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64・やってみたい、大会に出てみたい
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「イケるんじゃないか……いや、絶対に抜く」
午後9時過ぎ、デス・アスファルトに燃える望がレース中につぶやく。場所はスコットランド、車はシボレーのコルベットグランスポーツ、白熱の爆走って音がスピーカーから発せられている。
最近の望は腕が上がっており、3位になってもあまりめずらしい事ではなくなった。それどころか、たまーに2位に入ることも出てきた。
「1位になる、必ず1位になる!」
いま、望はトップ争いに興じていた。スコットランドは道幅が非常に広く、直線とほぼ直線って大いに緩いカーブだけで構成されている。言うなれば爆走がしやすい爽快感たっぷりなステージだ。そしていま、望の愛車は1位になれるかもしれないという走りを見せていた。
「この緩いカーブはドリフトをかけずニトロを使っても曲がり切れる」
絶叫したいほど興奮しているが、1位になるため冷静となる。それが相手にプレッシャーとなったのだろうか、相手が次の意外ときついってカーブへ猛スピードで突入しようとしてしくじった。そう、ゴール間近というところで手痛いクラッシュをかましたのだ。
「やった!」
望が口にしたその瞬間、愛車がズサーっと勢いよくゴールに飛び込む。それは望が初めて1位にという美酒を手にした瞬間だった。
「やった、やった、やった、やった、やった!!!」
コントローラーを机の上に置くと、立ち上がり両手をにぎってやった! とくり返す。望の味わうそれはたかがゲームを超えたまぶしすぎる充実感だった。
「確実に成長している」
望、自身の成績ブックを見返して軽い鳥肌を起こす。結果という事実、そして自分自身がカン違いではないと断言できる手応え、それらをかみしめると……望はある事を考えてしまう。
「大会……出てみたい……」
望が立ったままモニターを見つめてつぶやいた。その大会とは何か? といえば、デス・アスファルトにて開催される賞金付きの大会だ。優勝すれば100万円、2位なら50万円、3位なら10万円、そして10位までは1万円の商品券がもらえる。
もしかしたら……1位はムリでも3位くらいにはなれるんじゃないか? と望はドキドキしていた。好きな事をやって金を稼ぐ、そんな事ができたら社会的な地位と名誉が一気に跳ね上がるのではないか? とデカい鳥肌が起こる。
が、しかし……この大会に出たいなら未成年は親の許可が必要だった。もし年齢を偽って出たら、金をもらえない成績に終わったとしても違反者としてゲームから永久追放されてしまう。
せっかくここまでやってきたのに永久追放なんかされたらやっていられない、だから出るなら親に頼んで堂々と出るしかない! としつつ、親に言うというのは当然ながらはげしい緊張を誘う。
「ん……」
ゴロっと床に寝転がった望、親に言ったらどうなるのだろうと考えてみた。ゲーム? ゲームの大会? しかもお金が出る? となったら、おそらく親は苦い顔をするだろうと思われた。もしかすると、ゲーマーなんてロクでもない人種だぞ! と説教されるかもしれない。そういう流れを望は怖いと思いビビってしまう。
「ん……だけど……」
望は自分が燃得に相談を受け、まっすぐな自分を出せとか言ったような気がすると思い起こす。だとすれば、人にはえらそうに言って自分はダメなのかよ! って声が見えないところか聞こえてきそうだと思ったりする。
「何事も臆していたら経験出来ないし前に進めない……」
自分を奮い立たせようとひとりつぶやいたとき、スマホにラインメッセージが到着した。送信者はいとしい彼女たる翠名だ。
―いとしの望、いま何してる? ゲームがんばっているところかなー
望、これを見ると一瞬彼女に甘えたいみたいなキモチが沸いてしまう。もし甘えたらきっとキモチがいいのだろうと思ったし、話を聞いてもらうくらいはしてもいいじゃないかってもう一人の自分も騒ぎ出す。
「ん……」
しかしいま、テンションの低い自分が弱さをさらけ出すなんて、それを彼女に見せるのはいかがなモノか……などと、そういう意識が真ん中に入った。だからあえて返信はしないとする。翠名はしばらくして返事がないのなら、望ががんばっている証拠だとして深追いしたいのをガマンしていた。
―がんばってね、望、ほんとうに応援しているからねー
彼女のそのメッセージを見たとき、望は寝転がったまま室内のカレンダーに目を向ける。そして今宵はムリだとしても、大急ぎでがっちりしっかり決めようと決意するのだった。
午後9時過ぎ、デス・アスファルトに燃える望がレース中につぶやく。場所はスコットランド、車はシボレーのコルベットグランスポーツ、白熱の爆走って音がスピーカーから発せられている。
最近の望は腕が上がっており、3位になってもあまりめずらしい事ではなくなった。それどころか、たまーに2位に入ることも出てきた。
「1位になる、必ず1位になる!」
いま、望はトップ争いに興じていた。スコットランドは道幅が非常に広く、直線とほぼ直線って大いに緩いカーブだけで構成されている。言うなれば爆走がしやすい爽快感たっぷりなステージだ。そしていま、望の愛車は1位になれるかもしれないという走りを見せていた。
「この緩いカーブはドリフトをかけずニトロを使っても曲がり切れる」
絶叫したいほど興奮しているが、1位になるため冷静となる。それが相手にプレッシャーとなったのだろうか、相手が次の意外ときついってカーブへ猛スピードで突入しようとしてしくじった。そう、ゴール間近というところで手痛いクラッシュをかましたのだ。
「やった!」
望が口にしたその瞬間、愛車がズサーっと勢いよくゴールに飛び込む。それは望が初めて1位にという美酒を手にした瞬間だった。
「やった、やった、やった、やった、やった!!!」
コントローラーを机の上に置くと、立ち上がり両手をにぎってやった! とくり返す。望の味わうそれはたかがゲームを超えたまぶしすぎる充実感だった。
「確実に成長している」
望、自身の成績ブックを見返して軽い鳥肌を起こす。結果という事実、そして自分自身がカン違いではないと断言できる手応え、それらをかみしめると……望はある事を考えてしまう。
「大会……出てみたい……」
望が立ったままモニターを見つめてつぶやいた。その大会とは何か? といえば、デス・アスファルトにて開催される賞金付きの大会だ。優勝すれば100万円、2位なら50万円、3位なら10万円、そして10位までは1万円の商品券がもらえる。
もしかしたら……1位はムリでも3位くらいにはなれるんじゃないか? と望はドキドキしていた。好きな事をやって金を稼ぐ、そんな事ができたら社会的な地位と名誉が一気に跳ね上がるのではないか? とデカい鳥肌が起こる。
が、しかし……この大会に出たいなら未成年は親の許可が必要だった。もし年齢を偽って出たら、金をもらえない成績に終わったとしても違反者としてゲームから永久追放されてしまう。
せっかくここまでやってきたのに永久追放なんかされたらやっていられない、だから出るなら親に頼んで堂々と出るしかない! としつつ、親に言うというのは当然ながらはげしい緊張を誘う。
「ん……」
ゴロっと床に寝転がった望、親に言ったらどうなるのだろうと考えてみた。ゲーム? ゲームの大会? しかもお金が出る? となったら、おそらく親は苦い顔をするだろうと思われた。もしかすると、ゲーマーなんてロクでもない人種だぞ! と説教されるかもしれない。そういう流れを望は怖いと思いビビってしまう。
「ん……だけど……」
望は自分が燃得に相談を受け、まっすぐな自分を出せとか言ったような気がすると思い起こす。だとすれば、人にはえらそうに言って自分はダメなのかよ! って声が見えないところか聞こえてきそうだと思ったりする。
「何事も臆していたら経験出来ないし前に進めない……」
自分を奮い立たせようとひとりつぶやいたとき、スマホにラインメッセージが到着した。送信者はいとしい彼女たる翠名だ。
―いとしの望、いま何してる? ゲームがんばっているところかなー
望、これを見ると一瞬彼女に甘えたいみたいなキモチが沸いてしまう。もし甘えたらきっとキモチがいいのだろうと思ったし、話を聞いてもらうくらいはしてもいいじゃないかってもう一人の自分も騒ぎ出す。
「ん……」
しかしいま、テンションの低い自分が弱さをさらけ出すなんて、それを彼女に見せるのはいかがなモノか……などと、そういう意識が真ん中に入った。だからあえて返信はしないとする。翠名はしばらくして返事がないのなら、望ががんばっている証拠だとして深追いしたいのをガマンしていた。
―がんばってね、望、ほんとうに応援しているからねー
彼女のそのメッセージを見たとき、望は寝転がったまま室内のカレンダーに目を向ける。そして今宵はムリだとしても、大急ぎでがっちりしっかり決めようと決意するのだった。
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