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28)君たちは真夏の公園で
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二人の関係は、テニス部の先輩と後輩。
ゆかりちゃんは先輩である美咲ちゃんに憧れているという設定である。
この年齢の女子特有の年上女子への憧れという感情。
現実にそのようなものが存在するのか知らないが、まあ、僕たちはこういうのが大好きである。
自転車で登校する二人は、待ち合わせ場所の公園で落ち合う。「先輩、おはようございます」みたいな小芝居があって、二人は談笑しながら公園へ。
二人は「キャッキャ」言いながら、公園で遊び始めるのである。
ブランコに乗り、滑り台を滑り、砂場で砂の城を作り、そして犬を見つけて、戯れる。
本物の犬が登場するわけではない。
カメラを犬と見立てて、二人に演技をしてもらう。
だから当然、猫でもいい。地を這う小動物ならば、ニワトリでも、何ならワニでもいいよ。
犬や猫をかわいがる女子、ニワトリをかわいがる女子、ワニをかわいがる女子、我々がどのタイプを愛でるかによる。
犬や猫をかわいがる女子のほうが好感度は高いから、それにするだけ。
さて、以上がこのチャプターの撮影プランであるが、実際の撮影は始まっている。
公園の遊具、それには高低差がある。
ブランコ、滑り台、鉄梯、エトセトラ。身体は地上から数十センチ、ときには何メートルの単位で浮き上がっている。
空中浮遊状態、ってわけではないのだけど、遊ぶ者たちは地面よりも高みに上がる。
そもそも公園は、中学生や高校生が遊ぶところではない。ましてや公園の遊具は、スカート姿で遊ぶための装置じゃない。
しかし、いや、だからこそイメージビデオに頻出する場面であって、僕もそれを利用しようとするわけだ。
自然に「見える」必要があるのだと思う。無理に「見せる」のではなくて。
それがエロさなのだろうか。夢中で遊んでいる少女が、見えてしまうことを気にしながらも、でも遊ぶことが楽しくて、「私、お転婆やっちゃいました」って感じのチラリズム。
これがイメージビデオの本質。
いや、そういうことを思いつつも、そういうのとは違う事情もあるかもしれないなんて僕は思ったりもする。
つまり、作品の作り手側の照れだ。今、自分がその立場に立って実感する。
「ここはスカートをね、少し脚を広げて、そう、見せて欲しいんだ」
それをいちいち、年若きアイドルに言うのは結構なストレスだって思う。
もちろん言えるよ! 言わなければいけないときはね。
でも出来るだけ言わないで済ますことが出来るものならば、そっちのほうがいいというか・・・。
だからイメージビデオをの監督たちは、少女たちを公園で遊ばせて、その様子を撮影するだけして、そこからイメージビデオとして使える素材を集めて終わり。
ブランコを力いっぱい漕いでいる女子を撮影すれば、まあ、それはそれなりにエッチなシーンは撮れますよ。滑り台を滑っている女子を撮影すれば、それはけっこうな際どいシーンが撮れますよ。
でも、それで出来上がるのは、何となくエロいシーンってだけで、「そう、これが見たかった!」的なシーンは皆無だと思う。
良いシーンもあるけれど、それは一瞬だけで、持続してじっくりと見ることは出来ない。
そういうのは駄目だ。イメージビデオを見ていて、最もストレスを感じる時間。
このシーンをじっくりと見たいんだよ! なぜ監督は指示を出さないんだ?
僕は何度も画面を見ながら、下唇を噛んできた。
ちゃんとやろうよ、真面目に撮影しようよ。そんな感じで残念に思ってきました。
その駄目な歴史の反省を踏まえている。だから僕は、あの怠惰な監督たちのような仕事はしない。
僕はしっかりと演者たちと向き合うつもりだ。
まずは僕は椎名美咲ちゃんを呼ぶ。
「ここは制服姿を撮影する、メインのシーンになるんだ。つまり、制服姿の美咲ちゃんの魅力が、最も良い感じに映るようにしたいわけなのよ」
僕はおねえ言葉で、美咲ちゃんの警戒心を和らげる。
おねえ言葉で話すだけで恥ずかしい。
家族に聞かれたら死ぬ。母親に聞かれたら、泣かれるだろう。父親に聞かれたら、殴られるだろう。
本当に恥ずかしい演技だ。この恥ずかしさを前にしたら、それ以外は何も恥ずかしくない。何でも言えるさ!
「つまりね、スカートの中を撮りたいって思っているのよ、いわゆる、あの、何て言うのかしら、チラリズムっていうの、うん、そうよ、それ」
僕は言った。言えた。第一関門突破。
しかし美咲ちゃんが表情を曇らせた。
「本気で言ってるんですか、そういうこと?」
「え? ほ、本気っていうか、で、でも下に着ているのは水着でしょ」
僕は慌てて言葉を付け足す。「だから別に、あの、えーと」
「冗談ですよ、わかってます。何をすればいいか、ちゃんと把握してますよ。自転車のシーンは見せなくて、ここでは見せるわけですね?」
美咲ちゃんは笑い出した。ちょっとしたドッキリですよ、ふふふ。そんな感じの表情。
「何だ、そうだったの、驚かせないでよ」
僕はホッとしながらも、出来るだけ毅然とした姿勢を示し続ける。「でも自然にね。隠しながらも、見えてしまうっていうか」
「わかりました、でも贅沢ですね」
「贅沢?」
「いえ、別に何もありません」
美咲ちゃんはまた、悪戯そうに笑った。
贅沢って?
ああ、何となく美咲ちゃんの言いたいこともわかる気がするよ。
男性というのは、女性に多くを求める。積極的なエロさと、その逆の恥じらいと。
ちょっと格好をつけた表現をすれば、娼婦のような奔放さと、聖女のような貞淑さってところか。
つまり、恥ずかしがりながら、エロくあれ! と求めている。
しかも、美咲ちゃんやゆかりちゃんのような年端のいかない女子に求めている。我々日本の男子は本当に困った存在である。
美咲ちゃんはきっと、そういう感じのことを言っているのだろう。「男性は贅沢ですね」って言葉の中に、そういうことが全部含まれている。
そしてそれを既に理解している美咲はさすがである。それなりにキャリアがある美咲ちゃんは、自分が何を求められているのかわかっている。
問題は天羽ゆかりちゃんのほうだ。マネージャー的にはNGなのだ。スカートの中、それが水着であろうが何であろうが見せてはいけない。
しかしこのシーンの趣旨は、制服姿で戯れる少女である。いや、あれくらいのサイズ感のスカートならば、不可抗力で見えてしまうであろう。
どれだけマネージャーが文句を言おうが、カメラに映るのは確実のはず。
うむ、どうなるだろうか、とにかく撮影だ。
ゆかりちゃんは先輩である美咲ちゃんに憧れているという設定である。
この年齢の女子特有の年上女子への憧れという感情。
現実にそのようなものが存在するのか知らないが、まあ、僕たちはこういうのが大好きである。
自転車で登校する二人は、待ち合わせ場所の公園で落ち合う。「先輩、おはようございます」みたいな小芝居があって、二人は談笑しながら公園へ。
二人は「キャッキャ」言いながら、公園で遊び始めるのである。
ブランコに乗り、滑り台を滑り、砂場で砂の城を作り、そして犬を見つけて、戯れる。
本物の犬が登場するわけではない。
カメラを犬と見立てて、二人に演技をしてもらう。
だから当然、猫でもいい。地を這う小動物ならば、ニワトリでも、何ならワニでもいいよ。
犬や猫をかわいがる女子、ニワトリをかわいがる女子、ワニをかわいがる女子、我々がどのタイプを愛でるかによる。
犬や猫をかわいがる女子のほうが好感度は高いから、それにするだけ。
さて、以上がこのチャプターの撮影プランであるが、実際の撮影は始まっている。
公園の遊具、それには高低差がある。
ブランコ、滑り台、鉄梯、エトセトラ。身体は地上から数十センチ、ときには何メートルの単位で浮き上がっている。
空中浮遊状態、ってわけではないのだけど、遊ぶ者たちは地面よりも高みに上がる。
そもそも公園は、中学生や高校生が遊ぶところではない。ましてや公園の遊具は、スカート姿で遊ぶための装置じゃない。
しかし、いや、だからこそイメージビデオに頻出する場面であって、僕もそれを利用しようとするわけだ。
自然に「見える」必要があるのだと思う。無理に「見せる」のではなくて。
それがエロさなのだろうか。夢中で遊んでいる少女が、見えてしまうことを気にしながらも、でも遊ぶことが楽しくて、「私、お転婆やっちゃいました」って感じのチラリズム。
これがイメージビデオの本質。
いや、そういうことを思いつつも、そういうのとは違う事情もあるかもしれないなんて僕は思ったりもする。
つまり、作品の作り手側の照れだ。今、自分がその立場に立って実感する。
「ここはスカートをね、少し脚を広げて、そう、見せて欲しいんだ」
それをいちいち、年若きアイドルに言うのは結構なストレスだって思う。
もちろん言えるよ! 言わなければいけないときはね。
でも出来るだけ言わないで済ますことが出来るものならば、そっちのほうがいいというか・・・。
だからイメージビデオをの監督たちは、少女たちを公園で遊ばせて、その様子を撮影するだけして、そこからイメージビデオとして使える素材を集めて終わり。
ブランコを力いっぱい漕いでいる女子を撮影すれば、まあ、それはそれなりにエッチなシーンは撮れますよ。滑り台を滑っている女子を撮影すれば、それはけっこうな際どいシーンが撮れますよ。
でも、それで出来上がるのは、何となくエロいシーンってだけで、「そう、これが見たかった!」的なシーンは皆無だと思う。
良いシーンもあるけれど、それは一瞬だけで、持続してじっくりと見ることは出来ない。
そういうのは駄目だ。イメージビデオを見ていて、最もストレスを感じる時間。
このシーンをじっくりと見たいんだよ! なぜ監督は指示を出さないんだ?
僕は何度も画面を見ながら、下唇を噛んできた。
ちゃんとやろうよ、真面目に撮影しようよ。そんな感じで残念に思ってきました。
その駄目な歴史の反省を踏まえている。だから僕は、あの怠惰な監督たちのような仕事はしない。
僕はしっかりと演者たちと向き合うつもりだ。
まずは僕は椎名美咲ちゃんを呼ぶ。
「ここは制服姿を撮影する、メインのシーンになるんだ。つまり、制服姿の美咲ちゃんの魅力が、最も良い感じに映るようにしたいわけなのよ」
僕はおねえ言葉で、美咲ちゃんの警戒心を和らげる。
おねえ言葉で話すだけで恥ずかしい。
家族に聞かれたら死ぬ。母親に聞かれたら、泣かれるだろう。父親に聞かれたら、殴られるだろう。
本当に恥ずかしい演技だ。この恥ずかしさを前にしたら、それ以外は何も恥ずかしくない。何でも言えるさ!
「つまりね、スカートの中を撮りたいって思っているのよ、いわゆる、あの、何て言うのかしら、チラリズムっていうの、うん、そうよ、それ」
僕は言った。言えた。第一関門突破。
しかし美咲ちゃんが表情を曇らせた。
「本気で言ってるんですか、そういうこと?」
「え? ほ、本気っていうか、で、でも下に着ているのは水着でしょ」
僕は慌てて言葉を付け足す。「だから別に、あの、えーと」
「冗談ですよ、わかってます。何をすればいいか、ちゃんと把握してますよ。自転車のシーンは見せなくて、ここでは見せるわけですね?」
美咲ちゃんは笑い出した。ちょっとしたドッキリですよ、ふふふ。そんな感じの表情。
「何だ、そうだったの、驚かせないでよ」
僕はホッとしながらも、出来るだけ毅然とした姿勢を示し続ける。「でも自然にね。隠しながらも、見えてしまうっていうか」
「わかりました、でも贅沢ですね」
「贅沢?」
「いえ、別に何もありません」
美咲ちゃんはまた、悪戯そうに笑った。
贅沢って?
ああ、何となく美咲ちゃんの言いたいこともわかる気がするよ。
男性というのは、女性に多くを求める。積極的なエロさと、その逆の恥じらいと。
ちょっと格好をつけた表現をすれば、娼婦のような奔放さと、聖女のような貞淑さってところか。
つまり、恥ずかしがりながら、エロくあれ! と求めている。
しかも、美咲ちゃんやゆかりちゃんのような年端のいかない女子に求めている。我々日本の男子は本当に困った存在である。
美咲ちゃんはきっと、そういう感じのことを言っているのだろう。「男性は贅沢ですね」って言葉の中に、そういうことが全部含まれている。
そしてそれを既に理解している美咲はさすがである。それなりにキャリアがある美咲ちゃんは、自分が何を求められているのかわかっている。
問題は天羽ゆかりちゃんのほうだ。マネージャー的にはNGなのだ。スカートの中、それが水着であろうが何であろうが見せてはいけない。
しかしこのシーンの趣旨は、制服姿で戯れる少女である。いや、あれくらいのサイズ感のスカートならば、不可抗力で見えてしまうであろう。
どれだけマネージャーが文句を言おうが、カメラに映るのは確実のはず。
うむ、どうなるだろうか、とにかく撮影だ。
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