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5・告白した勇気を神さまが評価してくれた!
しおりを挟む「おぉー!!」
教室内に歓声と拍手が沸き上がった。朝からやるじゃん! という声とか、お約束的な口笛の音色も飛ぶ。望という男子が翠名という巨乳女子に告白した、そのモーニングショーにクラスメートは大いに盛り上がる。ただし、ひとりだけそれを愉快と思わない男子もいたりする。
(あいつ!)
クッと表情をゆがませたのは燃得だ。なぜなら望が翠名を想っているとか、いきなり告白ショーをやるとか、それらまったく思いもしなかったから。
(望め……今のところ好きな女子はいないとか言いまくっていたくせにウソつきが……もし2人が付き合ったら、佐藤の巨乳っておいしいところを望が味わうのか? マジかよ、そんなのまったくおもしろくない物語じゃんかよ!)
たまらず握った手で机を叩きたくなった。しかしすぐその手を開け、ま、だいじょうぶだろうと思って成り行きを見守る事にした。
(通るわけない、絶対に望はフラれる。AIアプリが言っていたもんな、佐藤みたいな巨乳女子はおれみたいな男が好きなんだって。そうさ、望がフラれておれが佐藤の彼氏になって甘い体験をするんだ)
ケケケと笑う燃得といっしょにクラスメートが、さぁどうなる! と、告白の結末を気にする。テレビ番組だったらここでCMが入るところだろう。
「ん……」
翠名がほんのり顔を赤くしてゆっくり望に歩み寄る。告白して心臓が破裂してしまっている望は凍り付いたごとくになって動けない。だから正面から接近してくる翠名って女子を見ると、なんともすごく引き込まれる。
近い距離でまっすぐ見る想い人たる女子の顔……ほんとうにすごい豊かでやわらかそうってふくらみ具合……流れ伝わってくるいいニオイ……もうこの世で最高のモノに巻かれる寸前としか思えなくなる。
「とりあえず……ちょっと出よう」
翠名に言われた望だが、ガッチガッチに固まって簡単には動けない。もうぼくは死んでいるんです! って感じの硬直がまだ解けない。
「ほら、行こう」
おだやかな声と同時にスーッと動いた翠名の色白むっちりな手、それが固くなっている望の腕を軽くつかむ。
(あぅ……)
翠名に触れられると、分厚い氷のブロックが一瞬で溶けるみたいなイメージが見えた。なんとやさしい感じ、夢に誘ってくれるみたいな感じ……と、望は一瞬で頭がポーっとなって、自意識がほとんど空っぽみたいな状態で翠名に引っ張られ教室から出て行った。
(なにぃ!)
燃得、グググっと手をにぎり嫉妬色の感情を噛みしめる。あの流れ、女子が男子の腕をやさしくつかんで人目の少ない場所に誘うとか、それはもう大体の場合は恋の始まり。あの流れで望がフラれたら最高におもしろいと思うが、ハッピーな物語が始まりそうで不愉快極まりないとする。クラスメートの多くが2人を応援しているというのもまったく気に入らない。だから燃得は神さまにお願いするのだった。
(神さま、望がフラれますように。もしあの2人が恋愛を始めてもすぐ破局しますように。そして佐藤翠名とこのおれが結ばれるようにしてください!)
一方のその頃、翠名と望の2人は人がいそうでいない校舎の裏側にて向き合った。これってオーケーなのか? それともすごい悲惨な拒否を食らうのか? いったいどっちだろうと望の心中は不安という波が荒立っている。
「わたしが好きなの?」
ふっとおっとりな翠名が切り出した。
「う、うん……前からずっと……」
望、心臓がバウンドするみたいにドキドキしているが、でも腹はくくっていた。それはある格言に基づく意識だ。
―扉を開いたら後は正直になるだけ、扉を開いてもそれができない者は幸せも安堵もすべて手に入らないー
「ほんとうに?」
翠名がズイっと接近して、まろやかな目線を向ける。そして、どこがいいと思っているのか聞きたいと伝えた。
言われた望、素直に……丁寧に、ゆっくりと、翠名という女子が好みだと思う事実をすべて言い並べた。それは普段なら危険だからあまりやりたくないってところもある。特に、巨乳って特徴も好きだなんて言ったら、嫌われてしまうとしか思えない。でも、ここまで来たらもう言うしかない。素直に言って嫌われたら……それは結ばれる運命ではなかったのだと思うしかない。
「おぉ……」
ここで翠名はポッと顔を赤くし、そこまでがっちり言い並べられて告白されるなんて思いもしなかったとつぶやく。だが緊張と不安の固まりである望は、これは怒られるとか嫌われる前触れだと思ったので、反射的に謝ってしまう。
「ご、ごめん」
「え、なんで謝るの?」
「いま、言ったのは……全部ほんとうの事でほんとうのキモチだけれど、でもその……」
「いいから言いなよ」
「巨乳って特徴も好きって言ったら、やっぱりダメなのかなって思って」
「なんで? わたし実際におっぱい大きいし、巨乳だから、全然気にしない。っていうか、わたしが好きで巨乳嫌いとか言う方がおかしいじゃんか」
急に場の雰囲気が奇妙っぽくなってきた。てっきり嫌われたと思って死を覚悟したのに、実はそうでもない? って生還の光が見えてせいだ。
「そりゃまぁ、おっぱいしか見ていないっていうのは困るけれど、全部が好きって思ってくれるなら全然いいよ。それにあれだよ、とりあえずお付き合いしてみるって話なわけで、それさえ拒んだら何にもできないじゃん。わたしだって恋愛してみたい、愛情が育ってたまらない! とかいうキモチになってみたい」
「じゃ、じゃぁ……友だちでいいから付き合ってくれって、この告白……受けてくれるの? 付き合てくれるの?」
いま、望の心臓は生死の境目にある。もし翠名が拒否なら余裕で死ねて、もし翠名がオーケーしてくれるなら海の底から太陽広がる地上へ舞い戻れる。
すると翠名、えへっとテレながらたまらなくかわいく赤らんだ顔をして、色白むっちりな手を差し出して言った。
「よろしく!」
「よ、よ、よろしく……」
ゆっくりと右手を差し出す望、それが翠名の手に触れたとき……やわらかいキモチよさとやさしい感じにたまらずキュンっとさせられてしまう。それは望の想いが恋の扉ひとつめを開いたという事だった。
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