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10話 そうは問屋が卸さない?!【Side:花穂】
40 運命の分かれ道
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「どう思う?」
結菜を風呂場へ促し、一人掛けのソファーに腰かけた花穂は奏斗を見上げそう質問した。
「どうとは?」
考え事をしているように見えたので質問したのだ。
彼が何を考えていたのか知りたい。恐らくその内容は花穂の予想通りだと思われる。
「何か思い当たることでもあるんでしょう?」
「まだ推定に過ぎないが、愛美が関係しているのではないかと思っている」
「彼女にそんな力あるの?」
「どうかな。正直、愛美のことは名前以外よく知らないんだ」
美月愛美は高校の時に塾で出会った。
奏斗は制服のまま通っていたが、彼女はいつも私服だったので何処の高校に通っていたのかも知らなかった。彼女について知っているのは『両親が離婚しそうになったこと』と苗字くらいだという。
「理事長の息子と同じ学校だったのは結菜ちゃんのほうだっけ?」
「うん、確か」
「K学園だったとしても、高等部は結構別校舎あるしね」
「だな」
だがその可能性は低いように感じていた。
もしK学の生徒なら奏斗と再会することは容易だったはず。何故なら別校舎であっても制服は変わらないからだ。
──いや、どうなのかしら?
奏斗が探していたことを知ったのが在学中ではなく春休みに入ってからだったら分からないわよね。
とは言え、お金持ちだからK学とは限らないし。
「で、どうするつもりなの?」
結菜が見合いを嫌がっている以上、彼が何もしないわけはないと思った。
正義感が強いとは思っていない。愛美が関わっていると思うなら何かしらアクションを起こすだろうと思ったのだ。
「親父さんと話してみようと思う」
「えっと、それは……どういう立場で?」
「え?」
そこで驚くとは思っていなかった。立場は重要だと思う。これからの自分の立ち位置にも関係するだろうし。
「元彼?」
何故疑問形なのかわからないが、奏斗はそう答えた。
「俺が思うに、別れたという事実は必要事項だと思う」
「必要事項?」
「これは愛美が関係していると想定してだが」
今まで何もせずに二人がつき合っていることを放っておいた愛美。彼女が動き出したというなら、先日の『決別』が引き金だろう。
奏斗の説得は失敗に終わった。彼女は納得なんてしていない。そう捉えるのが最も自然。
奏斗はそう説明をすると、
「だとしたら『諦めさせるために見合いをさせろ』という提示がなされたと考えられる」
と続けた。
「別れたという事実を告げたら止められるってことね」
「簡単にいけばいいが、な」
彼は花穂の背後にあった置時計に視線を向けると、
「結菜を頼んで大丈夫?」
と問う。
「今から行くの?」
「善は急げというし」
確かに結菜が不在の間に勝手に話が進んでも困る。
「どっちにしても、説得はする」
「気を付けてね」
奏斗は上着を掴むと小さく頷いた。
花穂が立ち上がるとハグをして離れる。
「戻るわよね?」
「今日中には」
部屋の入り口で車のキーを差し出すと、彼がそれを掴む。
やっと両想いになれたというのに、二人には安息はないのか。
打開策はみつけたものの、愛美の本当の目的には気づかずにいた二人。そのことが明暗を分けるとも思わずに。
「お風呂ありがとうございました……ってあれ? 奏斗くんは」
花穂がぼんやりとニュースを視ていると背後から結菜の声が。
「奏斗なら結菜ちゃんのパパを説得に行ったわ。それより、もうすぐルームサービスが届くようだからこっちへ来て座って」
「あ、はい」
結菜が腰かけると同時にドアのチャイムが鳴る。
その後二人は温かい食事を囲み和やかに話をした。
「そう言えば、花穂さんが奏斗くんの元カノさんだったなんて、全然気づきませんでしたよ」
「彼、何か言ってた?」
「経緯とか色々聞きました。悩んでいたみたいです」
自分から振った話なのに、彼女からの話の内容に花穂は赤くなったり青くなったりしたのであった。
結菜を風呂場へ促し、一人掛けのソファーに腰かけた花穂は奏斗を見上げそう質問した。
「どうとは?」
考え事をしているように見えたので質問したのだ。
彼が何を考えていたのか知りたい。恐らくその内容は花穂の予想通りだと思われる。
「何か思い当たることでもあるんでしょう?」
「まだ推定に過ぎないが、愛美が関係しているのではないかと思っている」
「彼女にそんな力あるの?」
「どうかな。正直、愛美のことは名前以外よく知らないんだ」
美月愛美は高校の時に塾で出会った。
奏斗は制服のまま通っていたが、彼女はいつも私服だったので何処の高校に通っていたのかも知らなかった。彼女について知っているのは『両親が離婚しそうになったこと』と苗字くらいだという。
「理事長の息子と同じ学校だったのは結菜ちゃんのほうだっけ?」
「うん、確か」
「K学園だったとしても、高等部は結構別校舎あるしね」
「だな」
だがその可能性は低いように感じていた。
もしK学の生徒なら奏斗と再会することは容易だったはず。何故なら別校舎であっても制服は変わらないからだ。
──いや、どうなのかしら?
奏斗が探していたことを知ったのが在学中ではなく春休みに入ってからだったら分からないわよね。
とは言え、お金持ちだからK学とは限らないし。
「で、どうするつもりなの?」
結菜が見合いを嫌がっている以上、彼が何もしないわけはないと思った。
正義感が強いとは思っていない。愛美が関わっていると思うなら何かしらアクションを起こすだろうと思ったのだ。
「親父さんと話してみようと思う」
「えっと、それは……どういう立場で?」
「え?」
そこで驚くとは思っていなかった。立場は重要だと思う。これからの自分の立ち位置にも関係するだろうし。
「元彼?」
何故疑問形なのかわからないが、奏斗はそう答えた。
「俺が思うに、別れたという事実は必要事項だと思う」
「必要事項?」
「これは愛美が関係していると想定してだが」
今まで何もせずに二人がつき合っていることを放っておいた愛美。彼女が動き出したというなら、先日の『決別』が引き金だろう。
奏斗の説得は失敗に終わった。彼女は納得なんてしていない。そう捉えるのが最も自然。
奏斗はそう説明をすると、
「だとしたら『諦めさせるために見合いをさせろ』という提示がなされたと考えられる」
と続けた。
「別れたという事実を告げたら止められるってことね」
「簡単にいけばいいが、な」
彼は花穂の背後にあった置時計に視線を向けると、
「結菜を頼んで大丈夫?」
と問う。
「今から行くの?」
「善は急げというし」
確かに結菜が不在の間に勝手に話が進んでも困る。
「どっちにしても、説得はする」
「気を付けてね」
奏斗は上着を掴むと小さく頷いた。
花穂が立ち上がるとハグをして離れる。
「戻るわよね?」
「今日中には」
部屋の入り口で車のキーを差し出すと、彼がそれを掴む。
やっと両想いになれたというのに、二人には安息はないのか。
打開策はみつけたものの、愛美の本当の目的には気づかずにいた二人。そのことが明暗を分けるとも思わずに。
「お風呂ありがとうございました……ってあれ? 奏斗くんは」
花穂がぼんやりとニュースを視ていると背後から結菜の声が。
「奏斗なら結菜ちゃんのパパを説得に行ったわ。それより、もうすぐルームサービスが届くようだからこっちへ来て座って」
「あ、はい」
結菜が腰かけると同時にドアのチャイムが鳴る。
その後二人は温かい食事を囲み和やかに話をした。
「そう言えば、花穂さんが奏斗くんの元カノさんだったなんて、全然気づきませんでしたよ」
「彼、何か言ってた?」
「経緯とか色々聞きました。悩んでいたみたいです」
自分から振った話なのに、彼女からの話の内容に花穂は赤くなったり青くなったりしたのであった。
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