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『猟奇的、美形兄は』

22:弟、遠慮につき

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「さあ、まな。食後のタピオカと洒落こもうじゃないか」
 デザートも食べたのにまだ飲むんかい! と突っ込みたくなったが、愛都はニコニコして助手席へ乗り込む。
 余計なことを言って股間にタックルされた日には、色んな口から”こんにちは!”という状況になりかねない。あれだけ食べて、これからお×××ん型タピオカを食さなきゃいけないなんて、何という拷問。いうなれば、アダルト地獄。なに? 天国だって?

「やっぱり、タピオカと言ったらここだよね」
 兄はいつものタピオカドリンク店に車を停めた。
 そう、(株)原始人系列のあのお店である。時間がズレたこともあり、珍しく空いていた。愛都が大人しく車内で待っていると、兄がドリンクを二つ手にニコニコしながら戻って来る。
「今日は空いてたから、少し奮発しちゃったよ」

──あなたは一体どんな胃袋をしているんですか?

 嬉しそうな兄に対し、埴輪顔をしそうになり慌てて口元に両手を持っていく。
 そう、定番の”お兄ちゃん、素敵”ポーズである。仕方ない、少しだけ付き合うかと口元へ持っていく、愛都。
 兄はと言うと、
「やっぱり、タピオカは別腹だよねえ」
とのほほんとしている。
 そんなわけあるかい! とラリアットを食らわしたい気分だ。
 後で胃薬を飲もう、と思っていると、
「これ、お×××ん増量なんだよ」
と嬉しそうに言うので、
「ぶっ」
 愛都は吹いた。
「あ、ごめん。間違えちゃった」
と兄は愛都にタオルを渡しながら。
 何をどう間違ったら、そんなトチ狂ったことを言うんだと思いながら、受け取ったタオルで胸元を拭く愛都。

──否! 兄はいつもトチ狂っていたんだった。

「お×××ん型タピオカが増量中だった」
 言い換えたものの、大して変わらなかった。
「アタリがいっぱい入ってるんだよ、嬉しいね。まな」
 ちっとも嬉しくない。お腹いっぱいな上に、更にいっぱい、お×××んを食べなきゃならないなんて。
 言葉にすると変態だが、タピオカだ。原材料は、イモ。

──お×××んの食べ過ぎで太ったら嫌だなあ。

 それは誰でも嫌である。
 嫌じゃない人がいるなら、挙手願いたいところだ。

『わたし(僕)お×××んの食べ過ぎで太りたぁい♡』
 うーん、どう考えてもクレイジーこの上ない。
 下手をすると病院送りになりそうである。

「お兄ちゃん、お×××ん大好きだよね?」
「なんだいきなり。まなもお×××んに目覚めたのか?」
 そんなわけない。
 しかも、どういった状況だ、それは。
「僕、もうお腹いっぱいだから、お兄ちゃんにお×××ん、あげる」
 何とも卑猥極まりないが、タピオカである。
 原材料は肉ではなくイモである。
「まなは小食だな。いっぱいお×××ん食べないと、大きくなれないよ?」

──大きく……。
 横にか?
 お×××んがか?
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