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8.5話 あの日の記憶、思い出の宝箱【Side:花穂】
1 決意の日【微R】
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「なんで学校帰りに呼ぶの」
少し不満そうな奏斗。それでも応じてくれたことが嬉しかった。
「だって、制服姿が見たかったんだもの」
花穂はニコニコしながら彼を見上げる。
「そう」
K学園の制服は灰色のブレザーとズボンにえんじ色のタイ。ベストやカーディガンはベージュ。これといって変わった制服というわけではない。
花穂は単に彼の制服姿が見たかっただけなのだ。
奏斗は不本意という様子で、制服のポケットに両手を突っ込んだまま車内の花穂を見下ろしていた。
「で、どうなの」
見たくて呼んだなら、感想くらいあるんだろという圧力を感じる。
学園指定のワイシャツにタイ、ベージュのカーディガンという出で立ちの彼。
緩められた襟元とタイ。
鎖骨、首筋、続いてうなじに視線がゆく。
「なかなか唆るものがあるわね」
素直に感想をもらせば、
「随分と変態発言だな」
と彼は軽く肩を竦めた。
こんなところで立ち話は目立ってしまう。
乗りなさいよと花穂に促され、助手席に乗り込む奏斗。
「奏斗、大人っぽく見えるけれど、制服着てるとそれなりね」
「そうですか」
呆れているのだろうか。
だが気にしていても仕方ない。
いつものように彼の腕を掴み引き寄せると、
「ダメだよ」
と制止の声。
「外だし、学園の近くだし」
確かに制服では目立つだろう。
「残念。ご飯でも食べに行きましょ」
花穂が離れると彼は黙ってシートベルトに手を伸ばした。
「花穂は年下が好きなの」
奏斗は窓枠に肘をつき、頬杖をついて窓の外を眺めながら。つきあい始めて一か月程度。期間限定のおつき合いに、無駄な時間は割けない。
いろんな話をしたが、そんな質問をされたのは初めてだった。
「そういうわけじゃないわ」
花穂は”あなたが好きなだけよ”と言う言葉を飲み込んで、視線だけ彼に向ける。
端正な横顔。確かに惚れたのは、その容姿に。
だが、のめり込んだのはその容姿と性格にギャップがあったから。
「ふうん」
つまらなそうに相づちを打つから奏斗は花穂と一緒にいるのがつまらないのかと思っていた。だがそれは間違い。
彼は自分が花穂にとって『特別』でないことにつまらなさを感じていたのだ。あの頃のことを思い出す度、自分自身に落胆する。
彼自身わかっていない気持ちも、ちゃんと言動に出ていたのに。
あの日、一線を越える決心をしたのは彼の制服姿に欲情したから。
そして時間がなかったから。
「和馬にもこういうことすんの?」
上気した頬。彼は潤んだ瞳でこちらを見ていた。
軽蔑の眼差しを向けているといっても相違ない態度で。
「するわけないでしょ」
「そう……なんだ」
何度も口づけながら、彼自身を握りこみ上下した。感じているかどうかなんてすぐにわかる。はじめは躊躇いがちだった奏斗は覚悟を決めたのか大人しくなったのだ。
だが、花穂の手の上から自分の手を重ね制止しようとする。
「やめてあげないわよ?」
花穂の言葉に切なげに眉を寄せ瞬きをした奏斗。
「和馬としたことあるんでしょう? こういうのは初めてなの?」
「こんなこと……されたことない」
「そうなの」
花穂は啄むように口づけながら傍らのボトルに手を伸ばす。彼のいいところを知りたい。彼のすべてを手に入れたい。
──和馬から奪いたい。
ボトルから透明なジェルを手に落とすと彼の鈴口に垂らす。
「……っ」
「冷たかった? ごめんなさいね」
快感を耐えているのか花穂の肩に顔を埋める奏斗。
その頭を抱えこみ、優しく後頭部を撫でる。
「いい子」
「子供じゃない」
そういいながらも、ぎゅっと抱き着く彼が可愛い。
「ねえ、聞こえる?」
首筋に唇を寄せ、吸い上げると彼はびくっと肩を揺らす。
「あなたのここから、すごく厭らしい音がするの」
「そういうこというなよ……変態」
「その変態さんに気持ちいいことされて、ココこんなにしてるの誰よ?」
花穂の言葉に彼は黙る。そんな奏斗の態度に花穂は満足気に微笑んだのだった。
少し不満そうな奏斗。それでも応じてくれたことが嬉しかった。
「だって、制服姿が見たかったんだもの」
花穂はニコニコしながら彼を見上げる。
「そう」
K学園の制服は灰色のブレザーとズボンにえんじ色のタイ。ベストやカーディガンはベージュ。これといって変わった制服というわけではない。
花穂は単に彼の制服姿が見たかっただけなのだ。
奏斗は不本意という様子で、制服のポケットに両手を突っ込んだまま車内の花穂を見下ろしていた。
「で、どうなの」
見たくて呼んだなら、感想くらいあるんだろという圧力を感じる。
学園指定のワイシャツにタイ、ベージュのカーディガンという出で立ちの彼。
緩められた襟元とタイ。
鎖骨、首筋、続いてうなじに視線がゆく。
「なかなか唆るものがあるわね」
素直に感想をもらせば、
「随分と変態発言だな」
と彼は軽く肩を竦めた。
こんなところで立ち話は目立ってしまう。
乗りなさいよと花穂に促され、助手席に乗り込む奏斗。
「奏斗、大人っぽく見えるけれど、制服着てるとそれなりね」
「そうですか」
呆れているのだろうか。
だが気にしていても仕方ない。
いつものように彼の腕を掴み引き寄せると、
「ダメだよ」
と制止の声。
「外だし、学園の近くだし」
確かに制服では目立つだろう。
「残念。ご飯でも食べに行きましょ」
花穂が離れると彼は黙ってシートベルトに手を伸ばした。
「花穂は年下が好きなの」
奏斗は窓枠に肘をつき、頬杖をついて窓の外を眺めながら。つきあい始めて一か月程度。期間限定のおつき合いに、無駄な時間は割けない。
いろんな話をしたが、そんな質問をされたのは初めてだった。
「そういうわけじゃないわ」
花穂は”あなたが好きなだけよ”と言う言葉を飲み込んで、視線だけ彼に向ける。
端正な横顔。確かに惚れたのは、その容姿に。
だが、のめり込んだのはその容姿と性格にギャップがあったから。
「ふうん」
つまらなそうに相づちを打つから奏斗は花穂と一緒にいるのがつまらないのかと思っていた。だがそれは間違い。
彼は自分が花穂にとって『特別』でないことにつまらなさを感じていたのだ。あの頃のことを思い出す度、自分自身に落胆する。
彼自身わかっていない気持ちも、ちゃんと言動に出ていたのに。
あの日、一線を越える決心をしたのは彼の制服姿に欲情したから。
そして時間がなかったから。
「和馬にもこういうことすんの?」
上気した頬。彼は潤んだ瞳でこちらを見ていた。
軽蔑の眼差しを向けているといっても相違ない態度で。
「するわけないでしょ」
「そう……なんだ」
何度も口づけながら、彼自身を握りこみ上下した。感じているかどうかなんてすぐにわかる。はじめは躊躇いがちだった奏斗は覚悟を決めたのか大人しくなったのだ。
だが、花穂の手の上から自分の手を重ね制止しようとする。
「やめてあげないわよ?」
花穂の言葉に切なげに眉を寄せ瞬きをした奏斗。
「和馬としたことあるんでしょう? こういうのは初めてなの?」
「こんなこと……されたことない」
「そうなの」
花穂は啄むように口づけながら傍らのボトルに手を伸ばす。彼のいいところを知りたい。彼のすべてを手に入れたい。
──和馬から奪いたい。
ボトルから透明なジェルを手に落とすと彼の鈴口に垂らす。
「……っ」
「冷たかった? ごめんなさいね」
快感を耐えているのか花穂の肩に顔を埋める奏斗。
その頭を抱えこみ、優しく後頭部を撫でる。
「いい子」
「子供じゃない」
そういいながらも、ぎゅっと抱き着く彼が可愛い。
「ねえ、聞こえる?」
首筋に唇を寄せ、吸い上げると彼はびくっと肩を揺らす。
「あなたのここから、すごく厭らしい音がするの」
「そういうこというなよ……変態」
「その変態さんに気持ちいいことされて、ココこんなにしてるの誰よ?」
花穂の言葉に彼は黙る。そんな奏斗の態度に花穂は満足気に微笑んだのだった。
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