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ユータにホレちゃいまして1
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「あぁ、雨降りの連続は憂鬱だねぇ」
校舎の1階廊下でおしゃべりする女子が2人、そのうちの一人が陰鬱な絵といううす暗い外を見てつぶやいた。
「ほんとう、6月はうつ病月間って感じだよねぇ」
もうひとりの女子はそうつぶやいてから、ちょっと盛り上げるために言ってみようかなって顔を一瞬浮かべた。それからスマホを取り出して言った。
「こういう時はユータの顔でも見よう」
すると隣にいる友人の由美が思ったとおりに反応した。
「え? うそ! 真央って彼氏がいるの?」
その反応は中2で彼氏が出来るの? という驚きと同時に、自分ひとりだけ幸せになるのは許せないんですけれど……と、刃物の先がきらっと光る前触れみたいでもあった。
「いやまぁ、彼氏じゃなくお気に入りのキャラね」
スマホ操作の真央が言うと由美はとっても安心した。あぁ、キャラね……とつぶやいたり、そうだよね、中2で恋愛なんかするべきではないよねぇとにっこり顔に切り替わる。
「これがわたしのお気に入り、ユータ!」
じゃーん! とスマホを突き出されたのでどれどれ……と由美が顔を近づける。 別に何かを期待するわけでもなく、チャチャっと見て次の話題に移ろうかくらいに思っていた。しかし予定通りにいかないのが人生だったりする。
「ひんぅ!」
画面を見た由美の声が印象的に裏返った。
「え? なにどうしたの?」
心配した真央だったがスマホを強引に奪い取られてしまった。そして画面を見ながら由美がハーハーやるのを目にした時、え、まさか……ドストライクなの? と思わずにいられない。そしてそれは、まさにその通り! という事だった。
「え、やだ何これチョー好みなんですけれど」
「2年くらい前から少年マンボーで連載されているマンガのアニメ版、比較するならわたしはマンガの方が好きではあるんだけれど」
「そんな事はどうでもいいから作品のタイトルを言いなさいよ、真央って気が利かない」
「あ、あぁ……作品名はラスト・シック・ボーイズだよ。ラストは最後ってやつじゃなく、情熱のLustって書くの方で……」
「それよりキャラの名前と説明! 早く、早く!」
「えっと、ユータは主人公で一応は困っている人を助けるために動く正義の味方」
「一応?」
「めっちゃワガママでヒーローになりきれない男子というか」
「きゃんぅ!」
「由美、もしかしてユータが当たった?」
「真央、わたしはちょっと考え事したいから、じゃぁ!」
真央のスマホを返した由美、もはや真央の事など眼中になし。心と頭はひとつの事にしかなく、他の事はどうでもいいです! と、勢いづくと集団生活の輪をかき回したり道を誤ったりするような気配にあふれまくっていた。そして真央なんかどうでもいいしとばかり、その場からサーっと風のように消え去った。
ひとり残された真央、もしかして大変な事をしてしまったのだろうか? なんて思いながらつぶやかずにいられない。
「あれ、大当たりだ……しかも由美ってあんな暴走な感じだったのか。ま、まぁ……ユータは二次元の男子だから、まさか思いっきりホレちゃうなんて……ないない、いくらなんでもそんなことはない、あったら怖い」
校舎の1階廊下でおしゃべりする女子が2人、そのうちの一人が陰鬱な絵といううす暗い外を見てつぶやいた。
「ほんとう、6月はうつ病月間って感じだよねぇ」
もうひとりの女子はそうつぶやいてから、ちょっと盛り上げるために言ってみようかなって顔を一瞬浮かべた。それからスマホを取り出して言った。
「こういう時はユータの顔でも見よう」
すると隣にいる友人の由美が思ったとおりに反応した。
「え? うそ! 真央って彼氏がいるの?」
その反応は中2で彼氏が出来るの? という驚きと同時に、自分ひとりだけ幸せになるのは許せないんですけれど……と、刃物の先がきらっと光る前触れみたいでもあった。
「いやまぁ、彼氏じゃなくお気に入りのキャラね」
スマホ操作の真央が言うと由美はとっても安心した。あぁ、キャラね……とつぶやいたり、そうだよね、中2で恋愛なんかするべきではないよねぇとにっこり顔に切り替わる。
「これがわたしのお気に入り、ユータ!」
じゃーん! とスマホを突き出されたのでどれどれ……と由美が顔を近づける。 別に何かを期待するわけでもなく、チャチャっと見て次の話題に移ろうかくらいに思っていた。しかし予定通りにいかないのが人生だったりする。
「ひんぅ!」
画面を見た由美の声が印象的に裏返った。
「え? なにどうしたの?」
心配した真央だったがスマホを強引に奪い取られてしまった。そして画面を見ながら由美がハーハーやるのを目にした時、え、まさか……ドストライクなの? と思わずにいられない。そしてそれは、まさにその通り! という事だった。
「え、やだ何これチョー好みなんですけれど」
「2年くらい前から少年マンボーで連載されているマンガのアニメ版、比較するならわたしはマンガの方が好きではあるんだけれど」
「そんな事はどうでもいいから作品のタイトルを言いなさいよ、真央って気が利かない」
「あ、あぁ……作品名はラスト・シック・ボーイズだよ。ラストは最後ってやつじゃなく、情熱のLustって書くの方で……」
「それよりキャラの名前と説明! 早く、早く!」
「えっと、ユータは主人公で一応は困っている人を助けるために動く正義の味方」
「一応?」
「めっちゃワガママでヒーローになりきれない男子というか」
「きゃんぅ!」
「由美、もしかしてユータが当たった?」
「真央、わたしはちょっと考え事したいから、じゃぁ!」
真央のスマホを返した由美、もはや真央の事など眼中になし。心と頭はひとつの事にしかなく、他の事はどうでもいいです! と、勢いづくと集団生活の輪をかき回したり道を誤ったりするような気配にあふれまくっていた。そして真央なんかどうでもいいしとばかり、その場からサーっと風のように消え去った。
ひとり残された真央、もしかして大変な事をしてしまったのだろうか? なんて思いながらつぶやかずにいられない。
「あれ、大当たりだ……しかも由美ってあんな暴走な感じだったのか。ま、まぁ……ユータは二次元の男子だから、まさか思いっきりホレちゃうなんて……ないない、いくらなんでもそんなことはない、あったら怖い」
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