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『猟奇的、美形兄は』

24:弟、仰天につき

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「まなああああああああ!」
 愛都が子供部屋のベッドに腰かけ後ろ手をつき足をぶらぶらしていると、愛都の名を叫びながら兄が股間に突っ込んできた。
 毎度のことながら、キチガイである。
「ああああん♡まなのお×××んッ」
「ちょ……」
「んっんっんっ。小さくていまいち感触うす……ぐはっ!」
 ”小さいは余計だ!”と言って、愛都はぶらぶらしていた足を兄の股の間で思いっきり上にあげた。悶絶する兄。
「はうわッ。まなの素敵なお兄ちゃんのおたまたまがッ」
 自称、愛都の素敵なお兄ちゃんは蹴られたおたまたまを抑えた。
「もっと蹴る?」
と、愛らしい笑顔を浮かべると両手を合わせ可愛いポーズを取る、愛都。
 一体どういった状況だ。
「ま、間に合っている」
 そこで、兄はハッとした顔をする。

「そうだ。それどころではない。まな、朗報だ」
 兄からの報告がこれまで、朗報だった試しは一度たりともない。
 大抵はロクでもないことか、トチ狂った内容だ。今回も眉唾ではあるが、一応聞かなければならない。何という、拷問。
「まなよ、(株)原始人からキュートなぬいぐるみが発売されたんだ!」

──あのトチ狂った商品ばかり開発する会社がぬいぐるみを?
 何か、嫌な予感がする。

 兄は愛用のノートパソコンを開くと、電源を入れた。
 起動した画面いっぱいに映し出される愛都の下半身。相変わらずクレイジーだ。
「見よ!」
 兄はお気に入りのURLをクリックすると、(株)原始人のホームページにアクセスする。トップには”新商品のお知らせ”の文字が点滅していた。赤文字を点滅させると、正直見辛い。
「ぶっ」
 愛都は新商品の写真を見るなり、紅茶を吹いた。どう見てもお×××ん型の枕である。濡れたシャツを拭こうと、タオルと思わしきものを取り上げたら、タオル生地の兄のパンツであった。
「ま、これでいっか」
 沢山あるしな、と思いながら兄のパンツでシャツを拭く愛都。慣れとは怖いものだ。

「まな!まなの素敵なお兄ちゃんはな。これを買いに行こうと思う」
「え」
 兄のパンツでシャツと拭く愛都の両肩をガシっと掴んで。
 なんの意志表明だ、と思っていたら、
「まな、この素敵なお兄ちゃんについてきてくれるな?」
と同行を求められる。恐らく、拒否権はない。

──またお×××ん買いに行くの?
 この間、石膏作ってなかったっけ?

「さあ、着替えて出発だ」
 兄はそう言うと、スチャッとキャップを被りきらーんと白い歯を見せるが、愛都は兄のキャップを見てぎょっとする。帽子には”脱!童貞”とプリントされていた。
「お兄ちゃん、その帽子はちょっと……」
「なんだ、まな。帽子は紳士の嗜みだぞ!」
 兄が紳士だった試しは、過去一度もないはずである。
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