62 / 73
62・男同士の会話
しおりを挟む
「聞いて欲しい話があるんだ、男同士の会話がしたい」
燃得が望にそう言ったのは、午前中のちょっとした空き時間というスキマの事だった。男同士の会話というところに多少の疑りと同時に、期待感的なモノを抱かされた望、だったら学校が終わってから話をしようと取り決めた。
「で、なんだよ話って」
学校が終わった午後3時40分、質問する望はマックのイスに腰掛ける。Sサイズのコーラを白いテーブルの上に置くと、さぁ男同士の話というのをしようじゃないか! って顔を向かいのやつに見せつける。
実際のところ、望は燃得が何を言い出すのかちょっと興味があった。なぜなら現在の燃得という男子は、望の彼女である翠名の姉こと佐藤椎名に夢中となっている。ほんとうなら椎名に夢中で男なんてどうでもいいとなるはず。それからすると男同士の話を求めてくるのはよっぽどだと思うことはできた。だから望は自分の彼女とイチャラブするとか、家に帰ってゲーマーになるとかいう時間を燃得に譲ったのだ。
「いや、えっとだな……」
燃得、ガラにもなくえへえへとテレ笑いをする。そういう顔を見ると軽い突っ込みを入れたくなるが、それをせず燃得が言い出すのを待つ望。
「実はな、お姉さんの事を想って小説を書いたりしたんだ」
「小説? 燃得が? そんな立派な趣味があったのか!」
「悪かったな、立派な趣味が似合わないキャラクターで」
「いや、いいから話を続けろよ」
「お姉さんを想いながらエロ小説を書くと、マジで激熱となってめちゃくちゃオナれる。これはもうやめられない! と夢中になっていたら……」
「いたら?」
「エロ小説を書いているって事がお姉さんにバレた」
「ほぉ、それはそれは」
「なんだよ、その、あからさまに面白がっているような反応は」
「いいから話を続けろ」
「チッ……」
燃得、自分のコーラをグイグイっとストローで吸い上げて一息入れてから、お姉さんに提出せよと求められている現状を語りだす。
「提出?」
「へぇ、それはそれは」
「おもしろがってんじゃねぇよ望、こっちは大変なんだぞ」
「何が大変なんだよ」
「だ、だってさ、どんな小説を書いているの? って聞かれた時、ドエロ小説を書いてヌキまくっていますとか言いづらいじゃん」
「じゃぁなんと言ったんだ?」
「ちょいエロの小説を書いているって言った。そしたらお姉さんが、書いている小説を見せろと言ってきて断れない流れになった。ちょいエロくらいならかまわないから見せろって言うんだよ、お姉さんが」
「書けばいいじゃん、見せればいいじゃん」
「それが出来ないから苦労してるんだよ」
「なんでできないんだ?」
「そ、それはおまえ……」
燃得、少しイジけた感じになってネチネチ愚痴りだした。いとしい女子と愛し合うシーンを書くだけなら、要するに山場だけ書くならめっちゃ簡単だけれど、そこにストーリーを混ぜるとなればめちゃくちゃむずかしいんだとこぼす。
「ストーリーってそんなにむずかしいか?」
「はぁ? かんたんにできるっていうのかよ。だったら何か言ってみろよ望」
「いやまぁ、たとえば……幼馴染みで子ども扱いされている男子が、もうガマンできない! と暴走キャラになって、それが逆に女子の心をつかんで……みたいな話はどうなんだ?」
「で、でもよ、それって単純じゃん……」
「別に単純でもいいじゃんかよ。ってか燃得……いい格好しても報われないと思うぞ。こんな言い方をすると悪いかもしれないけれど、エロ小説に崇高な意識を持ち込む方が間違っているような気がする」
「く……」
燃得、いま非常にくやしいと思った。ゲーマーの望が小説の方をよく知っているみたいな感じになると、エロ小説を書きまくっている自分はどうすればいいんだ! 的な、言うなればライトなみじめ感に襲われてしまう。
「おれが思うに解決策というか……突破口はひとつ……」
「え、なんだよ、教えろよ、早く言えよ望」
「いっそ開き直れ。自分とお姉さんってキャラを出して、自分の素直な気持ちでドエロ小説を書いたらいいんだ」
「おまえ、他人事だと思って……」
「で、その小説を渡すとき、もしくは後で感想をもらうとき、どちらかの時に言えばいいんじゃないか? これがいまの自分の精一杯です。これしかできないから、その代わりに正直な自分を徹底的に詰め込みました! と」
望が言い終えると燃得はちょっと黙ってしまった。いつもなら望のくせにかっこういいこと言ってんじゃねぇよと跳ね返しそうなモノだが、ボディー攻撃を食らってお腹が痛くなってきたみたいに勢いが弱まる。
「望……」
「なんだ?」
「ドエロ小説に登場するのを望と翠名にしたら怒るか? 翠名はすごい巨乳で望は毎日パイズリして欲しいとせがんでいるみたいな内容」
燃得はここでちょっと息抜きをしたいと思っていた。望が顔を赤くして怒るだろうって事を期待しての発言だった。
「別にそれでもいいけどさ……それでだいじょうぶなのか、燃得」
「え?」
「ここまでの話からして……おれはこう思うんだ。少なくとも今の燃得は、自分とお姉さんをモデルにした一人称でエロいシーンを書く! って事しかできないんだろう。だからこそ、これがおれなんだ! と思いっきり燃えたらいいじゃんか。でも、キャラを望と翠名にしたら、多分……燃得のお姉さんに対する心とか勢いを100%詰め込むって事ができなくなるんじゃないかな」
「望……」
「なんだ?」
「おまえ、いつからそんな大人になったんだよ」
「いやまぁ、思った事を言っただけだ、別に大人じゃない」
「おまえ……佐藤と初体験しただろう。だから大人になったんだろう?」
「してないつーんだよ」
とまぁこんな会話をやったが、燃得にとっては思ったより充実した時間だった。コーラのSサイズ一杯で粘れる時間は短いが、それを有効に活用できたという気がしていた。
「望……」
マックを出てあっちとこっちで進行方向が別れたとき、立ち止まった燃得がかすかにテレながら言った。
「時間取らせて悪かったな、でも話を聞いてもらってよかった。おれはおれの精一杯でがんばる!」
ごくたまに発生するこの素直とかしおらしい感じ、それは以前から一部の女子たちから火高燃得がたまにかわいく思えると評価されているところだった。
「がんばれよ」
去り行く燃得の後ろ姿に声をかけると、燃得は振り返ることなく手を振って応えた。その姿からは、もしかすれば燃得とお姉さんってカップルが近いうちに誕生するかも! なんて思わせた。
「よし、おれもがんばろう!」
言った望だったが、そこでくぅーっと翠名の顔とかすごい巨乳って全体像が浮かんだりした。もちろんそれは大事なモノであるが、いま自分が思っているがんばろうとは少しちがうと顔を横に振って言い直した。
「よし、おれもゲームをがんばろう!」
燃得が望にそう言ったのは、午前中のちょっとした空き時間というスキマの事だった。男同士の会話というところに多少の疑りと同時に、期待感的なモノを抱かされた望、だったら学校が終わってから話をしようと取り決めた。
「で、なんだよ話って」
学校が終わった午後3時40分、質問する望はマックのイスに腰掛ける。Sサイズのコーラを白いテーブルの上に置くと、さぁ男同士の話というのをしようじゃないか! って顔を向かいのやつに見せつける。
実際のところ、望は燃得が何を言い出すのかちょっと興味があった。なぜなら現在の燃得という男子は、望の彼女である翠名の姉こと佐藤椎名に夢中となっている。ほんとうなら椎名に夢中で男なんてどうでもいいとなるはず。それからすると男同士の話を求めてくるのはよっぽどだと思うことはできた。だから望は自分の彼女とイチャラブするとか、家に帰ってゲーマーになるとかいう時間を燃得に譲ったのだ。
「いや、えっとだな……」
燃得、ガラにもなくえへえへとテレ笑いをする。そういう顔を見ると軽い突っ込みを入れたくなるが、それをせず燃得が言い出すのを待つ望。
「実はな、お姉さんの事を想って小説を書いたりしたんだ」
「小説? 燃得が? そんな立派な趣味があったのか!」
「悪かったな、立派な趣味が似合わないキャラクターで」
「いや、いいから話を続けろよ」
「お姉さんを想いながらエロ小説を書くと、マジで激熱となってめちゃくちゃオナれる。これはもうやめられない! と夢中になっていたら……」
「いたら?」
「エロ小説を書いているって事がお姉さんにバレた」
「ほぉ、それはそれは」
「なんだよ、その、あからさまに面白がっているような反応は」
「いいから話を続けろ」
「チッ……」
燃得、自分のコーラをグイグイっとストローで吸い上げて一息入れてから、お姉さんに提出せよと求められている現状を語りだす。
「提出?」
「へぇ、それはそれは」
「おもしろがってんじゃねぇよ望、こっちは大変なんだぞ」
「何が大変なんだよ」
「だ、だってさ、どんな小説を書いているの? って聞かれた時、ドエロ小説を書いてヌキまくっていますとか言いづらいじゃん」
「じゃぁなんと言ったんだ?」
「ちょいエロの小説を書いているって言った。そしたらお姉さんが、書いている小説を見せろと言ってきて断れない流れになった。ちょいエロくらいならかまわないから見せろって言うんだよ、お姉さんが」
「書けばいいじゃん、見せればいいじゃん」
「それが出来ないから苦労してるんだよ」
「なんでできないんだ?」
「そ、それはおまえ……」
燃得、少しイジけた感じになってネチネチ愚痴りだした。いとしい女子と愛し合うシーンを書くだけなら、要するに山場だけ書くならめっちゃ簡単だけれど、そこにストーリーを混ぜるとなればめちゃくちゃむずかしいんだとこぼす。
「ストーリーってそんなにむずかしいか?」
「はぁ? かんたんにできるっていうのかよ。だったら何か言ってみろよ望」
「いやまぁ、たとえば……幼馴染みで子ども扱いされている男子が、もうガマンできない! と暴走キャラになって、それが逆に女子の心をつかんで……みたいな話はどうなんだ?」
「で、でもよ、それって単純じゃん……」
「別に単純でもいいじゃんかよ。ってか燃得……いい格好しても報われないと思うぞ。こんな言い方をすると悪いかもしれないけれど、エロ小説に崇高な意識を持ち込む方が間違っているような気がする」
「く……」
燃得、いま非常にくやしいと思った。ゲーマーの望が小説の方をよく知っているみたいな感じになると、エロ小説を書きまくっている自分はどうすればいいんだ! 的な、言うなればライトなみじめ感に襲われてしまう。
「おれが思うに解決策というか……突破口はひとつ……」
「え、なんだよ、教えろよ、早く言えよ望」
「いっそ開き直れ。自分とお姉さんってキャラを出して、自分の素直な気持ちでドエロ小説を書いたらいいんだ」
「おまえ、他人事だと思って……」
「で、その小説を渡すとき、もしくは後で感想をもらうとき、どちらかの時に言えばいいんじゃないか? これがいまの自分の精一杯です。これしかできないから、その代わりに正直な自分を徹底的に詰め込みました! と」
望が言い終えると燃得はちょっと黙ってしまった。いつもなら望のくせにかっこういいこと言ってんじゃねぇよと跳ね返しそうなモノだが、ボディー攻撃を食らってお腹が痛くなってきたみたいに勢いが弱まる。
「望……」
「なんだ?」
「ドエロ小説に登場するのを望と翠名にしたら怒るか? 翠名はすごい巨乳で望は毎日パイズリして欲しいとせがんでいるみたいな内容」
燃得はここでちょっと息抜きをしたいと思っていた。望が顔を赤くして怒るだろうって事を期待しての発言だった。
「別にそれでもいいけどさ……それでだいじょうぶなのか、燃得」
「え?」
「ここまでの話からして……おれはこう思うんだ。少なくとも今の燃得は、自分とお姉さんをモデルにした一人称でエロいシーンを書く! って事しかできないんだろう。だからこそ、これがおれなんだ! と思いっきり燃えたらいいじゃんか。でも、キャラを望と翠名にしたら、多分……燃得のお姉さんに対する心とか勢いを100%詰め込むって事ができなくなるんじゃないかな」
「望……」
「なんだ?」
「おまえ、いつからそんな大人になったんだよ」
「いやまぁ、思った事を言っただけだ、別に大人じゃない」
「おまえ……佐藤と初体験しただろう。だから大人になったんだろう?」
「してないつーんだよ」
とまぁこんな会話をやったが、燃得にとっては思ったより充実した時間だった。コーラのSサイズ一杯で粘れる時間は短いが、それを有効に活用できたという気がしていた。
「望……」
マックを出てあっちとこっちで進行方向が別れたとき、立ち止まった燃得がかすかにテレながら言った。
「時間取らせて悪かったな、でも話を聞いてもらってよかった。おれはおれの精一杯でがんばる!」
ごくたまに発生するこの素直とかしおらしい感じ、それは以前から一部の女子たちから火高燃得がたまにかわいく思えると評価されているところだった。
「がんばれよ」
去り行く燃得の後ろ姿に声をかけると、燃得は振り返ることなく手を振って応えた。その姿からは、もしかすれば燃得とお姉さんってカップルが近いうちに誕生するかも! なんて思わせた。
「よし、おれもがんばろう!」
言った望だったが、そこでくぅーっと翠名の顔とかすごい巨乳って全体像が浮かんだりした。もちろんそれは大事なモノであるが、いま自分が思っているがんばろうとは少しちがうと顔を横に振って言い直した。
「よし、おれもゲームをがんばろう!」
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
恋愛
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる