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25・女はプレッシャーをかけるのが上手く、男はプレッシャーに弱い
しおりを挟む「男同士の大事な話なんだ……だから昼休みに頼む!」
本日、燃得は1時間目が終わるとすぐ望にそう伝えた。演技力を駆使して思わせぶりな表情をつくり、どうしたんだよ……とか言われたら、今は言えない……とかつぶやき望を心配にさせたりした。
そして時間は流れあっという間に昼休み時間が到来。望は約束したのだから仕方がないと、翠名って彼女との会話も友人たちとサッカーをやるみたいな事も選択から外し、燃得といっしょに講堂の裏に行く。なんでどんな悩みを打ち明けるつもりなんだ? と望が思ったら、ふっと燃得が妙な事を口にした。
「お姉さん、望を連れて来やした」
(お姉さん?)
なにそれ、どういうこと? とか思う望が講堂の裏に到着すると、そこにはひとりの女子が立っていた。
「あ、あれ?」
一瞬いとしの彼女……みたいに見えたが、いやたしかにバリバリによく似ているが、でもやっぱりちがうという女子だ。ついでにいうなら胸のふくらみ具合も、かなり豊かではあるが彼女よりは控えめとか思ったりして。
「燃得、あんたはちょっとあっちに行っていて」
言った女子がシッシっと手を動かす。本来なら燃得はそんな事をされたらふざけんなよ! と怒るはず。でもなぜかここでは粗末に扱われても気にしません! 的なノリで、ラジャー! とか言って立ち去った。
「きみが田中望……翠名の彼氏ね」
「え、ってことは翠名の……」
「わたしは翠名の姉で椎名って言うんだよ」
知らなかった、だからけっこうドーン! とカベつよくぶつかるみたいな衝撃が発生した。自分の彼女に姉がいたなんて、今まで知らなかったぞ! と望は思いもしない展開に緊張を始める。
「ねぇ、きみ……ゲーマーなんだって?」
「え? あ、まぁ……ゲームとか好きです」
「なんでも、ゲームで熱くなると暴言を吐きまくるそうじゃない」
「いや、それはその……確かに言葉は少し乱れます……」
「でもその割には、今はおとなしそうな少年だね。もしかして普段はいい子ぶってるってこと?」
「そ、そんな、いつも暴言吐いていたら人間がおかしいじゃないですか」
「ま、そりゃそうだけれど……今日はきみに聞きたい事があってここに来てもらったんだよね」
椎名はそう言うとズイっと望に接近した。そしてドキッとして顔を赤くする年下を見ながら、きみは翠名のどこが好きなの? と聞いた。
「ど、どこって……全部です」
「なによ全部って、ダサい言い方して。もっとハッキリ、こういうと所が好きなんだ、文句あるか! みたいに力強く言い切ることってできないの?」
「いやその、ぼくはほんとうに翠名みたいな女の子がすごい好みなんです。だからぼくの方から告白したんです」
「だからぁ、すごい好みって言い方で終わらせるんじゃなくて、こういう所がたまらなく好きとか言えない?」
「ん……」
「翠名は巨乳だからさ、ぼくはおっぱいが大きい女の子が好きなんです! とか思ってるんでしょう? まさか思っていないの?」
「お、思って……います」
「じゃぁ、なんでそれを今堂々と言わないの?」
「そ、そんな……急に登場したお姉さんに言えとか言われたら緊張するじゃないですか、だから言いにくくて」
望は自分が情けない男に仕立て上げられていくような気がした。だからしてすぐ反論した。翠名に告白した時は、ちゃんと自分のキモチをすべて言い並べました! と。
「じゃぁ、それと同じ事をなんでここではすぐに言えなかった?」
「だからそれは緊張して」
「望、きみってさぁ……」
ここで椎名がさらに接近して距離を詰めた。すると女子のいいニオイというのがムワーっと流れ伝わってくる。そして目を下に向けると、眼前の相手もかなりおっぱいは大きいってところに目が引っ張られてしまう。
「望、きみって根性ないよね?」
「え?」
「かわいい妹の彼氏っていうからどんな男の子かと思って期待したけれど、なんの事ははない、ただの根性なしじゃん」
「なんでぼくが根性なしになるんですか」
「わたしの質問にすぐさま熱い自分をさらけ出して答える事ができなかった。で、ゲームで燃えると暴言を吐くって熱いキャラクターを普段は表に出していない。それって根性がないってことじゃん」
「で、でも……」
「でもなによ?」
「翠名にはちゃんとぼくから正面切って告白したんです」
「それはあれでしょう、普段あまりにも根性がないから思い詰めて思い詰めて、やっと暴発したって結果でしょう? 安定して根性のある男の子ってわけじゃないでしょう?」
「ぅ……お、お姉さんは……ぼくに何が言いたいんです?」
「ハッキリ言うわ、根性がないなら翠名と別れて」
「え、え……」
「翠名はやさしい巨乳だから今はいいだろうけど、でも翠名だって高ぶればメスライオンみたいに発情するわけよ」
「め、メスライオン……」
「そのとき、きみってちゃんと翠名を抱いてあげられるの?」
「え、え……」
「女ってさぁ、キモチが高ぶれば愛し合いたいって思わずにいられなくなる。その時、きみって翠名を抱いてあげられる? 怖がらずにちゃんと向き合える?」
「き、急にそんな話をされても……」
「翠名ってあれだよ、マジでほんとうにおっぱいが大きいからね、しかもやわらかい弾力いっぱいだからめちゃくちゃキモチいいんだよ。ま、ふつうの男の子だったらガマンできずにすぐイッちゃうんじゃないかな」
「い、イッちゃうって……どういう意味ですか?」
「ガマンできなくなって射精するって事じゃん。中学生なんだから、それくらいはわかるでしょう。で、きみがすぐに射精って事ばかりして翠名だけ満たされないって事が起こって、きみは翠名に嫌われちゃうかもね」
「そ、そんな、話が飛躍しすぎです」
「なーにが飛躍よ、愛し合うってそういう事でしょう。かわいい話ところばかり見ていたらヤケドするよ? で、きみ、将来はゲーマーになるつもり?」
「なれるならなりたいたいと思っています」
「なれるならなりたいって……なにその弱虫な言い方」
「そんな、弱虫とかそんなひどい言い方」
「ひどい? きみは望って響きだけれど男の子でしょう? だったら愛し合った翠名と結婚して、奥さんとなった翠名を養わなければいけないでしょうが。だからきみは、ほんとうはこう言わなきゃいけなかったんだよ。必ずゲーマーになって10億円稼いで豪華な暮らしをしてみせる! ってね。それならおぉ、こいつはやるかもしれない! とわたしも安心できたんだよ」
「きみ、今の内に翠名と別れた方がいいよ。たのしい夢を見たと思えばいいじゃん。いまなら間に合うんだから」
「間に合うってどういう意味ですか?」
「翠名がきみを巨乳って胸に抱きたいって、色ボケメスライオンになる前に別れれば、きみだって心の負担は少ないってこと」
「お、お姉さんは……」
「なに?」
「ぼくのこと嫌いなんですか?」
「当たり前じゃん。かわいい妹の彼氏とか好きになる姉がいるわけないじゃん。男らしければまだしも、根性なしなんて最悪以外の何でもない」
「い、イヤです、別れたくないです」
「おぉ、言うね。でもきみって弱い男の子みたいなオーラだからさ、さっさと翠名と別れて気楽になった方がいいと思うけれどなぁ。って、まぁ、今日はこの辺りで終わりにしようか。わたしが言いたい事を言えればそれでオーケーだしね」
椎名、クルっと回って望に背を向けた。そして数歩歩いてから立ち止まり、念押しなセリフを放ってかけるプレシャーを強化する。
「ムリだよ、わたしの直感がそう言っている。きみは翠名をまっすぐ強く抱くことはできない。だから翠名を幸せにできない、そう思う」
そう言い終えた椎名が立ち去ると、望は胸の内が紫色にドキドキしてきた。急に怖くなって臆病な自分がふつうの自分を飲み込もうとしていく。と、そこに燃得が再登場。実はこれ計算された流れであり、望に生じた不安な気持ちをよりいっそう増大させるようとたくらんでいる。
「おい、望」
「あ、燃得、おまえ翠名のお姉さんを知っていたのかよ」
「いやまぁ、たまたま偶然にな、で、そんな事より望……悪いけれどおれ、今までの話を聞いてしまったんだわ。あのお姉さん性格がきついからさ、おまえがひどい事を言われないか心配でつい盗み聞きしてしまった」
「い、いや、別にひどい事を言われてはいないけれど」
「望、ムリするな。あんなきつい姉がいるような佐藤とは別れた方がいい。恋愛っていうのはプレッシャーを感じながらやるものじゃないんだ。だからおまえは佐藤と別れた方が気楽に過ごせる。だいじょうぶだって、佐藤みたいな巨乳はめったにいないだろうけれど、顔が佐藤に似ているというだけならけっこういるだろうしさ」
燃得は親切を装って言い続けた。プレッシャーのある恋愛なんか止めちまえ、そんなの自分の心をしんどくさせるだけだぞ……などと。そしてそれは今の望の心をぐぅっと暗いところへ沈め込む事に成功していた。
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