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59)スクール水着と日焼けあと

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 スクール水着と日焼けあと。その相性は最高である。
 ワインとチーズの比ではない。焼肉と白いご飯とは比べ物にならない。
 そんなものをはるかに超えた、最高の組み合わせだと思う次第である。
 このスクール水着のシーンでは、これで攻めようと思っていた。僕の企画書ではこうなっている。

 プールに入る前、二人で準備運動をしている。
 ラジオ体操のような運動。それプラス、二人で背中を合わせてのストレッチとか。
 これだけで僕が何を狙っているのか、男性諸氏には既におわかりかもしれない。
 水着がお尻に食い込むシーンを狙っているというわけだ。
 そのとき、日焼けしていない肌があらわになる。それは生まれて一度も太陽の光に焼かれていないきれいな真っ白な肌。

 そのお尻の部分が見え隠れするセクシーさについて説明など必要ないだろう。
 あれは端的にエロい。
 そのために体操させるなんて、何やら姑息な手段なのだけど、僕はそれを実行するつもりだった。
 そんな僕を軽蔑してくれてもけっこうだ。
 しかしこれもこれも、全てお前たちのためにやっているんだぜ。我が同胞よ! 全国のイメージビデオを愛せし男たち。

 おっと、更に説明を進める前に、事前に仕込んでおいたアイデアについて言及しておかなければいけない。

 「ゆかりちゃん、変な頼み事なんだけど、背中だけでいい、日焼けサロンとかで少しだけ日焼けして欲しいんだ」

 僕は彼女にそんなことを頼んでいた。

 「でもそのとき普段より小さい水着を履いてはいけないよ。ましてや全裸でも駄目だ。撮影で着る水着より、ちょっとばかり大きめのサイズで日焼けして欲しい。と言っても数ミリ単位で」

 これは美咲ちゃんには頼んでいない。ゆかりちゃんのためだけに特別仕込んでおいたアイデア。
 別に美咲ちゃんが嫌いとかではなくて。この業界に長い彼女には頼みにくかっただけ。
 新人のゆかりちゃんとはメールとかで遣り取りもしていて、撮影前からコミュニケーションを取っていた。そのときにお願いしたのである。

 「背中だけ? どうしてですか?」

 「うん、ちょっとね。そんなにこんがり焼かなくていいよ。白い肌と日焼けの肌の違いがちょっとわかる程度で」

 「わかりました、でもなぜなんだ、いったい???」

 「本番を楽しみにしておきたまえ」などと返して、うやむやにしておいたのだけど、それはこういうわけだ。
 ゆかりちゃんは撮影のとき、そんなに小さな水着を着たりはしない。普段に着ているレベルの露出度。
 これでは日焼け前の真っ白な肌がそんなにあらわにならないと思う。
 だから日焼けのラインを、不自然かもしれないけれど、少し外側に移動させる作戦だ。それで「けっこう頑張ってるじゃん」と視聴者に思わせられはしまいかと。

 しかしこれはただの詐術。パッと見では騙せるかもしれないけれど、こんなことを重ねていても作品は本当の意味で良くならない。
 本丸はこれではない。やはり本当に白い肌の部分を見せてしまわなければいけない。
 というわけで、プールサイドでスクール水着の二人を体操させる。
 そのとき美咲ちゃんとゆかりちゃんに、出来るだけ手をつながせようと思う。

 どういうわけなのか? 
 これも本当にずる賢いやり方で、そんなことを思いついた自分が嫌になってくるのだけど、つまり美咲ちゃんとゆかりちゃんの両手を出来るだけ塞いで、食い込みを直させない作戦、というわけである。

 食い込みを直す仕草にこそ、エロさが宿るという意見もあるだろう。
 それもわかるし、そんなことは悪巧みを企てなくても撮影出来る。女の子たちは髪の毛をかき上げる回数と同じくらい、食い込みを直す生き物だろ? 

 と、まあ、そういうことを企画していたのだけど、それもこれも全部無しになったのである。僕の落胆ぶりをわかってもらえよう。
 ゆかりちゃんは一向に後ろを向かない。スクール水着の後ろ姿は全然カメラに収まらない。僕の事前の努力も台無しだ。

 この代理監督、想像以上に「わかっていない」監督だ。
 女性の身体のことをわかっていない。僕たち男の性欲をわかっていない。我々が何を見たいのか理解していない。
 なぜこんな無能が、こんな重要な仕事を任されたんだろうか。

 僕は暗澹たる気持ちになる。
 ただ単に手を抜いているのか。
 これは僕の作品だから、この人は頑張っても何の得にもならないから、ただ流れ作業のように撮影しているだけなのか? 
 クソ! 僕の作品を台無しにしやがって。

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