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7章 魔導学園 1年生編
84話 不吉
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俺は目を覚まし咄嗟に上半身を起き上がらせ周りを確認する。
「ここは……」
どうやらあれは夢だったらしい。目を覚ましてからやっと何故ベッドに寝ているか記憶が蘇る。
ふとその際に受けた傷があるか身体中を弄って確認したがまるで夢であったかのように綺麗に傷が癒えていたが、傷は回復しても精神的にはまだ疲れが残っているらしく体が重く、気だるい。
なので、立ち上がるのは諦めて再びベッドに体を預ける。
恐らくここは学園の医療棟内のどこかの筈だ。それに、俺1人だけの部屋の個室になっていて傷がよっぽど酷かったのか色んな人が出入りした匂いがまだ残っている。
あれからどれだけの時間が経ったのか定かではないのでまずは時間を調べたいところだが、生憎お見舞いには誰1人として来ていなさそうだ。
たっく……少しは見舞いに何か持ってくるとかしてほしいものだ。
あの試合は誰が……
その瞬間、あの戦闘時のことを思い出す。
はぁ~負けたのか……
寝ているのに肩を落とし、毛布を深く鼻を隠すくらいまで引き寄せる。
これでこの学園に入るまでで何人の人にに負けたんだろうか、この学園来るまでは俺が1番帝国内で強いと思っていたのになぁ~
学園の入学試験早々挫かれるし、入ってからは同級生にもボコボコにされたし弱くなったって錯覚してしまっているかもな。
そんなことを考えていると部屋の扉を叩く音が部屋に響く。木製の扉なので木の優しい音色が部屋を反射して俺の耳まで辿り着く。
「はーい。どうぞー」
扉向こうにしっかりと聞こえるよういつもより少し大きめに返事する。寝ているので余計声出にくいからあっちにしたらちょうどいいに違いない。
返事と同時にベッドの側面に付いている魔法陣に学生証をかざして扉を開ける。なぜ説明もなしにここまで出来るかというと……目の前の壁に至極丁寧に解説図がイラスト付きで乗のっているからだ。
俺の認証を終えると今度は扉の前にいる誰かが扉にある魔法陣に学生証をかざして初めてこの部屋に入ることが出来る。
音なく扉は開きエルが恐る恐る部屋に入って来る。
「怪我の方は大丈夫かい?バルト」
「おう!問題ないぜ」
寝ながら言うとあまり説得力がないけどあまり心配かけるのも良くないからな。
「はいこれ、よかったら食べてね」
エルが持っていたバスケットをベッドの横にあるちょっとした収納スペースの上に乗せる。バスケットいっぱいに新鮮そうな果物が入っていた。
「こんなのどこに売ってたんだ?」
「学園には大体のものが揃ってるよ。商店街みたいなところがあるから今度行ってみるのをおすすめするよ」
「ありがとうなエル……」
「気にしないであれからまだ一晩しか経ってないし」
「え?なんて」
「だからまだ一晩しか……」
「まじか……てっきり1週間くらい寝てたかと思ってたぜ」
「ここの医療棟の先生方は魔法やスキルの腕は凄いからね」
まさかまだ一晩しか経ってないとは……そりゃ見舞いなんて誰も来ないよ。
「他のみんなは?」
「時期に来ると思うよ……」
エルがそう言った時——
再び扉が数度叩かれ今回は数人が扉の向こうにいることが分かる。話し声がこっちまで聞こえるからな。
さっきと同様に学生証をかざし扉を開くことを承認する。すると、扉が開き向こうから意外な自分物が現れる。
「ガッハッハ!!どうだバルト調子の方は!!」
バカでかい声でトレインは入って来るが俺はトレインでは無くもう1人の方に視線が行ってしまう。
「セア・レイン……」
「やあ2人とも待ってたよ」
エルがそうにこやかに言うと、まずはトレインが話を切り出す。
「ガッハッハ!!いやぁー怪我は大丈夫か?見た感じ大分良くなったように見えるが」
「おい……怪我をさせた本人がそれを言うかね。見た通りもうほとんど治ったぜ」
「ガッハッハ!!そうかそうかそれは何より!!」
俺はうるさい声をあまり聞きたくないので早めに会話を切り上げる。
後ろにいたセア・レインが俺の目の前まで近寄ってくる。
「今回のことは、申し訳ないと思っておりますわ。あなた達がここまで対抗出来るとは思ってもいませんでしたの。あの後、ウタゲ先生と話をして引き分けということでクラスの皆納したのよ」
「ああ、俺もそれで構わねぇぜ」
セア・レインは少し驚いた表情をしたがすぐに切り替え話を続ける。
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「今回はこれ以上やっても無意味だからな諦めるさ……だが!次やるときは俺の圧勝で終わらせてやるそれまでに取っておくつもりだぜ!」
視界に2人を入れて目力だけで訴える。
「ガッハッハ!!俺も楽しみにしておこう!!これまで以上に鍛えがいがある!」
そう言って先にトレインは出て行ってしまう。
「そして、もう1つ話しておきたいことがありますわ」
「なんだ?」「それは僕もまだ聞いてないから聞かせてもらおう」
「これから始まるルィン魔導学園最大のイベント魔導修練祭についてですわ」
セアは人差し指をこちらに突き出しベッドに片足を乗せなぜかドヤ顔だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「こいつは……」
目の前にはどうやって殺されたのか分からないくらいにぐちゃぐちゃになった死体がある。
聖王国領土内の川の上流から流されてきた水死体が発見されたのだ。
勿論盗賊や野盗などの線を疑ってはみたがぶっちゃけそいつらはわざわざここまでしない。ただ殺せばいいので一々死体で遊ぶことはないのだ。
だが、この水死体には人間の急所、頭部、こめかみ、額、目、乳様突起、顎、首、頚椎、心臓、肺、肝臓、腎臓、膀胱などその箇所ごと1つずつ順番に壊死しているのが聖王国内で行われた検死で発覚した。
魔法かスキルか……もしくは、アイテムや呪武器や呪防具など様々な要因が考えられる。
だが、もしこれが人間の手によるものだったら……そう考えるだけで背筋から冷や汗が滴り鳥肌が立つ。
第一発見者である私は運が良いのか悪いのか聖王国の領土内の偵察部隊に所属していたのであまり大きな騒ぎにはならなかった。国も他国の仕業かとも考えてはいたらしいがあまりにもやり方が雑すぎるのだ。
聖王国としては、第三者(盗賊や野盗ではない)によるものとして村や街にいる冒険者や聖王国騎士などには道中の警戒をより一層強くしろと通達された。
そして今、私たち偵察部隊は聖王国領土内をまるで旅人のように放浪し監視しているのだ。
「センパ~イお腹空きました~」
「あのなぁ~お前さんもうちょっと我慢できんのかね。警戒心が足りんぞ」
「え~どうせこんなの盗賊か野盗の仕業ですよきっと。盗賊や野盗以外の第三者だなんて大袈裟すぎなんですよ」
「はぁ……ほら、これで最後だからな」
「わーい!!ありがとうセンパ~イ」
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