R18【異性恋愛】第三の選択─Even if it's not love─

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7.5話 理解されない情熱【Side:花穂】

3 本当の理由【微R】

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「ちょ……耳は弱いって知ってるだろ」
 奏斗の耳たぶを甘噛みし、顔をあげれば彼が涙目でこちらを恨めしそうに見つめていた。
 クッションを背中にあて座っていた彼の上に跨り楽しそうに悪戯をしていた花穂は、
「だってそういうことしているんだもの。弱いところ攻めなきゃ。それに……何してもいいって言ったじゃない」
と抗議する。
「言ったけど、さ」
 奏斗は困った顔をし口をつぐむ。
 その様子を見ていた花穂は悪戯っぽく笑うと、彼の鎖骨に唇を寄せた。

「待て、それはダメだって」
 ”あ、もう。痕つけやがったな”と彼がため息をつく。
「何されてもいいと言ったくせに、覚悟が足りないわよ?」
「俺の立場は、考慮してくれないわけですか」
「誰に対しての、なんの立場よ」

 今カノである『結菜』は、奏斗が誰に何をされようが文句一つ言わないだろう。そもそも彼女とつき合った理由が不純過ぎるのだ。
 どうにもならないくらい好きでつき合ったというのならわかる。確かに好意は持っているだろうが、それが恋愛感情かもわからないのに、好きだと言われたからつき合うというのはいかがなものか?
 結果、責任を感じて別れを切り出せないでいた。
 しかも結菜と別れることで更なる面倒が起きるから、その選択を選べないまま今に至る。

 奏斗が配慮している相手は、どう考えても元カノの『愛美』なのに。
 おかしいとは思わないのだろうか?

 答えに窮した彼は何も言えないまま黙っている。
「どうしてそんなにあの子が怖いのよ」
 彼女は自身の立場くらい理解していると思う。結菜とつき合い続けられているのがその証拠だ。愛美は何かしらの理由があって余裕があると感じている。
 つまり、別れさせようと思えばいつでもそれが可能……考えたくはないが。おそらくそうなのだろうと思う。

「理由くらい話せないの?」
 本当は、奏斗が彼女にどんなことをされているのか知りたい。
 どうしてそんなに怯えているのか、理由を知りたいのだ。
 口止めされているようには見えない。むしろ、恐ろしすぎて口にもできないと言った方がしっくりくる。
「そう、ならいいわ。わたしと楽しいことしましょ」
 花穂は彼の首に腕を巻き付け、にっこりと微笑んだ。

 少し緊張した面持ちの彼をその気にさせるのは大変だった。
 何度も口づけながら、彼自身に指を絡めれば奏斗が静止するように花穂の腕を掴んだ。
めないわよ?」
「……っ」
 するのは平気なくせにされると照れるのはお互い様だ。
 耳元に唇を寄せ、
「初めてじゃないでしょ」
と囁き、羞恥を煽る。
 首筋を唇でなぞれば、彼がびくりと肩を揺らす。
「いいの?」
 花穂の質問に赤い顔をし羞恥に耐えながら、彼がコクコクと首を縦に振る。答えなければ答えるまで問われるからだ。

 絡めた指を強くゆっくりと上下する。
 すると彼はぎゅっと瞳を閉じ、花穂の肩に顔を埋めた。
「奏斗にとって、気持ちいいことは恥ずかしいことなの?」
「頼むから……黙ってて」
 震える声で答える奏斗。
「ふうん」
 そんなだから、S心を刺激するのだということが分かってない。
「じゃあ、舐めてあげるわ」
「……え?」
 空気が揺らぐ。彼の身体が強張こわばったのが分かった。
 それはきっと拒否反応。

「ごめん……それだけは、嫌だ」
 それが恥ずかしさで言っているのではないことくらい、花穂にもわかる。おそらく、彼のトラウマに触れてしまったということ。

──そういうことなのね。
 奏斗がされていることって。

 複雑な心境になりながらも、花穂は無理やり笑顔を作って奏斗の頬を両手で包み込む。
「嫌なことはしないわ。奏斗を傷つけたいわけじゃないから」
「ん……」
 安心させるように彼の背中を撫でながら、口づけを交わす。

 そうかと思う。
 彼がどうしてされるがままなことが嫌なのか。
 好きにさせているとは言っていたが、望まない行為を【強制】されているとは思わなかった。

──わたしってバカね。
 どうして気づいてあげられなかったのだろう。

 そんなにつらい思いをしているくせに『花穂になら何されてもいい』というのだ。それは本当に愛なのだろうか?
 もし、繋ぎとめたくて必死で言っているのだとしたら……そう思うと堪らなくなった。
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