84 / 92
84)曖昧なモーション
しおりを挟む
世の中にはさ、見栄を張って格好良い趣味を楽しむタイプと、本当に心から楽しいと思うことを趣味としているタイプに分けられるに違いない。
で、僕は後者なんだろう。
サーファーとか公園でバスケとかやっている連中とか、こじゃれた音楽とかが好きな奴らが前者なんです。
こいつらはモテるために、そんなに楽しくないことを無理してやっている。
本当の目的は違うところにある。
「格好良い趣味を楽しんでいる、格好良い俺!」を演出するため。
それもこれも結局、女性にモテるためである。異性の目を意識しながらの趣味なんだ。
で、後者は電車が好きとか、カメラが好きとか、アニメとかアイドルとか、そういうのを追いかける奴ら。
あの、いはゆるダサい連中だ。
女子受けしない趣味。社会性のない自己中タイプが、自分のためだけに、あらゆる時間を犠牲にしている。
別の真の目的なんて別にない。それだけで自己完結している連中。それが楽しいから異性にモテなくて構わないと思っているのかどうかわからないけど、他人なんて意識していない。
しかし彼らはその趣味を楽しんでいることは確か。
何ならばそういう趣味があるから恋愛なんて必要ないと思っているのかもしれない。その趣味自体に恋愛並みに興奮しているんだ。
もちろん僕もそっち側である。
「僕だって普段はその趣味を隠している。カッコイイなんて思ってない。たまたま君たちにはバレてしまっただけで」
というわけで、僕は美咲ちゃんとゆかりちゃんに反論らしいものを試みてみる。
「別にそれを自慢しているわけでも、誇っているわけでもないしさ・・・」
「隠していたのに、正体がバレてしまったわけですね」
「残念ながらそういうことだね」
まあ、美咲ちゃんにはずっと前からバレていたはずだけど。なにせ僕は彼女の大ファンだったから。
「君たちだって隠している趣味くらいあるだろ?」
「え? まあ、確かにありますけど」
「本当に?」
僕は美咲ちゃんの回答にちょっとばかし驚いてしまう。美咲ちゃんにはそんなもの、ないのかと思っていた。
美咲ちゃんは眩しいくらいの「女子」なのである。
友達が多そうで、もしかしたら男友達なんかもいたりするかもしれなくて、というか絶対にいるはずで、二十歳になる前にお酒を飲みそうなタイプで、スノーボードとかも上手そうで。
我々オタク族とは住んでいる世界が違うと思っていた。それなのに密かな趣味があるなんて!
「どんな趣味なの?」
BLかな。それとも意外なことに切手とか集めていたりとか?
「言えませんよ、そんなの。隠しているんだから」
「それはそうだね。でもだったら僕たちは似た者同士じゃないか」
僕はそれをさりげない態度で言う。しかし内心、唇はぶるぶると震えるレベルの緊張感で。
「そうかもしれませんね」なんて答えを期待していない。そんな回答が返って来ようものならば、それは「付き合ってもいいですよ」レベルの「イエス」だと僕は受け取ってしまうだろう。
いや、実は僕は美咲ちゃんを口説いているつもりなんだ。「僕たちは似てるよね? 一緒にいたら楽しいかもよ」
そういうニュアンスを込めたのである。
その程度の会話で?
そうですよ。いや、僕はそれくらいにキモい人間なんだよ。
どうせわかっているんだ。「似てませんよ、そういうこと言うのやめて下さいよ!」って言われることを。
でも「ごめんなさい、付き合えません」と言われたらショックだけど、この返事くらいだったら、別にそこまではショックじゃないさ。
いや、ショックだけども、まだ自分を慰められるレベルのショック度合いで、目の前が真っ暗になって、死にたくなるくらいまではいかないと思うのです。
曖昧なモーションだからね。
「確かに私たち、けっこう似てるかもしれませんよね?」
しかし美咲ちゃんは言ってきたのだ。
で、僕は後者なんだろう。
サーファーとか公園でバスケとかやっている連中とか、こじゃれた音楽とかが好きな奴らが前者なんです。
こいつらはモテるために、そんなに楽しくないことを無理してやっている。
本当の目的は違うところにある。
「格好良い趣味を楽しんでいる、格好良い俺!」を演出するため。
それもこれも結局、女性にモテるためである。異性の目を意識しながらの趣味なんだ。
で、後者は電車が好きとか、カメラが好きとか、アニメとかアイドルとか、そういうのを追いかける奴ら。
あの、いはゆるダサい連中だ。
女子受けしない趣味。社会性のない自己中タイプが、自分のためだけに、あらゆる時間を犠牲にしている。
別の真の目的なんて別にない。それだけで自己完結している連中。それが楽しいから異性にモテなくて構わないと思っているのかどうかわからないけど、他人なんて意識していない。
しかし彼らはその趣味を楽しんでいることは確か。
何ならばそういう趣味があるから恋愛なんて必要ないと思っているのかもしれない。その趣味自体に恋愛並みに興奮しているんだ。
もちろん僕もそっち側である。
「僕だって普段はその趣味を隠している。カッコイイなんて思ってない。たまたま君たちにはバレてしまっただけで」
というわけで、僕は美咲ちゃんとゆかりちゃんに反論らしいものを試みてみる。
「別にそれを自慢しているわけでも、誇っているわけでもないしさ・・・」
「隠していたのに、正体がバレてしまったわけですね」
「残念ながらそういうことだね」
まあ、美咲ちゃんにはずっと前からバレていたはずだけど。なにせ僕は彼女の大ファンだったから。
「君たちだって隠している趣味くらいあるだろ?」
「え? まあ、確かにありますけど」
「本当に?」
僕は美咲ちゃんの回答にちょっとばかし驚いてしまう。美咲ちゃんにはそんなもの、ないのかと思っていた。
美咲ちゃんは眩しいくらいの「女子」なのである。
友達が多そうで、もしかしたら男友達なんかもいたりするかもしれなくて、というか絶対にいるはずで、二十歳になる前にお酒を飲みそうなタイプで、スノーボードとかも上手そうで。
我々オタク族とは住んでいる世界が違うと思っていた。それなのに密かな趣味があるなんて!
「どんな趣味なの?」
BLかな。それとも意外なことに切手とか集めていたりとか?
「言えませんよ、そんなの。隠しているんだから」
「それはそうだね。でもだったら僕たちは似た者同士じゃないか」
僕はそれをさりげない態度で言う。しかし内心、唇はぶるぶると震えるレベルの緊張感で。
「そうかもしれませんね」なんて答えを期待していない。そんな回答が返って来ようものならば、それは「付き合ってもいいですよ」レベルの「イエス」だと僕は受け取ってしまうだろう。
いや、実は僕は美咲ちゃんを口説いているつもりなんだ。「僕たちは似てるよね? 一緒にいたら楽しいかもよ」
そういうニュアンスを込めたのである。
その程度の会話で?
そうですよ。いや、僕はそれくらいにキモい人間なんだよ。
どうせわかっているんだ。「似てませんよ、そういうこと言うのやめて下さいよ!」って言われることを。
でも「ごめんなさい、付き合えません」と言われたらショックだけど、この返事くらいだったら、別にそこまではショックじゃないさ。
いや、ショックだけども、まだ自分を慰められるレベルのショック度合いで、目の前が真っ暗になって、死にたくなるくらいまではいかないと思うのです。
曖昧なモーションだからね。
「確かに私たち、けっこう似てるかもしれませんよね?」
しかし美咲ちゃんは言ってきたのだ。
0
お気に入りに追加
40
あなたにおすすめの小説
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
真夏の温泉物語
矢木羽研
青春
山奥の温泉にのんびり浸かっていた俺の前に現れた謎の少女は何者……?ちょっとエッチ(R15)で切ない、真夏の白昼夢。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
13歳女子は男友達のためヌードモデルになる
矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる