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1 数年後の二人
4 弟の友人、平田
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弟の優人は大学へ入ってから同性の友人が出来た。
その名も平田 彰浩。優人が頑なに和宏へ会わせようとしない、唯一の心許せる友のようだ。
中学の時はそれなりに同性の友人もいたようだが、たった二人の家族となってしまった為に、優人は和宏にべったりとなった。
そのことを同級生に揶揄われた彼は、酷く傷つき高校へ上がるとすぐに彼女を作ったのである。
それだけなら良かったが、付き合っては別れるを繰り返す始末。
見かねた和宏が、
『避妊だけはちゃんとしろよ』
と声をかければ、酷く怒った顔で睨まれた。
後から知ったことだが、優人が恋人と続かないのは身体の関係を求められるのが嫌だから。断ればフラれるのは理不尽とも思えた。
だが優人はアセクシャルなわけではない。
アセクシャルとは他人に対して、性愛を求めない者を指す言葉。
『俺は無責任なことはしない』
そんな彼から友人平田の話を聞いた時、嫌な汗が背中を伝った。平田という男は、和宏と同じくパンセクシャルであり男女どちらともお付き合いをした経験があるらしい。
どんな自認でも性志向でも偏見を受けることはなし、自分とて偏見を向けるつもりはない。自分が平田という男に対し警戒しているのは優人の話しから、彼の気持ちが優人へ向かっていることに気づいてしまったからだ。
どんなに自分が友人だと思っていても、相手が違ったなら?
人とは勝手な生き物だ。
叶わないと気づけば、離れていくかも知れなかった。
弟がこれ以上、傷つくのは見たくない。
──いや。それは言い訳だな。
紅茶のカップを担当の前へ差し出し、手土産に貰ったショートケーキをケーキ皿に取り分ける。
「よっぽど優人のことを気に入っているんだな」
と嫌味を漏らしながらカップの横に並べると、
「うーん。そう見えたわねえ」
と彼女はアイススプーンを取り上げた。
「違う、あんたがだ」
和宏は隣に腰かけ、肩ひじをつくと呆れたように頬杖をついて彼女に視線を向ける。
彼女は一瞬驚いた顔をしたが、
「優人くんを大事にしているのは、あなたの方でしょ」
と笑われた。
「ショートケーキは優人の好みだぞ」
ムッとして和宏が反論するも、
「あなたはそれに対して不満を言わないじゃない。そもそも甘いもの好きでもないのに」
「それは……だな」
痛いところをつかれたなと肩を竦め、まとめてあったファイルを彼女の方へ押しやると、
「相変わらず、仕事速いわねえ。本業の方はどうなの?」
と和宏へ問いかけながら彼女はケーキを口に運び、ファイルを繰っている。
「どうということもない。仕事が来なくても食うに困るわけじゃないしな」
と答えれば、
「仕事相手紹介しようか?」
と話を持ち掛けられた。
「いや、いい。調べたいこともあるし」
「妹さんのことね」
和宏にとって優先しなくてはならないのは、妹であるカナの捜索。
だが彼女にとっては一つ、疑問に思うことがあるようだ。
「和くんがお金持ちでいいマンションに住んでいて、大して仕事をしなくても生活に困らないというのは理解しているし、他にしなくてはならないことがあるというもの理解はしているつもりなんだけれど」
長い前置きをし、
「優人くんは何故バイトしているのかしら?」
確かに周りから見たら不思議に思うところもあるだろう。
「あれは社会勉強だ」
和宏がやれと言ったわけではない。
同年代に馴染めなかった優人は、居場所を求めたのではないか? と思っている。現に、バイト先の同年代の子たちとは仲良くしているようであるし。
主に女子というのが少し気になるが。
その名も平田 彰浩。優人が頑なに和宏へ会わせようとしない、唯一の心許せる友のようだ。
中学の時はそれなりに同性の友人もいたようだが、たった二人の家族となってしまった為に、優人は和宏にべったりとなった。
そのことを同級生に揶揄われた彼は、酷く傷つき高校へ上がるとすぐに彼女を作ったのである。
それだけなら良かったが、付き合っては別れるを繰り返す始末。
見かねた和宏が、
『避妊だけはちゃんとしろよ』
と声をかければ、酷く怒った顔で睨まれた。
後から知ったことだが、優人が恋人と続かないのは身体の関係を求められるのが嫌だから。断ればフラれるのは理不尽とも思えた。
だが優人はアセクシャルなわけではない。
アセクシャルとは他人に対して、性愛を求めない者を指す言葉。
『俺は無責任なことはしない』
そんな彼から友人平田の話を聞いた時、嫌な汗が背中を伝った。平田という男は、和宏と同じくパンセクシャルであり男女どちらともお付き合いをした経験があるらしい。
どんな自認でも性志向でも偏見を受けることはなし、自分とて偏見を向けるつもりはない。自分が平田という男に対し警戒しているのは優人の話しから、彼の気持ちが優人へ向かっていることに気づいてしまったからだ。
どんなに自分が友人だと思っていても、相手が違ったなら?
人とは勝手な生き物だ。
叶わないと気づけば、離れていくかも知れなかった。
弟がこれ以上、傷つくのは見たくない。
──いや。それは言い訳だな。
紅茶のカップを担当の前へ差し出し、手土産に貰ったショートケーキをケーキ皿に取り分ける。
「よっぽど優人のことを気に入っているんだな」
と嫌味を漏らしながらカップの横に並べると、
「うーん。そう見えたわねえ」
と彼女はアイススプーンを取り上げた。
「違う、あんたがだ」
和宏は隣に腰かけ、肩ひじをつくと呆れたように頬杖をついて彼女に視線を向ける。
彼女は一瞬驚いた顔をしたが、
「優人くんを大事にしているのは、あなたの方でしょ」
と笑われた。
「ショートケーキは優人の好みだぞ」
ムッとして和宏が反論するも、
「あなたはそれに対して不満を言わないじゃない。そもそも甘いもの好きでもないのに」
「それは……だな」
痛いところをつかれたなと肩を竦め、まとめてあったファイルを彼女の方へ押しやると、
「相変わらず、仕事速いわねえ。本業の方はどうなの?」
と和宏へ問いかけながら彼女はケーキを口に運び、ファイルを繰っている。
「どうということもない。仕事が来なくても食うに困るわけじゃないしな」
と答えれば、
「仕事相手紹介しようか?」
と話を持ち掛けられた。
「いや、いい。調べたいこともあるし」
「妹さんのことね」
和宏にとって優先しなくてはならないのは、妹であるカナの捜索。
だが彼女にとっては一つ、疑問に思うことがあるようだ。
「和くんがお金持ちでいいマンションに住んでいて、大して仕事をしなくても生活に困らないというのは理解しているし、他にしなくてはならないことがあるというもの理解はしているつもりなんだけれど」
長い前置きをし、
「優人くんは何故バイトしているのかしら?」
確かに周りから見たら不思議に思うところもあるだろう。
「あれは社会勉強だ」
和宏がやれと言ったわけではない。
同年代に馴染めなかった優人は、居場所を求めたのではないか? と思っている。現に、バイト先の同年代の子たちとは仲良くしているようであるし。
主に女子というのが少し気になるが。
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