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6 事件を見届けし者
20・失踪した妹
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この日ほど軽装を選んだ自分を褒めたいと思った日はなかっただろう。
片織はワイシャツにネクタイ、スラックスという出で立ちで、所持品はスマホと鍵のみ。手土産のケーキを持った状態で雛本家に向かっていた。
歩きながら妹が添付してきた情報に軽く目を通す。
気になっているのは、あの要人の子のことらしい。
ネットで見つけた記事を頼りに探していたが、本人にすら子がいた事実はないと言われてしまった。それだけならまだしも、事件後婚姻の事実はなかったことになっている。
確かに本人から妻の話しを聞いたのにかかわらず。
彼のファンである友人に確かめたが、そんな事実はないという。
まるでキツネにつままれたようだと綴られていた。
残念ながら片織は政界には詳しくない。
仮に妹の言うことが本当だったとして、今ネットで調べたとしてもそれに関する記事は見つからないのだろう。
さらに妹の憶測では、雛本家にはハッカーがいるに違いない。今回の件に何かしら関わっているはずだ。などとも書かれている。
そんな危険なことは止めろとしか言いようがない。
雛本家のあると思われる付近に近づいたころ、嫌な臭いが鼻先をかすめた。手元ばかり見ていた片織はハッとして顔を上げる。
すると、これから行こうとしているあたりで黒煙が立ちのぼっているのが見えた。
「え?」
思考が停止する。
事件でも起こしそうな勢いで雛本家に向かった妹。
立ちのぼる黒煙。
平日で人気のない住宅街。
「火事か?!」
片織は慌てて走り出す。
無人の住宅街で火事が起こっているのだ。一刻も早く場所を確認し、通報すべきだと思った。
転がるように目的の場所へ向かうと、もう手遅れのように感じた。
スマホを取りだし119番へかけようとし、庭に何かが転がっているのが見える。片織は慌ててそこに近づいた。
「これは妹の?」
不自然に家から離れた距離に、投げられたと思われるキャリーケース。片織はそれを掴むと奥に目が行く。裏は林のようだ。引火すれば大変なことになるだろう。
片織はキャリーケースを担ぎ上げると再び門から出て電話をかける。
それから消防車が来て火が消し止められるまで、片織はぼんやりと雛本家を見つめていた。
消防車を待っている間、妹にかけてみたが繋がるどころかキャリーケースの中から着信音がしたのである。まさかと思って確認するが、中は書類などが詰まっておりに妹が詰まっているということはなかった。
妹は一体何処へ行ってしまったのだろうか?
火事に巻き込まれたとも思ったが、中から出てきた遺体は二体。消防署の人の話しでは調べはまだだがこの家の夫婦だろうと言っていた。後に親戚などに確認を取るらしい。
通報当初は放火の疑いもあったが、出火場所が屋内だったためその線は消える。片織は通報当時のことで事情聴取を受けたが、直ぐに解放されたのだった。しかし妹が関わっているかもしれないと思うと、キャリーケースを拾ったことについては黙っている他ない。
だがここで、一つ気にあることが。
「あの夫婦にお子さんはいませんでしたか?」
と質問をすると、
「その事実はないようですな。親戚にも確認済です」
と担当の人に言われてしまったのである。
妹の言っていたことは、一体何が事実で何が嘘なのだろうか?
それとも妹の言うように雛本家が関り、何かが隠蔽されているとでもいうのだろうか?
片織はダメになってしまったケーキをゴミ箱へ捨てるとキャリーケースを引き近くにホテルを取った。妻にはしばらく帰れないと告げて。
「何から調べたらいいのだろう」
片織は頭を悩ませていた。
キャリーケースの中身を目の前にして。
「きっとこの中に糸口はあるはずだ」
片織の戦いが今、始まろうとしていた。
片織はワイシャツにネクタイ、スラックスという出で立ちで、所持品はスマホと鍵のみ。手土産のケーキを持った状態で雛本家に向かっていた。
歩きながら妹が添付してきた情報に軽く目を通す。
気になっているのは、あの要人の子のことらしい。
ネットで見つけた記事を頼りに探していたが、本人にすら子がいた事実はないと言われてしまった。それだけならまだしも、事件後婚姻の事実はなかったことになっている。
確かに本人から妻の話しを聞いたのにかかわらず。
彼のファンである友人に確かめたが、そんな事実はないという。
まるでキツネにつままれたようだと綴られていた。
残念ながら片織は政界には詳しくない。
仮に妹の言うことが本当だったとして、今ネットで調べたとしてもそれに関する記事は見つからないのだろう。
さらに妹の憶測では、雛本家にはハッカーがいるに違いない。今回の件に何かしら関わっているはずだ。などとも書かれている。
そんな危険なことは止めろとしか言いようがない。
雛本家のあると思われる付近に近づいたころ、嫌な臭いが鼻先をかすめた。手元ばかり見ていた片織はハッとして顔を上げる。
すると、これから行こうとしているあたりで黒煙が立ちのぼっているのが見えた。
「え?」
思考が停止する。
事件でも起こしそうな勢いで雛本家に向かった妹。
立ちのぼる黒煙。
平日で人気のない住宅街。
「火事か?!」
片織は慌てて走り出す。
無人の住宅街で火事が起こっているのだ。一刻も早く場所を確認し、通報すべきだと思った。
転がるように目的の場所へ向かうと、もう手遅れのように感じた。
スマホを取りだし119番へかけようとし、庭に何かが転がっているのが見える。片織は慌ててそこに近づいた。
「これは妹の?」
不自然に家から離れた距離に、投げられたと思われるキャリーケース。片織はそれを掴むと奥に目が行く。裏は林のようだ。引火すれば大変なことになるだろう。
片織はキャリーケースを担ぎ上げると再び門から出て電話をかける。
それから消防車が来て火が消し止められるまで、片織はぼんやりと雛本家を見つめていた。
消防車を待っている間、妹にかけてみたが繋がるどころかキャリーケースの中から着信音がしたのである。まさかと思って確認するが、中は書類などが詰まっておりに妹が詰まっているということはなかった。
妹は一体何処へ行ってしまったのだろうか?
火事に巻き込まれたとも思ったが、中から出てきた遺体は二体。消防署の人の話しでは調べはまだだがこの家の夫婦だろうと言っていた。後に親戚などに確認を取るらしい。
通報当初は放火の疑いもあったが、出火場所が屋内だったためその線は消える。片織は通報当時のことで事情聴取を受けたが、直ぐに解放されたのだった。しかし妹が関わっているかもしれないと思うと、キャリーケースを拾ったことについては黙っている他ない。
だがここで、一つ気にあることが。
「あの夫婦にお子さんはいませんでしたか?」
と質問をすると、
「その事実はないようですな。親戚にも確認済です」
と担当の人に言われてしまったのである。
妹の言っていたことは、一体何が事実で何が嘘なのだろうか?
それとも妹の言うように雛本家が関り、何かが隠蔽されているとでもいうのだろうか?
片織はダメになってしまったケーキをゴミ箱へ捨てるとキャリーケースを引き近くにホテルを取った。妻にはしばらく帰れないと告げて。
「何から調べたらいいのだろう」
片織は頭を悩ませていた。
キャリーケースの中身を目の前にして。
「きっとこの中に糸口はあるはずだ」
片織の戦いが今、始まろうとしていた。
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