は老婆だから警戒するより先に笑ってしまう。しかし老婆は非常に真剣であり、いま試しに使ってみたらいいと言い出す。それはそれでまたすごいことだ。もし持ち逃げされたらどうするわけ? と、立憲は不本意ながらも苦笑してしまう。
「その時はその時で素直にあきらめよう」
「え、マジで? それっておれを信用してくれるってことなの?」
「商売は相手を信じないと始まらんからな」
「おぉ、おれそういう格好いいセリフって好きだよ」
「ならば、そのストップウオッチを押してみればいい」
「では!」
さっそく! と指が動く。カチっと音が鳴る。そして立憲は夜の公園をグルーっと見渡してみた。だがイマイチよくわからないので、どうなんだろうねぇと言いながら老婆の方に目をやる。
「あん? え? バアちゃん?」
そこには座ってジーっと動かない老婆がいる。
「いやだなぁ、年寄りのくせにすごい演技派なんだから」
笑って目の前で手を動かしてみたりする。ところが老婆の表情はピタッと止まって動かない。人間になり損ねた、限りなく人間に近いアンドロイドみたいにジーッとしている。
「ウソだぁ、ありえないって」
立憲は確認したく一度公園からでた。するとどうだ、道路を走るはずの車がみんな停止している。停車ではなく動きが途中で止まっているという絵だ。
「マジ……かな?」
恐る恐る道路に踏み込むが何も起こらない。すさまじい緊張を持ちながら、車に近づきドアをコンコンとやってみた。でも何も起こらずシーンとしたまま。
「ほんとうかよ、ほんとうにほんとうなのかよ!」
グワーッと湧いてくる興奮。立憲は向こう側の通りに到着すると、いいニオイを流しているラーメン屋の入り口ドアを開けた。いらっしゃい! という声が出てくるかと思ったら出てこなくて、しかも中にいる人間全てがぴたーっと動きを止めている。ラーメンを食べようと引っ張り上げている姿と麺が動かないって光景まである。
「すごい、これはもう買うしかない!」
立憲、ラーメン屋を飛び出すと大急ぎで公園に戻った。そしてもう一度ボタンを押すといいのかな? と思いながらそれをやったら、老婆が動いたので息を切らしながら言う。
「買う、買うぞ!」
「1万円だがいいかな?」
「これで1万円って夢みたいな話。買うに決まっている」
何かのためにと財布に隠し入れていた1万円札を取り出したが、惜しいなどとはまったく思わず老婆に渡す。
「あ、それでなひとつ注意」
「なに?」
「時間を止めているときにストップウオッチが壊れると元に戻らなくなるからな、くれぐれも注意するように」
「わかった、肝に銘じるよ」
「では!」
「では!」
こうして立憲は夢みたいな品物をたった1万円でゲットした。最近はストレスが多かったので喜びは大きい。
「明日はバイトがないからな、色々やってみよう」
うひひと笑いながらウキウキする。頭の中ではもうあれをやってこれをやってと想像がビシバシに動いている。でも歩きながら一度だけ立ち止まり、表情を変えてこんな事をつぶやいたりもした。
「野村……あのクソやろう……あいつ殺そうかな……殺したら気の毒かな。ちょっと考えよう。もしあいつがおれをムカつかせたら、その時は惨殺してやる!」
十ニ話・時間よ止まれ1
「あ~あ……なんかいい事ってないかなぁ」
立憲がアクビをしながらぼやく。21歳の彼はたったいまアルバイトを終えたところだ。回転寿司って所で働いているが、最近ちょっと不愉快が増えている。彼は皿洗いみたいなバイトだけでよかったのに、店長によって厨房での労働を課された。おかげでやりたくもない仕込みだの料理をする羽目になった。いや……それだけならまだいい。厨房に入ると野村という29歳って年上の男がいて、とにかくうざいいのだった。彼は明らかに立憲を目の敵にしている。
「クソ、野村のやつ……一回でいいからぶっ殺してやりたい」
当然ながら立憲は野村が死ぬほど嫌いになったので、ストレスがたまる度合いはすさまじい。そこに来て最近は不運が続くときた。愛機ことパソコンがおかしくなったゆえ修理に出す。スマホは問題ないもののエロ動画ばかり見まくったせいで只今通信制限を食らっている。だからして今夜のペニスを満たすために、レンタルビデオ店なんてところに通って、巨乳とか爆乳のエロDVDを借りねばならなかったりする。そしてそれは小さいガラクタみたいなポータブルDVDプレーヤーで見なければならない。
「巨乳とか爆乳かぁ……こんなおっぱいに甘えてみたいなぁ。こういう女の子とか女性とデートしてセックスとかできたら、いったいどれだけハッピーなんだろう」
そんな事をつぶやきながら、「爆乳って女の子は嫌いですか?」というタイトルのエロDVDを借りた。
「帰ったらチンポ扱いてすっきりしたところで寝よう」
言いながら夜道を歩いていた時だった。ふとすぐそこにある公園に目を向けると、ちょっとばかり驚きで立ち止まる。昼ならまだしも夜の9時過ぎだ。そんな公園にまるで商売でもやっているようにいろんなモノを置き、それを仕切るように座る老婆の姿がある。
「日本昔ばなしだったら山姥確定ってところだな」
そんな事を口にして素通りするつもりだった。でもなぜか、自分でよくわからないとしながらも、きっと怖いモノ見たさとして公園に入っていった。
「いらっしゃい」
ある程度まで立憲がちかづいたところで、商売上手という感じで老婆が声をかけてくる。
「それらのモノってガラクタじゃなく売り物なの?」
言いながら並べられている品を見る。誰がどう見たってジャンク品みたいにしか思えないが、老婆に言わせるとすごい品ばかりなんだとか。
「どういう風にすごいのさ?」
言ってみろよ、聞いてやるからさ! という顔を老婆に見せる。すると彼女は古風なストップウオッチを手にし、とんでもない事を言ってのける。
「これで時間が止められるよ」
「へ?」
「今なら1万円で売ろう」
「時間が止められるだって?」
あんまりにもすごい事を真顔で言われると、しかも相手は老婆だから警戒するより先に笑ってしまう。しかし老婆は非常に真剣であり、いま試しに使ってみたらいいと言い出す。それはそれでまたすごいことだ。もし持ち逃げされたらどうするわけ? と、立憲は不本意ながらも苦笑してしまう。
「その時はその時で素直にあきらめよう」
「え、マジで? それっておれを信用してくれるってことなの?」
「商売は相手を信じないと始まらんからな」
「おぉ、おれそういう格好いいセリフって好きだよ」
「ならば、そのストップウオッチを押してみればいい」
「では!」
さっそく! と指が動く。カチっと音が鳴る。そして立憲は夜の公園をグルーっと見渡してみた。だがイマイチよくわからないので、どうなんだろうねぇと言いながら老婆の方に目をやる。
「あん? え? バアちゃん?」
そこには座ってジーっと動かない老婆がいる。
「いやだなぁ、年寄りのくせにすごい演技派なんだから」
笑って目の前で手を動かしてみたりする。ところが老婆の表情はピタッと止まって動かない。人間になり損ねた、限りなく人間に近いアンドロイドみたいにジーッとしている。
「ウソだぁ、ありえないって」
立憲は確認したく一度公園からでた。するとどうだ、道路を走るはずの車がみんな停止している。停車ではなく動きが途中で止まっているという絵だ。
「マジ……かな?」
恐る恐る道路に踏み込むが何も起こらない。すさまじい緊張を持ちながら、車に近づきドアをコンコンとやってみた。でも何も起こらずシーンとしたまま。
「ほんとうかよ、ほんとうにほんとうなのかよ!」
グワーッと湧いてくる興奮。立憲は向こう側の通りに到着すると、いいニオイを流しているラーメン屋の入り口ドアを開けた。いらっしゃい! という声が出てくるかと思ったら出てこなくて、しかも中にいる人間全てがぴたーっと動きを止めている。ラーメンを食べようと引っ張り上げている姿と麺が動かないって光景まである。
「すごい、これはもう買うしかない!」
立憲、ラーメン屋を飛び出すと大急ぎで公園に戻った。そしてもう一度ボタンを押すといいのかな? と思いながらそれをやったら、老婆が動いたので息を切らしながら言う。
「買う、買うぞ!」
「1万円だがいいかな?」
「これで1万円って夢みたいな話。買うに決まっている」
何かのためにと財布に隠し入れていた1万円札を取り出したが、惜しいなどとはまったく思わず老婆に渡す。
「あ、それでなひとつ注意」
「なに?」
「時間を止めているときにストップウオッチが壊れると元に戻らなくなるからな、くれぐれも注意するように」
「わかった、肝に銘じるよ」
「では!」
「では!」
こうして立憲は夢みたいな品物をたった1万円でゲットした。最近はストレスが多かったので喜びは大きい。
「明日はバイトがないからな、色々やってみよう」
うひひと笑いながらウキウキする。頭の中ではもうあれをやってこれをやってと想像がビシバシに動いている。でも歩きながら一度だけ立ち止まり、表情を変えてこんな事をつぶやいたりもした。
「野村……あのクソやろう……あいつ殺そうかな……殺したら気の毒かな。ちょっと考えよう。もしあいつがおれをムカつかせたら、その時は惨殺してやる!」
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