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7 真実を探して

46 全てが繋がる時

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「とすると、新聞の記事と照らし合わせると父と母が倒れているのがここで、二階への階段はここ。出火場所はここなのか」
 二人は帰宅すると、いつものカウンターで和宏が書いた間取り図を見ながら新聞記事の状況と照らし合わせていた。

「気になるのは、キャリーケースなんだよね」
と優人。
「片織の持っていた?」
「そう。いつの時点でどんな風に手に入れたのか? そこが気になるところ」
 他にも……と彼は続ける。
「その双子の片割れの新聞社の女性が、本当は何を調べていたのか? そこも気になるんだ」

──本当は?

 優人の言葉に引っかかりを感じながら、帰り道のデパートで購入したチョコレートに手を伸ばす和宏。
「あの事件を調べていたわけじゃないのか?」
「初めはそうだったと思うんだ。それがきっかけかはわからないが、別のことを調べていたんじゃないかと。これは勘でしかないよ」
 この記事は両親が殺害された翌朝に記事として新聞に掲載されている。
 有名人ならばともかく、早すぎかもしれない。

 その疑問には、
「こんなに早く、有名でもない家のことを記事にするにはあの事件との関連を匂わせるしかなかったと言うのが結論だけれど」
と優人が説明を加え。

 記事として新聞に載せたのには二つのメッセージを感じたと彼は言う。
 雛本和史の子供たちに向け、両親の行く末を示し、命の危険を知らせる意味。
 そして犯人だと思しき、新聞社の女性に『知っているぞ、逃げられないぞ』と暗に伝える目的。
 だがその当時は、どちらの目的も達成されなかったと思われる。

「片織さんが離脱したのは、もう自分が居なくても大丈夫だと判断したからだと思うんだ」
 それはいなくても真相に辿り着けるということを言っているのであろうか。
「あの中に何を調べていたのか分かるものが入っていた。だから片割れが犯人と特定したのではないかと思うの」
 優人はそう言うと、間取り図をカウンターの上に置く。
「でも中身は空」
「それはキャリーケースを見せれば追い詰めることができるからじゃない? 見ただけでは中身が入っているかなんてわからないし」

 そしてああそうか、と彼は言う。
「そういうことだったんだ」
「ん?」
「あのキャリーケースは、火事の中で燃えるはずだったんだよ」
 優人の中で何が繋がったというのだろうか。

 優人の想像はこうだ。
 新聞社の女性は証拠となるキャリーケースを現場に置き遺体と共に燃やして証拠隠滅を図った。しかし片織は家に入るところを見ており、火が回る前に回収。
 新聞社に代わりに記事を持っていったのが”男”ということから、現在は女性のカッコをし自分のことが知れないように行動している。
 片織の妻は既に亡くなっているし、自分の素性を知る者はいない。

「辻褄は合っているな」
と和宏。
「ところで兄さん。お姉ちゃんの方はどう?」
 後で照会すると言っていたよね? と彼は言う。
「いや、まだ」
「前回照合したのは、図書館に行った日?」
「ああ」
 照会をしたいのは山々なのだが、何故か心が拒否をするのだ。
 何か嫌な予感がして、手が震えてしまう。

「照合機へはどうやってアクセスを?」
「一応ネットワークを使ってスマホかPCで」
 和宏の手が震えていることに気づいたのか、スマホを貸してと彼に言われる。言われるままに差し出したのだが、直ぐに彼の表情が変わった。

「優人?」
 彼が首を横に振る。
「いないのか?」
 嫌な予感が的中してしまい、目の前が真っ暗になった。
 しかし彼は何かに気づいたように、和宏に微笑みかけたのである。
「兄さん、全ての意図が繋がった」
 糸ではなく意図。

「会いに行こう、お姉ちゃんのところへ」
と手を差し出す優人。
「場所が分かったのか?」
「俺を信じるって約束したよね」
 その言葉に和宏は頷く。
「行こう、兄さん」
 和宏は優人と差し出されたその手を交互に見比べた後、その手を掴んだのだった。
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