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3 新聞社の女
11・想定外の事実
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雛本和史の自宅を突き止めるのは容易だった。
だが結城は、子供たちには近づけないでいる。
雛本一族について調べ始めてから半年は経っていたいたように思う。
彼の家は裏が林になっており、住宅街にあった。
建て売り住宅とは違い、かなり広めではあるがセレブとまではいかない。五人家族だからそれなりの広さなのだろうと感じる。
妻も働きに出ているようで、子供たちだけになる日もあるようだ。
一番上の子は高校生。
制服を着ていたから、そうだと思う。
二番目の子も同じ学校の制服を着ていたので恐らく同じ高校に通っているのだろう。その後、制服から三人の通っている学校を突き止めることは出来た。
どうやらこの辺では有名なエスカレーター式の学園の高等部に通っているようだ。末の子はそこの中等部。
親から指示されているのか、三人は行きも帰りも一緒。
隙がないのである。
バラバラなら話しかける機会もあるというもの。
しかし三人一緒のところに声をかけるとなると、こちらが覚えられてしまうというリスクがある。
なにせ、あの小児科医の子供なのだ。賢くないわけがない。
子供に話を聞くのは無理そうだなと次なる手を考えていた時だった。
チャンスが来たのは。
自宅付近で張っていたところ、妻が自宅を出るところが見えた。
子供たちは既に学校へ行っている。いつもならば、彼女が子供たちを送り届け、そのまま勤務するというスタイル。
それがいつもと違うというのであれば、なにかあったのであろう。
彼女は洒落た格好をして駅の方向へ向かうようだ。
結城はサッと物陰へ隠れ、彼女が通り過ぎるのを待った。
その後駅へ向かう彼女の後をつけると、彼女の乗る列車に乗りこんだ。
結城は窓際で外を見るフリをし、彼女の動向を観察する。
和史とはどれくらい年が離れているのだろうか? 彼女はだいぶ若く見える。
真ん中の子が彼女にそっくりだったことを思い出す。
一番上の子は和史にそっくりだった。
紛れもなく親子であり、一族の血を色濃く引いているような気がした。
目的地に着くと彼女は迷いなく列車を降りる。
真っすぐ改札を目指すところをみると、目的地が決まっており途中で誰かと待ち合わせをしているようには見えなかった。
そんな彼女を追いながら結城は思う。たしか雛本一族は、引き取った孤児と自分の一族の者を婚姻させているということを。
となると彼女も孤児なのだろうか?
改札を抜けた時、結城は事前調査をしていなかったことを後悔した。
本日ここで、要人の街頭演説が行われるようだ。それに改札を出てすぐの登りで気づく。
要人とは、雛本医院の近くで会ったあの汚職疑惑のある議員のことだ。
「この人ゴミ。不味いわね、見失いそう」
彼女はこの街頭演説を見に来たのではない。
誰かと待ち合わせをしているに違いないと思うのは、彼女が登りを見て一瞬驚いた顔をしたからである。
恐らく想定外だったのだろう。
ということは、今日ここに相手を呼び出したのは彼女の方と考えるのが妥当だ。
なんとか見失わずに彼女を追いかけ、相手を確かめ驚愕する。
相手に気づかれないようにサッと人ごみに身を隠した。
──相手はあの小児科医?
何故わざわざこんなところで会っているの?
二人にとって今日の街頭演説は想定外だったようだ。
二人とも要人の方に視線を投げかけると、その場を離れていく。
その時感じた違和感。
確かにその要人は、雛本医院に通っているはず。
だが二人にとって、見知らぬ人という反応に感じたのだった。
通常知り合いがそこに居たら、少しは本人か確認するだろう。
──何かがオカシイ。
そして次の瞬間、ドンっと大きな音がしたかと思うと怒号と悲鳴があたりに響き渡り、騒然となった。
二人の方へ眼をやると、妻の様子がおかしい。
結城は踏み込みたいのを我慢し、ゆっくりと後ずさる。ここで後をつけていたのがバレたら一巻の終りだ。
──確かにあの要人の妻は雛本一族の者。
そして彼は一族に関係するはずではないのか?
誰が嘘をついている?
わからない!
結城は混乱しつつも駅に急いだのだった。
だが結城は、子供たちには近づけないでいる。
雛本一族について調べ始めてから半年は経っていたいたように思う。
彼の家は裏が林になっており、住宅街にあった。
建て売り住宅とは違い、かなり広めではあるがセレブとまではいかない。五人家族だからそれなりの広さなのだろうと感じる。
妻も働きに出ているようで、子供たちだけになる日もあるようだ。
一番上の子は高校生。
制服を着ていたから、そうだと思う。
二番目の子も同じ学校の制服を着ていたので恐らく同じ高校に通っているのだろう。その後、制服から三人の通っている学校を突き止めることは出来た。
どうやらこの辺では有名なエスカレーター式の学園の高等部に通っているようだ。末の子はそこの中等部。
親から指示されているのか、三人は行きも帰りも一緒。
隙がないのである。
バラバラなら話しかける機会もあるというもの。
しかし三人一緒のところに声をかけるとなると、こちらが覚えられてしまうというリスクがある。
なにせ、あの小児科医の子供なのだ。賢くないわけがない。
子供に話を聞くのは無理そうだなと次なる手を考えていた時だった。
チャンスが来たのは。
自宅付近で張っていたところ、妻が自宅を出るところが見えた。
子供たちは既に学校へ行っている。いつもならば、彼女が子供たちを送り届け、そのまま勤務するというスタイル。
それがいつもと違うというのであれば、なにかあったのであろう。
彼女は洒落た格好をして駅の方向へ向かうようだ。
結城はサッと物陰へ隠れ、彼女が通り過ぎるのを待った。
その後駅へ向かう彼女の後をつけると、彼女の乗る列車に乗りこんだ。
結城は窓際で外を見るフリをし、彼女の動向を観察する。
和史とはどれくらい年が離れているのだろうか? 彼女はだいぶ若く見える。
真ん中の子が彼女にそっくりだったことを思い出す。
一番上の子は和史にそっくりだった。
紛れもなく親子であり、一族の血を色濃く引いているような気がした。
目的地に着くと彼女は迷いなく列車を降りる。
真っすぐ改札を目指すところをみると、目的地が決まっており途中で誰かと待ち合わせをしているようには見えなかった。
そんな彼女を追いながら結城は思う。たしか雛本一族は、引き取った孤児と自分の一族の者を婚姻させているということを。
となると彼女も孤児なのだろうか?
改札を抜けた時、結城は事前調査をしていなかったことを後悔した。
本日ここで、要人の街頭演説が行われるようだ。それに改札を出てすぐの登りで気づく。
要人とは、雛本医院の近くで会ったあの汚職疑惑のある議員のことだ。
「この人ゴミ。不味いわね、見失いそう」
彼女はこの街頭演説を見に来たのではない。
誰かと待ち合わせをしているに違いないと思うのは、彼女が登りを見て一瞬驚いた顔をしたからである。
恐らく想定外だったのだろう。
ということは、今日ここに相手を呼び出したのは彼女の方と考えるのが妥当だ。
なんとか見失わずに彼女を追いかけ、相手を確かめ驚愕する。
相手に気づかれないようにサッと人ごみに身を隠した。
──相手はあの小児科医?
何故わざわざこんなところで会っているの?
二人にとって今日の街頭演説は想定外だったようだ。
二人とも要人の方に視線を投げかけると、その場を離れていく。
その時感じた違和感。
確かにその要人は、雛本医院に通っているはず。
だが二人にとって、見知らぬ人という反応に感じたのだった。
通常知り合いがそこに居たら、少しは本人か確認するだろう。
──何かがオカシイ。
そして次の瞬間、ドンっと大きな音がしたかと思うと怒号と悲鳴があたりに響き渡り、騒然となった。
二人の方へ眼をやると、妻の様子がおかしい。
結城は踏み込みたいのを我慢し、ゆっくりと後ずさる。ここで後をつけていたのがバレたら一巻の終りだ。
──確かにあの要人の妻は雛本一族の者。
そして彼は一族に関係するはずではないのか?
誰が嘘をついている?
わからない!
結城は混乱しつつも駅に急いだのだった。
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