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30・縁日デートしよう(女子力の補充)4

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「うぉぉ、お姉さんと縁日、今宵は青春の風が吹くぜ」

 ただいま、燃得は待ち合わせ場所に向かって自転車をぶっ飛ばしていた。佐藤翠名みたいな巨乳女子と一度お付き合いしてみたいと前々から思っていたが、それを望に取られてしまった。それなら望を毒で殺してやろうか! なんて事をけっこうマジメに考えたりもしたが、翠名の姉こと椎名との交流が生じている。だから燃得の心は不健全爆弾ではなく、健全な色した情熱ボンバーになりつつあった。

「お姉さんってかわいいもんな、まぁ……乳の大きさは今のところ佐藤が上だろうけれど、お姉さんもけっこう巨乳だから、えへ……愛情が深まったらパイズリとかしてもらうんだ、絶対お姉さんのあの胸に甘えてやるんだ」

 椎名の事を想いながら、しかもその椎名と実質デートするのだと思ったら、自転車の速度はバカみたいに上がるだけ。

「お、コーナーか……いまのおれを舐めるなよ。いまのおれに減速は不要、いかなるコーナーもおれを止めることはできない!」

 かなりデカい声を発する燃得、もう完全におバカさんモードになっていた。だからコーナー向かってマジでバカ! って速度で突っ込んでいく。

「うりゃぁ、食らえ、これがおれの……たましいのドリフトだ!」

 ギギギギギギギギ! ってすごい音が発生。そして勢いよく傾いた自転車は、ありえない超ファインプレーを持って曲がりを突き進む。そして心を燃やしたその無謀な行為は、炎を立てながら見事な絵を描いたのだった。

「うっひょー!」

 警察がいたらまちがいなく声をかけられるって危険な事をやったが、成功すれば壮大な快感が手に入る。燃得の顔と自転車には命を燃やした充実感が濃厚に浮かんでいた。

「もしかしたら……今夜が初体験だったりして、うひ!」

 自転車を危険に爆走させながら、燃得の都合よろしい妄想はどんどん熱を帯びる。椎名と白いベッドの上でどうのって、まさに心を燃やした想像が花開く。

 一方その頃……とあるバス停の前で時間到来を待つ望がいた。ゲームの腕前が上達する前に生じる不調をもうすぐ脱せられると思っていたから、最近は魅力的な彼女よりもゲームの事ばかり考えていた。だからいま、久しぶりに人間らしい感覚を胸に抱く。

(翠名……)

 縁日へいっしょに行く。しかも翠名は浴衣になると言った。翠名の浴衣姿なんて見るのは今日が初めてであり、どんな感じなんだろうと思うと胸がドキドキしてしまう。それはゲームばかりやっていたら忘れそうになる、人としての温かい純情さ。

「ん?」

 ここでふっと赤裸々に大きな声が聞こえた。そしてギギギギギギ! って、バカかよ! ってくらいデカいブレーキ音がして一台の自転車がストップ。

「お、望」

「え、燃得……」

 翠名って彼女を思いながら甘い感覚に浸っていた望、突然に燃得が登場したから現実に引き戻される。

「どこか行っていたのか?」

 望、自転車の燃得はどこかに行っての帰りだと思った。だから別に気にしなくてもいいよなって思おうとする。

「行ってたじゃなく、これから行くんだよ」

「ど、どこに?」

 望がドギマギしているのとは対照的に燃得は余裕のニヤつきをしている。なぜなら望がこのバス停に立っているってことですべてをサッと飲み込んだからだ。すなわち椎名という姉が、妹と彼氏ってカップルを甘い時間を薄めたいとして、そのために自分をって男子を読んだのと素早く理解。

「どこって決まってんじゃん、おれも縁日に行くんだよ」

 タッと自転車から下りた燃得、望に近寄りククっと笑ってから言ってやる。おれにはちゃんとわかるんだぞ! と。

「わ、わかるって何がだよ」

「おまえ、佐藤の事ばっかり考えて頭がポーっとなっていたんだろう」

「ぅ……べ、別にいいだろう……だ、だって付き合っているし」

「で、おまえはこうも考えていたはず。佐藤の巨乳に甘えていたいなぁとか、パイズリして欲しいなぁとか、家族のいない時を狙って佐藤を家に招いて、たまらず佐藤をベッドに押し倒してしまうとかさ」

「燃得……頼むから声量を下げてくれ」

「いいじゃんか男子なんだから、女子に対してああだこうだと素直に思って何が悪いって話だ、そうだろう? 望って暗いよな、もっとおれみたいに素直に明るく生きようぜ」

「おまえは明るすぎて問題って気がするけどな」

 望、燃得が縁日に来るのかよ……と一瞬テンションが下がりかける。だが冷静に考えてみると、燃得のテンションを下げるって攻撃が出来そうだとし、それを声にする。

「なぁ燃得」

「なんだ?」

「おまえひとりで行くのか? ひとりで縁日ってさみしくない? せめて友だちくら誘ったらいいのに。ひとりで縁日を歩く? それでおれと翠名について回るとか? そんなのって哀れなモブキャラ以外のなんでもないじゃん」

 望、これは効くだろう、そして効けば燃得は自分と翠名ってカップルに付きまとうって事はないだろうと期待する。

「友だち? 男同士で縁日とかそんなダサい事やりたくないつーんだよ。今日のおれはちゃんととなりに花がいるんだ」

「え? 花って……うそ、おまえあたらしい彼女とか出来ていたの?」

「まぁ、まだお付き合いって決めたわけではないけれど、交流は始まっているんだ。そしておれが愛の時間に身を捧げる日は確実に近づいているんだ」

「誰だよ相手は」

「佐藤のお姉さん。望、忘れたかよ、おまえがお姉さんから話があるって言われたとき、おまえをお姉さんのところまで連れていったのはおれなんだぞ、あのときすでにおれとお姉さんの物語は始まっていたんだ。

「えぇ……」

 翠名の姉こと椎名、それと燃得がお付き合いとかいったら……だったらもしそれぞれのカップルが結婚とかしたら、自分と燃得は身内って事になってしまう……なんて、そんな事を思ったらドーンとキモチが沈む望だった。

「おれ、絶対お姉さんと愛情を育むんだ」

「いいじゃんか、がんばれよ」

「で、まずはパイズリしてもらって谷間発射とかさせてもらって、で18歳までには初体験を終えて……」

「燃得さぁ、おまえ……絶対女に嫌われるぞ」

「ところがどっこい! 世の女は望みたいな根性なしより、おれみたいな正直者って熱い心を持った男の方を選ぶんだよなぁ。もし望と佐藤が破局したら、おれはお姉さんと愛を育みつつ、佐藤を愛人にしてやる」

「外道かよおまえは……」

 男子2人がそんな会話をしているとき、2人の女子がもうすぐ待ち合わせ場所に到着すると歩いていた。それは傍から見ればどちらも浴衣が似合ってかわいい。心持ちの悪い男が見ればナンパという行動に出る可能性は非常に高い。

「翠名、あんた縁日だからって調子こいてイチャラブの温度を上げ過ぎないように」

「イチイチうるさいなぁ……お姉ちゃんこそ……」

「なによ?」

「誰か知らないけれど、男の子を連れてくるんでしょう? だったらお姉ちゃんこそハメを外してみっともない姿を晒さないように」

「わたしはだいじょうぶ」

「なんで?」

「だって相手は男子だけれど下僕だから」

「それって……愛がないんじゃ……」

「別に無くてもいいかなって」

「うわ、お姉ちゃんって幼稚。愛を育もうとしない女は精神年齢が幼いって、えらい先生が言ってた。お姉ちゃんってお子様だぁ」

「なんですって!」

 とまぁこんな感じで、2人の男子に負けず劣らず2人の女子もヤイヤイ言い合いながら歩いて目的地に到達したのだった。
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