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9話 愛とは与え合うもの【Side:奏斗】
35 愛のカタチとランチ
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「あああああ。どうしよう! 知らなかったから奏斗くんの話、花穂さんにいっぱいしちゃった。マウント取ってると思われたでしょうか」
両手を頬にあて、青ざめる結菜。
「そんなこと思わないんじゃない?」
「いや、だって。パっと出の新参者が奏斗くんのこと知った気になってんじゃないわよって思うでしょう?」
「何それ。職場やアイドルじゃあるまいし」
軽く肩をすくめる奏斗。
「そ、それで。あの、花穂さんには好きだって言ったんですか?」
その質問には眉を寄せた。
なぜ前のめりでそんなことを聞くのだろうか?
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「なんでって。あ、プライバシーの侵害でしたか?」
と結菜。
「そういうことじゃなくて。結菜は俺とつき合っているわけでしょ?」
好きだからヤキモチは妬くと言ってた結菜。今の彼女はそうは見えない。
「以前、奏斗くんから年上の元カノさんの話を聞いたじゃないですか」
「ああ」
結菜には話しておくべきだと判断し、自分の抱えているものを話したことがある。それは事実。
「わたしは、奏斗くんがその人のことを好きで忘れられないんじゃないかと思ってます」
奏斗がそれを自覚したのは最近だ。
「対人の好きというのはシンプルだけど、多種多様だと思います」
相手と絶対両想いでないと嫌だという人もいれば、片思いでもいいから好きでいたいという人もいるし、友人という関係で良いからこの先も付き合いを持ちたいだから気持ちを悟られたくないという人もいる。
「愛し合ってつき合うだけが全てじゃないし、それを求めないから好きではないということでもないんです。でも、奏斗くんは気持ちを言葉にしないと愛されていると感じられないんでしょう?」
彼女の言葉に異論はなかった。
「わたしは奏斗くんには笑っていて欲しいし、幸せでいて欲しい」
自分にそれができないのは、仕方ないことなのだと結菜は言う。
「奏斗くんはわたしにとって初恋で、男が苦手な自分でも好きになれる相手はいるんだと思わせてくれた。別れても友達でいてくれるって約束してくれたし、わたしは繋がりがあるだけで十分なの」
好きな相手とどんな形を選ぶのか。それは人それぞれ。
確かにその通りだなと思った。
「だからわたしは奏斗くんの恋を応援する」
「ありがと」
”これからもいっぱい遊ぼうね”と結菜。
『奏斗は小学生みたいなお子様のおつきあいが良いんでしょ?』
ふと花穂に言われた言葉が頭を過る。
確かにその通りかもしれないと思った。
世の男性たちには理解されがたいだろうが、自分はそこまで肉体関係なることを望んではいない。
肉体関係になることは、相手の人生に責任を負うことだと思っているから。そんなの自分には重すぎる。
ずっと周りから偏見を向けられてきた奏斗が何よりも求めていたのは『自由』だった。一人でいることが何よりも自由だと知った。
かつては将来を誓い合った相手である愛美からの執着を恐怖だと感じ、息苦しさを感じるほどに。
つまり一緒にいたいと思える花穂はそれだけ特別ということなのだ。
「着いたね」
いつの間にか車は目的地に到着していた。
「今日は何をお探しで?」
と結菜。
奏斗は駐車場に止めた車から降り、店を見上げる。
まるで山小屋のような見た目のログハウス。平屋の一階建てで、ポップなカラーのドアが印象的。大きなガラス戸の向こうには陳列棚が見えた。
二段しかないい階段を上がりドアに手を書けると子気味良い金の音がする。
開けた途端、珈琲の良い香りがした。
ここは音楽系のものを扱った中古店ではあるが、同時に喫茶店でもある。
「実は、本日は飲食目的」
と奏斗。
”ここのランチおいしいって言ってたでしょ”と続けると、
「あ、だからお昼に」
と人差し指を立てる結菜。
前回きた時、結菜がここのランチはおいしいと言っていたのだ。
『ビーフシチューかオムライスになりますけど、どっちもとても美味しいのです』
ニコニコしながらそう言われ、俄然興味が湧いたのだ。
両手を頬にあて、青ざめる結菜。
「そんなこと思わないんじゃない?」
「いや、だって。パっと出の新参者が奏斗くんのこと知った気になってんじゃないわよって思うでしょう?」
「何それ。職場やアイドルじゃあるまいし」
軽く肩をすくめる奏斗。
「そ、それで。あの、花穂さんには好きだって言ったんですか?」
その質問には眉を寄せた。
なぜ前のめりでそんなことを聞くのだろうか?
「なんでそんなこと聞くんだ?」
「なんでって。あ、プライバシーの侵害でしたか?」
と結菜。
「そういうことじゃなくて。結菜は俺とつき合っているわけでしょ?」
好きだからヤキモチは妬くと言ってた結菜。今の彼女はそうは見えない。
「以前、奏斗くんから年上の元カノさんの話を聞いたじゃないですか」
「ああ」
結菜には話しておくべきだと判断し、自分の抱えているものを話したことがある。それは事実。
「わたしは、奏斗くんがその人のことを好きで忘れられないんじゃないかと思ってます」
奏斗がそれを自覚したのは最近だ。
「対人の好きというのはシンプルだけど、多種多様だと思います」
相手と絶対両想いでないと嫌だという人もいれば、片思いでもいいから好きでいたいという人もいるし、友人という関係で良いからこの先も付き合いを持ちたいだから気持ちを悟られたくないという人もいる。
「愛し合ってつき合うだけが全てじゃないし、それを求めないから好きではないということでもないんです。でも、奏斗くんは気持ちを言葉にしないと愛されていると感じられないんでしょう?」
彼女の言葉に異論はなかった。
「わたしは奏斗くんには笑っていて欲しいし、幸せでいて欲しい」
自分にそれができないのは、仕方ないことなのだと結菜は言う。
「奏斗くんはわたしにとって初恋で、男が苦手な自分でも好きになれる相手はいるんだと思わせてくれた。別れても友達でいてくれるって約束してくれたし、わたしは繋がりがあるだけで十分なの」
好きな相手とどんな形を選ぶのか。それは人それぞれ。
確かにその通りだなと思った。
「だからわたしは奏斗くんの恋を応援する」
「ありがと」
”これからもいっぱい遊ぼうね”と結菜。
『奏斗は小学生みたいなお子様のおつきあいが良いんでしょ?』
ふと花穂に言われた言葉が頭を過る。
確かにその通りかもしれないと思った。
世の男性たちには理解されがたいだろうが、自分はそこまで肉体関係なることを望んではいない。
肉体関係になることは、相手の人生に責任を負うことだと思っているから。そんなの自分には重すぎる。
ずっと周りから偏見を向けられてきた奏斗が何よりも求めていたのは『自由』だった。一人でいることが何よりも自由だと知った。
かつては将来を誓い合った相手である愛美からの執着を恐怖だと感じ、息苦しさを感じるほどに。
つまり一緒にいたいと思える花穂はそれだけ特別ということなのだ。
「着いたね」
いつの間にか車は目的地に到着していた。
「今日は何をお探しで?」
と結菜。
奏斗は駐車場に止めた車から降り、店を見上げる。
まるで山小屋のような見た目のログハウス。平屋の一階建てで、ポップなカラーのドアが印象的。大きなガラス戸の向こうには陳列棚が見えた。
二段しかないい階段を上がりドアに手を書けると子気味良い金の音がする。
開けた途端、珈琲の良い香りがした。
ここは音楽系のものを扱った中古店ではあるが、同時に喫茶店でもある。
「実は、本日は飲食目的」
と奏斗。
”ここのランチおいしいって言ってたでしょ”と続けると、
「あ、だからお昼に」
と人差し指を立てる結菜。
前回きた時、結菜がここのランチはおいしいと言っていたのだ。
『ビーフシチューかオムライスになりますけど、どっちもとても美味しいのです』
ニコニコしながらそう言われ、俄然興味が湧いたのだ。
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