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第7話
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「そこまで!勝者はタロウ!」
「すごいです!」
実況者の言葉にルミンさんが声をあげる。少し照れてしまうな。
その後、気絶した男は治療室に運ばれていき、俺はギルドの中に戻った。
「タロウさん、すごかったですね!」
ギルドの受付に戻った俺にルミンさんがカウンターの中から声をかけてくる。
「そんなにすごかったですか?」
「当然です!魔術も使っていないのに素手で剣を斬るなんて、普通はできません。タロウさんは元の世界で余程強かったんですね!」
「そうですね。異名も強そうでしたし」
「何ですか?」
「超人です。人の限界を超えているからだそうです」
正直、照れ臭い。俺の異名は超人。力、速さ、技術、全てが人の限界を超えているからだ。ちなみに俺の異名は何回も変化した。
その中で俺の気に入っている異名がある。
それは『戦闘中毒者』だ。闘いが好きで好きで、俺は試合を毎日していた。そんな事を繰り返しているうちに世間は俺を戦闘中毒者だと言い始めた。悪口ではなく、冗談まじりの言い方だったが、それが異名になってしまった。でも俺は戦闘中毒者という異名が好きだったな。
「超人のタロウさんですね!」
「ま、まあ、そうなりますね。恥ずかしいので、その呼び方をしないでくれると嬉しいです」
「ふふ、分かりました」
ああ、ルミンさんが微笑んでくれるわけだけど、やっぱり俺はルミンさんを好きになったようだ。彼女の笑顔をもっと見たい。
「さて、それじゃあダンジョンに行ってきます。早くレベルを上げたいので」
「分かりました。タロウさんの強さなら大丈夫だと思いますけど、気をつけてくださいね」
「はい!」
それから俺は、またダンジョンに入った。目指す階層は80階層。現在の最高到達階層だ。まずは一気に俺が行けた40階層まで来た。
「さて、ここからが俺の知らない階層だな」
俺はそう呟いて進み始める。しかし遭遇するモンスターは、そこまで強くなく、苦戦する事なく60階層に着いた。
それでも経験値は多く入っていたようで、レベルは40になった。
モンスターが強ければ強いほど経験値が多く入手できるという理屈で行けば、20階層を進むだけでレベルが15も上がったのだから、それなりに強いモンスターだったのだろう。
もしかしたら、この世界の住人はダンジョン攻略にそこまで真剣じゃないのかもしれないな。この程度のモンスターなら、今までの歴史で80階層以上に進めていたはずだ。
良い経験値稼ぎになると思うんだけどな。
そんな事を考えながら進んでいき、ついに俺は80階層に到着した。レベルは60になった。
「広いな…」
80階層の通路は今までとは違い、広くなっていた。そして遭遇したモンスターも大きくなっていた。
今、前方から向かってくるモンスターは身長が2メートルはある、人型のモンスターだ。
「楽しめそうだな」
俺はモンスターに向かってそう言って笑う。するとモンスターは俺に向かって走ってくると、頭を狙って殴りかかってくる。俺はその拳を右に避けながらモンスターの左脇腹を殴る。モンスターは自分の左脇腹を押さえながら、俺に唸る。
全力で殴ったわけではないけど、少しは効いたみたいだな。今までの階層に出現していたモンスターとは格が違う。
その後、俺は攻撃せずにモンスターの攻撃を避ける事に徹底した。モンスターの攻撃が強力になったわけではない。モンスターの攻撃と移動速度を測っていたのだ。
どうやら大丈夫なようだな。今の俺でも避け続けることは可能のようだ。
2分ほど避け続けて、俺はその答えに至った。
終わらせるか。
そう考えて俺はモンスターとの距離を一気に詰めると、顔を殴ろうとした。俺の攻撃速度をモンスターが見切れる事もなく、モンスターの顔に俺の拳が直撃しそうになった。その時だ。モンスターが大声で吠えたのだ。俺は驚いて距離をとる。しかし吠えたモンスターは何も変わっておらず、状況は変わらない。その代わり、モンスターは立ち止まり、俺を警戒している。
何なんだ?一体。
俺が不思議に思っていると、モンスターが来た方向から、3匹の同じモンスターが走ってくる。どうやら仲間を呼んだようだ。
4匹に増えたか。
集まってきた3匹のモンスターが到着し、俺の前には4匹のモンスターが構えている。しかもニヤニヤと笑っている。まあ恐怖の波動という、恐怖を感じる技がモンスターに通じるんだから、感情があっても不思議ではないか。
とりあえず、ニヤニヤと笑っているのがウザいので、連続で跳躍して2匹のモンスターの顔を殴り、その一撃で殺した。
それを見て、残りの2匹は笑う事を止める。それから2匹のモンスターを一撃で殺すと、命石を取って先に進んだ。
その後も遭遇するモンスターを殺していったけど、苦戦する事はなかった。ただ、仲間を呼ぶという習性が、この階層から多い。
例えば、何匹かに遭遇し、残りの1匹を殺そうとすると仲間を呼ぶので、モンスターが増える。
そういう事が続いた。
「でも、おかしいな。この程度の強さならゼルスが苦戦するとは思えないし。…やっぱり、ダンジョン攻略に興味がないのかな」
ゼルスは80階層からダンジョン攻略を進めていない。その理由が俺には全くわからなかった。
まあ、他人の考えが分かる能力なんてないけどな。
その後も俺は進行を続け、90階層に到着した。80階層からは経験値が多く入手できるようで、レベルは70になった。
「なんだ?この状況…」
90階層でモンスターを狩る事、数時間。
周囲をモンスターに囲まれながらレベル80になった俺は呟く。敵が強いからではない。90階層に来てからずっと同じモンスターなのだ。今までなら、1つの階層で2~3種類のモンスターが現れた。しかし、90階層では同じモンスターばかり。武器は剣や槍など多様だが、パワー、スピード、テクニックなど、全てが同じ。まるで機械のようだ。
ちなみにモンスターの姿は鬼のようだった。巨躯で頭から1~3本の角を生やしている。
「同じモンスターばかりだと飽きてくるな。強さも大した事はないし」
そう言いながら俺はモンスターの顔を殴っていく。俺の攻撃速度に反応できないモンスター達は殴られた衝撃で顔面が破裂して死んでいく。レベルが80に上がった事で、俺の攻撃力は元いた世界の時と比べて、かなり強くなった。同時に防御力や速度も向上している。
そうして攻撃を続けていくと、周囲を囲んでいたモンスター達は全て命石と素材を遺して消えた。
よし、袋も一杯になったし、そろそろ帰るかな。
そう考えて俺は地上に戻る事にした。
「すごいです!」
実況者の言葉にルミンさんが声をあげる。少し照れてしまうな。
その後、気絶した男は治療室に運ばれていき、俺はギルドの中に戻った。
「タロウさん、すごかったですね!」
ギルドの受付に戻った俺にルミンさんがカウンターの中から声をかけてくる。
「そんなにすごかったですか?」
「当然です!魔術も使っていないのに素手で剣を斬るなんて、普通はできません。タロウさんは元の世界で余程強かったんですね!」
「そうですね。異名も強そうでしたし」
「何ですか?」
「超人です。人の限界を超えているからだそうです」
正直、照れ臭い。俺の異名は超人。力、速さ、技術、全てが人の限界を超えているからだ。ちなみに俺の異名は何回も変化した。
その中で俺の気に入っている異名がある。
それは『戦闘中毒者』だ。闘いが好きで好きで、俺は試合を毎日していた。そんな事を繰り返しているうちに世間は俺を戦闘中毒者だと言い始めた。悪口ではなく、冗談まじりの言い方だったが、それが異名になってしまった。でも俺は戦闘中毒者という異名が好きだったな。
「超人のタロウさんですね!」
「ま、まあ、そうなりますね。恥ずかしいので、その呼び方をしないでくれると嬉しいです」
「ふふ、分かりました」
ああ、ルミンさんが微笑んでくれるわけだけど、やっぱり俺はルミンさんを好きになったようだ。彼女の笑顔をもっと見たい。
「さて、それじゃあダンジョンに行ってきます。早くレベルを上げたいので」
「分かりました。タロウさんの強さなら大丈夫だと思いますけど、気をつけてくださいね」
「はい!」
それから俺は、またダンジョンに入った。目指す階層は80階層。現在の最高到達階層だ。まずは一気に俺が行けた40階層まで来た。
「さて、ここからが俺の知らない階層だな」
俺はそう呟いて進み始める。しかし遭遇するモンスターは、そこまで強くなく、苦戦する事なく60階層に着いた。
それでも経験値は多く入っていたようで、レベルは40になった。
モンスターが強ければ強いほど経験値が多く入手できるという理屈で行けば、20階層を進むだけでレベルが15も上がったのだから、それなりに強いモンスターだったのだろう。
もしかしたら、この世界の住人はダンジョン攻略にそこまで真剣じゃないのかもしれないな。この程度のモンスターなら、今までの歴史で80階層以上に進めていたはずだ。
良い経験値稼ぎになると思うんだけどな。
そんな事を考えながら進んでいき、ついに俺は80階層に到着した。レベルは60になった。
「広いな…」
80階層の通路は今までとは違い、広くなっていた。そして遭遇したモンスターも大きくなっていた。
今、前方から向かってくるモンスターは身長が2メートルはある、人型のモンスターだ。
「楽しめそうだな」
俺はモンスターに向かってそう言って笑う。するとモンスターは俺に向かって走ってくると、頭を狙って殴りかかってくる。俺はその拳を右に避けながらモンスターの左脇腹を殴る。モンスターは自分の左脇腹を押さえながら、俺に唸る。
全力で殴ったわけではないけど、少しは効いたみたいだな。今までの階層に出現していたモンスターとは格が違う。
その後、俺は攻撃せずにモンスターの攻撃を避ける事に徹底した。モンスターの攻撃が強力になったわけではない。モンスターの攻撃と移動速度を測っていたのだ。
どうやら大丈夫なようだな。今の俺でも避け続けることは可能のようだ。
2分ほど避け続けて、俺はその答えに至った。
終わらせるか。
そう考えて俺はモンスターとの距離を一気に詰めると、顔を殴ろうとした。俺の攻撃速度をモンスターが見切れる事もなく、モンスターの顔に俺の拳が直撃しそうになった。その時だ。モンスターが大声で吠えたのだ。俺は驚いて距離をとる。しかし吠えたモンスターは何も変わっておらず、状況は変わらない。その代わり、モンスターは立ち止まり、俺を警戒している。
何なんだ?一体。
俺が不思議に思っていると、モンスターが来た方向から、3匹の同じモンスターが走ってくる。どうやら仲間を呼んだようだ。
4匹に増えたか。
集まってきた3匹のモンスターが到着し、俺の前には4匹のモンスターが構えている。しかもニヤニヤと笑っている。まあ恐怖の波動という、恐怖を感じる技がモンスターに通じるんだから、感情があっても不思議ではないか。
とりあえず、ニヤニヤと笑っているのがウザいので、連続で跳躍して2匹のモンスターの顔を殴り、その一撃で殺した。
それを見て、残りの2匹は笑う事を止める。それから2匹のモンスターを一撃で殺すと、命石を取って先に進んだ。
その後も遭遇するモンスターを殺していったけど、苦戦する事はなかった。ただ、仲間を呼ぶという習性が、この階層から多い。
例えば、何匹かに遭遇し、残りの1匹を殺そうとすると仲間を呼ぶので、モンスターが増える。
そういう事が続いた。
「でも、おかしいな。この程度の強さならゼルスが苦戦するとは思えないし。…やっぱり、ダンジョン攻略に興味がないのかな」
ゼルスは80階層からダンジョン攻略を進めていない。その理由が俺には全くわからなかった。
まあ、他人の考えが分かる能力なんてないけどな。
その後も俺は進行を続け、90階層に到着した。80階層からは経験値が多く入手できるようで、レベルは70になった。
「なんだ?この状況…」
90階層でモンスターを狩る事、数時間。
周囲をモンスターに囲まれながらレベル80になった俺は呟く。敵が強いからではない。90階層に来てからずっと同じモンスターなのだ。今までなら、1つの階層で2~3種類のモンスターが現れた。しかし、90階層では同じモンスターばかり。武器は剣や槍など多様だが、パワー、スピード、テクニックなど、全てが同じ。まるで機械のようだ。
ちなみにモンスターの姿は鬼のようだった。巨躯で頭から1~3本の角を生やしている。
「同じモンスターばかりだと飽きてくるな。強さも大した事はないし」
そう言いながら俺はモンスターの顔を殴っていく。俺の攻撃速度に反応できないモンスター達は殴られた衝撃で顔面が破裂して死んでいく。レベルが80に上がった事で、俺の攻撃力は元いた世界の時と比べて、かなり強くなった。同時に防御力や速度も向上している。
そうして攻撃を続けていくと、周囲を囲んでいたモンスター達は全て命石と素材を遺して消えた。
よし、袋も一杯になったし、そろそろ帰るかな。
そう考えて俺は地上に戻る事にした。
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