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『猟奇的、美形兄は』

33:兄、親睦につき

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「あああああああ。まなが、お×××んを見せてくれない!」
 それは、普通だ。何を言っている。
 駄々をこねる兄に、頭痛を覚えつつ、立ち上がるとサイドボードの上から石膏を掴む。
「はい、お兄ちゃん」
「まなのお×××ん!」
 兄は石膏を抱きしめ、頬ずりをした。
「ところで、まな」
 石膏を胸に抱きしめながら。
「うん?」
 愛都は、お×××ん型クッションにもたれ掛かり、兄を見上げる。すっかり定位置だ。
「まなの、素敵なお兄ちゃんはな」
 これが始まると、ロクなことがない。
 しかも、素敵だったことは一度もない。
「キャンプをしようと思う」
「えええええ」

 寒い星空の下(もと)、腰蓑一丁でキャンプをする兄を想像した。
 もう、冬も近い。凍死しそうである。
「まな、お兄ちゃんはここにまなと泊まろうと思う」
 このクソ寒いのに、キャンプなんてしたくないんだけど、と思いながら兄の指さすノートパソコンの画面を見ると、お尻型のロッジ。
「え、お尻型?」
 普通のないの? という意味で質問したのだが、
「そうなんだよ。お兄ちゃんもお×××ん型が良かったんだけど」

──ちょっと、待て。
 ”も”?

「ほら、お×××ん型って縦長でしょ? そうなると、まなと寄り添えないから」
(そこか!)
 寄り添わないという選択肢はなかったのだろうか。
 いや、お×××ん型には宿泊したくはないが。
「お尻型で我慢してね」
(我慢も糞もない)
 普通のロッジはないのかと、愛都が画面を再び覗き込むと、見慣れたロゴが。(株)原始人と書いてある。
 こりゃ、普通のロッジなんてあるわけないな、と早々に諦めモードになる愛都。
(断るという選択肢はないのか?)
「キャンプで何するの?」
「まなと、素敵なお兄ちゃんの親睦を深めようかと」
(10年以上、一緒の部屋で暮らしているのに、今さら親睦とな?)
 愛都が埴輪顔をして、兄を見つめていると、
「あと、お×××んについて語り合おうかなって」
(それは泌尿器科に行くべきでは?)

 複雑怪奇な兄の発言に、再び頭痛を覚える愛都。
「ほら、いつもおパンティの話で終わっちゃうからさー」
 ますます、どうかしている。
 なんの反省なのかも分からないが、キャンプに行くことだけは決まったらしい。
「おパンティの話をしていたら、おパンティが恋しくなってきた!」
(そんな奴いるか!)
 兄はおもむろに、ピンクスケスケおパンティの山に手をツッコむと、一枚取り出し、頭に被る。
「最近は、斜めに被るのが流行りなんだぞ、まな」
 まるでベレー帽でも被るかのように、説明しながら。
「いや、かぶってる人。そういないから」
 愛都は、ついついツッコミを入れてしまい、誤魔化すように両手を口もとに。
 ”きゃあ、素敵”のポーズになってしまったのは、致し方ない。
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