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『猟奇的、美形兄は』

34:弟、静観につき

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 キャンプ場にやって来た愛都と自称、まなの素敵なお兄ちゃん。
 出かけに一悶着あったため、少し疲れ気味であった。

『お兄ちゃん! お×××ん型石膏は置いて行って!』
『まな、お兄ちゃんはいつも、まなのお×××んと共にありたいんだ』
 何を言ってるんだ、この人は。
『まなこそ、何故お×××ん型クッションなんて持っていく気なんだ⁈』
『え、これないと落ち着かないし』
 かなり、毒されている。
 そんなこんなで揉めに揉めて、互いに置いて行くことで決着がついた。

「まな。松茸きゅんだ!」
「うん」
 兄は何故か、キッチンに置いてある食材の中から松茸を取り上げ頬ずりしている。
 愛都はクッションが無いため、それどころではない。
「夕飯はカレー?」
 キャンプと言えば、ファイヤーとカレー。
 しかし最近はお洒落なキャンプ飯も流行っている。
「松茸と言えばご飯か焼きだろう」
と、珍しく兄が真面目だ。
「切り刻んでご飯に入れるか、姿焼きか」
 愛都は何となく股間を抑えた。兄が言うと違う場所を想像してしまう。
「キャンプ場に来てみたものの、おパンティがないと落ち着かないね」
 何を言ってるんだ、この人は。
 兄は徐に荷物に手を突っ込むと、ピンクのスケスケおパンティを取り出すと頭に被りだした。

「まなの分もあるけど」
「え、僕は間に合ってるよ」
 お×××ん型クッションがないと居心地は悪いが、代わりにソファーに腰かけTVをつける。
「なんと!」
「それより、お兄ちゃん夕飯」
 兄はトチ狂っているが、ああ見えても何でもできるのだ。
「じゃあ、腕によりをかけて作っちゃうよ」
と、兄はカバンからエプロンを取り出す。
「ちょッ……お兄ちゃん⁈」
 兄のエプロンにはデカデカと”非童貞”とプリントされていた。
 頭におパンティを被り、非童貞エプロンをして料理をする兄。実にシュールだ。
 愛都は笑いたいのを堪え、スマホに手を伸ばす。

 最近始めた”オマスタ”これがなかなか面白い。
 愛都は、”花”という子を応援している。
「このラインナップじゃ負けちゃうよな。今週も一位は”三歩行けば不倫”か」
 飛んでもないすごろくコメディである。
「二位は、なっちゃんの”ハズキ男子最高伝説”これも、謎だな」
 ハズキル〇ペをつけたイケメン男子が雪山でイチャイチャする謎のBLコメディだ。
「凍死しそうだな」

 一時間後。愛都がブツクサ言いながらスマホを眺めていると、キッチンから良い匂いがしてきた。
「まな、出来たぞ」
「ちょっ!」
 確かに美味しそうだが、丸く盛られたご飯と丸く盛られたおかずの谷間に松茸が刺さっている。
「こ、これは?」
「それは、OKサインというものだ。夫婦間や恋人間でやるらしいぞ」
 有名なのは枕だ。
 どうやら、今夜は眠れそうにない。
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