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3 雛本家に起きた殺人事件
16 意図が繋がる時
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「片織さんは以前から、あの場所へよく足を運んでいたのかもしれないね」
優人がそう言うのを、和宏は意識のどこか遠くで聞いていた。
「あの人は事件を追っていた。何か理由があって」
片織が十年近くも前の事件のことを鮮明に覚えているのは、事件を追っていたから。それは正しいのかもしれない。
「俺たちの両親の事件の犯人として疑われたのは、その子供たちだった。俺たちは三兄弟で、真ん中が女。特徴は一致する」
「犯人は俺たちじゃない」
と震える声で和宏が反論すると、
「それは分かっている」
と当事者である優人が肩を竦める。
「だから俺にそれを見せて、反応を伺ったんだと思う」
優人はあの時から、自分たちに疑いの眼差しが向いているのに気づいていたということか?
ならばここまでの優人の行動には何か意味があるのだろうか。
「だからさ……」
と言って、和宏からスマホを受け取るとなにやら文字を打ち込み始める。
そこには『連絡先教えてくれてありがとう。ちょっと頼みがあるのだけれど』と文字が続いていた。
「アリバイは大事でしょ?」
と再び優人は和宏にスマホを差し出す。
画面を見ると、『俺たちを訪ねてくる人がいたら連絡して欲しい』と書かれていた。
「それ、コピペして他の子にも送ってくれる?」
「優人は?」
彼は自分の一歩先、二歩先にいる。
「俺はこの人物を調べるよ」
代わりに例の紙を掲げて。
「名前だけじゃ、男か女かもわからないけれど」
と言いながら再びPCモニターに向き直る。
彼のいう通り、紙に記載されていた名は中性的な名前であった。
和宏は言われた通り、優人の打った文字をコピーペーストして登録した残りの三人の相手に送信する。
追う側から、追われる側へ。
疑う側から疑われる側へ。
確実に何か変わりはじめ、日常は非日常へと足を踏み入れている。
叶わない恋をしていた。
それはこの先も叶わないだろう。
「あ! おい。優人」
「どうしたの? 兄さん」
「俺は別に、片織のことは何とも思ってないからな」
誤解されたままは理不尽だ。
「そうだね。兄さんは、お姉ちゃんのことが好きだものね」
と優人。
──お姉ちゃん?
「どっちにしろ、俺たちは自分たちで結婚相手は選べないしね」
不思議そうに優人を見つめていると、彼が呟くようにそう口にする。
「でも、お姉ちゃんが本当の兄弟じゃないならワンチャン……どうかした?」
和宏は自分の違和感を拭うため、優人に質問をしようとするが、『監視されている』可能性を考え押し黙った。
──もしかしたら、名前を知られないためなのかもしれない。
そう考えて、自分の推理がオカシイことに気づく。
自分たちを疑っているのは、片織だ。
その事に気づいた優人はフラグを立て捲り、行く先々で連絡先を受け取った。それはアリバイを証明する為でもある。だからレシートの裏に書いてもらい、念のために協力を頼んだのだろう。
図書館で感じた視線は何だったのだろうか?
あれがあったからこそ、自分たちは生家のあった場所へ向かった。
だが、全ては偶然とも言える。
──俺たちは、誰から逃げているんだ?
推理が迷走し、混乱しはじめたところで、
「あったよ、兄さん」
と優人。
和宏は反射的に画面を覗き込む。
「この写真じゃ、男か女か分からないね」
「そうだな」
中性的な顔をした男女どちらか分からない人物の写真と共に、簡単な経歴が載っている。そこには驚きの一説が。
「ねえ、兄さん。もしかして、片織さんの本当の目的って」
「ああ」
和宏にも想定内の事柄ではあったが、それよりも『優人は一体いつから俺のことを兄さんと呼んでいるんだ?』と言うことが非常に気になるのであった。
優人がそう言うのを、和宏は意識のどこか遠くで聞いていた。
「あの人は事件を追っていた。何か理由があって」
片織が十年近くも前の事件のことを鮮明に覚えているのは、事件を追っていたから。それは正しいのかもしれない。
「俺たちの両親の事件の犯人として疑われたのは、その子供たちだった。俺たちは三兄弟で、真ん中が女。特徴は一致する」
「犯人は俺たちじゃない」
と震える声で和宏が反論すると、
「それは分かっている」
と当事者である優人が肩を竦める。
「だから俺にそれを見せて、反応を伺ったんだと思う」
優人はあの時から、自分たちに疑いの眼差しが向いているのに気づいていたということか?
ならばここまでの優人の行動には何か意味があるのだろうか。
「だからさ……」
と言って、和宏からスマホを受け取るとなにやら文字を打ち込み始める。
そこには『連絡先教えてくれてありがとう。ちょっと頼みがあるのだけれど』と文字が続いていた。
「アリバイは大事でしょ?」
と再び優人は和宏にスマホを差し出す。
画面を見ると、『俺たちを訪ねてくる人がいたら連絡して欲しい』と書かれていた。
「それ、コピペして他の子にも送ってくれる?」
「優人は?」
彼は自分の一歩先、二歩先にいる。
「俺はこの人物を調べるよ」
代わりに例の紙を掲げて。
「名前だけじゃ、男か女かもわからないけれど」
と言いながら再びPCモニターに向き直る。
彼のいう通り、紙に記載されていた名は中性的な名前であった。
和宏は言われた通り、優人の打った文字をコピーペーストして登録した残りの三人の相手に送信する。
追う側から、追われる側へ。
疑う側から疑われる側へ。
確実に何か変わりはじめ、日常は非日常へと足を踏み入れている。
叶わない恋をしていた。
それはこの先も叶わないだろう。
「あ! おい。優人」
「どうしたの? 兄さん」
「俺は別に、片織のことは何とも思ってないからな」
誤解されたままは理不尽だ。
「そうだね。兄さんは、お姉ちゃんのことが好きだものね」
と優人。
──お姉ちゃん?
「どっちにしろ、俺たちは自分たちで結婚相手は選べないしね」
不思議そうに優人を見つめていると、彼が呟くようにそう口にする。
「でも、お姉ちゃんが本当の兄弟じゃないならワンチャン……どうかした?」
和宏は自分の違和感を拭うため、優人に質問をしようとするが、『監視されている』可能性を考え押し黙った。
──もしかしたら、名前を知られないためなのかもしれない。
そう考えて、自分の推理がオカシイことに気づく。
自分たちを疑っているのは、片織だ。
その事に気づいた優人はフラグを立て捲り、行く先々で連絡先を受け取った。それはアリバイを証明する為でもある。だからレシートの裏に書いてもらい、念のために協力を頼んだのだろう。
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だが、全ては偶然とも言える。
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「この写真じゃ、男か女か分からないね」
「そうだな」
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「ああ」
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