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7章 魔導学園 1年生編
88話 ランキング
しおりを挟む「バルトはやっぱりOOPARTSオンラインやってたの?」
「ああ、と言うことはハヤトもか?」
「うん。無課金だったんだけど結構やってたなぁー」
この異世界召喚はやはりOOPARTSオンラインにアカウントを持っていたユーザーということが分かった。ということはけんやハヤト俺以外にもいるかもしれない。
「僕の場合は本当はこんな容姿じゃなかったんだけどね。OOPARTSオンラインの方は本人のままでやってたから……こんなに爽やかイケメンになるとは思ってもいなかったよ」
「え?俺は転生前と変わらない容姿だぞ。アバターで服装とかは変更可能だけど顔、肌の色、目の色、輪郭とか容姿のほとんどは転生前のまんまだよ」
どうやら同じ転生者でも様々な形で転生させられてるらしいな。同じことを思ったのかハヤトも驚きはしていたが冷静に考えている。
「僕の場合転生した時は子供だったんだ。成長して今の姿だけどこれも恐らくだけどアキトとは違うよね」
「そうだな、俺の場合年齢は転生前と変わらずだ。というか子どもからスタートってどういうことだ?」
「僕も詳しくは分からないんだけどね転生して目覚めたら僕は血だらけだったんだよ」
血だらけって、死にかけの状態じゃんか……てっ
「多分なんだけど僕が転生に使われたこの体は恐らく幼少期に死んだ子の代わりとして入っているんだと思う。転生して起きてまず血だらけの体を見てびっくりしたんだけどすぐに今の僕の父親が入ってきて助けてくれたんだ。その時に生きていたことが奇跡みたいなことを言われたのを覚えてるよ」
成る程こっちの世界でそのハヤトの体の子は一回亡くなった。あの女神のことだからその子の魂だけを抜き取り体をハヤトの転生先の器として使った。
そして周りからは死んだはずの子供が生きていたんだからそりゃ驚くはずだ。
「それにしても生まれ先が公爵って運がいいなハヤトは」
「そうでもないよ。これでも元の世界ではニートというか引きこもり生活してたからね」
「え?ハヤトって元の世界だといくつだったんだ?」
「僕は17歳だよ。学校に行かずにOOPARTSオンラインばっかりやってたけどね」
年下だと……ほぼ歳の差はないとはいえ、俺ハヤトと精神年齢は変わんないんじゃないか。むしろハヤトの方が大人らしいというか何というか……
「アキトは何歳なの?」
「え……っと……19歳?」
「なんで疑問形なんだよアキト。でも結構僕たち歳近いんだね」
「ああ、そうだな」
「それにしてもアキトって……意外と見た目老けてるよね最初見た時30代かと思った」
おいハヤトよそれをまだ知り合って間もない俺に言うかね。まぁ別にぃ気にしてないからいいんだけどさ。
そんな真剣な目で言われるとこれ以上何も言えんがね。
「そ……それよりもさハヤトって名前ゲームアカウント名だったりする?」
ハヤトは何か合点がいったのか理解したように1回頷く。
「お!やっぱり!アキトもだよね」
「お、おう……」
ハヤトはOOPARTSオンラインになると性格が変わったように別人に変化するから時々怖くなるんだよな。
今も顔を思いっきりこっちに寄せてきて今にもぶつかりそうだ。
「ハヤトって」
「アキトって」
「「ランキングに常連だったよね」」
そう、俺……というか俺達は途中から課金額がとんでもないことになっていたのでゲーム内では結構有名だったし、OOPARTSオンラインには様々な項目のランキングがあって大抵のもののランキングの上位にいたのでハヤトが知っていても何も不思議ではない。
そのランキングの中でも俺達が絶対に上位に食い込めなかったものがある。それがハヤトが常に1位いた無課金者ランキングだ。
その名の通り無課金者だけでのランキングで、結構このランキングの上位にいた人達はOOPARTSオンラインでは課金者から敬意を受けていた。
このゲームは基本課金しないとやっていけないと運営すら公言していたくらいのもので、そんな中無課金でプレイし、なおかつランキング上位とるんだからそりゃ尊敬もされる。
中でもハヤトは無課金者なのにも関わらず全体の総合戦闘力ランキング最高で50位には入ってたはずだ。
「いやーまさか本当にあのアキトだっただなんて!」
「こっちこそこんなとこで会うなんて思ってもいなかったよ」
OOPARTSオンラインの時はお互い会う機会がなくここ異世界が初対面になる。ハヤトも途中からアカウントが消失して一時期死んだ説が出ていたが本当にそうだったとはな。
「今レベルいくつなんだい?アキト」
「今は42だよ」
「え?42!なんでそんなに低いの?」
「転生したらレベル1だったんだよ」
「僕も低くなってたけどレベル50だったよ。今は何とか80まで上げたけど」
80かーこりゃ今はハヤトに絶対に勝てなさそうだな。レベル42と80じゃ天と地ほどの差がある。
「これじゃあい今戦ってもあんまり面白くないかもね」
「そうだな。お互い100になったらやるか」
「うん!そうしよう」
レベル100になった時の約束を結ぶがこれは学園卒業後の楽しみとして取っておくことにする。どうせ学園在学中に100になることはないからな。
「話は変わるけど魔導修練際っていうのがあるらしいね。アキトは興味ある?」
「そうらしいな。興味か……特にないかも」
「でも出ないと卒業できないんだってさ今日先生に聞いた。どうやらこの1年に1回開催される魔導修練際に3回出場しないとダメらしいよ」
「そうか……まぁ腕試し程度でやりますかな」
「そうだね。もし当たったらその時はお互い全力でやろう」
全力ね……俺は負け確定なので怪我しないように立ち回るだけなんだけどな……
そんなこんな話しているうちに午後の自主練の時間が終わる鐘が学園内に響き渡る。
まだハヤトとは話足りないがまたの機会に持ち越すとしよう。
「それじゃそろそろ行きますか」
「そうだね。ちょうど鐘も鳴ったし」
俺達はソファから立ち上がる。
「それじゃ転生者同士頑張っていこう。このことは漏らさないようにね」
「ああ」
このまま図書館を出るため出口の方角へ体を向ける。
「てんせいしゃってなんなん……」
ソファの裏からさっきまで寝ていたはずの少女が鼻から上を出してジロジロ見てくる。
その場で俺達は凍りつく。
お互い顔を見合わせどちらが言い訳するかアイコンタクトだけで話し合う。
その結果俺が言い訳をすることになったので心の中でため息をつき少女の方にゆっくりと体を向ける。
「いやぁー転生者っていうのは裸で転がるのが趣味の人達なんだよねぇぇ……」
最後の方は声が小さくなって掠れたようだったがちゃんと聞こえていただろうか……
その少女は訝しそうにこちらを見据える。
「そう……すぅー……ぅ……」
少女はその体勢で寝てしまった。
あぶねぇ間一髪だった。もしちゃんと聞かれていたら面倒くさいことになっていたところだ。
てかこの子、どんだけ寝相悪いんだよカウンターからここまで寝相でくるには結構な距離あるはずなのに。
しょうがないのでまた俺は少女を抱きかかえてカウンターのソファの上に乗せ今度こそ図書館を後にする。
「それじゃまたゆっくり話そうね」
「ああ」
俺達は茂みを出たあたりで別れ俺は黒聖棟までゆったり残ったトマトジュースをちびちび飲みながら帰路に就く。
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