【完結】タイムトラベル・サスペンス『君を探して』

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7 真実を探して

44 妹の能力

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 雛本本家に着くと先日案内された場所よりもさらに奥へ案内された。
 入り口より近いところに立っている平屋の旅館のような家屋は家長や長男一家が暮らしているらしい。
 奥に二つ建物が立っているが、洋館のようなところは三階建てとなっておりアンティーク調でとても美しい建物。
 こちらには主に独身者が暮らしており、もう一つの建物には子のいる家族が暮らしているという。

「さて何でも聞いて頂戴」
 てっきり曾祖父から話を聞くことになっていたと思った和宏は拍子抜けした。しかしよくよく話を聞いてみると、知識については一族で共有しているという。

 時越えの法則が知りたいと優人が述べると、
「ああ! そういう話なのね」
と彼女は両手を打った。

 雛本一族は未来へ繋ぐためにこの場所を守っている。
 そして調査については全てこの地に残しているというだ。
 それは古くからそうしていることであり、確実に未来へと届いているという。その為、未来からこちらへの実験的なことも行われたという。
 しかし直接こちらへ来るのは赤子ばかり。

 初めは一族のものも送り込まれていると思ったらしいが、ある時その中の赤子に情報媒体が備わっていた。それは未来からのメッセージでもあった。

「メモが数枚だったのだけれど、やはりどの時代でも見られるのは紙媒体の文字だと判断したんでしょうね」
 原本はしっかりと保管されていると言うが、コピーが全員に配られたらしい。まるで学校のようである。

「未来からの要望が一つ。そして情報が多数あったの」
と彼女。
 要望に関しては『なるべく、家系図と時越えの子についての記録を残して欲しい』とのことだった。
 いなくなった我が子がどうなったのか知りたいのは、親として当然であろう。
「その中である法則があることが分かったのよ」
 もちろん未来からの情報でねと彼女は言った。

 時越えをしてしまう子は、母が雛本一族のものの場合と言うのである。
 父方が雛本一族で母方が他の系統の時は時越えという現象は起きない。
 そして、父方のみの場合は能力が引き継がれないというのだ。
「時越えに関しては必要だと思っているみたい。血が濃くなりすぎても人体には影響がでるしね」
 和宏はなるほどと思いながら聞いていたが、優人は何か考えごとをしながら話を聞いているようだ。

「そういえば、妹さんのことで気になることが分かったのよ」
「え?」
「その子って、同じ場所へ向かって飛んだはずなのよね?」
「ええ、恐らく」

 手を繋いで『時渡ときわたり』をすることには意味があるらしく、均一なエネルギーで時間を越えることで同じ場所に辿り着くとされているらしい。
 それ以外にも、一族が寄り添って生きているのには意味がある。
 『一人で時渡をすることにはリスクしかない』からとのこと。

「どういうことなのです?」
と優人。
「一人で飛ぶと負荷がかかり過ぎるらしいの。わたしたちは行きたい場所、時間を思い浮かべて飛ぶわよね? 何人かで飛ぶということは、よりイメージが具現化しやすい。みんなで一つの仕事をすればクオリティがあげられるのに似ているかしら」
 あなたたちの場合は……と彼女は続ける。
「任意でその子が別の場所へ飛んだとなると、彼女にはイメージをかき消す力も同時に必要となると思うの。相当な負荷がかかっているはず。それで生きていられるとしたら、相当な力の持ち主。始祖の直系の可能性が高いっておじいちゃんが」

 つまり最初に『時渡の力』を習得した者の娘と言うことなのだろうか?

「それにしても、未だに再会できないということは、その時の負荷が原因で記憶喪失になっている可能性は高いわね。でも、反応はあるのでしょう?」

 ここ最近でカナの所在をタイムトラベラー専用の照合機で確かめたのは、確か図書館に行った日だ。後ほどまた確認してみようと、曖昧に頷く。
「それならいいのだけれど。他に質問は?」
と彼女。
「記憶について知りたい。俺たちは時渡をしていなくなるとどうなるのか」

 この先に何があるというのか。
 和宏は終着点が見えずにいたのだった。
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