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13話 失ったもの【Side:奏斗】
51 手がかりを探して
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もし自分が情報提供側で一刻を争うとしたならば。
チャンスを逃すようなことはないだろうと思った。
案の定、奏斗は古川たちに昼の誘いを受けた。
それはつまり、大里愛花が花穂から何か託されていると考えて良いだろう。
大抵誘われる先は大人数で差しつかえない行きつけのイラリアンレストランか大崎家。
大崎家には従業員食堂というものが存在する。かなり特殊な屋敷だ。
奏斗の友人である大崎圭一はK学園理事長の息子とは仲が良くないらしく、屋敷に来ることはない。本人は仲が悪いつもりはないらしいが。
つまり見られたくないやり取りに関しては非常に安全な場所と言えた。
だが愛花は予想をはるかに上回る慎重さを見せる。彼女はさりげなく奏斗の隣に腰かけると、皆と話をしたままテーブルの下で何かを奏斗に押し付けた。「!!」
何か言おうとするも、目だけでそれを阻まれる。
そもそも彼女が自ら隣に腰かけることが稀。耳打ちでもされるものと思っていたが、どうやら違うようだ。こんな状況ならば茶化してくるはずの古川は、特にこちらを気にするでもなく愛花の妹であり、奏斗たちの同級生ミノリと話をしていた。茶化してこない古川に違和感を持つが、今はそれどころではない。
大崎家の食事は朝を除いて、バイキング方式。好きな料理を自分で盛り付けるスタイル。本日の昼食の場所が大崎家に決まることはなんとなくわかっていたが、こんな形でメモを渡されるとは思っていなかった。
愛花は料理を取りに行く風に見せかけ、従業員食堂を出ていく。
この大崎家の従業員食堂は温かみのあるログハウスの内装のような造り。庭に面している部分は全面ガラス張りで、夜になると庭がライトに照らされ、とてもロマンチックであった。
愛花が食堂から出ていくのを見届けると奏斗も立ち上がる。
何故か誰も奏斗に注目するものはいなかった。元々、ここで食事をしている大崎家の従業員たちは人をじろじろ見たりするような者はいないが。
圭一も古川も何も言わないのが逆に不気味に感じる。
奏斗は素早く従業員食堂を出てメモに視線を落とす。待ち合わせ場所は二階にあるリビングのようだ。
メモによると中央の階段ではなく、階段下にあるエレベーターを使えとのこと。確かに家の者でもないのに屋敷内をうろうろしていたら不審がられてしまうに違いない。
やたら広いこの屋敷の中で知っている場所は限られる。しかしながら、ドアが多いため間違えないように慎重になる必要があった。
「ここだな」
指定場所のドアの前に立ち、奏斗は深呼吸する。
一体これからどんな話を聞くことになるのだろうか。
心なしか、ドアノブを掴む手が震えた。ノックはするべきか迷ってドアノブから手を離したところで、後ろからそのドアノブを掴む手。
「ひっ……」
奏斗はびくりとしておずおずと振り返った。
「何してんだ、入れよ」
圭一である。非常に心臓に悪い。
後ろからドアを開き、開いてる方の手で奏斗の背中をそっと押す彼。
自分が女性だったら惚れてしまいそうだと思いながら、奏斗は静かに入室した。
「あら、圭一」
”別々にいらっしゃるはずではなかったの?”と続ける愛花。
「白石がドアの前にいたから押し込んだ」
圭一は奏斗にソファーを勧めると自分も隣に腰かけて。
愛花は立ったままソファーの背もたれに手を置き、二人を見つめていた。
「察しの良いあなたなら、何故ここに呼ばれたのか分かりますわよね?」
以前の優雅な様子とは違って、緊迫した空気を纏う彼女。隣の圭一は腕を組み足を組んで俯いている。
「花穂から預かっているものがありますの」
”花穂”と言う言葉に反応して立ち上がりそうになる奏斗の前にスッと伸ばされる圭一の腕。それは落ち着けと言っているように思えた。
「白石。座ってろ」
「悪い」
「大丈夫、あの子は生きておりますわ。連絡は取れませんが」
”あの子のことを話す前に”と彼女は前置きをする。
「一言、申し上げたいことがありますわ」
その言葉に奏斗はドキリとした。もしかしたら花穂を危険な目に合わせたことを責められるのだろうか。そんなことを思ったのだった。
チャンスを逃すようなことはないだろうと思った。
案の定、奏斗は古川たちに昼の誘いを受けた。
それはつまり、大里愛花が花穂から何か託されていると考えて良いだろう。
大抵誘われる先は大人数で差しつかえない行きつけのイラリアンレストランか大崎家。
大崎家には従業員食堂というものが存在する。かなり特殊な屋敷だ。
奏斗の友人である大崎圭一はK学園理事長の息子とは仲が良くないらしく、屋敷に来ることはない。本人は仲が悪いつもりはないらしいが。
つまり見られたくないやり取りに関しては非常に安全な場所と言えた。
だが愛花は予想をはるかに上回る慎重さを見せる。彼女はさりげなく奏斗の隣に腰かけると、皆と話をしたままテーブルの下で何かを奏斗に押し付けた。「!!」
何か言おうとするも、目だけでそれを阻まれる。
そもそも彼女が自ら隣に腰かけることが稀。耳打ちでもされるものと思っていたが、どうやら違うようだ。こんな状況ならば茶化してくるはずの古川は、特にこちらを気にするでもなく愛花の妹であり、奏斗たちの同級生ミノリと話をしていた。茶化してこない古川に違和感を持つが、今はそれどころではない。
大崎家の食事は朝を除いて、バイキング方式。好きな料理を自分で盛り付けるスタイル。本日の昼食の場所が大崎家に決まることはなんとなくわかっていたが、こんな形でメモを渡されるとは思っていなかった。
愛花は料理を取りに行く風に見せかけ、従業員食堂を出ていく。
この大崎家の従業員食堂は温かみのあるログハウスの内装のような造り。庭に面している部分は全面ガラス張りで、夜になると庭がライトに照らされ、とてもロマンチックであった。
愛花が食堂から出ていくのを見届けると奏斗も立ち上がる。
何故か誰も奏斗に注目するものはいなかった。元々、ここで食事をしている大崎家の従業員たちは人をじろじろ見たりするような者はいないが。
圭一も古川も何も言わないのが逆に不気味に感じる。
奏斗は素早く従業員食堂を出てメモに視線を落とす。待ち合わせ場所は二階にあるリビングのようだ。
メモによると中央の階段ではなく、階段下にあるエレベーターを使えとのこと。確かに家の者でもないのに屋敷内をうろうろしていたら不審がられてしまうに違いない。
やたら広いこの屋敷の中で知っている場所は限られる。しかしながら、ドアが多いため間違えないように慎重になる必要があった。
「ここだな」
指定場所のドアの前に立ち、奏斗は深呼吸する。
一体これからどんな話を聞くことになるのだろうか。
心なしか、ドアノブを掴む手が震えた。ノックはするべきか迷ってドアノブから手を離したところで、後ろからそのドアノブを掴む手。
「ひっ……」
奏斗はびくりとしておずおずと振り返った。
「何してんだ、入れよ」
圭一である。非常に心臓に悪い。
後ろからドアを開き、開いてる方の手で奏斗の背中をそっと押す彼。
自分が女性だったら惚れてしまいそうだと思いながら、奏斗は静かに入室した。
「あら、圭一」
”別々にいらっしゃるはずではなかったの?”と続ける愛花。
「白石がドアの前にいたから押し込んだ」
圭一は奏斗にソファーを勧めると自分も隣に腰かけて。
愛花は立ったままソファーの背もたれに手を置き、二人を見つめていた。
「察しの良いあなたなら、何故ここに呼ばれたのか分かりますわよね?」
以前の優雅な様子とは違って、緊迫した空気を纏う彼女。隣の圭一は腕を組み足を組んで俯いている。
「花穂から預かっているものがありますの」
”花穂”と言う言葉に反応して立ち上がりそうになる奏斗の前にスッと伸ばされる圭一の腕。それは落ち着けと言っているように思えた。
「白石。座ってろ」
「悪い」
「大丈夫、あの子は生きておりますわ。連絡は取れませんが」
”あの子のことを話す前に”と彼女は前置きをする。
「一言、申し上げたいことがありますわ」
その言葉に奏斗はドキリとした。もしかしたら花穂を危険な目に合わせたことを責められるのだろうか。そんなことを思ったのだった。
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