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14話 愛美と花穂【Side:花穂】
53 花穂とその父
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「そう、会社のため」
花穂は父に付いて異国の地に降り立った。
あの日の選択が間違っているとは思っていない。
義弟に頼んだもの。
愛花に託した手紙。
父から提示された未来。
愛美からの電話。
これから起こること。
その結末は奏斗次第。
「わかってくれとは言わない」
父はドアの開いたタクシーの中へ花穂を促しながら。
「わかりたくはないけれど。そうね、従業員を路頭に迷わせるわけにはいかないというのは理解するわ。人間として」
今まで自分の我がままならどんなことでも受け入れてくれた父は、ここにはいない。自分たちの関係は親子には違いないが、未来を担う協力関係と形を変えた。
いずれは、そうなる。しかし今ではなかったはず。
「突然、編入留学だなんて」
「花穂なら大丈夫」
「You say it like it's someone else's problem.If this was going to happen to me, I should have studied the language more」
「that's right. Because it's someone else's problem」
”他人事みたいに言うわね。こんなことならもっと語学を学んでおけば良かった”とため息を漏らす花穂に『他人事だからね』と苦笑いをする父。
「卒業できなかったらどうしてくれるのよ」
「まずは編入試験だな」
「そうね」
二年で卒業できるとはいうものの、試験に通らなければ他の手を考えなければならない。
「まあ、休学留学という手もあるしな」
”他人事だと思って、好き勝手言ってくれる”と思いながら花穂は窓の外に視線を移した。
「その場合は一年で帰国して良いんでしょうね?」
「帰国するのは構わないが、一年の自粛が必要だろうな」
美月がどんな力を持っているのか花穂にはわからない。その説明を父に求めようとは思わなかった。
これから向かうのは花穂の父の会社の海外支社に勤務している社員の家。彼は日本人だが現地の女性と結婚し、子供もいるという。花穂はその家にホームステイをすることになっている。
現在は美月に会社を人質に取られているような状況。
要求はたった一つ。花穂を二年海外に留学させること。
その費用は全額美月が持ってくれるらしい。
『奏斗を変えたのは貴女方、姉弟。その責任を取って貰うわ』
電話口で聞いた愛美の恨みの籠った声。
『貴女たちが奏斗に近づかなければ、彼はわたしと復縁するという道も選べた』
義弟の和馬の分も花穂に償えと言うのか。
それならそれで構わないと思った。
何故なら、彼女の提示する二年を耐えれば奏斗との恋愛関係が許されるのだから。
『耐えて見せてよ』
もし終わってしまったなら、自分は二度と奏斗の傍にいることはできない。
花穂は窓枠に頬杖をつき、見慣れない街の景色を眺める。
美しさや統一感がなくても、日本という国がどれだけ自分に安らぎを与えるのか改めて知る。知らない地に引っ越そうが、数日たてば慣れるのが住み慣れた国。
それは何処の国の人でも変わらないのかもしれない。
文化、言葉、匂い、人種。それらは確かにその国らしさを表している。
「引きこもりになりそうだわ」
ため息交じりに言葉を漏らせば、
「異国の文化に触れるのも良い勉強になるよ」
と父。
「日本特有の調味料の無い国には半日いるだけでも気が狂いそうだわ」
「だから、日本人のいる家にホームステイ先を選んだじゃないか」
「料理するのは奥様じゃないの」
人を作るのは食べ物だろう。
日本に住んでいるうちは洋食なども口にするだろうが、それのほとんどは日本人の味覚に合うように改良されている。現地のモノをそのまま口にする機会はほとんどないと言って良いだろう。
「そうだ、パパ。あの約束、ちゃんと守ってよね」
「そっちは大丈夫」
「破ったら、駆け落ちしてやるんだから」
ムッとしながら言う花穂に父はクスリと笑ったのだった。
花穂は父に付いて異国の地に降り立った。
あの日の選択が間違っているとは思っていない。
義弟に頼んだもの。
愛花に託した手紙。
父から提示された未来。
愛美からの電話。
これから起こること。
その結末は奏斗次第。
「わかってくれとは言わない」
父はドアの開いたタクシーの中へ花穂を促しながら。
「わかりたくはないけれど。そうね、従業員を路頭に迷わせるわけにはいかないというのは理解するわ。人間として」
今まで自分の我がままならどんなことでも受け入れてくれた父は、ここにはいない。自分たちの関係は親子には違いないが、未来を担う協力関係と形を変えた。
いずれは、そうなる。しかし今ではなかったはず。
「突然、編入留学だなんて」
「花穂なら大丈夫」
「You say it like it's someone else's problem.If this was going to happen to me, I should have studied the language more」
「that's right. Because it's someone else's problem」
”他人事みたいに言うわね。こんなことならもっと語学を学んでおけば良かった”とため息を漏らす花穂に『他人事だからね』と苦笑いをする父。
「卒業できなかったらどうしてくれるのよ」
「まずは編入試験だな」
「そうね」
二年で卒業できるとはいうものの、試験に通らなければ他の手を考えなければならない。
「まあ、休学留学という手もあるしな」
”他人事だと思って、好き勝手言ってくれる”と思いながら花穂は窓の外に視線を移した。
「その場合は一年で帰国して良いんでしょうね?」
「帰国するのは構わないが、一年の自粛が必要だろうな」
美月がどんな力を持っているのか花穂にはわからない。その説明を父に求めようとは思わなかった。
これから向かうのは花穂の父の会社の海外支社に勤務している社員の家。彼は日本人だが現地の女性と結婚し、子供もいるという。花穂はその家にホームステイをすることになっている。
現在は美月に会社を人質に取られているような状況。
要求はたった一つ。花穂を二年海外に留学させること。
その費用は全額美月が持ってくれるらしい。
『奏斗を変えたのは貴女方、姉弟。その責任を取って貰うわ』
電話口で聞いた愛美の恨みの籠った声。
『貴女たちが奏斗に近づかなければ、彼はわたしと復縁するという道も選べた』
義弟の和馬の分も花穂に償えと言うのか。
それならそれで構わないと思った。
何故なら、彼女の提示する二年を耐えれば奏斗との恋愛関係が許されるのだから。
『耐えて見せてよ』
もし終わってしまったなら、自分は二度と奏斗の傍にいることはできない。
花穂は窓枠に頬杖をつき、見慣れない街の景色を眺める。
美しさや統一感がなくても、日本という国がどれだけ自分に安らぎを与えるのか改めて知る。知らない地に引っ越そうが、数日たてば慣れるのが住み慣れた国。
それは何処の国の人でも変わらないのかもしれない。
文化、言葉、匂い、人種。それらは確かにその国らしさを表している。
「引きこもりになりそうだわ」
ため息交じりに言葉を漏らせば、
「異国の文化に触れるのも良い勉強になるよ」
と父。
「日本特有の調味料の無い国には半日いるだけでも気が狂いそうだわ」
「だから、日本人のいる家にホームステイ先を選んだじゃないか」
「料理するのは奥様じゃないの」
人を作るのは食べ物だろう。
日本に住んでいるうちは洋食なども口にするだろうが、それのほとんどは日本人の味覚に合うように改良されている。現地のモノをそのまま口にする機会はほとんどないと言って良いだろう。
「そうだ、パパ。あの約束、ちゃんと守ってよね」
「そっちは大丈夫」
「破ったら、駆け落ちしてやるんだから」
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