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由美の脳内彼氏カード3
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「えっと……どれにしようかな」
カード5枚を取り出しサラっと見比べる由美。すると選ぶ時は慎重にね! なんて事を女から言われたので聞き返す。
「慎重?」
「そうだよ、誰がどういう性格とか、誰が性格のいい男子とか、そういうのはわからないからねぇ。引いてみないとわからないからね」
「えぇ……それって困るんですけど……性格の設定とかないんですか?」
「甘い巨乳ちゃん、そんなモノあるわけない。現実と同じだよ、同じ」
「現実と同じ?」
「そうそう、いいなぁと思って選んだ男子がゲスとか外道とかよくある話。特に見た目で選ぶと後悔することは多いよねぇ」
「そんな……」
由美はカードを見比べて思う。どうせならイケメンを選びたい。イケメンこそ正義、ブサメンなんかアウト・オブ・眼中! と言いたい。しかし今の女の注意を聞くと……イケメンは選ばない方がいいのかなぁと考えさせられる。
(いや……でも……ブサメンだから性格がいいとは限らないとも言う。ブスは性格もブスで結局は美人の方が上って話と同じで、男だってイケメンだから性格が悪いとは限らない。そしてブサメンだから性格がよくて優しいとは限らない)
「悩んでいるねぇ巨乳ちゃん」
「だ、だって顔を見ただけで判断するなんて」
「ん……でも現実だって同じだよ。話をしたからってすぐさま相手を理解できるわけじゃない。なのに熱くってこの人なら! と即決めしたら地獄行きってよくある話だよ、特に女の子はねぇ」
「じゃぁわたし不幸になるんですか?」
「どうだろう……だけどまぁ……相手を選び損ねて転んでも、やり直しが効くうちに再起するっていうのが幸せへの切符だよ。それができないなら不幸になる女だったと諦めたらいいだけのこと。そういう練習をすると思えばいいんだよ、彼氏カードは」
(ん……)
どうするか、由美は最後に思いっきり悩んだ。妥協してブサメンは性格がいいという可能性にかけるか、それともやっぱりイケメン、そしてイケメンだから性格が悪いとか偏見だし! という思いにかけて熱暴走するか。
「じゃぁ、これ!」
結局、由美が選んだのはイケメンだった。
「だよねぇ、顔がいいとすべてが正義だもんね」
女はクスっと笑うと由美にそのカードをくれてやったが、オマケと称して小さな袋を差し出した。その中には塩が入っているのだという。
「塩?」
「もし、その彼氏が巨乳ちゃんを傷つけるような事をしそうになったら、あ、これはヤバいかも! とか思ったらその塩をかけたら、相手はナメクジのように消えてなくなるから」
「えぇ……」
「ま、恋愛の練習とか思ってがんばって」
「これ、どうやって呼び出すんですか」
「そのカードを右の人差し指でピーン! っと弾き飛ばしたら現れるよ」
「名前は?」
「巨乳ちゃんが好きな名前を付けてあげたらいいよ」
かくして由美はイケメンカードを手に入れCカップの胸をドキドキさせながら急ぎ足で自宅へ戻ろうとする。しかし逸る気持ちを抑えるなんて若者にはできないこと。足取りが途中に方向転換となり、とある公園にたどり着いていた。
「名前……何にしようか……」
由美はニヤニヤしながら少しだけ考えた。男臭い名前なんて萌え度が低すぎる。男でも女でもイケるような名前にしてみたらどうか……と。
「そうだ、葵にしよう、葵と由美、いいじゃん!」
えへえへとやりたいのを必死にこらえながら、言われた通りカードを人差し指ではじいた。すると不思議なことにクルクルっと空中で回ったカードが光って、そこからイケメンの男子が姿を現したのである。
「ん!」
由美のCカップってふくらみがドキン! なった。推定年齢17歳くらい、でもって女子なら誰もが腰砕けになるイケメン、無地のホワイトTシャツに上に爽やかなブルーのストライプシャツ、下はブラックのボトムスとかいう感じで、髪はシルバーパープルという色合いのショートヘア。
「きみがおれを呼んでくれたんだ?」
甘く弱い生命体だから守ってあげなきゃ! と女に思わせるような声で葵が言うと、由美は両頬をトマト色に染めて目がポッとなる。だから相手が近づいてきてドキドキしても、ステキな金縛りで動けないことを良しとする。
「きみ、名前は?」
「ゆ、由美……」
「由美かぁ……なんてていい名前なんだろうって思うよ。女の子のかわいさとか優しさとかさ、そういうのをすべてギュウっと詰め込んだ……そんなステキな名前が由美なんだと思うよ」
「ぅ……」
それはまるで白昼の公園においてなされるホストクラブでのやりとりみたいだった。でもそれは確実に由美の胸をがっちり掴むモノでもあった。
「由美、おれは……おれの名前は……」
「葵」
「由美が付けてくれたんだよな?」
「そ、そうだよ」
「ありがとう……おれはこの世で一番シアワセな男だ」
「そ、それはよかった……ね」
「由美、地球ができてたしか46億年らしいけれど、それはものすごい時間だけれど……でもそれを経ておれと由美は出会ったんだよな。46億年目にしておれと由美はこうして見つめ合っているんだ、感動的だよな」
葵のクサいセリフはふつうとかふつう以下の男が言えば恥ずかしくて耐えられないモノ。だがイケメンがいうと女子の胸には深く深く染み込むのであった。これもまたイケメン正義の成せるワザというところ。
こうして2人は手をつないで歩き出した。他人には見えないが、由美にとって葵は確かな存在であり、女子とはちがう質の手を持った生命体にして彼氏だったりする。
カード5枚を取り出しサラっと見比べる由美。すると選ぶ時は慎重にね! なんて事を女から言われたので聞き返す。
「慎重?」
「そうだよ、誰がどういう性格とか、誰が性格のいい男子とか、そういうのはわからないからねぇ。引いてみないとわからないからね」
「えぇ……それって困るんですけど……性格の設定とかないんですか?」
「甘い巨乳ちゃん、そんなモノあるわけない。現実と同じだよ、同じ」
「現実と同じ?」
「そうそう、いいなぁと思って選んだ男子がゲスとか外道とかよくある話。特に見た目で選ぶと後悔することは多いよねぇ」
「そんな……」
由美はカードを見比べて思う。どうせならイケメンを選びたい。イケメンこそ正義、ブサメンなんかアウト・オブ・眼中! と言いたい。しかし今の女の注意を聞くと……イケメンは選ばない方がいいのかなぁと考えさせられる。
(いや……でも……ブサメンだから性格がいいとは限らないとも言う。ブスは性格もブスで結局は美人の方が上って話と同じで、男だってイケメンだから性格が悪いとは限らない。そしてブサメンだから性格がよくて優しいとは限らない)
「悩んでいるねぇ巨乳ちゃん」
「だ、だって顔を見ただけで判断するなんて」
「ん……でも現実だって同じだよ。話をしたからってすぐさま相手を理解できるわけじゃない。なのに熱くってこの人なら! と即決めしたら地獄行きってよくある話だよ、特に女の子はねぇ」
「じゃぁわたし不幸になるんですか?」
「どうだろう……だけどまぁ……相手を選び損ねて転んでも、やり直しが効くうちに再起するっていうのが幸せへの切符だよ。それができないなら不幸になる女だったと諦めたらいいだけのこと。そういう練習をすると思えばいいんだよ、彼氏カードは」
(ん……)
どうするか、由美は最後に思いっきり悩んだ。妥協してブサメンは性格がいいという可能性にかけるか、それともやっぱりイケメン、そしてイケメンだから性格が悪いとか偏見だし! という思いにかけて熱暴走するか。
「じゃぁ、これ!」
結局、由美が選んだのはイケメンだった。
「だよねぇ、顔がいいとすべてが正義だもんね」
女はクスっと笑うと由美にそのカードをくれてやったが、オマケと称して小さな袋を差し出した。その中には塩が入っているのだという。
「塩?」
「もし、その彼氏が巨乳ちゃんを傷つけるような事をしそうになったら、あ、これはヤバいかも! とか思ったらその塩をかけたら、相手はナメクジのように消えてなくなるから」
「えぇ……」
「ま、恋愛の練習とか思ってがんばって」
「これ、どうやって呼び出すんですか」
「そのカードを右の人差し指でピーン! っと弾き飛ばしたら現れるよ」
「名前は?」
「巨乳ちゃんが好きな名前を付けてあげたらいいよ」
かくして由美はイケメンカードを手に入れCカップの胸をドキドキさせながら急ぎ足で自宅へ戻ろうとする。しかし逸る気持ちを抑えるなんて若者にはできないこと。足取りが途中に方向転換となり、とある公園にたどり着いていた。
「名前……何にしようか……」
由美はニヤニヤしながら少しだけ考えた。男臭い名前なんて萌え度が低すぎる。男でも女でもイケるような名前にしてみたらどうか……と。
「そうだ、葵にしよう、葵と由美、いいじゃん!」
えへえへとやりたいのを必死にこらえながら、言われた通りカードを人差し指ではじいた。すると不思議なことにクルクルっと空中で回ったカードが光って、そこからイケメンの男子が姿を現したのである。
「ん!」
由美のCカップってふくらみがドキン! なった。推定年齢17歳くらい、でもって女子なら誰もが腰砕けになるイケメン、無地のホワイトTシャツに上に爽やかなブルーのストライプシャツ、下はブラックのボトムスとかいう感じで、髪はシルバーパープルという色合いのショートヘア。
「きみがおれを呼んでくれたんだ?」
甘く弱い生命体だから守ってあげなきゃ! と女に思わせるような声で葵が言うと、由美は両頬をトマト色に染めて目がポッとなる。だから相手が近づいてきてドキドキしても、ステキな金縛りで動けないことを良しとする。
「きみ、名前は?」
「ゆ、由美……」
「由美かぁ……なんてていい名前なんだろうって思うよ。女の子のかわいさとか優しさとかさ、そういうのをすべてギュウっと詰め込んだ……そんなステキな名前が由美なんだと思うよ」
「ぅ……」
それはまるで白昼の公園においてなされるホストクラブでのやりとりみたいだった。でもそれは確実に由美の胸をがっちり掴むモノでもあった。
「由美、おれは……おれの名前は……」
「葵」
「由美が付けてくれたんだよな?」
「そ、そうだよ」
「ありがとう……おれはこの世で一番シアワセな男だ」
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「由美、地球ができてたしか46億年らしいけれど、それはものすごい時間だけれど……でもそれを経ておれと由美は出会ったんだよな。46億年目にしておれと由美はこうして見つめ合っているんだ、感動的だよな」
葵のクサいセリフはふつうとかふつう以下の男が言えば恥ずかしくて耐えられないモノ。だがイケメンがいうと女子の胸には深く深く染み込むのであった。これもまたイケメン正義の成せるワザというところ。
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