短編集

jun( ̄▽ ̄)ノ

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ユータにホレちゃいまして5

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「うぃーっす由美」

 朝、いつもの時間にいつも通り由美が来るのを待っていた真央が手を振る。しかしだ、由美が近づいてくるとギョッとした。

「え、なにそのカバン……」

 真央がおどろくのは当然だ。いつも由美が使っているカバンの表情が思いっきり変わっている。なんせ大量のユータバッジに楽貼加工ってユータのラベルシール嵐。そえはもうユータと由美が愛し合って結ばれたことを宣言しているかのよう。

「このカバンがなにか?」

「あ、いや……由美はハマり症だなぁと思って」

「真央、今日はわたしあっちからひとりで行くよ」

「え、なんで、あっちは遠回りだけれど」

「ん、もう……真央は鈍いんだから……わたしは2人っきりの時間を楽しみたいんだよ」

「へ? どういうこと?」

「あ、それと真央……」

「な、なに……」

「真央もユータが好きなんだっけ?」

「好きっていうか、気に入っているけれど」

「じゃぁ他のキャラに乗り換えて。ユータはわたしがいればいいから、真央は他のキャラと愛し合って、ね?」

「愛し合うって……」

「じゃぁね!」

 由美は彼氏に抱き寄せられテレる女みたいな顔をしてから、クルっと背を向けひとりで歩き出してしまった。

「由美ってあんな没入女子だったのか……」

アレ……だいじょうぶかいね? と心配する真央だったが、まぁ一時の病気、風邪みたいなもんでしょうと思って深く考えるのはやめた。

「ユータ、今日は木曜日。今日はなんか予定とかある? ない? だったらさ、学校が終わったらデートしようよ。いいじゃんかぁ、かまってくれないとすねるぞ!」

 いま、由美はいったい誰と会話しているのか? 近くに他人がいないことを確認してから小声で言っているが、細かい仕草は単体のふつう女子ではない感じがしている。なぜか? その答えはユータというキャラを脳内キャラに仕上げようと営んでいるせいだ。

「わたしはちゃんと知ってるんだ、ユータはかっこういいけれど、ワガママでもあるけれど、ほんとうはやさしい甘えん坊なんだよね、あ、ユータが照れてる!」

 えへっとやったりする由美にはまだ脳内彼氏に対する不慣れがある。しかしそこを愛で乗り越えようってのめり込みは確かにある。だから今、ちょっと離れたところにいる同じ学校の男子生徒が由美を見て思った。え、なにあいつ……何ひとりでデレデレしてんの? と。

 そして学校が見えてくると由美は脳内彼氏を一時停止。ほんとうはずっとやりたいけれど、ユータと愛し合いたいけれど、今はまだ他人に見られると恥ずかしいって意識が良識という言葉に変換されていた。
 
(ユータ……)

 授業中、筆箱のユータを見て胸キュンキュン、休み時間、人目のない場所に行くと生徒手帳からユータのカードを取り出し心の声で会話。こんな感じで確実に深みへとハマっていった。そうするとだんだんすごい事が生じてくるのだった。
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