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5 未来を託された少女
17・極秘事項と任務
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「わたしは別の時代からここへ来た時、全ての記憶を失っていたの。でも今日、あることをきっかけにして思い出した」
記憶を失ったのは無茶な『時渡』の代償だと母は言う。
そこまでした理由を彼女はこう話す。
「わたしの使命は、あなたに未来を託すことなの」
と。
母に信頼されているのは嬉しい。
だが兄や弟ではなく自分にと言うことは”自分にしかできないこと”を託されるのだと思った。
ここまでの話しで分かっていることは『始祖の直系』にしかできないことがあるということ。それを自分に成せと言っているのだと予想はつく。
母は何故、佳奈が始祖の直系だと感じているのか?
何か確信を持つことができる要素があるのだろう。それは母と佳奈の容姿が”似ている”という単純な話ではないはずだ。もちろん、それも判断する要素の一つなのかもしれないが。
そしてそれは、”いずれ解る”ことであり、今教えてもらうことが出来ないのだと悟る。今は母を信じるしかないのだ。
──始祖の直系だとするなら、やはり母とは姉妹なのかな?
『時越え』をすることは分かっていても、どの時代に飛ぶのか分かっていないはず。もし、同じ時代にばかり飛ぶなら、こんなに年齢が離れているわけないものね。
始祖となる人が不老不死と言うなら別だけれど。
「どうして”真ん中”なのかを先に話すわね」
母は、自分がついた嘘に対しての真実を佳奈に教えてくれた。
『時越えの子』は力が強く、能力が高い。
それでも始祖の直系ほどではないが。
時越えの子は、その能力を扱えるようになるまで危険が伴うらしい。
『時渡』の能力は、一緒に飛ぶ人数が増えれば増えるほど精度が上がる能力。ただし、心の安定に左右され信頼関係が影響を与える。
そのため、現実的に考えると一族全員で同じ場所に飛ぶことは不可能。
なので家族単位で一族を。一族の能力を受け継ぎ守って来たのである。
「真ん中と言うのは、天秤の支柱のような位置にある。手を繋ぐことでみんなの能力が一律になり、イメージは中央に集約される」
仮に中央に『時越えの子』がいて別の場所に飛ぼうとしても、左右のイメージによって相殺されるような感じなのだという。
「真ん中は”任意ではどこへもいけないの”つまり引っ張られるような感じ。分かるかしら?」
真ん中が後ろへ行こうとしても左右から引きずられ、前に進んでいく。
そんなイメージを思い浮かべ、佳奈は頷いた。
力が等分されるとするなら、三人で飛ぼうとした時は1:2ということになる。
「逆を返せば、端にいると別のところへ飛べるということ」
だがそれが出来るのは『始祖直系』だけだというのだ。
これで母が佳奈に何をさせようとしているのか理解が出来た。
「恐らく明日が運命の日。明日、あなたにはあの二人を連れて家の裏の林に行って欲しいの」
時が来れば自ずと分かるという。
「逃げてと言ったら、あの二人を連れて林へ引き返して」
そこで母からある場所の地図を渡された。
「これは?」
「あなたが向かう先よ」
それを肌身離さず持っていて欲しいと言われ、佳奈は頷く。
「二人には四年後に飛ぶように言って欲しいの。あなたが飛ぶのは……」
その時には上手く言って、佳奈が必ず端になるようにすることと強く念押しされる。しかし行き先を聞き、佳奈は躊躇った。
「それって……」
母は眉を寄せる佳奈に対し、一度頷くとゆっくりと瞬きをする。
佳奈の両手を握ると、
「わたしを信じて」
と母は言う。
「わかった」
佳奈は不安に感じながらも、しっかりと頷く。
「ねえ。お母さん」
目に涙を浮かべながら、佳奈は問う。
「もう、お母さんには会えないの? お父さんはどうなるの?」
母の話しからは父母はこの時代に留まり、自分たち兄弟だけが時を超え、命を繋ぐのだということが予測できる。
「それは……」
母は口ごもった。
「お兄ちゃんや優人には?」
「会えるわ。それは約束する」
ハラハラと涙を零す佳奈。佳奈はぎゅっと母に抱きしめられたのだった。
記憶を失ったのは無茶な『時渡』の代償だと母は言う。
そこまでした理由を彼女はこう話す。
「わたしの使命は、あなたに未来を託すことなの」
と。
母に信頼されているのは嬉しい。
だが兄や弟ではなく自分にと言うことは”自分にしかできないこと”を託されるのだと思った。
ここまでの話しで分かっていることは『始祖の直系』にしかできないことがあるということ。それを自分に成せと言っているのだと予想はつく。
母は何故、佳奈が始祖の直系だと感じているのか?
何か確信を持つことができる要素があるのだろう。それは母と佳奈の容姿が”似ている”という単純な話ではないはずだ。もちろん、それも判断する要素の一つなのかもしれないが。
そしてそれは、”いずれ解る”ことであり、今教えてもらうことが出来ないのだと悟る。今は母を信じるしかないのだ。
──始祖の直系だとするなら、やはり母とは姉妹なのかな?
『時越え』をすることは分かっていても、どの時代に飛ぶのか分かっていないはず。もし、同じ時代にばかり飛ぶなら、こんなに年齢が離れているわけないものね。
始祖となる人が不老不死と言うなら別だけれど。
「どうして”真ん中”なのかを先に話すわね」
母は、自分がついた嘘に対しての真実を佳奈に教えてくれた。
『時越えの子』は力が強く、能力が高い。
それでも始祖の直系ほどではないが。
時越えの子は、その能力を扱えるようになるまで危険が伴うらしい。
『時渡』の能力は、一緒に飛ぶ人数が増えれば増えるほど精度が上がる能力。ただし、心の安定に左右され信頼関係が影響を与える。
そのため、現実的に考えると一族全員で同じ場所に飛ぶことは不可能。
なので家族単位で一族を。一族の能力を受け継ぎ守って来たのである。
「真ん中と言うのは、天秤の支柱のような位置にある。手を繋ぐことでみんなの能力が一律になり、イメージは中央に集約される」
仮に中央に『時越えの子』がいて別の場所に飛ぼうとしても、左右のイメージによって相殺されるような感じなのだという。
「真ん中は”任意ではどこへもいけないの”つまり引っ張られるような感じ。分かるかしら?」
真ん中が後ろへ行こうとしても左右から引きずられ、前に進んでいく。
そんなイメージを思い浮かべ、佳奈は頷いた。
力が等分されるとするなら、三人で飛ぼうとした時は1:2ということになる。
「逆を返せば、端にいると別のところへ飛べるということ」
だがそれが出来るのは『始祖直系』だけだというのだ。
これで母が佳奈に何をさせようとしているのか理解が出来た。
「恐らく明日が運命の日。明日、あなたにはあの二人を連れて家の裏の林に行って欲しいの」
時が来れば自ずと分かるという。
「逃げてと言ったら、あの二人を連れて林へ引き返して」
そこで母からある場所の地図を渡された。
「これは?」
「あなたが向かう先よ」
それを肌身離さず持っていて欲しいと言われ、佳奈は頷く。
「二人には四年後に飛ぶように言って欲しいの。あなたが飛ぶのは……」
その時には上手く言って、佳奈が必ず端になるようにすることと強く念押しされる。しかし行き先を聞き、佳奈は躊躇った。
「それって……」
母は眉を寄せる佳奈に対し、一度頷くとゆっくりと瞬きをする。
佳奈の両手を握ると、
「わたしを信じて」
と母は言う。
「わかった」
佳奈は不安に感じながらも、しっかりと頷く。
「ねえ。お母さん」
目に涙を浮かべながら、佳奈は問う。
「もう、お母さんには会えないの? お父さんはどうなるの?」
母の話しからは父母はこの時代に留まり、自分たち兄弟だけが時を超え、命を繋ぐのだということが予測できる。
「それは……」
母は口ごもった。
「お兄ちゃんや優人には?」
「会えるわ。それは約束する」
ハラハラと涙を零す佳奈。佳奈はぎゅっと母に抱きしめられたのだった。
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